クリスマス2013~あなただけの想いを灯して

    作者:望月あさと


    「くいすますきゃんどりゅ?」
     鞠花は、聞きなれない言葉に首を傾げた。
     正しくは、クリスマスキャンドル。
     武蔵坂学園で行われるクリスマスパーティーイベントの一つだ。
     しかし、クリスマスもキャンドルも知らない鞠花は、イベントの内容を聞いてもピンとこない。
     近くにいた人が、クリスマスと、キャンドルがろうそくだという説明をすれば、なんとなくわかったらしい。
    「……行ってみようかな」
     しばらく考え込んだ鞠花は、頬を染めながらポツリとつぶやいた。
     
     イベントの内容は、クリスマスキャンドルを作り、それをクリスマスツリーの下で灯すという、いたってシンプルなものだ。
     しかし、ここで作るのはただのクリスマスキャンドルではない。
     想いを込めた自分だけのクリスマスキャンドルを作るのだ。

     教室を貸し切った会場では、キャンドル作りに必要な道具や材料は全てそろっている。
     どんな色を使い。
     どんな形にし。
     どんな装飾を施すのか。
     それは、キャンドルを作る人の自由。
     精油もあるので、香りづけをしても楽しいだろう。
     また、キャンドル作りが得意な人は、『作り方を教えてほしい人専用の机』が、あるので、そこにいる人たちに教えてもいい。
     そして、出来上がったキャンドルは、夜、クリスマスツリーの下で灯そう。
     あなたが、想いを込めて作ったキャンドルの灯――。
     あなたの隣に、誰がいるのだろうか。


    「クリスマスキャンドル作り、一緒に行きませんか? 作り方を教えてくれたら嬉しいです」
     にこっ、と、笑う鞠花も一つの灯を作るようだ。


    ■リプレイ

    ●想いを作り
    「次は、これですね」
     キャンドルに、様々な色を混ぜ込む優歌(d20897)は、火をつければ宝石のような炎が灯る仕掛けを施している。
     表情を変えていく炎を想像していけば、それも楽しい。
     互いお好きなものを聞いてキャンドルを作るミカ(d03129)と花梨(d02376)は、揃って花梨の選んだバニラの香りを加えた。
    「香りってェのは、人間の記憶に強く結びつくモンなんだぜ」
    「よくある香りだからこそ、この日のこと、たくさん思い出してくれるでしょう?」
     ミカがここに誘った種明かしに笑んだ花梨は、バニラの小瓶を手に取ってウインクを返した。

     A.S.S.C.のメンバーは、専用机でキャンドル作り。
     ルールはないと知った無常(d05602)は、シンプルな蝋燭の下にリボンを巻き、その裏側に銀の粉をまく。
     例え、どんなに小さくても、俺たちは輝いているという表れだ。
    「緑色のクレヨンを流し込むか」
     周りを見てデザインを決めたなゆた(d18283)は、クリスマスツリーをイメージしたキャンドルに苦労はたが、完成すれば重畳だ。
     碧月(d14780)は、薄い青色の月と星をつけたキャンドルに苦戦をしていたが、出来はよく、ラベンダーの香りが漂えば、より心が弾む。
    「ねね、皆はどんなキャンドルにしたー?」
    「え? もう、こんな時間!?」
     クリスマスらしさを考えすぎて何も手を付けていない飴莉愛(d06568)は、大慌てで緑色の円柱ろうそくに金色で太いリボンを描いた。
     専用机で、楽しそうにキャンドルを作るのは、さちこ(d09801)と桃琴(d09437)。
     さちこは、赤とピンクと白のグラデーションにモモの香りをつけて、赤い花を飾り。
     桃琴は、赤い2つの丸に糸をつけたさくらんぼに桜の香りをつけて、白い花を飾り。
    「ももちゃん、できたー?」
    「さちちゃんもかんせい?」
     見せ合いっこすれば、とても可愛いと、2人は大はしゃぎ。
    「そうそう、うまいね~」
     専用机で先生になっているスティーナ(d05427)は、作る本人を尊重して困っている所だけに手を貸している。
     鞠花の手元を覗き込めば、軽く手助け。
     みかん(d13977)に袖を引っ張って連れてこられた専用机で、サズヤ(d03349)は難しくない型でキャンドル作りに挑戦していた。
     初めての体験だが、香りをつけられると知れば、
    「……ん」
    「すごいっ! どうしておみかんだってわかったの? サズおにいさん!」
     探していた香りの瓶を引き寄せてくれたサズヤに、みかんは感動する。
     初めてのキャンドル作りは、上手くいきそうだ。

