学園の敷地内にある伝説の木も、クリスマスに向け飾りつけの準備が始まって。
今年も趣向凝らしたパーティーが、たくさん開催予定。メインパーティーにダンスに雪合戦、今年は魔人生徒会主催による、合同結婚式などもあるらしい。
その中のひとつに、去年と同様ライブハウス利用したパーティーが企画されていて。
「まぁ、やる事は去年と全く変わらないんだけどね。下北沢会場で、普通に音と声で戦おうぜってのと、後楽園会場で模擬戦」
仙景・沙汰(高校生エクスブレイン・dn0101)は机に腰掛け、囲む仲間へチラシを配って。
「ふむふむ。つまり下北沢は、普通にミュージックライブっていうことですね? ソロでもバンドでもユニットでもなんでもいいんですね」
僕も見に行こうかなと、レキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)が迷っていると、俺は折角だし参戦しようと思っていると沙汰。
「さ、さささささんせん、ですかっ!?」
突如背後に稲妻走らせ、白目を剥くレキさん、驚愕。
「あ、いや。勿論一人じゃなんもできないから、誰か彼か知ってる人……ってレキちゃんなんでそんなにオソロシイ目で俺を見ているわけ?」
「それは恐ろしくもなりますよっ! 専門外のことに首突っ込むなんて、なんて命知らずなんですか?」
死にに行くようなものですから血迷うのはやめて下さいと本気で頭の心配するレキに、沙汰は軽く頭を抱え、
「俺も言い方悪かったんだけどね? 参戦って言ってもね、別に後楽園へ殴り合いに行くって意味じゃないから……爆音にノリノリで暴れに行くってニュアンス」
そこまで命知らずじゃないからと沙汰。あ、そういう意味なんですねとレキは恥ずかしそうに。
「とりあえず、普段は聞く側の人間だから、今回は提供する側の人間になろうと企んでる」
いろいろな人たちのテクニックとか学びたいしねと沙汰。
「成程……なら僕はまたとない機会なので、後楽園の方にも行こうかなぁって」
「戦うの?」
「ライブハウスって一度も行ったことないですし、興味もあるんですよね。ここで諸先輩方の戦い方を多く学んでこようかと思います」
「…………」
果たして、このカオス間違いない趣旨の企画で、本気で学べると思っているレキの純粋さが眩しすぎて、直視できなかった沙汰。
「う、うん。まぁ、大なり小なり混戦時の対応が身に付けばいいよね。とりあえず、クリスマスのお遊び企画でもあるから、固くならず……もう一度内容チェックしておいたらいいと思うよ……」
「そうですね。模擬戦ですものね。禁止事項に触れたら大変ですしね……ふむむ、殲術道具の使用は可。今年のクリスマス特別ライブも、クリスマスっぽい装いで出場すればいいんですね? 去年はサンタさんとか天使のコスプレした人とか、マテリアルロッドをツリーのように電飾で飾った人もいたんだ……なら、僕はトナカイさんになりますっ!」
「まさかのかぶり物!?」
「いえ、トナカイさんのフード付きワンピースあるんですよ。それで行こうかと」
もちろんきぐるみでもよい。霊犬イヌぞりサンタとか、ライドキャリバーの暴走サンタとか、サーヴァント共々楽しむのもいい。クリスマスケーキを使い、サイキックと共にクリスマスケーキを投げ合ったりしてもかまわない。
勿論クリスマスの装いは、がっちりしたものじゃなくてかまわない。クリスマスっぽいアクセサリーなど、最低限のものを付けていればよいとのこと。
粉雪舞う中で、優しい時間を過ごすのもいいけれど。
やっぱり弾けるパーティーだってしたいよね?
熱く楽しく元気よく。
無礼講という言葉を最大限利用して、みんなでハチャメチャでノリノリなクリスマスの時間を過ごしませんか?
