クリスマス2013~聖夜に響くウェディング・ベル

    作者:雪月花

     クリスマスまであと少し、武蔵坂学園の校内もなんだかそわそわした空気。
     そんな頃、学園の一角に突如謎の建物が出現した。
    「あれ……この間まで、あんな建物なかったよね?」
     通りすがりに気付いて目を丸くした矢車・輝(スターサファイア・dn0126)が、遠巻きに建造物を見上げている。
    「私も全然気が付かなかったわ。なんなのかしら?」
    「いつの間に建ったんだろうなぁ」
     同じように集まってきた生徒達も、不思議そうだ。
     ぱっと見洋風の立派な建物で、上の方には鐘楼もある。
    「ん? どうした、賑やかだな」
     そこへ土津・剛(高校生エクスブレイン・dn0094)が通り掛った。
    「あ、剛さん。あの建物何かなって、みんなで話してたんだよ」
     輝が謎の建物を指差すと、剛は訳知り顔で口を開く。
    「あぁ、あれか。あれはな――」

    ●魔人生徒会のクリスマス企画
     少し前、武蔵坂学園の何処かで魔人生徒会の面々が集まっていた。
    「今日はこれで全員でしょうか」
     素性を隠した生徒が、同じく正体不明の魔人生徒会役員を見回す。
     ガチャ。
     そこで急にロッカーの扉が開き、黒尽くめの人物が出て来た。
     赤い目が光るフルフェイスは猫耳付きで、金属パーツが施されたボディスーツにも尻尾が付いていて、黒豹を思わせる。
    「そ、そんなところから……」
    「狭いところが好きなのかな?」
    『今日はこれで全員のようですね』
     他の役員が様々な反応を見せる中、シルエットで女性と分かる黒豹さんは、文章の書かれたスケッチブックを見せて意思表示した。
     今日の議題はクリスマスのイベントについて。
     彼女は、スケッチブックにサラサラと流麗な文字を綴っていく。
    『チャペル風結婚式場でのクリスマスパーティー、および模擬挙式体験の計画』
     文末には可愛らしい黒豹のような、黒猫のようなキャラクターが前足を挙げている絵。
    「カップルの方合同で、模擬結婚式を行う感じでしょうか?」
     他の役員が尋ねると、黒豹さんは猫耳付きフルフェイスに浮かぶ赤い目を光らせ、尻尾を揺らした。
     彼女の提案を元に、役員達はイベントの内容を詰めていく。

    「――そして建ったのが、このチャペル風の結婚式場という寸法だ」
    「そ、そうなんだ」
    「運動会の時、最終競技でMUSASHIというアトラクションがあったろう? あれと同じで、クリスマス限定の建物なんだそうだ」
     因みに、イベントが終わった後は跡形もなく撤収されるという。
    「そうなんだ……」
     魔人生徒会の力に驚嘆する輝。
    「……えっと、じゃあこの結婚式場では、模擬結婚式を挙げられるんだね」
    「あぁ。参列者は基本正装だが、クリスマスだからサンタ服などの衣装でも構わないそうだ。衣装は貸し出しもあるから、持っていなくても心配ないという話だ」
    「なるほどね。カップルや参列者が沢山いても、スペースは充分そうだし……そうだ、音楽の演奏者として参加するっていうのも、アリなのかな? ピアノやヴァイオリンなら、少し覚えがあるんだけど」
    「お前は、そうだったな。確かに参列する以外にも、結婚式らしく余興で盛り上げたり式の進行を手伝ったりするのも、良い経験になるだろう」
    「剛さんもどう?」
    「いや、俺は音楽はあまり得意じゃなくてな」
    「そっか。それなら……剛さん背が高いしスーツも似合いそうだから、もしお相手がいなくてもウェディングドレス着てみたいって女の子がいたら、エスコートしてあげたら?」
    「え……」
    「うん、じゃあ24日の合同結婚式の時間は決まりだね」
     悪戯っぽい笑みをにっこりに変えて、輝はまた後でとその場を去ってしまった。
     取り残された剛と他の生徒達は顔を見合わせる。
    「……そういう需要はあるのか?」
     首を傾げつつも、参列することにしたようだ。

