クリスマス2013~武蔵坂のメリー・焼肉リスマス!


     12月24日。此処、武蔵坂学園にも特別な夜が訪れる。
     敷地内に聳え立つ『伝説の木』も美しく着飾られ、聖なる夜を祝福するかの如く優しい灯を燈すのだろう。
     ただイルミネーションを眺める、オーソドックスで幻想的なクリスマスも悪くない。
     けれど――年に一度の特別な日を過ごすならば、焦げ目がつく程に燃え滾る夜があったって良いはず。

    「おーいッ! 親愛なる学友諸君ーッ! クリスマスパーティまでもうすぐだな!」
     大きな声がする方へ振り返る。其処には、子供のように朗らかな笑顔の白椛・花深(高校生エクスブレイン・dn0173)が大袈裟に手を振っていた。
    「メインのパーティもすっげー楽しそうだけどさ、こっちもちと覗いてみねーか?
     まだ準備中なんだけどよ……クリスマス当日、一風変わった『焼肉パーティ』を此処で開く予定なのさ!」
     そう宣言し、花深は両腕を大きく広げてみせる。
     
     彼が示す、クリスマスパーティのメイン会場のはずれに当たるスペース全体。
     其処はいつの間にやら――『焼肉スペース』へと変貌を遂げていた!
     
     スペース内には組立式の大きなパイプテントが幾つも張られている。
     その下には、焼肉店ではお馴染みの焼き網付きテーブルが設置されていた。
    「今はまだ冷凍庫に保管中なんだが、老舗の焼肉店から色んな精肉を仕入れてきたのさ。
     勿論、味はお墨付きだぜ! くぅ~っ……炭火で焼いたら、すっげー旨いんだろうなあ」
     花深はやたらと力みながら肉について語っているが、それだけでない。
     炊きたての白米や、様々な飲み物。特製タレの他にも、レモンや味噌ダレまで。
     一般的な焼肉店のメニューに記されているものならば、何だって食べることができるだろう。
     天にも昇りそうな間抜け面のままであった花深。しかし、「おっと」と声を漏らしたのち、こほんとわざとらしく咳き込む。
    「重要なモンを思い出した……この焼肉パーティは『一風変わっている』。
     ただ肉を焼くだけじゃあ――ないんだぜッッ!!」
     ビシッ! と勢い良く効果音を出し、彼は或る方向を指し示す。
     焼肉スペースの中心。其処に設置されているのは――2台もの、巨大な鉄の機械だ。
     上部を覆い尽くすのは、丈夫そうな鉄製の屋根。下部には炭が敷き詰められている。

    「そう! この焼肉パーティの目玉は『牛の丸焼き』だッ!
     贅沢にもあの『丸焼き機』で牛一頭を……炭で、焼く! お前さん達にゃあその肉を削ぎ落として、喰ってもらうッ!」

     命を丸ごと喰らい尽くす――嗚呼、なんともロマンを駆り立てるシチュエーションではないか。
    「……あれ? じゃあ、誰が牛を焼くの?」
     一人の生徒のツッコミ。静まるテンション。硬直する花深。
     この様子だと、きっと何も考えてなかったのだろう。
     ま、まあそこは俺様がやってやんよ! と花深は不安を押し殺してガッツポーズする。
     自らの手で牛を灼滅――ではなく、ただ焼いてみたい生徒も居るだろう。
     ああどうか、是非とも誰か手伝って欲しいと花深は心の中で必死に願っていた。

     12月24日。
     友人達と盛大に、或いは大切なあの人と仲睦まじく、或いは一人でのんびりと。
     冬の静けさを溶かしてしまいそうな、熱くて美味しい聖夜を過ごしてみては如何だろうか。


    ■リプレイ


     網の上に寝そべるタン塩がじゅう、と音を漏らす。
     シグマが受け皿を備えると、梛は手早く具を盛り付けた。焼肉に紛れ、野菜の緑を密かに添えて。
    「……って、野菜一緒にのせんなって!」
    「ししとう苦手か? ならピーマンをやろう」
     ピーマンをちらつかせながら、平然と言ってのける梛。
     シグマはクレイへ助けを乞うが――その時、ピートロを焼いた網から煙が立ち上る。
     焼肉救出を試みるが、時既に遅し。
    「ま、まあ肉は焦げてるぐらいが旨いと思うぜ!」
     クレイが焦げ肉を皿に盛る。聖夜らしさは皆無だが、三人の顔には自然と笑みが綻ぶ。
     揃ってグラスを掲げ、祝福は明るく高らかに。

