クリスマス2013~ツリーの下、食べて騒いで

    作者:雪神あゆた

     白い雪がちらちらと空から舞い降り。町のあちこちで、子供たちや大人の笑顔が溢れ――。
     そんな今日は、クリスマス!
     学園の広場では、地央坂・もんめ(高校生ストリートファイター・dn0030)も大はしゃぎだ。
    「皆、メリークリスマスだなっ!」
     クラッカーをバン☆ と豪快に鳴らす。
     表情は満面の笑顔。
     そんな彼女の隣にそびえたつ、10メートルほどの『伝説の樹』。
     今日は電飾やモール等で飾られ、クリスマスツリーとしての姿を見せてくれている。
     ツリーの周りには、椅子とテーブルが並べられていた。
     テーブルには、学園が用意したごちそうの数々。
     食べれば口の中に旨みが広がるだろうチキンや七面鳥。野菜を使った色鮮やかなサラダや、香りで食欲を刺激するスープ。
     その他にも、からりと揚がった各種あげもの。それから、ピザやパスタ、それからお寿司……。
     仲間が別の場所で作ってくれた料理もある。

     この広場で、今からクリスマスパーティーが行われようとしている。
    「そうだ、パーティーが始まるぜ!」
     拳を突き上げるもんめ。
     パーティーは学園の生徒ならだれでも参加可能。
     せっかくのクリスマスだ、豪快に派手に盛り上がるのもいいだろう。
     自分自身で、場を盛り上げる工夫をしてもいいかもしれない。
     それとも、椅子に座ったり、木にもたれかかりながら、のんびりまったりと時間を過ごそうか?
     友達や恋人と騒ぎ合ったり語り合ったりするのも、良い時間の過ごし方に違いない。
     テーブルに並べられたごちそうを、とにかく食べていくのもきっと素敵だ。
     どんな時を過ごすかは、貴方次第。

     気の早いもんめは、すでに、ローストチキンの一本を手に持ってかじりつこうとしている。
     そんな彼女が、通りがかった生徒に気付き、微笑みかけた。
    「メリメリクリスマス! 一緒にパーティしようぜ!」


    ■リプレイ

    ●パーティーの始まり
     ツリーにはサンタやスノーマン、天使、ベル、リース、靴下などが飾り付けられていた。
     電飾の光をアクセサリやオーナメントが反射し、星のように輝く。
     そのツリーの下で、【JC】の四人がグラスを手に、立っていた。
     音頭を取るのは、尚戸。
    「本日はお日柄もよくー……じゃなくて。皆ダイスキ! きょーの日に乾杯!」
     尚戸が声を張りあげ、グラスを掲げると
    「私も大好き! かんぱーい!」
     茉莉や皆が尚戸のグラスに自分のグラスをぶつけた。
     茉莉はグラスをあおり、ジュースを一気飲み。ぷはー、今日はこの一杯のために頑張った! と、満足げに笑う。
     希沙は乾杯した後、
    「じゃあ、食べよ! ふおぉ、めっちゃ豪勢! 見て茉莉ちゃんお寿司もある! 銀シャリ輝いてる!」
     大興奮の顔で、ごちそうのテーブルへ、まっしぐらに駆けだした。
     藤乃は希沙の素早さを見て、まあ、と目を丸くする。
     とりあえず近くの食べ物を一口。先とは別の意味で目を見開く。
    「希沙ちゃん、このトルティージャ、凄く美味しいですわ!」
     呼びかけたのは、美味しさを分かち合う為に。

     【リネン】の面々は大きめのケーキがのったテーブルを囲んでいる。
     円蔵はヒヒっと妖しく笑い、
    「皆さん各自食べ物は確保しましたか? 飲み物は? では――メリークリスマスですよぉ!」
     クラッカーをバン! と鳴らす。
     華月も続いてクラッカーを構えた。三つのクラッカーを同時にもって、紐をいっぺんに引き――パパパパン! 大音量。
     華月は口を半分開けたまま目をパチクリ。
    「……流石にびっくりなの」
     雫は、「クラッカーの三刀流、かっこいいです!」と拍手する。
     綸太郎はその雫の顔を見て、目を丸くした。雫が鼻眼鏡をしていたからだ。
    「昔見た雑誌で、これを装着し卓を囲む皆さまがとても楽しそうで、憧れていたのです」
     目を輝かせはにかむ雫。綸太郎は、
    「では、今日はその雑誌の人以上に、楽しみませんとね。……似合っていますよ」
     優しく笑った。