●下北沢
SEと共に光流れ。高まる期待は、暗い世界の中でも肌に感じる。
「下北沢の皆さんー、ごきげんようー!」
切り落とされる幕と、レーザの空間に現れた瑠璃は、艶やかな髪を振り乱し、アシンメトリーの衣装と六弦翻して。初っ端からサウンド全開。
亮太郎が元気よく袖から飛び出して、背中を預ける様に並んで。
弦を滑る瑠璃の指先、デジタル化されたリズムと競い合うベース。亮太郎のオリジナル曲が、初っ端から客席を引っ張りあげて。
そして途切れなく、音色とライトは万華鏡の様にくるりと変わる。
「今夜は思いっきり楽しんで演奏しマスヨ~!」
可愛らしいサンタの衣装に身を包み、元気いっぱい客席へとコールするシャルロッテ。
(「先輩の歌、一回聞いてみたかったのよね」)
めっちゃ可愛いと絶賛しながら、律は彼女の音に応え。けれど爪弾く姿はカッコいい。
神堂さんも一緒にどうぞ。そんな風に笑顔で手を伸ばすシャルロッテ。
一度は断るものの、律は恐る恐る声を重ねれば。アルトとテノールのユニゾン響く。
途流は参加者から零れ散る音の欠片を拾い集めて、リアルタイムにミキシング。
倍音にしたりぶつ切りにしたり、歪ませたりテンポ弄ったり。足りない音は、ボイスパーカッション。
「うん。いい音」
サンプリング出来てご満悦。その手法とセンス見ようと、沙汰こっそり拝見中。
フォークギターを爪弾いて。梓が即興で紡むいでゆく音に、静香が口遊ぶのは恋の歌。
言霊を、現実の世界へと飛ばせば。
『もしも応えてくれるなら、この夜に爪弾く弦を止めないで――』
(「……!!」)
梓はくすぐったくなるような感情を覚えつつ。捧げる音色は花開く。
告白ならば、盛大に。一目気にせず静香は抱きついて、
「好きですよ、梓さんのこと」
「俺もだ」
これからもよろしくとハグを返して。
聖夜に生まれた恋人たちへ、祝福と、ちょっぴり嫉妬を含んだ軽い絡みと。祝う様に紙吹雪散らせば、舞台は静かなSEと共に衣替えをしてゆく。
PA席で、ハゼリが最初に武蔵坂軽音部の世界観構築してゆく。聖夜の夜を彩る輝きの元、ぽつりと浮かぶドラムセット。
ワイルドな装いの錠がにやりと笑み零しながらスティックを回し、
「さぁいいライブにするけぇの」
振り落ちるスティックと合わせ、ハゼリの指先が基盤の上を滑る。はっとするほどの爆音とライトの輝き。
「限界まで盛り上がろうぜ!」
「今年のクリスマスもはっちゃけて行くわよー!」
葉月がモニタースピーカーの上に飛び乗って。指を天高く突き上げながら煽りを入れて。紫苑は弦を跳ねあげたあと、打ち込む重低音。どっと湧く会場。結理はフリに合わせて歓声あげて。
「きゃー、かっこいいー♪」
ゆうの声援、冷やかし混じりに。でも魅せるステージングに心掴まれているのは否定できなくて。
沙汰の傍で、啓は知っているはずのメンバーの初めて見る顔をステージに見て、ぼんやりする場面はあるものの。
「思い切って楽しんでっかー!?」
真昼が音唸らせて。競う様に絡みついた、葵が奏でる六弦。優しげな微笑も、鮮烈な指先に刻まれる音が危い魅力を引き立てて。
暴れ方、というものがよくわからないけれど、コールには懸命に応じる啓。
ライブが初めてで緊張していた凪流だけれど、今は笑顔を浮かべて。軽快に叩くモノクローム。朋恵と背中を預け合って、高くショルキー掲げて。同時に相棒振り下ろしながらくるりと回り。別れゆく二人の間から葉月が飛び出し、力強い歌声響かせ。
