軽快なクリスマスソングを口ずさみながら、空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が教室に現れた。段ボール箱を抱えており、中からカラフルなクリスマスの飾りが見えている。
「クリスマスだねー♪ 楽しみだよねー♪」
ついに武蔵坂学園のクリスマスがやってくるのだ。
紺子は楽しみで仕方が無いというようなうきうきとした表情を浮かべ、箱からオーナメントを取り出した。
「それでね、一緒にクリスマスパーティーしない? 手作りのお料理とか持ち寄って、どうかな? 教室を借りてさ。きっと楽しいよね」
つまり、ホームメイド・クリスマスのお誘いと言うわけだ。
「お料理はね、何でもいいと思うの。クッキーでもケーキでも、ターキー、チキン、ええとそれからそれから」
紺子はどこか遠くを見上げながら、目を輝かせた。
「とにかく、何か一品持ち寄って、皆で楽しいパーティーにしようよ。私はクッキーを焼こうかなって思ってるよ。あと、ジュースも持ってくるね。それと、開始前には飾りつけもするから、もし時間があれば一緒にお願いします」
手作りが苦手ならば、飲み物や市販のお菓子でも大丈夫。
持ち寄った食べ物を囲んで、皆で楽しいクリスマスを過ごそう、と言うことだ。
「簡単なゲームをしても良いし、お友達とゆっくり話すのもありだと思うんだー」
すぐに誰でも遊べるよう、トランプも用意してある。
と言うわけで、ベリー・メリー・クリスマス。
ホームメイド・パーティーはいかがですか?
●
「こんにちは、お邪魔します」
最初に顔を出したのは鈴緒だ。チキンとロールケーキを数本持ってきた。
紺子と共に食器類を運んだ後、絞り袋を取り出す。
「これでブッシュドノエルを作りますよ!」
紺子をデコレーションに誘い、二人でケーキを仕上げていく。
教室の真ん中には、クリスマスツリーもある。
キラキラのモールを飾りつけ、てっぺんにお星様を乗せ、藺生は次に灯夜にモールを巻きつけた。
「あっちゃんにも巻いてみよう」
「……って姉ちゃん、なんで俺に巻いてるのさ」
くすくすと藺生が笑う。
「……なんか演歌の人みたい」
「人で遊ばないでよもう~」
言いながら、灯夜は持っていた飾りをマイクに見立て歌マネをしてみる。
【星空芸能館】のくるみは制服に付け羽根とサークレットでプチ天使さん風の装いだ。
「みんなでパーティうれしいな♪」
「こうしていろいろ準備したりとか楽しいですよね~」
制服にサンタケープとサンタ帽子をかぶったプチサンタ風のえりなが頷く。
皆で作るミニパーティーは、凄く楽しみだ。
「くるみさん、ファルケさん、何を持ってきたんですか?」
そう言うえりなはシャンメリーを。
「寒い時こそ、敢えてこれを作ってみた」
いろいろ考えたがと、ファルケは大きめのクーラーボックスを開ける。出てきたのは、アイスクリームだ。
「味は保証するぜ? 甘味の追及者の名は伊達じゃない」
生クリームと牛乳で作ったアイスクリームは、今から食べるのが楽しみだ。
「手作りだから気に入ってもらえるといいんだけど……」
くるみは自身渾身のクリスマスケーキを持参した。マシュマロなどで作ったナノナノサンタがアクセントになっている。
●
「みんなー、そろそろパーティーを始めたいと思いますー!」
紺子の掛け声で、パーティーは始まった。
「一番、素破。熊に変身するでござる」
気になる娘はいるが誘う勇気が無い、そんな風に言っていた隼が最初に立ち上がる。
「変……へん……へ、へっくしっ!」
煙が立ち込め、それが晴れると、そこには木彫りの熊が残されていた。
「……」
紺子が上を見上げると、必死の形相で天井にしがみつく隼と目が合った。
「大丈夫でしょうか?」
隣に居た八重子が戸惑いの表情を見せる。
「うん。多分、放置でいいんじゃないかな? 八重子さんはローストビーフを作ってきてくれたんだね!」
「はい。沢山の人とクリスマスって初めてで」
楽しいです、と、八重子がビーフを切り分ける。
「ぁ……、アイム ユア ファーザー……」
背後から、なにやら隼の断末魔のような叫び声がひっそりと聞こえた。
