クリスマス戦隊サンタX5!

    作者:日向環


     とある町の片隅に、小さな老人ホームがあった。
     クリスマスが近付くと、こんな噂を良く耳にするようになる。
     クリスマスの時期、その老人ホームにサンタクロースの格好をして近付くと、5人のサンタクロースが出現して訪問を阻み、プレゼントを寄越せと称して命を奪っていくという。
    「また、今年も来てしまいましたな、この時期が」
    「恐ろしや、恐ろしや……」
     窓から外を眺めながら、お年寄りたちは寂しそうに言った。
    「儂らには、クリスマスは関係ない……」
    「最近じゃ、怖がって誰もこの時期にここに来てくれん」
    「なんのなんの、ホームの人たちがパーチーを開いてくれるじゃろが」
    「贅沢は言ってられんかの……」
     お年寄りたちは、ぼんやりと窓の外を眺めていた。


    「メーリークリスマース♪ ちょっと早いけど!」
     ミニスカサンタの衣装で現れた木佐貫・みもざ(中学生エクスブレイン・dn0082)は、パーンと勢いよくクラッカーを鳴らした。相変わらずテンションが高い。
    「クリスマスになると悪さをする都市伝説がいるのだ」
     その都市伝説は、クリスマスの時期限定で、ある老人ホームの近くに出没するという。
    「サンタさんの格好をしてその老人ホームに向かおうとすると、それを阻止しに出現するようなのだ」
     状況がレアなだけに、これまで危害に遭った者は少ないという。
    「でも、噂の方が一人歩きしちゃうんだよね。近付いただけでサンタクロースの変質者に襲われるって噂が広がっちゃってね、今じゃこの時期になると誰もその老人ホームに寄り付かなくなっちゃったの。もちろん、ホームに入ってるお年寄りの身内もね」
     職員がささやかなクリスマスパーティーを開催してくれるらしいのだが、そこでもサンタクロースの衣装は誰も着ないらしい。
    「お年寄りが可哀想だから、都市伝説をさっさと撃滅して、こんな噂を吹き飛ばして欲しいのだ」
     みもざはクラッカーを鳴らす。
    「都市伝説は、サンタさんの格好をして老人ホームに近付くと出現するのだ」
     5人のサンタクロースだ。
    「レッドがリーダーで、こいつが一番強いのだ。あとは、ブルー、グリーン、イエロー、ピンクのサンタがいるけど、こいつらは大して強くないのだ」
     ブラックやホワイトはいないらしい。
    「やつらは、サンタX5(サンタクロスご)と名乗っているのだ」
     ファイブじゃなくて、「ご」だということだ。
     攻撃方法は5人共通で、トナカイの幻影を撃ち出したり、強烈な眠りを誘う爆弾を投げたり、不思議なフィールドを展開して守備力を上げたり傷を癒したりしてくるという。
    「どっかで見たことがある気もするけど、気にしてはいけないのだ」
     なんとか適合者……とか?
     
    「都市伝説をサクッと倒したら、老人ホームの方に来て欲しいのだ」
     みもざのいとこのお姉さんたちが、ボランティアでクリスマスパーティーを開催するのだという。
    「お年寄りの皆さんに、サンタさんの格好でプレゼントを配って欲しいのだ」
     みもざは一足先に老人ホームに行って、飾り付けを手伝うつもりらしい。
    「お年寄りの皆さんに、楽しいクリスマスをプレゼントするのだ!」
     みもざは景気づけに、もう一回クラッカーを鳴らした。


    参加者
    風間・薫(似て非なる愚沌・d01068)
    マリア・スズキ(悪魔殺し・d03944)
    文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)
    猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)
    清流院・静音(ちびっこ残念忍者・d12721)
    ソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)
    三園・小枝子(トリカゴノユメ・d18230)
    志穂崎・藍(中学生ストリートファイター・d22880)