     チェーロ(d18812)は、義姉に教えられた通りに星と月をモチーフにしたキャンドルを作ると、そこに穂風(d18834)を思わせるバニラの香りを使った。
     星である自分を優しく見守ってくれる、誰よりも大切な月。
     その月も、輝く力を持つ星を同じ空で守りたいと、大事な相手に幸せが訪れるようにと願う。
    「チェーロ、大好きよ。また、あなたとクリスマスを過ごせた事……それが何より、嬉しいわ」
     ミスティラ(d06182)と莉都(d01995)が作るキャンドルに込めた想いは、皆が幸せであるように。
     似ていた想いに、莉都は小さく笑み返しながら、
    「それと、姉様が、ずっと笑顔でいられますように」
    「私は、莉都さんが恋人さんと仲睦まじく過ごせるように……とも込めておきますね?」
     微笑みをたたえるミスティラに、莉都は気恥ずかしさでそっけない返事をした。
     雪羽(d21478)に助けてもらいながら、クリスマスの街並みを再現するアイスバーン(d11770)は、不安そうな目をしながらも、ツリーを飾り終えた。
    「……ちょっと、失敗しちゃったかもしれません」
     どこがだ? と、雪羽が笑顔で答えれば、アイスバーンも照れ笑い、大切な思い出にハート形のカップのジェルキャンドルとの写真をと願えば、雪羽は、
    「応。ずっと一緒な」
    「……できました」
     鞠音(d10504)は、歪んだ六角形にべったりと赤や青で彩色して出来の悪い玩具なキャンドルを白焔(d03806)に渡せば、ほほえましい表情を向けられた。
     悪戦苦闘しながらも、何をするにも一生懸命な姿を思い出されたのだ。
     白焔は、彼女の詩を具現化したキャンドルと交換すれば、
    「有り難う鞠音。 鞠音作の蝋燭第一号。うん、嬉しいね。これは」
    「あら。林檎ちゃんもう1つ作るの……?」
    「う、うん。もうひとつは…その、プレゼントに……」
     もう一つ、色違いの香りつきハート形キャンドルを作ろうとしている林檎(d15609)は、あんず(d09362)の問いかけに誤魔化そうとしたが、そうもいかず。
     からかわれたので、また一つ作り出したあんずにお返しをすれば、二人はからかいながら、恋バナに花を咲かせる。
    「ウィル先輩、ここはどうしたらいいですか?」
    「ここか?」
     アドバイスのために、突然近くなる距離がドキドキする葎(d16902)は、聖夜に思い人と一緒にいられるプレゼントに心が温かくなる。
     頼られることが嬉しいウィル(d14891)は、自身のキャンドルも作りながら、アドバイスを続けていく。
     完成すれば、ツリーとサンタクロースのお似合いキャンドルだ。