多勢いのあった前半がふいに落ち付いて。スポットの当たったのは蕾花と理央。朋恵の声に、そっと重なるコーラス。
手にしたスレイベルで軽くテンポを取りながら、蕾花の柔らかなハーモニーを歌いあげれば。肌で感じる一体感に感動しきりで。
そんな蕾花と理央は目が合えば、魅力的な微笑み返し。自慢のハスキーボイスで荘厳を表し。
三人のサンタさんが歌いあげるものは、聖人の誕生を祝うマドリガルのよう。
「かわいらしい冬の妖精の為にいっちょ頑張りましょうか」
たっぷりの微笑浮かべ、雪之丞のサックスの麗しいメロディーが、コーラスの艶を引き立てるように。凪流の麗しいメロディー重なって。
多楽器、多声だからこそ出せる深みと遊びに目が離せない。
「凄い」
その一言だけに重みも増す。結理は新鮮な感覚に目を輝かせ、どっぷり溺れる。
「一気に盛り上げるぜ!」
真昼のカスタネットが響き渡って――音の塊をまるで打ち合っているみたいに、テンポよく、タイミング良く、ソロをまわして。
最後は錠の骨太のドラムソロ。空気からも伝わる音の力。
ふと――まるで最初からそこにいたと知っていたように、錠の目がこちらを向いて。視線重なって。
結理は手を振る。そして力いっぱい応える。錠は嬉しくなっていつもより多くスティック回し。
会場のテンションも最高潮。最後の大サビに迎う間際にて。ゆうはもうノリノリで。周りのみんなと盛大にモッシュ。
「仙景くんもさぁ、此方へ!」
葵がその手を差し出し。
「……あ、仙景サン呼ばれてるぞ」
楽器はてんで駄目で音感人並みなので即興でハモッたりできないけどと、呼ばれるとは思っていなかった動揺している沙汰を、啓は背中を押して送り出そうと。
声変わりしたばかりの声で沙汰はユニゾン、初ライブ。
「ハレルヤ! この歓びの日に、感謝を!」
葉月はやり遂げた顔で。声が付きるまで感謝を叫んで。
キャノン砲から降りしきる、金銀テープの雪の中。下北沢のクリスマスは盛大にファイナルを迎えて。
●後楽園
「それでは、まあ、派手に行きますか。――闘ろうぜ、喧嘩をッ」
殺気立つ会場。昌利は高らかに会場全体に喧嘩を売りこんでいて。恢は仁恵からライブに行こうと聞いたはずなんですが。
「サタンが来て、悪い子はいぇーがーってするんでしょう?」
「クリスマスに来るのはサンタだ」
鉄パイプで頭をホームランしようと振りかぶる仁恵と、影の巨人で威力を相殺。回り込んで蹴りを繰り返す恢。
しかし流弾が水を差す。
「とりあえず全員ぶっ倒せば勝ちなんでしょう」
「仕方ないな。きみを殺すのはこのあとにしておいてあげる」
背を預けるのは、君。踊るように歌って殴って、即興のギグも悪くないから。
マイクも上着も捨て去って闘気開放する昌利へ、エニエトナカイの引くソリに乗って、ミスリルサンタ激突だ!
気合の入った中腰で、タンバリンを軽快に叩きつつ。さぁ怖れ戦くがいいと言わんばかりにぐるぐる回って祭り上げる2人。なんという精神攻撃!
しかし昌利は怯まない、漲らんばかりの闘志で殴りかかる!
「反抗的な態度にエターナルメリークリスマスである」
「しんぐるへーるしんぐるへーる鼻がなるぅ! 今日はー一人でクリスマスゥ! ヘイ!」
ゆるーい表情で受けて立つエニエとミスリルへ、
「ロンリークリスマス上等、戦える場所があるからなァ!」
「さあ、ぶっ倒れるまで戦り合おうじゃねぇか!!!」
目と目があった烏衣と梵我。目の前のバトルも巻きこむ勢いで突撃。結果エニエとナノナノ・ジェラルミン、烏衣と梵我に叩かれ星になる!