     重なり合うグラスの数は6つ。【czas】の面々はさっそく鮮肉を炙り始める。
    「さて何から焼こうか。やっぱタン塩からだよなー」
     箸を構え、ニヤリと浮かべる颯夏の微笑は好戦的。
     悪友たる瑛多よりも、沢山肉を味わう為! 
    「あ、チロルくん。そっちのがそろそろ食べ頃だね」
    「歩夢センパイありがとー! いただく、ダヨーう」
     そう歩夢が指し示せば、チロルは小さく礼をして焼肉を口に運ぶ。
     ――んーっ! おいしい、ダネ! 可憐な笑顔が花開く。
     一方で、些か眉を顰める一哉。頬張った人参は未だ生焼け状態。焼き加減を計るのは、難しい。
    「いっちー先輩も野菜だけじゃなくてお肉いっぱい盛らなきゃっ」
    「ああ、ありがとう、すずめ……って、そんなには食べれないから!」
     すずめが無邪気に幾つも肉を盛り付けてあげれば、一哉もすかさずツッコミを。
    「……あれ。私のおっきいのは?」
     目を少し離した隙に、じっくり焼いていた肉が行方不明に。小首を傾げるすずめ。
    「さて、誰が食べたかな~♪」
     悪戯っぽく歯を覗かせる瑛多。焼肉はスピードが命! 油断禁物なのだ。
     皆と話している間に、歩夢の肉がひどく焦げてしまう。
    「ふふ、でも。楽しいね」
     然れど彼女は皆を眺め、くすりと笑みをこぼした。

     【落月】の7人が囲むテーブルも賑わいを増している。
    「雪だ! サミィー! しっかし肉いっぱいだなー♪」
     箸を小刻みにカチカチと鳴らし、ケイジのテンションは絶好調。
    「あ、タレは此処! 喉乾いたり詰まったらお茶は此処!」
     程良く焼かれた肉をゲットした燐音。眼鏡をきらんと光らせ、皆へのフォローも忘れない。
    「葉と間違えて食われないように、アレスも気をつけるのじゃよ?」
     白髪交じりの緑髪を結わいたないんは、梅だれをチョイス。
     焼肉に葉を巻き、タレをかけて口へ運ぶ。
    「一応、言っておくが……俺はベジタリアンではないぞ」
     髪も緑で服装も緑系統であれど、アレスも肉を食う。
     生産ラインは追いつかぬものの、網に寝かせた焼きおにぎりにも気を配らねば。
    「なあ、これは生のまま食ったら駄目か? 胃袋な、結構丈夫なんだ」
     ――……駄目か?
     大食漢たる百合がギラついた目で問えば、皆は口々に「いかん」と窘めた。
     網に並ぶ大量の肉からとめどなく香りが漂う。
    「最初はロースとかハラミとか。やっぱりこの辺が定番ですね」
     トングで肉を並べるのは一都だ。この後はタレをつけた肉を飯に乗せ、口へかき込むのも良いだろう。
    「皆とこうしていると楽しい気持ちになってくるな♪」
     カルビを味わう可奈枝は上機嫌。
     皆との焼肉は、冬の寒さも忘れさせてあっという間に過ぎてゆく。

     【井の頭3-G】の皆が居る席もまた、次々と肉が焼かれていた。
    「はふはふ……むぅ、眼鏡が曇る」
     屋外といえど熱気が凄まじい。なをは湯気で曇った伊達眼鏡を外す。
     瞬間、ギラリと冴えるは金色の眼。
     なをが狩人と化している間に、黎嚇もまた周囲に野菜を配ったのち焼肉を食らう。
    (「この世は弱肉強食。案の定、クラスの者達は肉を狙っている」)
     今回ばかりは特別。食の禁忌はさておいて、遠慮なく戴くのだ。
     一方、祐也は苦手なピーマンをクラリスの皿へと遠慮がちに移していた。
    「す、すみません……」
    「……祭りの席でうるさくするつもりはないがな。少しくらいは自分でも食べ――」
     ひょい、ひょい。二つの手が伸び、ピーマンが投入される。
    「ほら、オレら来年には高校生だからね? 好き嫌いとかもうダメだよね?」
     にっこり笑って琥太郎は再びカルビを味わう。
     亜理栖に至っては、ピーマンだけでなくタマネギもおまけに祐也の皿へ。
    「もっと食べたいのに乗せきれないんだよね? まだこの辺に乗せられるよ?」
    「まあまあ。そろそろこっちの肉が食べ頃だよ」
     其処へ、結弦が親切にも皆へ肉を薦める。やはり、皆で集まって食べるのは非常に楽しい。
     これから先にどんな戦が待ち受けていようとも。今宵のような笑顔溢れる日が、また訪れるように。