     幸福に満ちた聖夜に誓い合う恋人達と、それを祝福する者達は、きっととても温かく輝いているだろうから。


    ■リプレイ

    ●幸せの傍に
     衣装部屋で優歌は普段はお洒落と縁遠い新郎にスーツ等の助言をして、彼らを笑顔で見送った。
     やがて、参列者が待つ式場の扉が開く……。

     苺の母特製のドレスは、手袋もベールもケープも赤一色。
    「わっ……サンタさん。みたい、クリスマス だから?」
    「何もサンタ仕様にしなくてもいいではないですか」
     驚く銀嶺に、苺は遠い目だ。
     でも、サンタさんからの贈り物はサンタさん。
    「ん、離さない。死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り、だよ、花嫁さん」
     そっと誓いのキスをして抱き締めた。

    「で、えっと、この後どうするんだっけか?」
    「ひでーなこのへたれ具合」
     紫桜の様子に、雪の結晶模様のレースが彩る白いドレスのシュネーは引きつり笑いを浮かべた。
     ダメ出しの嵐の中、キス代わりに頭を撫でて。
    「練習だから、な! でもシュネーやっぱり小さいよな、改めて」
    「……あん? 最後の最後で小さいだぁ? いい加減にしろこのどへたれ!」
     白タキシードの青年は宙を舞った。

     純白のドレス姿の緋世子はまるで天使。
    「お綺麗ですよ、だからこそ……」
     何処かに閉じ込めて誰にも見られないようにしたくなる。
     リオンの囁きに、緋世子は目を瞬かせ「俺は簡単に壊れるような女じゃないんだぜー! どーんと来い!」と笑う。
    「リオン、俺を幸せにしてください! ……う、うにゃー!やっぱ練習でも恥ずかしいーーー!!」
    「……ええ、いつかその時が訪れる時が来たら、私の手を取って下さいますか?」
     彼の手を握る緋世子の手に、唇が触れた。

     慣れないタキシードへの不安は、マリアベールと純白のドレスを纏う向日葵の姿に吹き飛ぶ。
    「……綺麗だ」
     篝の声に彼女は笑む。
    「私、思わず藤梶さんのことをお姫様だっこしたくなっちゃいましたの」
    「お前らしいな。でもそれは駄目だ」
     と向日葵を抱き上げた。
    「ふふ、藤梶さん、降ろして下さいまし!」
    「幸せの重みってやつを実感しても、いいだろう?」
     道中、向日葵は一生離さないで下さいと願った。

     頼みを快諾し聖職服を着た剛と共に待つ、タキシードの桐人が目に入る。
     赤面しつつも辿り着いた花夜子の、純白の美しいドレス姿。
    「綺麗だ……」
     彼女は俯きブーケで顔を隠す。
    「桐人も……カッコイイ」
     剛の先導に「誓います」と宣誓し、優しいくちづけをした。
     ぽろり、腕を組んだ桐人が涙を零すのを見て、花夜子も貰い泣き。
    「ずっと一緒だよ」
    「ずっと一緒、ね」

     花咲く白いドレスを着た藍を姫抱きに、真二が現れた。
     黒タキシードに髪型も決まっている。
    「ははは、恥ずかしいです」
     赤面した藍の、普段と違う雰囲気に「あぁ、本当に綺麗だな」と思う。
    「誓うぜ! オレ、紅竜真二は藍を誰よりも愛するとな!」
     室内に響き渡る宣誓に、藍も頷いた。
    「わ……私も誓います、誰よりも真二を愛し、いつまでも一緒にいる事を」

     ミニ丈ドレスの詩織に見惚れ、白いタキシードが眩しい深景は手を取る。
    「何があっても、俺は君の傍で君を幸せにすると誓います」
    「貴方と共に幸せになる事を、誓います」
    「クリスマスプレゼントだよ。安物だけど、詩織のその場所を予約させて」
     指に輝く指輪に、詩織は抱きついた。
    「ずっと前から予約済みなんだから……返品不可、よ?」
    「勿論。俺には詩織だけだから」
     誓いをキスに込めて。