「やっぱ乱戦ってヤツはこうでなくっちゃな!」
「お互い倒れるまで殴り合おうぜ!」
ミスリルの百裂拳でたらたら頭から血を流そうとも楽しげな梵我。烏衣も目を輝かせ、改めて梵我へと挑戦状叩きつけて。
「はいなー。昌利さんの仇打ちですよー」
対戦叶わなかったかとちょっぴり残念がりつつも、フィズィは丸いボックスに入ったフライドチキンを抱えながら、欲しけりゃ倒してみよとばかりに見せつけて。
ミスリルと閃光百裂拳で打ち合い開始。今回はフィズィに軍配。
「一年間でどの程度になったのか、確認がてら戦わせて頂きましょうかね」
混戦の中を泳ぐように歩き、榮太郎は強そうな人を探して。紳士なたたずまいのサンタに扮した里桜と目があって。
「是非、御相手願おうか」
「いざ、尋常に──勝負!」
互いに笑み浮かべ、放つは自慢の剣技。喧騒の中、刃ぶつかり合う透明な音が響いて。
里桜は居合斬りにて勝利を手に。
梵我を地獄投げで倒し、勝利をもぎ取った流希。見えた頂点に朗らかな高笑いを。
散るなら相討ちも悪くないと笑み零した時、横を走り抜けてゆくトナカイ、全力で人混み目指し!
そしてカーンと流希の後頭部に炸裂したのは、パイの領域をセンセーショナルに凌駕したカチカチ真黒な一品。卓上競技部の皆さんのメリーなパイの骨肉の争い勃発!
「去年の恨みを晴らしてやる」
黒い笑みを零すトナカイ鷲司。へそ出しミニスカサンタさんの景が、愛を込めて黒パイもういっぱーつ!
「いっけー、景ちゃん!」
彩希は色いボア付きの赤いポンチョとワンピースという可愛い格好で。黄色いパイスローイン!
「さて、標的は……」
しかし、一眞サンタの目から見ても明らかに鷲司をふるぼっこする流れ!
「にーさま! 聖夜の尊い犠牲になってください!」
朱梨は某先輩の意志を継いで纏うモミの木の電飾輝かせ、激辛パイ主砲発射っ!
振りかぶった景をかすめるパイの残影。椿からまさかの襲撃!
「あぁん!? テストの点数が悪いとか、去年の二の舞じゃねぇか! そんな(頭の)悪い子はしまっちゃおうね!」
ブラックサンタ、笑顔もブラック!
「出来ない子じゃないもん、勉強はし――ひゃー!?」
飛び散る目玉(マグロの)。DHAタップリ、パイまでブラック!
お隣で巻き添えくらった詩音は、ハンカチで顔を拭いた後、やり遂げた顔つきの椿を、無言で微塵の容赦もなくパイの中へ埋めてしまわれた、ああ倍返し!
鷲司相手だったら、もう紙皿だけでもいいんじゃない。一眞、拳握りしめ助走を付けて突進。
「これは馬鹿には見えない透明なパイなのデース」
囲まれようとも立ち向かう鷲司。死なばもろとも、間際で蛇変身、これ作戦ですから!
彩希が投げた辛子パイが、蛇の真上を通りぬけ、一眞の顔へ。
無傷。作戦勝ちに歓喜した、鷲司でしたが。
「……トドメです」
詩音から、容赦なくゲテモノパイがプレゼントされましたとさ!
将平は手加減なしの抗雷撃。肌の上を走る電光、七緒は楽しげに紅広げ。
「お礼は炎でさせて貰うよ―― ぶち燃やす!」
あの雷光が霞むくらいに破裂する。
「こうでなくちゃな、あったまってきたぜ」
身を焦がす力に高揚している将平。不気味な程ニコニコする七緒。
「見てみるか、高みってやつ」
「……高みは雷の領分だと思うのだけどね」
打ち合うのは閃光百裂拳。膝を付いても構わず七緒はにっこり。
「大事な相手ほどガチで殺り合いたくなるンだよね。殺る気で行くよ、相棒」
そう艶やかに笑う時兎。聡士は気分が高揚するのを感じながら、
「ははっ、もちろん! 派手に殺ろうよ、相棒!」
弦と剣が交差して。赤と緑がきらきら光る。
聡士が鮮血を飛ばす。
「そういや…聖夜だっけ」
思い出したように、手加減無しに抱きつかれ。さすがに聡士も倒れるしかなかったけれど。
「メリークリスマス、聡士」
「メリークリスマス、時兎!」
立夏とライル、徹也と穣で、奢りを賭けたバトル勃発!