    「(鉄板奉行……いや、ありゃむしろオカンだな、オカン)」
     場を仕切る二人の様子を眺め、空哉は塩カルビの隣でタレカルビを焼き始めた。
     まずは塩タン全部焼けてからにしろよ! と、すぐさま香艶の声が谺する。
     全員分のご飯を配って回るのは割烹着姿の桃野・実だ。
    「なら僕らは、気兼ねなくかっ食らおうじゃあないか!」
     そう宣し、リタは遠慮なしに箸を伸ばす。やはりカルビは人気の様子。
    「さて、皆ある程度肉食ったな? では、みそホルモン大量投下!!」
     香艶が手際よくみそホルモンを裏返し、端にはネギも焼いて。
    「よし。桃野、ご飯くれ」
     その言葉に応じ、実はこくりと頷きながら茶碗を差し出す。
     山盛り白米にそれ等を「そぉい!」と乗っければ、特製みそホル丼の完成ッ!
     ホル丼? ちょっと食べてみようかな。
     美味しそうな匂いに釣られるがまま、先ずは京夜が丼を一口。
    「あれ、結構美味しいかもしれない」
     さ、もらって来い! とリタが相方『高崎』の背を押せば、彼は何処か嬉しそうに丼を一つ、頂いていく。
     一旦、箸を置き、かまちは皆の様子を見渡す。
     今期を以て【3-0】の面子とは暫しの別離。
     いつか再び、あの空き教室の扉を開くことができたならば――。
    「皆楽しそうに笑ってて、それだけですごく幸せだ」
     夏海もまた、常のからりとした笑顔のまま想う。ただ肉を焼くだけなのに、こんなに美味しく感じられる。
     今宵のように皆と騒ぎあえるこの時間こそが、焼肉に合う最高の調味料だ。
     実の霊犬『クロ助』に肉を分けてやり、篠介はふと、会場に聳える『伝説の木』を見つめる。
    「また行けたらいいのう……クリスマスに願ったら、きっと叶うよな」

    「ヨロレイヒー! 焼肉とかいつ振りだろう!」
     上機嫌にヨーデルを口ずさみ、千巻は焼けた牛タンを次々と口に運んでいく。
     しかし、肉ばかりというのも勿体無い。箸を置き、貫が野菜を網の上へ並べていった。
    「ガンガン焼くんでこっちも食ってくださいねー」
     丁度その頃、
    「石川先輩はちょっと大人げなくないですかね……!」
    「この状況で優しさとか求めんなよ」
     十重(スナイパー)VS銀(クラッシャー)による焼肉小戦争が勃発していた。
     箸を構えた両者の勝敗の行方は……。
    「ふぇえ、腹減ったよぅ……せめて米食べるし」
     しかし、肉奉行を担っていた漣香にも限界が。
     網に焼かれる肉達を恋しがり、砕いたポテチを白米にふりかける。
    「……ほれ、とっといたのやるよ漣香」
     それを見かねたのか、焼肉を盛った受け皿を銀が差し出した。
    「そういえばこれクリスマスイベントだった」
     ふと貫が呟けば、千巻も十重も笑って【ガード下】の皆と祝い合う。
     ――メリークリスマス。後でケーキも戴こう!

     【夢現】の5人のうち、璃依は真っ赤なサンタ風ワンピースで着飾っていた。
    「おいひい♪ 焼肉が飲み物のようだ!」
     焼肉を食べ……否、飲むように急いで食べれば食べるほど、飢えも満たされ心も潤う。
     暫くして、「うぐっ!」と喉を詰まらせる璃依。
     だが幸運にも、千夜がにこやかに皆へ飲み物を配り始めていた。
    「みなさんも好きなのをどうぞー!」
    「お、準備ありがとな千夜。気が利く」 
     白米を片手に席へ座った翔琉も、実は今日という日を心待ちにしていたのだ。
     飲み物をテーブルへ置いたのちに炭火焼きを堪能し始める。
    「食べっぷりがいいと見ていて気持ちいいな。いや、オレが食わなすぎるのか……?」
     あらかた肉を並び終え、やっと玉兎も焼肉にありつける。
     彼が受け皿に添えたのは、スライスした塩タン二枚のみ。
     先ほど千夜と交換したカルビを、イチは黙々と頬張る。
     表情は常の淡白なものながら、心から幸せを感じていた。
    「(――僕は良いクリスマスを貰った)」
     皆と過ごす温もりを、深く胸に刻んで。