     星を掴まえる響きが面白いと、地上の星灯りを作った芥汰(d13981)は、小さなプラネタリウムの香りづけを、思いの外、器用なシタ(d00551)へ決めてもらうことにした。
    「んや! したんが決めちゃてえーのー?」
     選んだのは、海を思わせるペパーミントとオレンジ。
     星を掴まえるための、花弁の大きい花のキャンドルから香る仄かな甘い匂いが混じれば、そこは星を巡る世界が出来上がる。
     夜咄のグループは、アロマに手馴れていた。
     多岐(d09003)が作るのは、フランキンセンスのアロマキャンドル。
     大きい円錐を作れば、赤が欲しくなり、
    「あ、サァヤ、赤いの少し分けてくれねぇか。 飾り用のポインセチア作りてぇ」
    「はいはい。岡崎さん、赤どうぞ」
    「多岐さん! 次に私にも赤をお願いします!」
     予約を入れたなどか(d05591)は、パチュリーをいれながら、皆が少しでも同じ色で揃えられることを素敵に思う。
     これも、クリスマスならではだ。
     そして、ローズをベースにイランイランを調合したサァヤ(d14068)が、ハーブティー用の薔薇の花びらを円柱に混ぜ込めば、うっとりとした香りとよく似合う風情が出来上がる。
     完成した皆のキャンドルが素敵で見とれていた千鶴(d02524)は、ハッとして、
    「最後に、全員のキャンドルを並べて、携帯で写真を撮ってもいいですか?」
     カメラを構えた。
     Salamander Houseのメンバーがいる場所は、アットホーム。
    「ゆまさんは初めてだって言ってたけど、ここまで作れるなんてすごい!」
     ローズウッドを混ぜた青い星型のキャンドルが固まる間、慧樹(d04132)を教えていた百舌鳥(d10148)は感嘆の声を上げた。
     ゆま(d09774)は、頬を染めながらツリーのてっぺんにお星さまを乗せる。
     外側についている白い蝋は、まるで雪のようだ。
    「上手く……できたかな?」
    「初めてだって言ってたクセにッ」
     高度な作りに慧樹は嘆くと、青から緑へグラデーションになる円筒形の中に、余った蝋を中に詰め込んだ。
     どーだ! と完成させれば、アナスタシア(d00044)が、香りと見た目のバランスがいい仲間の作品を堪能して、ロシアンキャンドルに一つ、火を灯す。
    「どの香りかワクワクしちゃうね!」
     個々が自由にキャンドルを作っている理科棟メンバーの作品は個性的。
     華月(d00586)が白い砂地の上に硝子の淡いピンクの薔薇を散らしたジェルキャンドルを作れば、
    「……不器用な訳じゃないのよ?」
     と、念を押して粘土キャンドル愛犬天使たちを作る千穂(d02870)は、カラーシートを掌にころり転がして歌いながら、土台の蝋燭へ持っていく。
     尚久(d19596)は優しい風合いの蜜蝋でせっせと夜の森の天使を作っていたが、さっさと作り終えた秋帆(d07174)のキャンドル論に耳を傾ければ、手が止まる。
    「海東って物知りなんだね」
     煉(d04035)に褒められれば、秋帆は、
    「月原サンの深い森も灯に映えそうな、あ、今テンション上がったろ!」
    「……皆だって、自分の出来たら、楽しかった、すよね?」
     瞳に宿った楽しみの色を見抜かれた煌介(d07908)は、恥ずかしさに横髪をいじる。
     しかし、けらけらと笑いを止めない秋帆に、シン(d07230)は目を細くし、
    「……そこの悪戯っ子は、はしゃぎすぎだね。少し羽をむしっちゃおうか、ハナ」
    「そうね、シンちゃん。天使様は悪戯が過ぎるみたい。少しは痛い目も必要かしら?」
     ハナ(d07912)のにっこり笑う顔さえも怖くなった秋帆は、腰を引いて謝ると、千穂に見捨てるなと助け舟を求める。
     だが、千穂は暖かいまなざしを向けて
    「見捨てる違う。見守ってるのよー」
    「ねぇ、今、マーブル模様のキャンドルを作っているから、気を散らせないでほしいのよね。お願いだから」
     最後の言葉とは裏腹に送られた朱海(d04234)の怖い笑みに周りが凍てつく。
     煉は、垣間見るいつも通りの女性陣の凄味を感じつつ、絵本と違うマッチ売りの少女の世界を完成させた。
    「天球にこの前見た月はないけれど、煌介君が蝋の中に閉じ込めてくれたみたいね」
     朱海は、青地に白い模様が入った球体を軽く突きながら笑み、笑う代わりに目を細めた煌介は、最後の三日月を添えた。
    「きょうもみんな元気です」
     周囲の音が全く耳に入っていなかった華月が感心の息をつき、込められた祈りに感謝を込めれば、バラバラなキャンドルは一つに紡がれる。
    「あのね、紡ちゃんがくれた私の灯り。私があげる紡ちゃんの灯り。並んで灯しませんか?」
     華凛(d04617)は薔薇に囲まれた花灯りを手渡しながら微笑んだ。
     互いをイメージして作ったジェルキャンドルを受け取った紡(d08568)は、雪と星降る水底の花園を渡し、込められた想いに幸せを感じる。
    「うん、是非、並べて、灯そう。素敵な、夜に、なりそうなの」
     吉祥寺中3Bの仲間が作るキャンドルは、全部がプレゼント。
     円を組んで、その場で歌って、回して、クリスマスキャンドル交換。
     和佳(d13488)の香りがついた深めの青いロウにツリーと雪だるまのジェルキャンドルは、「傾いている雪だるまもいいね」と言う響斗(d03343)へ。
     響斗のクリスマスらしいリボンなどで飾り付けをした白と緑の格子模様が描かれた赤いキャンドルは、「メリークリスマス色」と言う雨衣(d02834)へ。
     雨衣のラッピングをされて見えない、芯が一本だけ残っている髪に見える天使のキャンドルは、「天使、お部屋に飾ろう」と言う和佳へ。
     悠矢(d04312)の銀色や星型のビーズをぱらぱら敷かれたグラデーションの星空ジェルキャンドルは、「すごい、キラキラだ」と言う小梅へ。
     小梅(d02838)の空を仰いでサンタの訪れを待っている夜の雪原のジェルキャンドルは、「雪かな? 作ってくれたの誰?」と言う紗へ。
     紗(d02607)の好きな青に魚のシールとラインストーンをデコりつつ、せめてもと貼った銀色の雪シールのキャンドルは、「斬新でいいねぇ」と言う悠矢へ。
     そして、最後の締めくくりは、やはり、
    「メリークリスマス!」