     【日常識部】の三人も、それぞれめかし込んでいる。
     黒い軍服のシュラハテンと赤いイブニングドレスの摩耶。二人の前で、番は気恥ずかしそうな顔。
    「シュラも神崎も……その、似合ってるよ、うん」
    「そうですか。ところで荒神さん。顔が赤いようですが……」
     相槌を打ちつつも、首をひねるシュラハテン。
     確かに番の頬は赤い。番は、なんでもない、と視線を泳がせた。
     摩耶は自分の顔に白いひげをつける。
    「良い子にはサンタさんが七面鳥をプレゼントだ」
     大皿をテーブルにどん! と置く。皿には、ローストターキーが大量。
    「メリークリスマス!」
    「「メリークリスマス」」
     祝い合う三人の声。

     【大帝都草野球クラブ】のテーブルにも、祝う声は届く。
     ケイは遠い目をしていたが、声を聞いて我に変える。
    「とにかく料理を頂きましょう。おや、あそこのカレーは、ライスを雪だるま型にしているのですね。後でシチューと一緒に食べましょうか」
     気を取り直し、料理を眺めるケイ。
     織姫はツリーを見上げていた。
    「この木は伝説の木らしいけど、何の伝説だろうね? もしかして、嘉納さんと室武士さんが……」
     ツリーから鋼人へ視線を移し、織姫はピンクの目を輝かせる。
     視線を受けて、鋼人は歯を見せ爽やかに笑う。
    「ははは、嘉納君と僕が? 謹んで辞退します……それより、妹が持たしてくれたチーズスフレがあるのですが」
     華麗にかわし、スフレで話題を変えた。
     空はスフレを受け取り、ゆっくり咀嚼する。
    「うん……このスフレも、美味しいね」
     そしてぽつり呟く。
    「ありがとう」
     きっと、スフレのことだけでなく、皆がこれまでしてくれたことへ感謝しているのだろう。
     武道はスフレを幾つか摘んでいたが、通りすがった女――もんめに、声をかけた。
     空いたテーブルに肘を乗せ、誘う
    「地央坂、腕相撲しないか? 何か賭けてもいいぜ」
    「そいつぁ燃える提案だ」
     唇の端をつりあげどう猛に笑みながら、もんめもテーブルに肘を置く。
     二人は互いに相手の右手を握り、筋肉を盛り上げた。
     力比べが――始まる。

     【K.H.D ~これから本気出す~】の部員も勝負の最中。
     部員は莉那が作ったケーキ二種から、一つ選ばなくてはいけない。
     片方は普通のケーキだが、もう片方は……。
     結希は「もう片方」――つまり、50倍激辛カレーケーキを食べてしまった。
    「お、おかしい……ケーキなのにカレー味で辛さと甘さが……まずい」
     汗をだらだら流している。
     海飛は激辛ケーキを食べ、顔を赤く染め、
    「!?」
     声にならない悲鳴。
     レナードはあえて両方のケーキを食べていたが、
    「分かってた、わかってたけどさぁ……これは酷いよ……」
     激辛味に目を潤ませるレナード。
    「やった、甘い! 普通のだ。めっちゃラッキー!」
     夏緒瑠はガッツポーズ。幸せそうに甘味を堪能する。
     依沙は激辛カレーを貰ってしまったようだ。持ってきた白桃紅茶で慌てて口直し。
     落ち着いてから皆を見ると、激辛を当てたものも普通のを当てたものも皆、大はしゃぎ。
    「にぎやかで楽しいです」コメントする依沙。
     企画者の莉那もご満悦。
    「皆、喜んで食べてくれて、なによりだ!」
     胸を張って言う彼女の背後から、忍び寄る影が一つ。
     影――水面は莉那の不意を突き、莉那のノーマルケーキを激辛ケーキにすり替えようとするが、
    「甘い!」
    「失敗ッス!」
     莉那が気付き、皿を持ち上げガード。
     悔しがる水面。勝ち誇る莉那。
     数人が、二人を微笑ましげに見守っていた。
     ケーキを食べた後は、プレゼント交換。
     水面が引き当てたのは、銀のバングル。
     送り主の日照は、
    「それなら、男も女も使えるだろ? だからそれにしたのさ」
     と説明。ちなみに日照が受け取ったのは、アルパカに似た埴輪。
     結希には革製バングルが、海飛にはスノーマンがデザインされたニット帽が、夏緒瑠には、ダンベル等女子力強化グッズが、莉那には入浴剤詰め合わせが、レナードにはノルディック模様のクリスマスカラーのマフラーが、依沙にはクリスマスツリータイプの置き型ルームライトが、それぞれ当たった。
     知信は自分が貰った、タテゴトアザラシの安眠枕を持ち上げ見つめていた。
     顔をあげ皆に提案する。
    「ねえ、プレゼントと一緒に皆で写真を撮らない?」
    「いいね」「撮ろう撮ろう」と賛同する部員達。