    ■リプレイ


    『クリスマス戦隊、サンタX5!!』
     ずっどーーーん。
     赤、青、黄、緑、桃色のカラフルな爆煙があがる。
     格好良くポーズをキメる5人のサンタクロース。
    「黄色が男か女かで世代が分かれそうだな」
     黄色い人はカレー好き。なんて言うと歳がばれる。
     文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)は、ふむと顎を撫でる。声とスタイルを見る限り、サンタイエローは女性らしい。ブルーも女性っぽい。
    「青が女とは…」
    『ブルーがおにゃのこなのは、レアだろ、ふふん』
     サンタレッドは自慢げに笑った。秋葉原の非公認な人を含めれば、女性ブルーは5人(2013年現在)だ。あ、秋葉原の非公認ブルーは初代と2代目がいるので6人か。あってる?
    「あとテーマソングとかあるのかね」
    『あるぞ。ずんちゃ、ずんちゃ…』
    「歌わなくていい!!」
     都市伝説のくせに陽気である。
    「戦隊さんみたいですが、クリスマスに悪さをするのは許せません!」
     戦隊の風上にも置けないと、ソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)はかなり、おこである。ヒーローとしての正義の心が、メラメラと燃えている。
    「変身です!」
     ソフィがスレイヤーカードを収納したカードデッキを掲げると、腰にベルトが出現する。
    「カラフルキャンディ!」
     すちゃっとデッキをベルトに装着。
    「彩り鮮やかは無限の正義! ソフィ参ります!」
    『おお…!!』
     クリスマス戦隊の皆さんが、ちょっと感動している。
    「サンタクロースを騙る邪悪なるもの。例え天が許しても私達は貴方達を許しません!」
     日本でのクリスマスは老若男女が楽しむイベント。それを阻むものは、たとえサンタクロースであっても許せない。志穂崎・藍(中学生ストリートファイター・d22880)の声が凜と響く。
    『ええい、何をごちゃごちゃと。プレゼントを寄越せ~~~!!』
     5人のサンタは、テーマソングを口ずさみながら襲い掛かってきた。戦闘の場面で流れるのはテーマソングが鉄板である。でも悲しいかな、自分たちで歌うしかないらしい。
    「メリークリスマス! あんさんらにプレゼントをおみまいするで!」
     クリスマスは皆で楽しむもの。だから、それを邪魔する不届き者は此処で討つ。風間・薫(似て非なる愚沌・d01068)の死角からの強烈な一撃を浴びて、グリーンが消滅する。
    「…弱い」
     マリア・スズキ(悪魔殺し・d03944)がボソリと一言。大して強くないとは聞いてはいたものの、一撃で落ちるとは情けなさ過ぎる。マリアの霊犬も、「自分やることあるんすか?」と、上目遣いに彼女の顔を見上げている。
    『グリーン…。お前の仇は俺たちが取る! いくぞ、みんな!!』
    『『おお!!』』
    『トナカイ……ランページ!!』
     いちいちポーズを取らなくては技が放てないのは、戦隊戦士の悲しいサガか。
     赤、青、黄、桃色のトナカイの幻影が、無駄に派手な動きをしながら灼滅者たち目掛けて突進してくる。緑がいないのが残念だが。
    「不思議な既視感がござるな。ナイトなんちゃら…?」
     悪夢の力をその身に取り込んだ者たちが、いたとかいないとか。清流院・静音(ちびっこ残念忍者・d12721)の脳裏を閃光の如く駆け抜けていく、白い馬の幻影。きっとそれは、前世での記憶。感慨に浸っている静音に向かって突撃してきた青いトナカイを、影千代が身を挺して防いだ。
     三園・小枝子(トリカゴノユメ・d18230)の霊犬・リックは、その鼻っ面で桃色のトナカイを受け止める。
    『ぴぎゃっ』
     変な悲鳴が聞こえたかと思ったら、サンタピンクが猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)の鬼神変でべちゃっと潰されていた。何故かムキムキマッチョなピンクだった。男だったのかもしれないが、今となっては確かめる術はもうない。
    「悪の戦隊は私達が砕きます! いくよ、ブラン!」
     ソフィはライドキャリバーのブランメテオールに飛び乗ると、サンタブルーに向かって突っ込んでいく。
    『いや~~~。来ないで、来ないで!!』
     投げ付けられる爆睡爆弾を巧みに躱し、疾走するブランメテオール。イエローとレッドも爆弾を投じてくる。
    「かっこいいかも…」
     爆発を華麗に回避し、爆煙を突き抜けて進むソフィとブランメテオール。仲間たちからも拍手喝采だ。
     爆弾の範囲外にいるはずのマリアが、何故か爆睡している。とっても気持ちよさそうです。あ、寝返りを打った。って、普通に寝てます、この人!
     サポートで入っていた華雪・琴音(自称魔法少女・d23308)が、ブレイドサイクロンで援護する。
    『ブルー! イエロー!』
     容赦なく繰り出される灼滅者たちの攻撃に晒され、サンタブルーとサンタイエローも逝った。
    『おのれ! サンタフィールド展開! サンタレッド・スーパーモード!!』
     それっぽいポーズを取ったが、別に超パワーアップしたわけではない。単に【盾アップ】が付いただけだ。彼的にはこれがスーパーモードらしい。
    「迷惑、だから…そろそろ、消えて」
     目を覚ましたマリアの尖烈のドグマスパイクが炸裂。サンタレッドの体に突き刺した杭をぐりぐりと回転させる。寝起きの為か、ご機嫌がよろしくない。
    『痛い痛い痛い』
     うん。見た目的にもかなり痛そうだ。
    「サンタだったらほんまもんのサンタの仕事せぇや!」
     薫の閃光百裂拳が続く。
     おじいさんたちを悲しませる都市伝説なんて許せないと、小枝子のフォースブレイクが追い打ちを掛けた。
    「ヒーローらしさなら私の方が負けません!」
     とうっとばかりに、ブランメテオールから跳躍し、ソフィはご当地キックを放った。
    『く……クリスマス戦隊は……決して滅びぬ……。クリスマス万歳!!』
     サンタレッドは華々しく散っていった。
    「終わったな」
     サンタ衣装の乱れを整える咲哉。
    「このまま、ホームまで練り歩くか」
     危険はもうないのだと、周辺住民にアピールするのも大事だ。サンタの衣装を着たまま、老人ホームへと向かうことにした。
    「噂の払拭はしませんとね」
     藍が笑顔で肯く。
    「毎度お馴染みサンタクロースでございます。ご家族、ご友人もお誘い合わせの上お気軽にご来場下さい」
     独特の言い回しで、仁恵はご近所さんに拡声器を使ってアピール。何事かと窓から顔を出している人たちもいる。更には、通りすがりの人たちにお菓子を配るサービス付きだ。
     小枝子サンタとリックが元気良く後に続く。元気だけなら自信があると、周辺住民の皆さんに元気のプレゼントだ。
     黒いサンタ服に赤いマフラーの静音が、影千代と共に屋根から屋根へと飛び移る。これぞ、忍者サンタである。そのトリッキーなパフォーマンスに魅入られた子供たちが、歓声をあげながら静音を追い掛けていく。
    「どうして、クリスマスに、なると…変なの増える、かな」
     仲間たちに向かって言った言葉ではない。都市伝説に対しての感想だ。
     寂しいなら家族と、教会に来れば良いのにと思うマリアだった。
    「せっかく楽しいパーティをしようとしたら、変な奴らに襲撃をされるだなんて、悪夢のクリスマスだったでしょうて」
     仁恵は小さく肩を竦めた。はた迷惑な都市伝説である。
    「ご老人の寂しさやらが歪んだ都市伝説にござろうか」
     子供たちに囲まれて大人気の忍者サンタは、軽く顎を撫でた。