    ●想いを灯す
     綺麗に仕上がったクリスマスツリーに負けないキャンドルたちが淡い雪の上に並ぶ。
     後は、それぞれが思う時間を過ごすだけ。
    「頑張ってしまいました」
     本物かと見紛うポインセチアのキャンドルを見つめながら、菫(d12259)は、リーアへはにかんだ。
     花言葉に込められた想い。
     生きとし生けるすべてに向けた願い。

    「ウヘ、サムサムサムシングってか、チョー寒ィッス」
     立夏(d05735)は、寄り添ってきた今日子(d00051)の手を握るなり、現在進行形で愛を育む彼女の可愛さに、にへーっと笑った。
     実に締まりのない顔だが、今日子はそれが安心する。
     キャンドルへ一緒に火を灯そうと言われれば、今日子の願いはただ一つ。
    「バーニングラブか。燃え尽きない永く燈せる火がいいな」
     鴎(d15664)のキャンドルは、一番大事な場所である帆船。
     籠めた思いっきりストレートな想いを熱く語れば、ヘキサ(d12401)も負けていない。
     ツリーを征服しているキャンドルにいるカモメは、そのまま鴎のイメージ。
     極め付けに、心の底から大好きだとかもっと女らしくしてもいーンじゃねェかとか! と、詰め込まれれば、願いがかなったのか、鴎が腕に抱き着く。
    「なぜためらうのですか? 蝋燭は閲覧参照よりも点灯消費される事にこそ価値が有る、という意味!」
    「……あァ其奴は尤もな御噺で、 飾り置きたい位だが其れこそ勿体無ェやなァ」
     愛着がわいて溶かすのがもったいなかった赫絲(d02147)は、空(d02117)の力説に一理あると、キャンドルに火を灯した。
     空の熱い愛の告白も受けながらも、満足そうな姿を見れば、それでいい。
     ちらりと話した通りのキャンドルを剣冶(d05196)から差し出されたなお(d15051)は、おろおろしながらもキャンドルに火を灯した。
     リクエスト通りの甘い香りに、
    「わ、いい香りですぅ♪ サンタさんみたいです♪ ありがとうございますぅ」
    「ご満足いただけましたかな?」
     喜ぶ大切な人の笑顔に、剣冶が腰に手を回せば、なおは、そっと寄り添い、温かいですねぇ。と目を細める。
    「貴方という方は……」
     自分の好みを見透かしているかのように巡(d02238)の選んだ、蔦の透かしの入ったジェルキャンドルが嬉しい帷(d00834)は、言葉にできない恥ずかしさを紛らわそうとマッチをこする。
    「焦らなくて大丈夫だよ」
     おぼつかない帷のマッチのつけ方に、巡がキャンドルに手をかざせば、見守りたい。傍にいたい。という、二人の願いを叶えるかのように火が灯る。
     しずく(d00121)とゆい(d00532)は、くっつけば、ぴったりと合わさる自身の飼っている猫を模したキャンドルを眺めている。
     仲良し子猫の尻尾の炎が揺らめけば、ゆいはしずくの腕に手を回してくっつき、ほっと表情を和らげる。
     サンタ帽子をかぶせた三毛猫から目を離したしずくは、
    「きれいだねぇ……」
    「うん」
     しずくの視線が自身へ向けられているとは気付かないゆいは、小さく頷く。