     【自転車部】でも、プレゼント交換が行われていた。
     日方が当てたのは、もこもこの耳当て。
    「ちょ、可愛すぎんじゃね……でも、ありがとな、大事にするぜ」
     日方は不満そうに言いつつ、けれどそれを、しっかり抱え込んだ。
     耳当ては司からの贈り物。
    「自転車乗る時、耳が冷たくなるので、良いんじゃないかと思いまして」
     そう、プレゼントには司の優しさが籠っていた。
     司が受け取ったのは、細身のマフラー留め。
     烏芥が司にふわり声をかける。
    「柊さんも冬はマフラーで、温かくなさってくださいね?」
     受け取ったトカゲ型の反射板キーホルダーを、大切そうに指でなでながら、烏芥は言う。
     慧樹もプレゼントの箱を豪快に開け、入っていたガラス細工の自転車に歓声。
    「おっ! ありがとうー! 大事にするな!」
     満面の笑みの慧樹。

    ●食べて作って、見て、クリスマス
     【箱庭王国。】の卓では、
    「千夜先輩、御皿、山盛リ! 欲張リさン!」
     夜深が千夜の皿を指差していた。千夜は嬉しそうに答える。
    「ふふ、だって食べたいもの沢山なんだものー。壱寸崎さんだって、いっぱい堪能しようとしているじゃない?」
    「諾……ダて、美味シそ!」
     そう、二人の皿には七面鳥やチキン、キッシュなど料理が山のように盛られているのだ。
     お勧めの品を教え合ったり分け合ったりしつつ、時を過ごす四人。
     料理の山も片付いたころ、篝莉が別の皿を持ってきた。
    「ねぇねぇ、これもとっても美味しいの……!」
     皿には、フルーツとチーズのタルト。盛られたフルーツが光を反射していた、
     ひつじも勧められるままタルトに手を伸ばすが、ふと、皆の顔を見つめた。
    「……みんなとっても楽しそう……。僕もみんなと一緒に過ごせて嬉しい……だから、ありがとう」
     ひつじはふんわり笑みを浮かべる。一瞬ではあったが、とても嬉しそうに。

     【袋小路の廃ビル】のシグマは、狐色の平べったい物を積み重ねている。
    「こうやって、ここをこう……よし、土台は完成!」
     積み重ねたのは、大きさや形の違うパンケーキ。
     リアは持ってきた袋を探る。
    「ふふっ、飾ったら本物みたいになるかしら?」
     サンタのシュガードールやチョコの家を取り出し、パンケーキの上に配置していく。
     ナーシャは腕を組んだ。
    「あの大きい樹みたいにしたらいいんですよね? じゃあ、クリームをモールに見立ててっと」
     絞り袋をとり、パンケーキの外周をクリームで飾る。クリームの上に電飾に見立てたドライフルーツやチェリーを載せた。
     そして、
    「てっぺんに飾りを載せれば完成ですね! 星人と一緒にしていい?」
     徹がビハインドの星人と二人で、一枚の星型クッキーを手に取った。徹達はそれをパンケーキの一番上に、載せる。
    『パンケーキのクリスマスツリー』の完成だ。
     春陽が拍手したあと、カメラを構えた。
    「食べる前に、ツリーと一緒に写真を取りましょう。はーい、並んで並んでーっ」
     パンケーキツリーを背にした皆の写真が撮影される。皆の表情は、幸せそうで。