     老人ホームでは、先に到着していた者たちが、職員の皆さんと協力してクリスマスパーティーの飾り付けを行っていた。
     仁恵が到着したら一緒に料理を作ろうと、樹・由乃(温故知森・d12219)とエルメンガルト・ガル(ウェイド・d01742)は下ごしらえ中だ。
     ミニスカサンタの衣装で飾り付けを行っているのは、香祭・悠花(ファルセット・d01386)と木佐貫・みもざ(中学生エクスブレイン・dn0082)の2人だ。悠花の霊犬・コセイは、今はお年寄りたちと遊んでいる。
    「みもざさん。向こうは無事に終わったみたいです」
     メールをチェックして、悠花は言った。咲哉から任務完了のメールが届いたらしい。
    「お姉ちゃん! みんな来ちゃうって!」
    「ひえ~~~。みんな急いで! って、そこ! 喧嘩しない!」
     大柄なサンタと小柄なミニスカサンタが、クリスマスツリーの飾り付けで、がるるがるるといがみ合っている。2人とも、何故かカウボーイハットを被っていた。
    「ま、間に合うかな……。あはは~」
    「お姉ちゃ~~~ん」
     やけに豪華な純白のキツネのマフラーを巻いているのが、どうやらみもざの従姉らしい。
     賑やかなサンタクロースの集団が到着する頃には、どうにかこうにか飾り付けは完了していた。
    「おかえりなさーい。美味しいお茶がありますよー!」
     戻ってきた咲哉たちを、悠花とコセイが出迎える。間もなく、パーティー開始の時刻だった。