「皆さんのお料理も美味しそうです」
八重子が辺りを見回すと、ぴんくのサラダが目に入った。
「さっぱり系のメニューを持ってきたよ♪」
ぴんくが用意したのは、ベビーリーフとプチトマトで彩られたスモークサーモンのサラダだ。
「皆さん、紅茶はいかがですか?」
そこに、優歌が紅茶を持って現れた。ミルクやレモンも用意されている。紅茶のいい香りが辺りに広がった。
「ありがとうございます。私にもお願いします」
「ありがとう!! 私、ミルクティーが良いなぁ」
八重子と紺子が笑顔でティーカップを受け取った。
【赤月館】の面々は、紙コップを手にしている。
「とりあえず、新宿攻防戦お疲れさんしたー、メリークリスマース!!」
舜が声を上げ、皆で乾杯する。
「そういえば、黄瀬川さんと舜さんってどういう仲なんですか?」
ナポリタンを食べながら、ディートリヒが両者を見比べる。
「は? 俺と黄瀬川が何?」
ケーキを作るのを、ものぐさな舜が手伝うと言うのがどうも勘ぐりたくなると言うのだが。
「ほら、赤月館のキッチンてある意味俺の城じゃん?」
舜は何がどこにあるのか全て把握している。だから、手伝うのが良いと思ったとの事。
「俺も気になってたんだよなー。舜にだけ猫の時とかに人の時でも頭なでさせてたりしてるじゃん?」
夜那が身を乗り出すと、むせていた花月が顔を上げた。
「猫の件は割と本気で不意を打たれたんだよっ!」
ケーキの件については、人の家だし誰か居てくれたほうがいいかなと思っただけだと。
オレンジジュースとパスタに舌鼓を打っていた司も、話に加わってきた。
「黄瀬川さんは舜さんの事どう思っておいでですの?」
事と次第によっては、応援すると。
ちなみに司が用意したのは飾りと紙皿に割り箸だ。どうも舜に料理をさせてもらえなかったらしい。
二人の言い分を聞いて、夜那はこう結論付けた。
「ちょっと特別な友達ってやつですかー?」
恋愛には行っていない、かといって友達と言うわけでもない。
「友達、か。いいのかな」
花月はかじっていたクッキーを見た。
一ヶ月前の自分には、学園でパーティーすることなど考えられなかった。こういうのも偶には良いと思う。
さて、皆の話を聞きながら、夜トはがっつりとパスタを食べていた。大盛りだったのが半分くらいにまで減っている。
「これくらいじゃ、腹の足しに……微妙にならない……」
シュトレンにクッキーもどんどん口に運ばれていった。
さて、【御殿山2-8】にも動きがあった。
「勇騎クン、紙皿とかちょっち足りねぇみたいなんすけどー!」
「分かった、手伝うぜ」
カナキに呼ばれ、勇騎が一緒に教室を出た。
「さて、始めっか」
それを見届け、筑音が他の皆にクラッカーや横断幕を配り始める。
紙皿を手に戻ってきた勇騎の背を、いたずらな笑顔を浮かべたカナキが押し出した。
「メリークリスマスっ。そして」
黎花が言うと、皆がクラッカーを構えた。
「「「「「ようこそ、2-8へ」」」」」
つまり、今日は勇騎の歓迎会もかねていたのだと、理解する。
「あぁ、その、なんだ……ありがとうよ。これからよろしく頼むな」
勇騎が照れたような笑みを浮かべ、皆は歓迎の言葉を口にした。
「ちゃんとしたクリスマスは初めてなんえ楽しみやわァ」
ぱーっと盛り上がるべしと、綱姫は食べる役割全開で料理に手を伸ばす。
クリスマスの定番料理が所狭しと並んでいた。ターキー、ブッシュドノエル、クリスマスカラーのゼリーなどなど。そのほとんどが、女子力高い男子によるものだけれども。
「ここにできた絆がいつまでも続きますように」
クラッカーに合わせた思いと共に。小次郎の言葉に、それぞれが頷いた。
真夜と由乃は、お互い持ち寄った料理を取り分けていた。
「どれから食べようか、迷っちゃいますね」
「美味しそう! おばあ様も真夜さんも、お料理上手なんですね」
由乃の用意した鶏の照り焼きにクッキー。真夜の用意したクグロフ。
二人は、一緒に戦ったり闇堕ちから救われたりと縁深い。
「良ければ、また一緒に遊びましょうね」
「はいっ、こちらこそ是非に遊んでいただきたいのです」
由乃が言うと、真夜がにっこり微笑んだ。