    「な、中々似合っているじゃないか」
    「乃亜ちゃんも、ドレス姿、似合ってる。奇麗だよ」
     笑顔の詠一郎は照れた。
     白いタキシードとドレスの二人は、永遠の愛を誓うキス……頬の温もりに、乃亜は目を開いた。
    「唇への誓いは、本当の結婚式まで、とっておこう……ね?」
    「そ、そんなこと言って後悔するなよ? ……だ、旦那様」
     今に見ていろ、と乃亜はリベンジを誓う。

     燕尾服姿の伶のサプライズで参加したにょろは、瞳を揺らす。
    「どうですか? その……綺麗、ですか?」
    「ええ、とっても似合っていて普段よりも数倍も綺麗ですよ」
     Aラインの純白のドレスは、美しさを更に引き立てた。
    「いつか、本当ににょろさんとこんな感じに、素敵な結婚式を挙げたいですね」
     伶の笑顔に赤面したにょろは、腕にしがみ付き「はい」と小さく頷く。

     明も梓に突然誘われ当惑していたけれど。
    (「あの人が私を支えてくれているように、私もいつか、彼を支えてあげられる女性になりたい」)
     胸に決め、エンパイアラインのドレスに身を包み梓を見据える。
    「不束者ですが、これからもよろしくお願いします。それと、メリークリスマス、梓」
    「……こちらこそ、これからもよろしく頼む。メリークリスマス、明」
     梓も、彼女を支える決意をした。

    ●厳かに、華やかに
     黒タキシードの殊亜の傍には、純白のドレスにティアラを戴く紫。
    「嬉しい時も、悲しい時も、どんな時でも、共に過ごす事を。離れていても心はいつも隣にいる事を誓います」
     もふもふする時は独り占めするかも、という呟きには紫も笑う。
    「死が二人を分かつまで、ずっとずっと一緒にいることを……誓います」
     ドーナツ型の指輪にいつかを楽しみにして。
     心の準備後のキスは、長く長く続いた。

     タキシード姿の鷲司は、髪に白い花咲く、膝丈で引き裾付きのプリンセスラインを纏う彩希に見蕩れる。
    (「やっぱりオレの恋人は綺麗で可愛いなぁ」)
     金と銀の薔環を交換し、誓いは本番に残して。
    「もうすぐ卒業・進学ってなるけど、彩希を幸せにできるように努力していくよ。だから、これからもよろしく頼む」
    「私の方こそ、どうぞこれからもよろしくお願いします」
     微笑んだ彩希は鷲司の唇を奪った。

     Aラインの裾を引き、緋織は眞白にベールを上げて貰い顔を上げる。
     白の燕尾姿で笑む彼は眩しくて。
    「……やっぱり、私が着ると変?」
    「変なことなんてあるもんかよ。その……あまりに綺麗で、感動してんだよ」
     照れた目を逸らす眞白に、頬が緩む。
     いつか本当になりますように。
     ずっとこの人と共に歩むと、キスに願いを込めて。

     ミハイルは、教えに従って結婚式の手法を香澄に伝えた。
     賛美歌が響く中、二人は頭上にはミトラという冠を戴いている。
    (「ドキドキしちゃいますね……」)
     冠を被った彼はいつも以上に凛々しくて、自分もお姫様になった気分。
     香澄は葡萄酒代わりのジュースを飲み交わして。
    「ミーシャ、今日はありがとう」
     寄り添いながら耳元で囁いた。

    (「解ってる筈なのに、すごく緊張します」)
     肩も露なAラインの純白のドレスを纏った律希は、可愛さより美しさが勝った。
     彼女をお姫様抱っこした正流の白いタキシードには、随所に鎧を思わせる刺繍入り。
     誓いの印の指輪は橄欖石を戴き、正流の指輪には金剛石が輝いている。
    「何があっても……離れませんからね」
     密やかに眼鏡を外し、花嫁にくちづけた。