    「このメリークリスマスは皆はんのもんやで。…メリークリスマス…皆はんに幸せが沢山訪れる事を願って…」
     薫の声が会場内に響く。
    「メリークリスマスです♪」
     ソリ風に飾ったブランメテオールに乗ってソフィサンタが登場すると、お年寄りたちの間から拍手が沸き起こる。
     ゴージャスモードで華麗に変身した薫が、クリスマスソングを歌いながら登場してくる。
    「めりーくりすますですよ」
     白いプレゼント袋を背中に担ぎ、仁恵サンタが続く。
    「サンタ訪問で……!」
     仲間たちの派手な登場に緊張したのか、藍は足が縺れて転んでしまった。
    「てへへへ」
     と、照れ笑いを浮かべて愛嬌で誤魔化す。
    「可愛い、可愛い」
    「気にしないでね」
     お年寄りたちから、暖かい言葉が投げ掛けられる。
    「メリー・クリスマッッッッ!?」
     窓枠を乗り越えて颯爽と登場……するはずだった咲哉サンタは、二階のベランダから降りるために垂らしたロープに足が絡まり転倒!
    「だらしないぞ」
    「しっかりせい」
     そして浴びせられるブーイング。とはいえ、笑っているのでお年寄りたちも本気で言っているわけではない。
     大勢のサンタクロースの登場に、お年寄りたちは笑顔、笑顔だ。ずっと、こんなクリスマスを待ち侘びていたのだろう。
    「今日はわたしたちと楽しみましょう!」
     小枝子が少し緊張気味にパーティーの開始を宣言した。
     華やかにサンタクロースが登場した後は、お楽しみのパーティーである。


     マリアは教会でも配っている手作り菓子をお年寄りたちにプレゼントすると、催し物の準備を始めた。職員の人たちの仕事を手伝ったりと、忙しく動き回る。
     藍はお年寄り一人一人に、丁寧にプレゼントを配り始めた。

    「クリスマスってなんでしたっけ」
     稲荷寿司を作りながら、首を傾げる由乃。焼き菓子セットを節分の豆まきが如くバラ撒いてきた仁恵が、とくとくと説明する。
     スイートなサンタのコスプレ姿のエルメンガルトは、そんな2人の隣でちらし寿司を作っていた。
    「ところでエルさん。当然ちらしずしって知ってますよね」
    「えっもちろん知ってるよ。スメシに刻んだ魚と玉子焼きを乗せてうちわで扇ぐ! これだよね?」
     だいたい合ってる。
     ご馳走作りを2人に任せ、仁恵はお年寄りの話し相手に向かう。
    「うん、上手に良く出来ました。ユノちゃんのいなりずしもおいしそ」
    「あっこら」
     伸びてきたエルメンガルトの手を由乃がペシリ。
    「痛い! まだ手はつけてないから!」
    「しかしどうも孫を見る目で見られている気がしてならないんです」
     小学生の孫が頑張ってるみたいな視線を感じると、由乃はちょっと苦笑い。身長が低いので、間違われても仕方がないと諦めるしかない。向こうでお年寄りの相手をしている仁恵も似たようなものかもしれない。