    「ここへ来て初めてのお友達は、真琴ちゃんだったりするんだ」
     潤子(d11987)は、色違いのストールポンチョを着る真琴(d11900)へ、いつもありがとう。と、桃の花があしらわれたプレゼントを差し出せば、真琴もふんわりと笑い、ツリーと雪だるまのガラス細工の入ったジェルキャンドルを渡す。
    「こちらこそ、ありがとうだよ。潤子ちゃんがいてくれてよかったです」
     寒くない? と、いう理由をつけて凌真(d00071)は、繋ぎたかったミケ(d00803)の手を握った。
     やっぱりキミの事が好きだな、と、呟けば、相変わらずキミは恥ずかしいことを平気で言う……と照れ隠しが返ってくる。
    「願わくば来年もその先も。ミケと一緒にこうやってクリスマスを過ごせればいいな、て思うよ」
     ミケは頷き、
    「来年も一緒に……過ごそうね」
     義治(d15386)に手を握られた虚空(d15308)は、2人して作ったキャンドルの灯から顔をあげた。
     大切になると思わなかった人。
    「義治……。その……来年もこうして……一緒にいよう…?」
    「おう、そうだな。……来年も、何十年先も、こうして一緒にいような」
     できるとは思わなかった大切な人。
     改めて口にした想いに、2人の顔を赤くしつつも、絡めた指は離れない。
     愛流(d09861)へ寄り添った式(d13169)は、互いに持ってきたキャンドルを一緒に灯した大好きな人の左の手を取った。
     薬指にはめられた指輪に、愛流は、
    「式さん。私の一番は貴方。でも貴方の一番は……いえ、やっぱり言わなくていいわ。例え一番でなくても、私は……」
    「これからも、よろしく。愛流」
     目をつむる愛流にそっと触れた式は、その唇にキスをした。
    「日常でも戦場でもいつも隣にいてくれた」
     神羅(d14965)は、キャンドルの灯りからなゆた(d14249)へ顔を移した。
     灯と同じ色の目を笑あませるなゆたは、
    「私も安心出来るな、……君と居れば。戦争でも、心強くて何も怖くなかったよ」
     でも、おかしい。顔を正面から見られない。
     そんな、なゆたの横顔を見ながら、これからも側にいてほしいと、神羅は自分の心を認識した。
     互いのキャンドルに火を灯しあった久遠(d12214)と言葉(d01254)は、出会って一年が経ったことを実感する。
     久遠のキャンドルから薔薇が、言葉のキャンドルから水仙の香りが漂えば、
    「これからも、こうして共に時間を過ごしたいものだ」
    「穏やかな時間を、ありがとう……。 私も、久遠と同じ時間……一緒に過ごしたい」
     久遠の言葉に、言葉は微笑んで目を移した。
     振り返れば、多くのものを失ったことに思いを馳せる芽衣(d14987)と源一郎(d03269)は、想いの灯を見つめた。
    「この一つ一つが、誰かの想い、願いなのですね」
    「生きていればこそ、祈り願う事が出来る。今年も守る事が出来た『今』に感謝しよう」
     想うことは同じ。
     そっと手を重ねて握り合えば、二人だけの灯りをつける。
     願いの象徴に想いを込めて。

    「君がこういう所にいるなんて珍しいね」
    「人でなしが人のフリをして悪いかね」
     思わぬところで無常(d16865)と出会った有無(d03721)は、露骨そうに嫌な顔をした。
     しかし、ちょっと嫌われているという自覚がある無常は気に留めることなく、彼女について軽く聞いてみれば、彼女ではない! と大きな声が返ってくる。
     あの人のことになれば、話は別。
     奥から手前へと、灯されたキャンドルを順に見入る純也(d16862)は、紙を燃やした灰が潜む白蝋燭を最後にして自分の考えを語った。
     祈りとは。想いとは。標とは――。
     わかるような、わからないような、昭子(d17176)は純也の意図を読むようにじっ、と見つめる。
    「わたしが見失っても、居なくなっても、おぼえていてくれるなら、それはきっと、みちしるべなのです」