     蒼薔薇のブートニアが飾る白タキシード姿の討真は、何処か落ち着かない。
     ぎこちない御凛を揶揄うのも今日はおあずけ。
     ビスチェにAラインの純白のドレスの胸元とベールには、薄紅色の薔薇が咲く。
    「言っとくがこれは本番用の奴だからな」
     頭文字入りのプラチナリングを手に、彼は言う。
    「御凛の両親に挨拶行った後、間違いなく使うけどずっと嵌めておけよ」
     彼女は赤面した顔を上げられなかった。

    「君を守り抜くとも幸せにするとも誓えない不甲斐ない私だが、それでも共に生きて欲しい」
     オールバックにタキシードのヴィルヘルムが告ぐ。
    「順花、君は私にとって唯一無二の存在だ。だから最期のその瞬間まで共に在ろう。共に歩もう」
    「俺は幸せにできるとは誓えない。でも、この魂が朽ち果ててしまうまでは共にありたい」
     チュールとサテンのドレス姿の順花は応えた。
    「最期は俺が見届けたいし、最期まで貴方と共にありたい。だから、俺を選んでくれてありがとう。ヴィル、貴方の事を愛しています」
     腕が、唇が順花を包む。
    「私を選んでくれて本当に、ありがとう。愛してる」

     黒いドレスに薔薇の髪飾り。
     千景は薔薇を飾った黒タキシード姿で微笑む瞬を見詰める。
    「俺は今幸せだよ。だから誓う。俺は千景を守り続ける。例えどんな困難が待ち受けていても、必ず助けに向かう。……なんて、俺らしく無かったか。でも、それぐらいの気持ちなんだ」
    「えぇ、私も幸せ……。だから、私も誓うわ。この先ずっと隣で瞬を支え続ける。それに、二人ならどんな困難にも立ち向かい、乗り越えることが出来るわ」
     背伸びのキスに、愛してるよと一番の笑顔を浮かべた。

    「雪音ちゃん、凄く綺麗」
     ふわふわのドレスを着た雪音に、音弥は感嘆する。
     あぁ、やっぱりこの子を好きになって良かったと。
    「音弥もかっこいい、の」
     いつもかっこいいけど今日はもっとかっこいい。
     うるっときた音弥を前に、笑う。
     式の手順を知らず助けを求める彼女の視線に、ひとつずつ小声で教えながら、懸命に実践しようとする横顔を愛おしげに見詰めた。

     ホルターネックにマーメイドラインのドレスは露出が多くて、新はドロシーから目を逸らす。
    「でも凄く似合ってるよ。綺麗」
     式の流れを聞く彼に、教えてあげるドロシー。
    「死が二人を別つまで、かぁ。誓いません。だってそれじゃ死んだら終わりってことでしょ? まっぴらですよそんなの。……僕はこの身が朽ちても、魂燃え尽きようとも、彼女と共にあることを誓います」
    「新……」
     驚いた彼女は、新の腕に包まれキスを受けた。

     ズィルバーに導かれ、純白のドレスを纏う凛音は緊張していた。
    (「でも、こうして愛する人とクリスマスにこんなことが出来て嬉しい……」)
     凛音の指に指輪が煌く。
    「この世界の誰よりも、君は綺麗だ。僕は、この身に代えても君を守り抜くと誓おう」
     騎士として、人として。何よりパートナーとして。
    「こんな私を選んでくれて、愛してくれて……護ると誓ってくれて……ありがとうじゃ足りないぐらい感謝してるよ」
     彼女を映す紫の瞳に、凛音は感謝と幸せな笑みを浮かべた。

     白いドレスを引き摺り、白タキシードを着た氷桜の許へ。
    「うん、凄い綺麗だよ、リリー」
     見惚れる彼に凛々も微笑む。
    「ずっと離れることなく、永久にリリーを愛することを誓うよ」
    「ずっとお側にいます、離れたくないです。天の神様にも聞こえるように……ひーくんが大好きって誓います」
     指輪を交換し、氷桜は皆に見せ付けるよう彼女をお姫様抱っこ。
    「これからもずっと宜しくな。俺だけの可愛いリリー……」
     永遠を誓うキスに、凛々は照れずに大好きと言える日を夢見た。