「では、戦闘を開始する」
「ウッス、胸借ります!」
深々と礼をし合う徹也と穣。トナカイの角突き合って。
「わいのプレゼント受け取ってやー!」
「悪い子はいないかっ」
立夏は袋からオーラの弾を大解放。日本のクリスマスではこう言うのがセオリーなのだろうと、ライルはサンタクロースの意地と誇りを賭けた砲弾プレゼント対決!
「……トナカイは脚力のある動物であると認識している」
尻尾をふりふりさせながら、無表情で徹也鋭い蹴りを打ち放つ徹也。大変、穣はガチガチに緊張してるあまり、棒立ち!
「むっ。動きを読まれたか」
まさかの被弾を装っていますが、地味に庇ってます。言えないけど!
「へへ、こういうクリスマスも楽しいもんやねんな!」
立夏は影を使い、クリスマスケーキスローイン!
穣に炸裂。目がー目がーとクリーム目に入ってもだもだしていたら、華麗に裏拳立夏の顎に。
「さ、サーセンッ……!!」
クリーンヒットの予感にぷるぷる震え慄く穣。立夏さん、奢り決定。
白黒のミニスカサンタの密と黒サンタの八重華で殴り愛のクリスマスデート。特別なルールで。
「今日は君の為だけに……拳を振るおう。光栄に思いたまえ」
クールな物腰で言い放ち戦闘を仕掛ける八重華。喉元潰す勢いで振るわれるロッドをギリでかわし、
「この程度の攻撃、避けられるわよね?」
挑発たっぷりに心臓目掛け魔弾零距離発射。
殺すつもりだけれど、愛故に。
密は八重華を見上げて落胆の色。
「メリークリスマス」
片目瞑って舌をぺろり。
アルベドは歌姫巫女姿で聖夜を讃え。綻ぶ白き花弁を逆巻かせながら、白銀の一閃。
「お膝をおつかせしても宜しいですか?」
首筋に浮く血もそのままに、司は紳士な態度を崩さぬまま。振るうアーネスティアの軌跡は花を包み込むヴェールの様に朱を引いて。
「血の赤も……全てを白に染めてやろう……!」
司に刻む純潔の衝撃。邪魔する様に届いた流れ弾、矛先で絡め取り弾き返し。
「可愛いお嬢さんを、危ない目に遭わせるわけにはいきませんからね」
「水を差されたな……」
アルベドは不服そうにむすっと拗ねた。
混沌とした中でも確かにある、寄りかかれる存在というのはありがたく、そして暖かいと心葉は思う。
「一葉、ボクの背中を任せられるのは君だけだ。頼むぞ?」
「ふふ、勿論任せて下さい、私以外に誰が貴女の背中を守るんですか」
二刀流のクルセイドソードを手に、トナカイのパーカーを着てにこやかに笑む心葉。
わざわざ特別な日に戦いの場に赴くのは、絶対の信頼を寄せ合っているから。
「こんな大暴れのクリスマスも有りですよね」
「ボク達の強さを、見せてやろう」
目が合えば自然と刀を交えるのが自然な流れ。
「我流・渦雷翔!」
久遠は攻撃を受け止めてのカウンターで反撃を繰り返し、霊犬・風雪と駆け抜けて。
そこへばーんと扉開け放つ周。実は会場間違えましたーなんて今更どうでもいい。そこに熱いバトルがあるならば。
「YA-HA-!! ちょおっと時間工面に手間取っちゃったけど!」
反対側の扉からは七がうきうきしながら登場。
「という訳でいざ、尋常にしょーうぶ!」
「望むところだ!」
「いかなる場でも、有利な状況を作る鍛錬――気を抜くなよ風雪」
まさかの三つ巴、しかし楽ししいのも事実。
灯は黒陽とミニスカサンタ。十織と九紡は揃って白い真ん丸な着ぐるみ姿。
「九紡を頭にのせりゃ――雪だるマンの完成だ!」
「せいっ」
ちと動きづらいがガード力は上がってる気がすると眩しい顔している十織を、灯は微塵の躊躇もなく押してみる。
あっさりころーん!