     指先をかばう優奈(d02148)が、火傷していることを思い出した暁(d03770)は、その指をさらって、そっと口づけを落とした。
     柔らかな感触に、しばらく声を失っていれば、合わさった目に慌てて、顔をそらす。
     火傷の指は、きゅっと握りしめ、攫われたのは指先だけ?
     暁空の色をしたキャンドルの横で、「飽きないわ」と戯れた暁は、ゆるりと優奈を灯りへ誘った。
     優しい光の中で、戦(d02124)のいう通りに目を閉じた真雪(d02913)は、腕に何かを感じた。
     目を空ければ、花モチーフのシルバーブレスレットが輝いている。
    「喜んでもらえるといいんだけど」
    「わぁ……可愛い。……大事にしますね。それでは、わたくしからはこれを」
     もう、寒くない?と、まかれた黒いマフラー顔をうずめた戦は、あったかい。と幸せそうに笑う。
     つい整えた臨戦態勢を日和(d05559)が解くと、首に日長石のシンプルなネックレスをかけられた。
     邪魔にならないようにあえて指輪を選ばなかった宗佑(d08995)に封印しても大丈夫と言われれば、
    「気に入るに決まっているじゃないですか!」
     光がぼやけたと思えば、次々に嬉し涙が零れる。
    「ありがとう」
     寄り添った一回り小さな日和が温かくて、宗佑も涙が出そうだった。
    「……蒼炎」
     そう、呼べば振り向くみをき(d00125)に、華丸(d02101)は、幸せな時は幸せだと気づいてほしいと願った。
     寂しければよべばいいと言ってくれる相手に、みをきは、か細い声で、
    「華丸先輩……好き、です」
     願いとは別にキャンドルに隠した自身の想いを口にすれば、
    「華丸で構わねぇよ」と、返ってきた。
     降る雪にかき消されなかった言葉に、灯は強く揺らめいた。
     キャンドルの火を一緒に見る百花(d09772)へ好きだと言った深隼(d11393)は、簡単に返された同じ言葉に少しへこんだ。
     改めて、恋人として付き合ってほしいと言えば、
    「こ、恋人……?」
    「ゆっくりでいいから、考えてくれたら嬉しいな」
     友達だと思っていた人から伝えられた想いに、百花は考えてみると答えたものの、どうすればいいんだろうと戸惑う。
     龍一(d10698)と、紗里亜(d02051)が出会ったのは、半年前の学園祭。
    「まだまだ僕は貴女に助けられてばかりです。でも、いつの日かきっと。今度は……僕が貴女を助けれるようになりたい」
    「ありがとう、ございます」
     いつも救われている龍一の手をそっと握った紗里亜は、出会ってくれた感謝を込めて精一杯の笑顔を浮かべる。
     それが愛しい龍一は、大好きです。と呟いた。
     クリスマスに浮かれることのなかった水面(d19614)だが、オリシア(d20189)が側にいれば別だ。
    「いろいろあって素直になれなかったけど、オラはお前の事好きだ。いつも側にいてくれて感謝してる」
    「いつも側に居てくれてありがとう。……帰り道は手を繋ぎませんか?」
     口にできた言葉に、常に気持ちは貴方と共にあると想いを乗せて、オリシアは手を握った。

    「大丈夫だよ、きらら」
     つむぎ(d03149)は、ナノナノへいつものように笑いかけた。
     青い星のキャンドルを置けば、一面がお父さんと一緒に見た星空のようだ。
     鞠花の瞳には、どんなふうに映るかと、足をむければ、キャンドルを眺めている鞠花がいる。
     静かに鞠花へ寄り添っためぐみ(d01426)は、小さなクリスマスツリーを差し出し、
    「初めてのクリスマスイベントどうでした?」
    「楽しかったです」
     小声でかわされる会話。
    「椿は、どんなキャンドルを作ったのだ?」
     夜の星空をモチーフにしたキャンドルを見せながら、雛菊(d22417)は尋ねた。
     作りだした灯が揺らげば、きらきらと輝く星の飾りを側にする鞠花が見せたのは、寄り添う2匹の雪うさぎ。
     鞠花と目が合った風真(d13021)はにっこりと笑い、前の自分がいた証を見つめた。
     いろんなキャンドルを見て、ほわほわな心が、ますますあったかくなる。
     あえてよかった。
    「ありがとう」


     今日の日をあなたの胸に。
     メリークリスマス。

    作者:望月あさと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月24日
    難度:簡単
    参加:100人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 3
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