    「愛してるよ、世界でいちばん」
    「ずっとずっと、一緒にいようね」
     キスの後、人とオリキアは壇上に並ぶ。
     参列する友人達は皆スーツやドレスを着込み、アイスバーンはここでも高級そうな黒ジャージだ。
    「うわー……人先輩もおりきあ先輩も、なんだかいつもと違って見えますね」
    「やれやれ、本当にお似合いの夫婦だな」
     熱い溜息の火華に拓海は笑む。
    「御二方とも立派になって……本当に、本当に、お幸せに!」
     神羅は年上のように感動した。
     ブーケトスに女の子達が並んで。
    「って冗談! 冗談だから!」
     並び掛けた真守は後ろに下がる。
    「ブーケなら沢山ありますよ」
     天使姿のフェリスがブーケを運んできた。
     花嫁の願いが篭ったブーケは、夏蓮の手に。
    「とったよー!」と掲げる花に次は、と蓮次と共に期待の眼差しが注ぐ。
    「オリキアお姉ちゃん、神終先輩、結婚おめでとうございます!!」
     夕月が声を上げ、
    「おめでとうございます部長! オリキア先輩!」
    「二人とも! 最高にお似合いだよ!」
    「二人とも結婚おめでとおおおおおお!! お前らお似合い夫婦だぜ!!」
     アヅマと恭太朗、紫廉も祝福した。
    「二人の行く末に、幸多からんことを」
     遥香と熾も拍手を贈る。
    「おめでとう、二人共。末永く幸せにな」
     久遠は夫婦円満のお守りを二人に渡した。
    「二人は本当に幸せそうだな」
     男装の小誇愛は、本番が楽しみだと笑む。
    「おめでとうでござるよアルムウェン殿! 地獄に落ちろ神終!」
     逃走中の木菟が扉の向こうで叫ぶ。
    「みんなありがとー!」
     花吹雪の中お姫様抱っこでバージンロードを歩く人に、オリキアは涙ぐみつつもとびきりの笑顔をくれる。
    「嬉しいなぁ」
     祝福を背に「きみと出会えたことが、僕のいちばんの幸運だよ」ともうひとつキスを贈り。
    「ボクも、ジンに出会えてとっても幸せ」
     感謝を交わし、扉の外へ踏み出した。

    ●静かに寄り添い
     誰もいない式場。
     髪のセットに力を入れ正装した冬崖は、櫂を祭壇に導く。
     ビスチェにAラインのドレスを身に着け、俯いた彼女を覗き込み「よく似合っている」と囁いた。
    「ふふ、窮屈じゃない? でも、似合ってる」
     照れながら、彼女も返した。
     普段も可愛いがこういう時の様子にも新鮮と感じる冬崖の前で、櫂は急に真っ赤になる。
    (「本番は小さな教会で二人きりなんてどう? なんて言えないわ……」)

    「お待たせ致しました、優太朗。どうでしょうか?」
    「き、綺麗ですね、いつもよりずっと……凄く、似合ってますよ」
     祈梨の姿に、優太朗は嬉しそうだ。
    「ありがとうございます……流石に照れますね」
     二人きりの場、澄まして見える彼女もやはり緊張の中。
    「僕、優太朗は、もう一人の人格。憂多螂と一緒に、生涯、祈梨を愛して。その身を守り、生涯を共にすることを誓います」
    「私、高槻祈梨は……これからも、ずっと貴方の傍にいます」
     囁き合ってくちづけ、幸せそのものの恋人を抱き締めた。

     よく似合ってると言いつつも、御弦は純白のドレスを纏う桃乃を直視出来ない。
    「いや……ごめん。予想以上に、その……綺麗で」
     気恥ずかしげな彼に、桃乃は口許を緩めその手を取った。
    「今はおでこで良いわよね?」
    「……まあ、そうだよね」
     何処か残念そうな御弦。
    「本物の口付けが欲しいなら、もっと未来に……それまでにちゃんといい男になるように、努力なさい」
    「まあ、頑張るよ、桃姉」
     美しい年上のひとは眩しかった。