「センパイ、肉が好きって言ってたから」
そう言いながら、狭霧はローストチキンを仁恵の口元へ運んだ。
「んむ、なかなかのお手前ですよ。肉はうめーから好きですよ!」
返ってきた答えが嬉しい。
次に、仁恵の用意したヴァーノチカをお互い食べさせ合えば、狭霧の頬が熱くなった。
「んむんむ、存分にいちゃつきましたね? てれてれ」
真顔で頷く仁恵の横で、狭霧は落ち着こうとゆっくり三つ編みのパンを租借した。
「今川先輩も良かったら食べて下さいね?」
「わ、頂いていいのです?」
真雪が克至に切り分けたのは、白いブッシュドノエルだ。苺やマジパンサンタの飾りで、可愛らしく仕上がっている。
克至からはスコーンと紅茶を。
二人でお出かけは初めてでちょっぴり緊張もするが、楽しく過ごせれば良いと思う。
「メリークリスマス、今川先輩!」
「うん、メリークリスマスです! 真雪さん♪」
温かい紅茶と談笑の時間は、本当に素敵だ。
「ティエ、クリスマスプレゼントで欲しいものはあるか?」
仁道が話を切り出した。
彼女は賑やかなクリスマスと縁遠かったらしい。今年からは良い思い出を作ってやれたらと思う。
少し悩みティエはこう答えた。
「……やっぱりお兄様に選んで欲しいです」
普通どういう物を贈るのか分からない。それなら仁道が選んだものを大切にするからと。
「む、嬉しいことを言ってくれる」
ティエが喜ぶものなら見つけられる気がする。
仁道はシュークリームを一齧りし、強面を緩め笑顔を見せた。
「あーん」
サンタクラゲのクッキーを、イルカがネオンの口元に運ぶ。
「あ、あーん……?」
慌てた様にちらり周りを伺ったネオンだったが、きちんとクッキーは頂戴した。
「今年のクリスマスは、お前のお陰で暖かい」
イルカは料理を取り分け手渡し、その隙にポケットにプレゼントを忍ばせた。
「そう言ってくれるんなら悪い気はしねえ」
ネオンは心から笑う。
メリークリスマス。お互いの名前を呼び合えば、嬉しい気持ちが湧いて来た。
「はい、あ~ん」
ちょっぴり恥ずかしいけれど、照咲はふちにクッキーを差し出した。
お菓子は美味しい。お返しにと、ふちがチョコレートを手にする。
「ありさちゃん、あ~んです」
「ん~?」
口に広がったのは、ダークチョコレートの苦味。美味しいけれどちょっと苦くて、照咲はびっくりした表情を浮かべた。
謝りながら、次はきちんと甘いチョコレートを。
苦いものの後の甘いものは、いっそう甘く感じられた。
●
「スリーカード、そっちは役なし。俺の勝ちだァな」
「あう、また負けちゃった……。もう一回、もう一回だよ……」
ハガネとたまきはポーカー勝負をしていた。
ギャンブルの漫画をいっぱい読んできたからと、どや顔のたまきだったけれど、いかんせん手札の良し悪しが全て顔に出てしまっている。
ハガネに種明かしされると、たまきは大きく泣き崩れた。
「はうぁ……ひどいよハガネくん。分かってて私の事、弄んだんだね……」
「誤解されそーな言い回しすんなって!」
慌てるハガネを見てニヤリ。悔しいからお返しです。
クロカンブッシュにおにぎり、サンドイッチ、カップケーキ、ブイヨンと様々な料理を囲んで【TG研】はババ抜きをしている。
「そういえば不思議な事に、私の所にはババが回って来ないのですよね」
はい、上がりましたと清美。余裕の一位だ。
「勝負事は弱くも強くもないので、最下位にはならない、はず」
するすると抜け出し夕月が二位。
「結果は三位ですか。いい順位ですね」
いつも笑顔なので、腹の探り合いはそこそこできますよと良太。
「オレは腹の探り合いは苦手だけど、カンはいい方だよ」
最下位だけは逃れたよと登。テーブルに並んだ沢山のジュースは彼が持ってきたものだ。
「うむ、こういったゲームをするとき、私、結構顔に出るんですよねぇ……」
「トランプ……実は得意なんですよね。あんまり顔に出ないので」
残った流希と遥香が向かい合う。
「あ、それを取りますか……。引っかかりましたね。それ、ジョーカーです」
「ふぁっ?!」
流希の言葉通り、遥香はジョーカーを掴まされていた。
気づいたら、負けていたと言う。