    「さーて、焼肉だ! 便利屋諸君、腹いっぱい食って帰るぞ!」
     【便利屋】のテーブルにて。宣言と共に、輪は肉を焼き始めた。
     お喋りしつつも手は止めず、皆を気遣い肉を配って。
    「定番のカルビもいいけど、私、ハラミとかタンとか好きなんだよね~」
     目の前には新鮮な肉ばかり。ユリアは年相応に瞳を輝かせる。
    「うわーい肉! 僕の血になれ、(贅)肉にはなるな!!」
     食事前、祈るようにぱんっと両手を合わせるかごめ。
     ユリアがサムズアップを見せれば、かごめも同様に親指を立てて。
     言葉は無くとも、少女達は一目で通じ合う。
     育ち盛りな彼女等を見やり、ふと明莉が一言。
    「……横に伸びたら悲惨だな」
    「女の子に余計な事言わないの……って、私のフィレ持って行ったわね」
     いつの間にやら銘子の皿からフィレが行方不明に。疑いの視線は無論、明莉へ。
    「だって、ナディアが欲しいって」
    「ち、違うんです。俺は神栄さんに取ってこいって脅されて……」
     野菜を摘んでいた箸を置き、ナディアは涙を滲ませ訴える。
     すると焼肉を堪能し終えたセリルザールが、鞄から小柄なポットを2つ取り出し始めた。
    「セイロンティーと炭火焼の牛肉って案外合うよ。ちょっと試してみないかい?」
     マンデリンにセイロンティー。皆へ食後の一杯を振舞って。楽しげな談笑は続く。

     炭が熾され、くつくつと煮える音。鼻腔をくすぐる肉の香り。
     会場を見渡し、【リトルエデン】のるりかは至福の笑みを顔いっぱいに浮かべる。
     肉を愛する彼女にとって、此処はまるで夢か幻のよう。
    「るりかちゃん、焼けたよ。どんどん食べてね」
    「わーい、香乃果ちゃんありがとう!」
     肉を乗せ終えたのち、香乃果も焼きたてのタン塩を頬張る。じわり溢れる、さっぱりとした旨味。
     峻は視線を走らせ、普段では食べる機会も少ない部位を選んでいく。
     特上カルビか肩ロース、それともカイノミか。
    「律もちゃんと食べてるか? このクラブ、のんびりしてると食べ物が消えていくぞ」
    「有難うございます。ザブトン、美味しそうに焼けて来ましたよ」
     初めてのホルモンを口へ運び、無道・律も思わず口元を緩ませる。
     4人分に切り分けたなら、配られたグラスを掲げ――メリー・焼肉リスマス!

     【がれ庭】の面々が集うスペースには、4つもの七輪が設置されていた。
    「さーて、肉が焼けるまで少しあるから乾杯しようか」
    「ですね、戦争お疲れさまでした。そして、メリークリスマース!!」
     舜が皆を見渡せば、ディートリヒもオレンジジュースのグラスを掲げる。
     皆で揃ってグラスを鳴らし、直ぐさま視線は七輪へと集中。
    「まだその肉は育て中だから取るな。こっちの肉ならよし」
     テキパキと皆へ皿を配り、舜はトングを用意。肉だけでなく、野菜も並べて。
    「焼肉って本当にいいわよね~。焼ける匂い、皆の談話、暖かい空気。何もかも好きだわ~♪」
     真っ先にカルビを選び、白米と共にじっくり味わう日和。
    「お身体、辛くなったら言って下さいね?」
     彼女の隣から、ゆまが心配そうに訊ねる。「大丈夫よ」と日和は言うけれど、どうしても放ってはおけず。
    「あの三人は、流石と言うかなんと言うか」
     箸を忙しく動かしながらも、心太はふと大食い組三人へと視線を向ける。
    「(足りんな)」
     バスケット大の焼肉を豪快に齧り、隣の夜トへキリッと目配せする小次郎。
     だが夜ト自身は肉の相手に忙しい様子。ただ肉を焼き、瞬時に食べる。
    「……ご飯、お願い、します」
    「おーいゆまー。肉とって来てー」
    「あ、僕もご飯お変わりお願いしていいですか?」
     律だけでなくディートリヒからもお代わり宣言が入り、まだまだ大忙し。

     【桜堤キャンパス 高校3年3組】のクラスメイト達も、ひたすらに肉を焼き続けていた。
    「今年はクリスマスに焼肉とか、楽しいことになりましたね」
     トングを片手に、李がにこやかに皆へ語りかける。
    「俺は赤身のたんぱく質狙いだ。食べるのだって立派な修行だな」
     通は明るく笑って肉を味わう。霜降りは皆へ譲り、こまめに肉をひっくり返して。
    「さあ! 肉食うぜ肉! 他に何もなくとも肉食えよ肉!」
     特製のミートバーガーを振る舞いながらも、一番に食べるのはやはり飯人。豪快に大口を開き、ぺろり。
    「クリスマスにお肉‥…これじゃ何だか、普段と変わらない気もするわね」
     普段通り、抑揚のない声音で春香が零す。
     肉飛び交う聖夜。けれどこんな賑やかなクリスマスこそが、最も彼等らしいだろう。