     今日だけは決まりから離れ、紫信は髪を纏め黒のタキシードで現れた。
    「男の子の僕は……どう、かな……?」
    「とってもかっこよくって……どうしましょう」
     初めて見る彼の姿に、蘭世はきゅんとした。
     プリンセスラインのドレスに髪を巻き、ティアラを着けた蘭世もお姫様のよう。
    「蘭世さんも、可愛いですね……」
     このまま時が止まればいいのに。
    「いつか、本当の結婚式を挙げようね……♪」
     手を差し出す紫信に、蘭世は嬉しそうに応じた。

    「アルビィさん、きれい……」
     豪華な純白のドレスを纏ったアルベルティーヌに、砌はうっとり。
     幼い自分のタキシード姿が滑稽かも葛藤して、振り切って。
    「アルビィさん。僕、アルビィさんのこと護りたいけど……護って死んだりしない。誓うよ。ずっとずっと、一緒にいたいもん」
     真剣な砌の眼差し。
    「だから、7年後……僕ともう一度……結婚、してくれますか?」
     彼女は願いを受け入れてくれた。
     爪先立ちで触れた唇に、胸がいっぱいだ。

     あと10年なんて待てない!
     白いドレス姿の寛子は、迎えに来た藍に驚いた。
     白タキシードの少年は可愛いけれど「すごく似合ってるの」と。
    「寛子も綺麗……」
     藍も見惚れて呟いた。
    「わたくし海老塚藍は、寛子を妻とし――寛子のみに添うことを、神聖なる婚約の契約の元に誓います」
    「わたくし村本寛子は、藍を夫とし――藍のみに添うことを、神聖なる婚約の契約の元に誓います」
     誓いの後、藍はなんと寛子を姫抱きにした。

     俺の女になりな! と言って早半年。
    「ゆうちゃん綺麗やで。……今夜は帰・さ・な・い☆」
     司は宥氣にドレスを着せ、自分はタキシードを纏っていた。
     これが彼と彼女の幸せの形……と結局流されてしまった宥氣。
     贈られた雪の結晶の髪飾りを身に着けた司は、参列者の祝福の中で彼とくちづけを交わした。

    「さて……お手をどうぞ、お嬢さん」
     こちらもタキシードで男装した翼と、ドレス姿の筑音。
    (「翼のドレス姿は、後々の楽しみに取っておきてーし?」)
     黒スーツでライトピンクのサテンドレスの律花を連れた春翔は、思わぬ逆転の装いに顔を見合わせ笑ってしまった。
    「今度は筑音くんドレスで着飾ろうかしら」
    「程々にな」
     春翔は苦笑した。
    「おめでとうございます。これで晴れて夫婦……見習い、でしょうか?」
     花の雨の中、春翔は声を掛ける。
    「見習い……ねぇ? ってもそうなると、オレはこのまま嫁になっちまうな」
    「んじゃ、いい旦那になれるよう頑張らねぇとかなー」
    「本番もぜひ呼んでね?」
     律花に期待してろよと頷いた二人は、そっちのも楽しみにしてるとニヤリ。

    「じゃーん♪」
    「どうしたのその格好」
     式を覗きにきた夏樹は、いつの間にか白タキシードを着込んだリコに驚く。
    「で、これは?」
    「夏樹、ドレス似合いそうだよね?」
    「えっ」
     結局、夏樹はドレスを着てリコにエスコートされてしまった。
     誓いのキスは額に。
    (「それくらいなら、したげてもいいよね?」)
     リコははにかんで笑った。

    「なんで血、繋がってたら結婚出来へんのやろーなぁ……」
     サンタ服の裕士は、夜露を見遣る。
     彼女もサンタ色のワンピースで、ちらりと見上げていた。
    「折角だからうちもお兄ちゃんと……結婚式してみたい、やで」
    「……結婚、しよか」
     妹の前髪をそっと上げ、裕士は額にキスを落とす。
    「お兄ちゃん、メリークリスマス、やで」
    「メリークリスマス、夜露」
     お互いにリボンを巻いてプレゼント。

    「はい、誓いますわ」
     フリルやレースが贅沢な黒のドレスを纏った深雪。
    「誓います」
     ピンクのロリータ風のドレス姿の月菜。
    「ふふっ♪ 二度目だね、つっきー……?」
     以前は姉という意識も強かった深雪だけれど、今はもう違う。
    「そうだね♪」
     二人には、どんな壁も障害にはなり得ない。
     誓いのキスと、嬉し泣きの抱擁に。
    「ずっと一緒だよ、つっきー……♪」
    「みゆちゃん、ずっとずっとよろしくね♪」