「さあ、後楽園のみなさまに一撃必殺のプレゼントを配りに行きますわよ!」
得物を思いっきりクリスマス仕様にデコラティブにして、雪崩れ込んできた赤と黒のサンタたち。溺愛している弟の織久と一緒でキャッキャッ浮かれまくりのベリザリオ。
「アツイプレゼント、しっかり受け取ってな」
レーヴァテイン繰り出す十織。織久は黒炭とジャガイモが入った袋をブン回し、お返しレーヴァテインでほっこり仕上がったポテトもプレゼント、フツーの火傷に注意だぜ。
乱闘久々で、灯もテンション高め。
十織の黒い六花の援護と息もぴったり、やりたい放題。突っ込んできた周と七も加わってカオスな戦地。後に累々と屍が織久の前に。
「ふふー、ここで会ったが昨日ぶり! ひとつ勝負と参りましょう」
黒い笑顔で仕掛けてくる千巻と十重に、チーム組んで突撃って話じゃなかったと漣香戦慄。
「拳と拳で友情を深めるって前から楽しそうだなって思ってたのー」
「いやまじでちろるさん殺る気じゃんなんつー目してんだよ」
嗚呼、千巻の笑顔がツリーよりも眩しい。
「うわああんもうやだこの女子力ギンさんヘルプ……って知らん人ボコってるぅ!」
「漣香は頑張れよー」
銀は寄ってきた久遠を倒し、高みの見物、超適当。
数人伸した時、銀は背中から重戦車並みの衝撃が!
「いい一撃入れやが……ってまてやアサお前かよ。くっそやり返すぞれ……」
しかしビハインドと共におねんねしていた!
「折角なので一緒に遊びましょう」
顔へのお気遣い感謝ですと十重は、見敵必殺とか素敵な単語が書かれた札大盤振る舞い!
悪態付いてるけど、正直楽しい。銀は微妙な表情で誤魔化して。
そして、レキは周が華麗に弧を描きながら、やり遂げた顔でサムズアップした姿を見送りながら、気持いいほど潔い散り際、しかと目に焼き付けて。
「我らクリスマス戦隊リア充じゃーブラァッ! 五つの心一つに繋ぎ燃上がるでホーリーナーイ!」
ブルーサンタ勇介が銀の紙吹雪を吹かせ、グリーンサンタ健がリースに見立てたリングスラッシャーを手に翳し。ピンクサンタ陽桜と、トナカイレキ、仲良く可愛いポーズ!
そしてブラックサンタ悟、仁王立ちで一等星指差しキメッ。Chaserの皆さんが結成したクリスマス戦隊、普通にレッドがいないがまぁいいか。
「めりーですとろい!」
「アルニカサンタとうじょうだぜ!」
対するはAtelier ARNICAの皆さん。くるみとめいこはおそろいのミニスカサンタの衣装で可愛らしく。源太郎は半袖ハーフパンツのサンタ衣装で元気いっぱい。コテコテコーデなトナカイさんの檀が、ツリーより目立って。
「檀君のトナカイ、凄いね! 俺もこれくらいすればよかったかな?」
千鶴の言葉に、檀は心の中でちょっぴり照れていたら、律は冗談交じりに笑いながら、
「ダン君のそれリアルすぎてちょっと怖がられますって」
「……そうですか」
床にのの字を描きたい衝動にかられている檀。実は可愛らしくしたつもりだったなんて今更言えないので、
「……リア充さんに恨みはありませんが爆発させるのがお約束らしいので」
檀は悲しみを炎に乗せて、くりすますふぁいあー!