     【文月探偵倶楽部】の仲間達は、もふもふ着ぐるみで焼肉リスマスだ。
    「肉だにくだー♪ こっから、ここまで、食べたいでっす!」
     ヒマワリの着ぐるみを着たミカエラも、食べ尽くす気満々のようだ。
     先ずはとにかく、肉を味わうのみ!
    「では僭越ながら緋薙桐香、参りますわ」
     トングを構え、楚々とした微笑を浮かべる桐香。
     肉奉行として、丁度良い肉を次々に皆の受け皿へ盛っていく。
    「ところであっちで牛が丸焼きにされてるけど、クロネコは丸焼きにならないの?」
     イフリートの着ぐるみを被った毬衣が訊ねれば、直哉がビクッと肩を震わせる。
    「く、クロネコは食い物じゃないからな! な!」
     頭に被ったサンタ帽子のズレを直しつつ、必死にツッコミ。
    「あら、本当……クロネコって丸焼きに出来ないのかしらね」
     レモン汁をかけたタン塩を咀嚼しつつ、金糸雀もチラリと直哉へ視線を流す。
     ちなみに彼女も己の名前が由来なのか、黄色い鳥の着ぐるみ姿だ。汚れぬよう、首に確りエプロンもつけて焼肉を堪能する。

    「……。まぁ炭火だし、こーゆー事もあるよねぇ」
    「そ、そーだなっ。良くある事さ」
     目を逸らして首肯する勇弥を見、さくらえは喉奥でくつくつと笑う。
     せっかくの機会に、普段とは逆にさくらえが給仕に挑戦したものの――網には見るも無残な肉達が、幾つも。
     上手く焼けた肉は勇弥の皿へ、炭化したものは互いに半分ずつ。
     さくらえが乾杯を提案すれば、勇弥もそれに応じるようにグラスを掲げて。
     男二人、それも気心知れる幼馴染に色気も何もあったものじゃないかもしれないけれど。
     せめて、祝福の言葉だけは。
    「メリークリスマス、とりさん」
    「ああ。いい年末年始を、な」

     止まらぬカルビコールはアンナ達の席から聞こえてくる。
    「カルビktkr! ほらッ! 食え。どんどん焼いてくからな!」
     アンナのテンションは絶好調。強引にも、右九兵衛の受け皿へ立て続けにカルビを乗せる。
    「いや食うけども、食うけども! もうちょいペース落としてくれな!」
     この光景はわんこそばならぬ、わんこ焼肉と呼ぶべきか。
     彼女のペースに圧倒されつつも、右九兵衛は皿に盛られた肉の焼き加減を確かめた。

    「おおお……!!ひつじ! ひつじー!! とーるさん、ひつじ食べよう!」
     白飯と共に焼肉を味わう最中、急に伊鳥が声を張る。
     彼が指差す方へ亨も視線を向ければ、其処には続々とできたてのジンギスカンが並び始めているではないか。
     伊鳥はジンギスカン好きなのか――一度も食べた事はなかったけれど、彼と一緒に注文する亨。
    「なぁ伊鳥、俺達来年も、こうして一緒にクリスマス過ごそうな」
     そう告げれば、伊鳥は常の緩やかな笑みで応える。
     友と過ごせる聖夜。この縁が、いつまでも繋いでいられるように。

    「クリスマスなのに焼肉っていうのも、どうなんだろうな」
    「最高じゃない。ごみごみした街に繰り出すより、余程利口な過ごし方だと思うけど」
     思考は何処か一方通行。自腹で焼肉を振る舞う小鳩と、彼の厚意に遠慮なく甘え、ひたすら肉を食す彩。
     彩の様子を見つめ、思わず頬を緩ませた小鳩。彼女の柔らかそうな髪にふと手を伸ばすが、印象的なカシスソーダ色の眸が鋭さを増した。
     子供扱いしないでと言い放つものの、小鳩が返した言葉は――、
    「アンタ、ほんっとにかわいーヤツだな」
    「はぁ?」
     後になっておっかねーと訂正をされようとも、その疑問符は消えることなく。

     焼肉。それは成長期の男子ならば誰もが胸を躍らせるワード。
    「おー! すげー! 龍二クンはよ! はよ!」
    「ひゃー! なんぼでも好きな肉食えるとか楽園やんなぁ!」
     思う存分に肉を食らう機会は久方ぶり。陽介が友の手を引っ張れば、「肉は逃げへんってー!」と笑みを湛えて龍二もついてくる。
     席に着き、先ず焼くのは牛タン、豚トロ、ササミ……全て陽介の好物だ。
     共に談笑し合って味わう最中、ふと外を見やれば――ちらほらと降る真っ白な雪。
    「雪……」
    「おー雪や、ホワイトクリスマス! 雪降るとこってあんま住んだことないから新鮮やなぁ」

     夕陽も沈み、聖夜に彩られた伝説の木もまばゆき光を灯し出す。
     しかし、未だ焼肉リスマスは終わらない。
     今回の大目玉である、あの巨大な獣を喰らい尽くすまでは――。