     白タキシード姿の信彦と奏は擽ったい気分で見詰め合う。
     同じ方の手足が出そうになった奏にクスリと笑って。
     指輪を嵌めようとしている手も震えていて、やっぱり笑いそうになって。
     笑顔の中で誓いを交わし、奏は信彦の薬指にキスした。
    「唇はやっぱり本番にとっておきてェから、さ。一生大事にするよ、信。愛してる」
    「俺も愛してるよ。この世で一番、誰よりも。……これからも、一緒にな」
     彼も奏の指にくちづけた。

     純白のプリンセスラインを纏うアリスを、純白の儀礼鎧とサーコート姿のミルフィが導く。
    「私、ミルフィ・ラヴィットは……アリス・クインハートを生涯妻とする事を、誓います」
    「私、アリス・クインハートは、ミルフィ・ラヴィットを生涯夫とする事を、誓います……」
     誓いのキスの後。
    「どうか……これからも、私のこと、護ってくださいね」
    「この剣にかけて……生涯、貴女をお護り致します」
     愛刀に誓ったミルフィに、アリスの頬を涙が伝った。

     白いタキシード姿の流刀の前には、眼鏡を外し兄と双子の姉が仕立てたドレスを纏う天使のようなセラヴィーがいた。
     緊張はあるが、彼の胸には更なる嬉しさがあった。
    「ありがとう、流刀。……ずっと前から、そしてこれからもずっとずっと、愛してる」
     笑顔に流刀も微笑み返して。
    「綺麗だぞ、セラ。ずっとずっと愛してる。絶対に離さない」
     セラの目から溢れる涙を拭い、流刀は彼にくちづけ抱き締めた。

    「なんだろう、すごくドキドキする」
     白いドレスに花冠が似合う通は、タキシード姿の春実に赤面した。
    「こういう時背丈があると様になんだよなー」
     タキシードで髪を纏めて春実を見上げる、凛々しい利戈。
    「狩家さんは、美形の男性って言われても信じちゃいそう」
    「……二人とも生まれてくる性別間違えましたね」と春実は零す。
     3人でバージンロードを歩き、立会いの剛に促されて。
    「誓います」
     微かに声を上擦らせた春実。
    「我が名と拳の誇りにかけて誓う」
     右の拳を胸に当て、利戈も答えた。
    「は、はい……誓います」
     これは演技と通は自分に言い聞かせるが、胸の鼓動は止まらない。

     小さなテディには姉妹の一方は選べなくて。
     どちらが良いかと問うタバサに、真っ赤になって「2人とも一緒がいい」と言う。
    「テディ、ごめんね? でも……嬉しい♪」
     フェリシアは少年を優しく抱き締めた。
     純白のタキシードを着たテディの両脇に、淡緑のドレス姿のタバサと淡い空色のドレス姿のフェリシアが歩く。
     二人とも、フリルいっぱいで可憐だ。
    「愛してるよ、テディ……♪」
    「愛してます、テディ……♪」
     誓いのキスは順番に、でも……明日からどんな顔で会えば良いのかと、彼はまた赤面して俯いた。

    ●祝福の鐘
     清楚なドレスを纏うメイニーヒルトの髪に、武流は以前贈った金の髪留めを飾る。
     武流には彼女からの銀のネックレス。
    「俺の命と俺に与えられた時間を、メイニーヒルト・グラオグランツの為に捧げたい。彼女と共に、彼女の先に広がる『未来』を共に歩みたい。そして、俺の命が先に尽きても、俺と共に歩んだ時間が『思い出』となって彼女と伴にある事を願う」
    「ボクの幸と与えられた生を、椎葉・武流の為に捧げる。彼と共に、彼の先に立つ『苦難』を共に歩む。そして、彼の悠久の『幸せ』を誓う」
     二人は初めて唇を重ねた。