悟は負けじとくりすますきーっく。
「メリーデストロイ! リア充のみなさんには、サイキックのプレゼントです!」
折角のお祭りですからと、敬厳はニッコリ笑って天使の輪。健も七色リース光輪アタック。ドーナッツ混じってますが、食べたらいいと思うの!
「よい子も悪い子もサンタさんからプレゼントなの♪ たっくさん受け取ってね!」
陽桜はトナカイもふもふぱんち。鬼神変で普段より多くもふもふしております。
そんな可愛いもふもふに(精神的な)傷を抉られる檀。
「全力支援するよ!」
「私たちが回復するから大丈夫だよっ」
ハモる千鶴とめいこ、しかし歌うフレーズですとろい☆ 爆発させれば燃えてリア充、痺れてどっかん!
「めりーですとろい! 炎のように熱い聖夜をお届け☆」
燃える(物理的に)戦いを楽しみましょと、イイ笑顔で龍砕斧振るうくるみ。レキは熱い聖夜の中ばたんきゅー。
「勇介、決め技行くぞ! クリスマスの希望の象徴、モミの木キック!」
「冬の到来を告げよ、六甲颪キック!」
勇介と健の連携ご当地キックに、鉄壁スパッツが威力を発揮!
悟と陽桜は連携技、律と源太郎迎え撃つ構え!
「トナカイあたーっく☆」
「キャンドルアターック!」
「リア充ばくはーつ」
「とにかくぶっとべ!」
悟キャンドル燃え尽きて。祝いの言葉を解き放ちながら倒れる律は、最後に台無しにする呪いの言葉は忘れない☆
「ぶっちゃけ爆破するのに理由はないんすけどね」
そんな対戦も、仕舞には一人になるわけですが。
「リア充のみなさんは、すてきなパートナーさんを大事にしてあげてくださいね!」
天使な笑顔で、敬厳が美しくまとめてくれました!
「これが果し合いってやつか?」
「その面は一度殴ってみたいと思っていたゆえな」
物騒に睨みつけるキィン。有無は飄々して。
入り混じる感情をぶつけたい有無は、虚を突くべく地を滑る様に乱戦に紛れ、
「散れ!」
「そんな奴だから好きなんだ。だが殴られるのは、断る!」
吹き上がる炎の間を抜けて、キィンは射線をクリアーにしながら、零距離まで踏み込んで。あとは、互いぶつけ合うのみ。
弾ける黒紅の残影。
「オニョレェ――」
狂気じみた声で呻くものの――潔く心に何かのケリを付けたのか、
「飲み物を奢る約束だろう」
混沌より身を翻して。
九里は濡烏を指から滑らせながら、眼前へと大胆に。間合い諦め身を捨てる覚悟を見せる華月へ、擦れ違いざま横目にニィと笑って
「美しい髪に御座いますねぇ……僕が勝ったならばひと房頂けませんか?」
華月は軽く目を細めると、
「あら。女の命を欲しがるのだから、あんたも何か差し出す覚悟はあるんでしょうね?」
髪に結わえた銀鈴揺れて。柊の葉、凛と舞う。
「……ま、悪くはなかったわ」
「矢張り貴女は油断なりませんねぇ……お見事に御座います」
澄ました表情、しかし口元は嬉しげで。九里は肩を竦めて見せた。
共闘、ではなく。
ゆらり炎を纏い構え取った紋次郎へ、草灯は開始早々気迫を込めて、顔面目掛けてストレート。紋次郎も同じく拳固め真っ向勝負。
打ち合いから、虚を突き飛んできたのは鋭い蹴り。紋次郎はフェイントに唾を吐き。
喰って、喰らって。背後を取った草灯、紋次郎の背に鮮血踊る。
「また遊びましょうね?」
勝ち負けどちらであれ、経験が己の力になるから。茶目っ気たっぷりに笑う草灯へ、紋次郎は参ったと笑み返し。
「手合せ有難さん。また機会ありゃ頼む」
昴が爆発的な速さで間合い詰め、振るう雲耀剣。それを黒斗が低姿勢で横っ飛びしたと思いきや、急制動を易々とやってのけ、紅蓮撃ち。しかし動作の合間を突く、昴の黒死斬が的確に腱を切り裂き。