    「(おお……)」
      その身を真っ二つに裂かれた、猛牛の存在感たるや。庵も些か動揺する。
    「(アタシ一人だったら丸かじりしちゃいたいんだけどー……ま、皆で食べるものだから)」
     今回はお行儀よく、切り分けて御馳走になりましょ。勘志郎も一緒に、ハンドルに手を掛けた。
    「あ、思ったより重い……牛さんの体重が伝わってきて、きゅんきゅんしちゃう……」
     今からこれをお腹の中に満たすのだ。草灯の心はさらに躍る。
     そっと瞳を伏せ、馳せる想いのままに牛をくるくる。
     大きく目を瞬きさせる稲城・実。見事に廻る巨大な牛を目の当たりにし、思わず拍手を。
     手際良く草灯が牛の一部を削ぎ落とし、再び皆でディナー再開。
    「お。何か、思ったより柔らかいな」
     皆の分の緑茶を注いだのち、庵が削ぎたての牛肉を口に運ぶ。
    「ふむ……火加減も回し方も丁度良かったんだろう」
     雄大もガツガツと肉を平らげる。そんなに硬くもなく、何より美味だ。
     雪降る聖夜は寒いものの、熱いお茶と肉があれば幸せで心も充ちる。
     おいしいね、と皆に笑いかける実もまた、柔和に笑みを綻ばせていた。

     もう片方の丸焼き機には、既に【宵空】一行が牛を囲んでいる。
     回し始めは確かに手応えを感じたが、それも束の間。朔之助の手で軽々と牛が廻るまわる。
    「陰条路、ありがとう。美味しく焼いてね!」
     朔之助へ向け、両の手を合わせる司。彼の傍にはいつの間にか白飯とサガリを添えた皿が。
     些か引き吊った笑顔で司にサムズアップを返したと同時――カシャ、と何処かから微かに聞こえるシャッター音。
    「(これでまた陰条路先輩フォルダが潤うこと間違いない、俺得)」
     ふと振り向けば、其処には携帯を開いたイヅルが自分に向けてカメラで撮影を――。
    「イヅルおまっ! そ、それ消せ! 今すぐ!」
    「はい。ミスジとハネシタ、お持ちしました」
     一方で、咲耶が務めるのは配膳係。まるで焼肉屋を手伝う、小さなアルバイトさんのよう。
     腕力や胃袋に自信は無いものの、肉を捌く手早さはピカイチだ。新鮮な牛肉達が続々と並ぶ。
    「ん、やらせてばっかりじゃ悪いわね」
     サーロインを食べ終えたのち、あたしも手伝うわと七が専用ナイフを握った。
     生きとし生けるものへの感謝も込めながら、研がれた刃を素早く滑らせる。
    「はーい、サーロイン欲しい人あげるぞー」
     大変な作業であれど、笑顔は常に楽しげに。七も加わり、切り分けも段々と捗っていく。
    「(段々ほっそりとしてくるのは見ててなんか、こう……うん……)」
     捗るということは、牛も段々と痩せこけていくということ。骨と化す前に、透も遠慮なく肉を削いで食べ進めていく。
     それにしても――旨いと、士騎は想う。ただこの焼肉が美味というだけではない。
     大勢の仲間と過ごせる賑やかな『今』こそが、『宵空』という名のスパイスとして肉の旨味を惹きだしている。
    「それが、なにより旨いな」
    「誰かしらね、ヴァンパイアはニンニクに弱いなんて言ったの」
     多種多様のタレや薬味を味わってみながら、櫂は己の紅眸を細める。
     士騎に肉を勧めたのち、清潔なタオルを持って冬崖のもとへと駆け寄っていく。
     後半戦に突入し、回し手も冬崖へバトンタッチ。
     丸焼き機から発せられる熱気によって周囲に降り積もる雪も溶け、冬崖の額にも汗が滲む。
     聖夜に相応しく、要は頭にトナカイの角を飾って皆の輪の中へ。
     知識が豊富な咲耶にあやかり、要も肉の部位を塩を振って食べ比べ。
    「同じ牛肉でも、結構味が違うものだねぇ……」
     思わず、ううんと舌鼓。けれどまだまだ、食べ足りない。
    「どの部分もおーる美味しいのです!」
     幸せを噛み締めるように、炙りたての肉を咀嚼する雫。牛さんへの感謝は常に胸に。
     ――さあ、これを食べ終えたなら今度は私がお手伝いする番ですね。
    「はぁ……幸せなのです……」
     要がトナカイならば、由愛の頭には真っ赤なサンタ帽が。
     牛を丸ごと味わえて夢心地ながらも、はらぺこシスターはまだ食べ足りない。
    「あ、ここは熱いから取ってあげるよ」
     葵がナイフを捌き、熱々の部位を皿へ盛りつけ由愛へと配る。
     彼女が望んだラブラブイベントとは、まさにこのこと。
     突然、弥太郎がくらりとよろめいた。
     肉か、菜食か。どちらかと問われれば後者を好む彼にとって、ずっと肉を食べ続けるのは酷であったか。
    「すいません。お茶を飲んで休憩します……」
    「あら弥太郎、大丈夫? ――わあ、見て!」
     弥太郎へお茶を差し出したのち、オデットが発見したのは――焼かれる牛から立ち上る、湯気と煙が生んだクリスマスツリー!
     少しばかり熱気が強すぎるクリスマスであれど、とってもステキ。
     真っ白なツリーは今もなお、焼肉会場を彩り続ける。