     翔太の正装を、かっこ良くてマトモに見れないと鈴は頬を染める。
    「……すごい似合ってる」
     髪をアップにしてピンクのプリンセスラインを纏う鈴に、固まっていた彼もやっとのことで告げた。
    「俺に家庭を支えられるぐらいの甲斐性ができたら、本番の式やろうな」
    「うん、今度はほんとの結婚式しようね……」
     そして。
    「あ、あのね、翔太君。鈴、心の準備が……っ!」
     初めてのキスに、無表情な翔太も俯いた鈴も赤面していた。

     ワインレッドのベストが覗くシルバーのタキシードに身を包み、ケイネスは陽羽を迎えた。
     悩んで悩んで選んだのは結局、純白のドレス。
     見惚れ合い、彼は陽羽を抱き寄せて左手にペアリングを嵌めキスを落とす。
    「よう似合っとる……綺麗じゃ。今はこんな安物じゃけど……本番まで我慢してな?」
     蕩けるような笑みにくらり。
    「ありがとう……今が本番ならいいのに」
     陽羽は涙を浮かべ微笑んだ。

     白のロングタキシード姿の鷹秋に、ばっちり決まっててカッコイイ……と鋼は溜息を漏らす。
    「鋼こそ可愛らしい、いや綺麗だぜ」
     彼も感極まっていた。
    「あ、あのね、鷹秋……お、お姫様抱っこしてほしい……な」
     誓いを交わした後、大胆かなと思いつつも願ってみると、
    「そんくらいお安い御用さ、俺のお姫様だからな」
     鷹秋は軽々と彼女を抱え上げた。
     輝く瞳を閉じながら、少女は未来への夢を馳せる。

     桜色のマーメイドラインに、髪は細かく編み込んで。
     レティシアの姿は、郁の薄青掛かるタキシードによく似合った。
     照れつつも目に焼き付けて。
     桜型のピンクサファイアが嵌ったピンクゴールドの指輪がレティシアの薬指に収まる。
    「好きだよレティ。誰よりも愛してる」
     郁の言葉にふわりと微笑み、今度は彼女が彼に指輪を着ける。
    「私も世界で一番、郁さんを愛してます」
     いつの日か、本当にこんな式を……。

    「あぅぅ……洋装久々なので……変じゃないですか?」
    「めっちゃ似合ってるし綺麗だぜ!」
     肩も露な純白のドレスに長手袋の依沙を、白のタキシードで迎えた涼は嬉しそう。
    「婚約を前提に結婚してくれ!」
     銀環を手にした彼の声が部屋に響く。
    「て、訂正! 今は模擬だけど、卒業したら本当の結婚式しよう!!」
     慌てる涼に、依沙は赤面して抱きついた。
     その約束、絶対ですよと控えめにくちづけて。
    「不束者ですがよろしくお願いしますね……涼さん」

     金糸縁取るタキシード姿の風樹は、ベアトップにマーメイドラインのドレスを纏う紗雨に将来を想像してしまう。
    「紗雨、とっても綺麗だ……」
     彼女の手を握り囁く。
    「何年か後、本番の時も君とこうして並んで本物の祭壇の前に立っていたい……大好きだ」
     頬を染め、彼女も頷いた。
    「私も大好きですよ、風樹さん。いつかもう一度、今度は本物で……」
     約束の優しいキスが降る。

     白薔薇彩る淡黄のドレスを着たシェリーは、白タキシードの七狼の手を取る。
     王子様に成れて居るダろうか、聞かれ格好良いよと頷く娘の緊張は、通う愛しさに和らいだ。
    「……私は、彼女を妻にシて共に支え如何なる時も想い合い、後に歩む者達への道を一緒に創り、歩んで往く事を誓います」
    「わたしは、彼を夫としていつまでも寄り添い歩き、愛情を惜しみなく捧げることを、誓います」
     花弁のようなベールが捲られ、彼女は目を閉じた。

     祝福の鐘が鳴り響く。
     雪降る雲間に、月が輝いていた。
     けれど、月よりも美しいのは――

    作者:雪月花 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月24日
    難度:簡単
    参加:116人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 3/素敵だった 34/キャラが大事にされていた 2
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