以前は断られたが、今なら――昴は気分の昂揚に任せて告げる。
「俺の相棒になってくれ」
色気もない状態での申し出。それでもその言葉が嬉しくて、黒斗に自然と笑みが零れる。
「相棒、か。私程度で釣り合うとは思えないけど……その信頼に応えられるよう、頑張るよ」
まずはこの勝負で、君を倒して。
「クリスマス! それは……血で血を洗うBattleを繰り広げ、セイタンの誕生を祝う儀式!」
「さーて、騒ぐぞ騒ぐぞ騒ぐぞー!!」
無邪気に笑うラーズイール。楽しめればそれでいいウサギ。無理やり誘われた感が否めない空真は呆れた様に溜息つきながら、
「あのな、クリスマスってもっと普通にパーティとかするもんだろ、それをなんで……」
とか言ってたら、
「そこな方々。いざ尋常に、勝負願おう!」
武闘集団【吉祥】の部長・尚竹が、サンタ服に日本刀の逆二刀流という装いで正々堂々、しかし独断でお三方に戦を申し込みされたので、独断で受けて立つラーズイール。
「うおっ、マジかよ!? 血の気多すぎるだろ、ったく!」
やるしかなくなった空真。
「皆物好きだよな……まァ、俺もその一人な訳だけど」
同じくちょっぴり呆れ気味の聖太は、仕方ないので援護射撃といきまして。次郎はアルパカサンタと化してレモン牛乳で気合いを入れる。
「最初は相手の出方を見……」
「推して参る!」
「あの胡散臭いサンタ(尚竹)に続けー!!」
「って、おい! 言うより先に突っ込むな!」
聖太が提案する前に、「作戦? そんなもんナンセンスだぜ」状態で突っ込む二人。
「ハッピーメリー、クリスマース!」
ラーズイールのDMWセイバー。尚竹が雲耀剣をお返しして。慧樹に螺穿槍を捻じ込まれても、ウサギは楽しげに飛び跳ねながら鬼神変。
「ぱっかぁ~」
次郎はご当地ビームで空真の側面を狙うなり、基本は逃げまわ――ではない、一撃離脱の戦法!
逃がさぬよう駆け込んで、空真は鋼鉄拳で次郎を地に沈め。
近場では、朱那は可愛いサンタコスに身を包み、拳打ちにやりと笑い。
「か弱い乙女相手だからって手加減なしな?」
首傾げる才葉、供助は苦笑しながら絵本チックな魔導書取り出し、
「お前手抜いたらむきーってなるだろ」
「うん! シューナ強いから手加減なんか出来ないや」
才葉はトナカイもふもふ鬼神変で先制!
「へへー、トナカイパーンチ! ってなー!」
拳とガードの応酬。供助は防御しながらニヤリ笑い、
「テストの点が芳しくなかったお前らに、愛の補習だ、受け取れや」
戦場にハモる、「補習は嫌だー!!」
本日一番の精神ダメージを受けた才葉。断固拒否を拳に乗せて、朱那の炎血の証たるレーヴァテイン。
「あーあ……ひっでえクリスマス」
空真は大の字になって、愚痴を漏らすけれど晴れやかな笑顔で。最後まで立っていた聖太にサムズアップ。
朱那は拳を合わせた二人へ。そしてこの会場にいる同じ学園の仲間たちへ。
「メリーメリークリスマス! 今後ともよろしゅうに!」
結局みんな傷だらけになって床に座り込んだけど、この充実感に笑顔は消えない。
作者:那珂川未来 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2013年12月24日
難度:簡単
参加:94人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 6
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|