    「すーげー! マジで丸焼きやん!」
     会場のど真ん中に鎮座する牛に驚愕するのはクリスマスツリー……否、典鏡院・蓮生である。
     折角のクリスマス。緑の服に、電飾やモールを絡めて。興奮に合わせ、頭の電飾もピカピカと明滅している。
    「さて、このハンドル回しゃ良いのか」
    「焼かねぇことにははじまんねぇみたいだな」
     しかし全力で回してしまえば最悪故障も有り得る。
     少々加減しつつも、ダグラスと千代助が共にハンドルを動かす――が、方向が右へ、左へ。
     噛み合わぬ共同作業はまさかの力比べへ発展してしまう。
    「ハンドル回しありがとうございます……ふぁいと! です……!」
     全員分の飲み物を用意し始めながらも、魚々は拳を握って二人にエールを。
     やっと牛にも火が通り、適度に解体すべく慶一もナイフを握る。
    「カルビでもハラシタでもハラミでも……ってお前ら、すごい拘りなさそうだな……」
     一方、宵太はトナカイカチューシャを揺らして、自ら進んで配膳を手伝う。
     一枚一枚の塩皿に、切り分けた肉が添えられる。
     味付けは無論、岩塩『ロンロン』だ。仕上げ終えられた肉は次々と彼等の胃袋に収められる。
    「火傷しないよう気を付けて下さいね」
     牛肉を頬張ったのち、ほの花も霊犬『えだまめ』を始めとしたサンタコス霊犬ズへ、肉をお裾分け。
    「みんなのたべっぷり、見てるだけで、おなかいっぱいになる、な」
     淡いピンクの瞳がゆっくり細められる。スヴェンニーナが食すのは綾子特製の塩むすびだ。
    「綾子さん、俺も塩むすび欲しい……ってコート着てんの?」
     ザジが時坂サンタもとい綾子のもとへ向かえば、いつの間にやら彼女は身にまとうサンタコスをコートで隠してしまっていた。
    「ああああもう、やっぱり恥ずかしい! こんな露出する格好、普段はしないんだから!」
     よく周りを見渡せば、愛らしい霊犬ズを除けばサンタコスは綾子のみ。
     非常に似合ってはいたものの、耳まで真っ赤に染まり上がり、膝を抱えて顔も衣装も隠してしまった。

     今宵は牛の丸焼きで家族団欒。長男たる七狼が、黙々とハンドルを廻し続ける。
    「兄貴、俺も手伝うよ。疲れたら、交代な」
     家族にしか見せぬ本来の口調で、枷織が告げる。
    「あァ、すまない枷織。では、交代お願いシヨウ。……有難う」
     その時、くいくいと二人の服の裾が引っ張られる。
     振り返れば、いつの間にやら四男の狂夜が牛を解体したそうにじっと見つめていた。
     そろそろ程好い頃合であろう。任せた途端にナイフを取り出し、ポーズをとり始める。
    「くく、我が同胞の炎はきいたであろう。だが、これだけでは終わらぬ。我が漆黒の刃を受るがいい……」
     宣告と同時、幾度もの閃きが牛を襲う。見事、人数分の牛肉を獲得だ。
    「……おっと、俺も準備を進めねば」
     狂夜のナイフ捌きやポーズに見入ってしまっていた。準備を再開するべく、陸も手を進める。
     さっそく肉を盛り付けた皿を運ぶのは、末弟である流空だ。
    「これはリクにぃで、これはクロねぇだね。任せといてっ」
     家族揃ってのクリスマス。嬉しさのあまり溢れる元気をフルパワーでお手伝いに費やす。
     テーブルには席が7つ。兄弟妹と、黒雛の傍らに佇むお母さんの分もだ。
    「お母さんも一緒に皆で囲んで食べようね……♪」
     皆と共に「いただきます!」と声を合わせて。御手洗家にとって、心に残る想い出がまたひとつ。