     写真を撮る者らを見つつ、ナハトムジークはチーズ入りちくわを咥えた。
    「(情勢次第でどうなるか分かったもんじゃないが、こういうのも悪くないな)」
    「お兄ちゃ……ナハトさん!」
     彼に、柚季が走り寄ってきた。柚季の手には、ベリーのショートケーキを載せた皿。
    「竹輪だけじゃなくて、これも食べてみてよ! 美味しかったの」
     柚季は嬉しそうな声で、ケーキを勧める。
     ナハトムジークは眩しそうに彼女を見ながら、ケーキを食べるために、ちくわを全部口の中へ押し込んだ。

    ●パーティ後半戦
     時間が経過して。
     優歌はココアを飲みつつ、ごちそうを食べる皆を眺めていた。
     そろそろお腹が膨れ、休憩したり、他のことをする者もいる。
     優歌はふと、赤い魔女風サンタ帽子の女性、真琴に目をとめる。
     真琴は「来年はいいこと、あるかなタロット」と幟を立て、テーブルにカードを並べていた。希望者を占うらしい。
    「私も占ってくれます?」
    「はい、金銭運でも恋愛運でも、バッチリ占っちゃいます!」
     優歌が言うと、真琴は鮮やかな手つきでカードを繰り始めた。

     少し離れた席で、椿姫とセシルも今は食べる手を止め、談笑している。
     不意に椿が声をあげた。
    「わ、わたしの家に来るのか?」
     セシルは答える
    「うん。さっき食べた苺のタルト美味かっただろ? だから、後で同じのを焼いて、椿姫んちに持ってこうって思ったんだが」
     都合が悪いか、と瞬きするセシル。
     椿姫は慌てて言葉を紡ぐ。
    「い、いや……あ、あぁ、うん……何もない所でよければ……その……うん、来てくれ」
     若干どもりつつも、承諾する椿姫。

     一方。大輔は真剣な瞳を、目前の梗鼓に向けていた。
    「あン時。お前に、『あの言葉』を言われた時から、ずっと」
     息を吸い込み、叫ぶ。
    「好きだ! 俺の女になれ!」
     梗鼓は持っていたスプーンを落とし、固まる。そして噛みつくような口調で、
    「……答えは、決まってるでしょ!」
     言うと同時、ケーキのクリームがついた唇を、大輔におしつける。
     恋人の誕生。
     梨伊奈は赤い頬を押さえ、二人を見つめていた。
    「わたし、二人が恋人になった証人、でいいのかな?」
     梨伊奈はパセリを口に。仲間を祝福しながらのパセリは、いつもより甘い。
     
     【LAST:DUNGEON】の面々は今はツリーを眺めていた。
     神楽がパソコンと、ツリーのイルミネーションの一つを、配線でつないでいる。
    「これで……キーボードを押せば、おっけーっ! 綺麗でしょー頑張ったんだよー」
     神楽がパソコンを操作すると、イルネーションが点滅する。
     光の一つが消え、別の場所が光る。まるで光が移動しているように見える。
     メンバーから上がる歓声。
    「すっげー! やっぱクリスマスは綺麗なツリーだよな!」
     亮も感嘆しつつ、パシャパシャ写真を取っていく。
     凪月が空になったグラスに反射する光を見ながら、ぽつりと呟いた。
    「この前の戦争はホントお疲れ様。皆が無事ではなかったかもだけど、それでも……」
     ネオンは強く頷く。
    「確かに、全てがハッピーエンドと言うわけではなかったが、戦争も無事終わって、こうして楽しく過ごせることに感謝、だな」
     そう言ってネオンは、凪月のグラスにジュースのおかわりを注ぐ。
     ティルメアはカップに入ったコンソメスープをすすり、凪月とネオンに同意。
    「うん、ほんと感謝。ご飯もおいしかったし、イルミネーションも綺麗だし―」
     純は普段は表情を浮かべない顔に、笑みを浮かべた。
    「来年も、またこうして皆でクリスマスしたいな、本当に」
     シュウは純の顔を見つめ、また他の五人の顔をひとつひとつ見つめる、
    「なら、生き抜いていかねぇとな――来年もその先も」
     彼の青の瞳には、決意の光。

     多くの者たちが食べ、語り、笑い、そして祈り、誓い、クリスマスの時を過ごしていく――。

    作者:雪神あゆた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月24日
    難度:簡単
    参加:54人
    結果:成功!
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