「怖い……TG研こわいです」
がくがく震える遥香だった。
【Cc】は一人一つお菓子を持ち寄った。
「芋羊羹、アイナーの手作り? 甘くて美味しいね」
シェリーは皆の持ち寄ったお菓子に舌鼓を打っていた。
「クリスマスらしいお菓子にも色々あるんだね」
アイナーは集まったお菓子を興味深げに眺めている。
「シェリーちゃんのキャンディ、かわいい」
昭子が目を輝かせた。皆が居るのも、お菓子が沢山なのも、いつもと同じなのに、クリスマスはやはり特別だ。
「私はジンジャークッキーと……別枠の賞品的にブッシュドノエルを持ってきました」
依子が取り出したケーキに視線が集まる。
「おぉ……ブッシュドノエル……クリームが、甘いケーキ。……がんばる」
サズヤが真剣な表情で、ボードゲームを見た。
ライフプランをシミュレートするボードゲームだ。初めて聞くゲームだと首を傾げる。
「波乱万丈な人生が味わえるのですよ?」
依子が説明をすると、アイナーも頷いた。
「ケーキがかかった勝負とあらば負ける訳にはいかない、ね」
早速、コマを配りルーレットを準備する。
波乱万丈だったり、順風満帆だったり、びっくりするくらい普通だったり。ゲームが始まった。
【メカぴ研】は沙雪からカピバラゲームの説明があったところだ。
『カピ』と言った人が誰かを指差し、指差された人は『バラ』と言う。次に指差された人の両隣が『きゅるきゅる』と言うのを繰り返す。
「了解、把握したんだよ」
エリオが頷き、早速始めてみる。
「カピー!」
指差された沙雪がアンジェレネを指す。
「バラー!」
両隣が『きゅっきゅー』と言って、次に回るのだが……。
「にゅっにゅー」
月夜は言ってしまった。はい、罰ゲーム。
「しっぺかデコピンを選べ?」
沙雪が笑う。
「んと、では……しっぺをお願いするのですー」
月夜は言いながら首を傾げた。
しっぺとは何だろう?
それは、指二本で手首を叩くおそろしの罰ゲームなり。
「しっぺはかすった時が一番痛い、くらえおー」
アンジェレネがノリノリで叩きつけるも、失敗していまいち威力無く終わった。
その後、二戦三戦と繰り返し、盛り上がる。
「あはははは、単純な分意外と盛り上がるん?」
うちのデコピンは痛いでーと意気込んでいた智恵理が引っかかったり。
「……はぁ、ルールは守りますよと」
素直におでこを差し出した。
【黒祭】で参加したメンバーは、万鬼の噺を楽しみ、最後にプレゼント交換を始めた。
「お! なっきーのだ! なにかな、なにかなー。おお! ガラス球の根付だ! 綺麗だな!」
悠太の手に渡ったのは、万鬼の用意した硝子球根付。
「よし! お財布に付けよう!」
「あっしも漏無く大当たり!」
万鬼の手には、可愛らしいびーどろが来た。
「壊れやすいから、大事にしてくれ給えよ」
と、遼平。
「おれの分は……悠太の用意した物か?」
優京には、四葉の栞が渡った。本に触れる機会が多いので助かる。
「手作りらしい暖かさもあり好き物だな」
大切にしようと、静かに微笑んだ。
さて、遼平には砂時計を嵌めた銅板のキーホルダーが。
「気に召せば幸いに」
優京の用意したものだ。
「明日から、この砂時計と共にまた楽しい日々を過ごさせてもらおう」
遼平もまた、穏やかな笑みを浮かべた。
●
「それでは皆さん、クリスマスソングとか……ご一緒にどうですか?」
えりなが皆に声をかけた。
「クリスマスソング……もちろん歌うよ~♪」
くるみが笑顔で答える。
「ほいじゃ伴奏のサポートするぜ」
ファルケもギターを取り出した。
えりなの提案に、教室から拍手が沸きあがる。
「うちも歌うー」
智恵理の返事に微笑み、えりなが伴奏をはじめる。
パーティーに楽しげな歌がいつまでも響いていた。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月24日
難度:簡単
参加:56人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 1
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