    「さぁ、みんな。ここに【牛野牧場】が丹精をこめて育てた太郎その2がいる。今からこいつを……」
    「太郎その2かよ! せめて次郎とか名付け様もあるで御座ろう!?」
     牛野家長女・かるびの宣言に間髪入れず博明がツッコむ。
     先ずショボリと博明が丸焼き機を焼く。牛野の作法に則り、回しながらもショボリが歌う。
     焼き終えた太郎その2に黙祷を捧げ、開幕するのは解体ショーだ。
    「解体ショーならいつも牧場でやってるから、手慣れたものなんだよー」
     次男・吏舞が切り分けたものの、皆が選ぶのは何故か人気を博す部位ばかり。
     悔しさのまま皆の皿へ無理やり吏舞がリブを盛る間に、メイド長のランプが切り分けた肉を使って調理を始めた。
     バターに自家製パンにチーズ。これらは全て、牛野牧場から取れたもの。
    「牛野牧場特製サンドイッチ、是非召し上がりくださいませ」

     【ダンス・カテドラル】の藍も、牛の丸焼きへ挑む。
    「こういうの一度やってみたかったんだ。でも、うーん……」
     しかし小柄な身長の所為か、どれだけ頑張ろうとも上手くハンドルが回せない。
    「藍ちゃんもぐるぐるするにぃ? 手伝うにぃ!」
     明るく声を掛けるのはひかりだ。持ち前の怪力を生かせば、ぐるぐると牛がよく廻る。
     牛を捌くのは寛子だ。彼女にはどうしても狙いたい部位が、一つ在った。
    「よし……そこなの! 狙って切り出すの!」
     少量ながらも、念願の希少部位を獲得! これから3人で分け合い、幻の味を深く味わうのだ。

    「牛の丸焼きと丸焼きを焼く花深君を見にきたよー」
    「おおっ、美澄じゃねーか! メリクリーッ!」
     ひとりでぶらりと訪れた美澄は、クラスメイトたる少年に手を振ってみせる。
     手伝うため、ハンドルを握る。グッ……と力を入れるものの、巨大な牛はピクリとも動かず。
    「わ、ごめん。全然力になれなかったよ」
     がっくり肩を落とす美澄に、花深は大きく横に首を振ってみせた。
     寒い中、此処へ来てくれたこと。手伝ってくれたこと。それだけでも心から、嬉しいと。
    「そこの肉焼き少年!」
     唐突に声をかけられ、「えっ、俺様?」と間抜けに自分を指差すエクスブレイン。
    「ボクもお肉を焼いてみたい! 今日という日を通じてみんなと親交を深められたら、それは素敵なことだと思うんだ!」
    「よ、よし! じゃあ頼んだぜ肉焼き少女っ」
     丸焼き機をクリスに譲り受ければ、彼女は寒さにひるまずめいっぱいハンドルを回転し始めた。

    「うん、良く焼けて美味しい!」
     丸焼き機を相手にした激しい運動を終え、旨味溢れる肉を特製ピタパンで味わう二人。
    「あ、頬に食べかすついてるよっと」
    「おりょ? あざっす!」
     耕平が朔羅の頬に触れ、食べかすを取ってみせる。
     何処か朔羅の顔が赤いけれど、いつしかそれが彼にも伝染り……。
    「(何気なく何やってるんだ僕は……)」
     互いに赤面状態に。此処から朔羅の霊犬『師匠』が彼女の足へ噛み付くまで、あと数秒――。

     爽太に削いでもらった、香ばしい牛肉。
     深く、深く味わって、「うーんっ、美味しい!」と満面の笑みを浮かべるひらり。
    「俺、ひらり先輩が美味しそうに食べてるところすげー好きっすよ」
     先輩の幸せそうな笑顔を見つめ、思わず言ってしまった想い。
     あははは! と照れ隠しつつ、爽太は幾度もハンドル回転。
    「あ、ああありがとうございますっ!!?」
     ひらりの頬もほんのり、赤に染まる。

    「王、ミカ、見てみろよ! マジに牛が丸々焼かれてんぜ!」
    「おおー、これは思ってた以上に圧巻だね~」
    「牛の丸焼きですって!? ジュルル、なんてむごいことを!!」
     利戈、ミカ、龍のクラスメイト3人組も巨大な丸焼き機に目を奪われている。
     ハンドルを握るのは利戈だ。重々しい感触を慣らしたのち、段々と速度を上げてゆく。
     ふと、ミカが感じるのは『命』のこと。
     自分達が様々な命に支えられて生きているというのならば――この肉も、感謝を抱いて味わいたい、と。

     時間も過ぎ行き、二つに裂かれた牛一頭も骨だけに。
     熱く美味しい聖夜も幕を閉じるけれど、皆の心に満たされた『熱』だけはきっと――冷めることはないはず。
     改めて祝福を。メリー・焼肉リスマス!!

    作者:貴志まほろば 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月24日
    難度:簡単
    参加:141人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 16
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