    「ほーらコセイ、咲哉サンタからプレゼントだぞー」
     咲哉がリボンをかけた鯛焼きを差し出すと、「わふっ」とコセイが飛び付く。
     美味そうに鯛焼きを頬張っている隙にと、コセイをもふもふ。
    「こらー!? またコセイにたい焼き食べさせてー!?」
     一心不乱にもぐもぐしているコセイに気付いた悠花が、大慌てで駆け寄ってきた。
    「悠花もみもざも食うか? 美味いぞ」
     とてもイイ笑顔。
    「わふっ」
     コセイの横に並んで鯛焼きをお強請りしたみもざに、ほかほかの鯛焼きを与えると、咲哉は逃げるようにお年寄りたちのところへ向かう。
     お茶請けにぴったりな和菓子セットをプレゼントすると、サンタや雪だるま形の練り切りや、大福に、羊羹をテーブルの上に広げて、お年寄りたちとまったりお茶飲みながら話を始めた。
    「若い子はええのう。ええのう」
    「長生きはするもんじゃ」
    「生足は素晴らしい、でもニーハイも捨てがたい、むむむ…」
     目移りしてしまう。
    「こらー咲先輩! お姉ちゃんの生足じろじろ見るなー」
     ぎくっ。
     取り敢えず、もう一度鯛焼きで懐柔しておいた方が良さそうだ。

    「はい、出来上がりです♪」
     持参した折り紙で動物を折ると、ソフィはそれをそのままお年寄りたちにプレゼントしている。懐かしがって、目を潤ませているお婆ちゃんもいた。
    「転んだサンタさんのクッキーは、食べやすくて美味しいね」
     転んだことをネタにされつつ、お婆ちゃんたちと交流している藍。歯の弱いお年寄りでも楽しめるようにと、工夫したクッキーだ。とても気に入ってもらえたらしい。
     実は人見知りだった小枝子も、今は随分と馴染んでいるようだ。初めは途切れ途切れだった敬語も、だいぶ自然になってきている。明るく、にこにことした笑顔は、お年寄りたちも笑顔にする。リックも大人気だ。
     場が一段落すると、小枝子はお婆ちゃんにお手玉を教わり始めた。
     会場に設けられた小さな舞台では、各々企画したパフォーマンスを披露していた。
     静音に贈られたマフラーを首に巻きながら、お年寄りたちを固唾を飲んで見守る。
     静音がクルクルと回転したらあら不思議。黒いサンタが赤いサンタに変身だ。
    「忍法、サンタ変身でござるよ」
     拍手喝采。
    「冬は寒うござるからな。暖かくして風邪など召されぬようしてくだされ」
     礼儀正しく一礼し、静音は舞台を降りた。
    「ん…大丈夫、寝てない」
     霊犬の気配を感じて、うっすらと目を開けるマリア。どうやら、会場の隅っこで腰を下ろして休憩している間に、居眠りをしてしまったらしい。
    「リクエストがあれば何なりと。良ければご一緒しましょ」
     薫が賛美歌系のクリスマスソングをお年寄りたちと歌い始めると、マリアのスイッチが入った。
     慈愛と感情の籠ったマリアの歌声を、お年寄りたちはうっとりした表情で聞きいる。
     お年寄りたちは本当に楽しそうだ。
     素晴らしいクリスマスプレゼントになったに違いない。
    「お爺ちゃん、お婆ちゃん、お孫さんとかお子さんが大勢来ぃはるとえぇなぁ」
    「来年は、もっと楽しくなると良いですね」
     薫と仁恵がそう言うと、お年寄りたちは何度も肯く。
     都市伝説はもう現れることはない。
     きっと来年は、身内も参加しての楽しいクリスマスパーティーになることだろう。

    作者:日向環 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月25日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 4
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