クリスマス商戦異常あり

    作者:J九郎

     クリスマスを目前に控え、ショッピングモール内にあるオモチャ屋はたくさんの親子連れで賑わっていた。
     特に人気なのは、某人気特撮番組に出てくる変身ベルトだ。なるべく多くの客に行き渡るようにという配慮からか、『お一人様1点まで』という張り紙までされていた。だが……。
    「その変身ベルト、全て買い取らせてもらうぜ」
     黒いスーツにサングラス姿の2人組が、傲然とそう店員に言い放った。
    「お客様、こちらはお一人様おひとつまでで……」
     困惑する店員に、スーツの男はニッと笑みを浮かべると、
    「まあまあ、そんなケチくさいこと言いなさんな」
     店員に近づき、そっとその手に札束を握らせる。それは、変身ベルト全部を買い占めた金額の、さらに十倍はあろうかという大金だった。
     店員はしばらく逡巡した末に、『お一人様1点まで』の張り紙の上に『ご好評につき完売いたしました』という張り紙を貼り付け、スーツの男たちに変身ベルトの詰まった箱を渡した。
    「そうそう、それでいい。金の魔力に勝てる人間なんて、いやしないのさ」
     クリスマス商戦に今、不穏な影が差し始めていた。
     
    「嗚呼、サイキックアブソーバーの声が聞こえる……。ソロモンの悪魔配下の強化一般人が、オモチャを買い占めていると」
     神堂・妖(目隠れエクスブレイン・dn0137)は陰気な様子で淡々とそう告げた。
    「……彼らは街中のオモチャ屋で、人気のあるオモチャを買い占めてる。その上で買い占めたオモチャを、値段を吊り上げて転売してるみたい」
     それはダークネスの企みとしてはずいぶんとせせこましい気がする。だが、彼らの目的は決して金儲けなどではない。
    「……たとえば、買い占められてしまったことでクリスマスプレゼントにもらえるはずだったオモチャがもらえなくなった子供たちは絶望して心の底に眠るダークネスを目覚めさせてしまうかもしれない。……無理して彼らが吊り上げた値段でオモチャを買った大人も、予想外の出費で経済的にも精神的にもダメージを受ける」
     オモチャを楽しみにしていた子供たち(と、一部の大きなお友達)、子供達のためには多少の無理な出費も我慢してしまう親たち、純粋に作品内に登場するアイテムを欲しがるマニアに、稀少品であればあるほど欲せずにはいられないコレクターたち……。そんな人間たちの心理につけこんだ、巧妙な企みなのだ。
    「……問題は、彼らのアジトの場所が分からないこと」
     だからまずは、買い占めにやってくる二人組から、アジトの場所を探り出す必要がある。
    「……力ずくで聞き出すか、そっと尾行するか。方法はみんなに任せる」
     ただし、二人組が出現するのは人手の多いショッピングモールだ。戦うにせよ跡をつけるにせよ、人混みが邪魔になるのは間違いない。
    「……アジトには、彼らのリーダー格である小金井という強化一般人と、配下の3人の強化一般人がいるはず」
     買い占めに出ている二人組と合わせ、最大で6人の強化一般人を相手にする必要があるということだ。
    「……小金井はお金でみんなを買収しようとするけど、惑わされないよう注意して」
     また、小金井は既に闇に染まりすぎているため、元に戻すことは出来ないが、他の強化一般人はKOすれば元に戻すことができるようだ。
    「……クリスマスに子供達の夢を壊そうとするダークネスの所業、放ってはおけない。みんな、絶対にダークネスの企みを阻止して」
     妖の言葉に、灼滅者達は力強く頷き返した。


    参加者
    アプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)
    古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    佐々・名草(無個性派男子(希望)・d01385)
    綾峰・セイナ(赤点の女王様・d04572)
    十五夜・名月(月光戦姫プレネルニカ・d16530)
    船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)
    藤浪・三保(フジサンガール三保・d21229)

    ■リプレイ

    ●金には金で対抗するの図
    「ヘッヘッヘ、この店での買い占めも順調だったな」
    「所詮世の中は金だからな」
     変身ベルトの詰まった箱を抱えて、二人組の黒スーツの男が、玩具屋を後にする。と、
    「お待ちになって!」
     突然、そんな二人を呼び止める少女の声が響いた。二人組が振り向くと、そこには3人の少年少女の姿。
    「その箱の中身、もしかして変身ベルトではありませんの? 実は今夜私の家でパーティーを開くのですけれど、景品にどうしてもその玩具が必要ですの」
     芝居がかったお嬢様口調で、そう早口にまくし立てたのは綾峰・セイナ(赤点の女王様・d04572)だ。
    「お願いします。どうしても今日必要なんです!」
     ESP“エイティーン”を使って18歳の姿になった十五夜・名月(月光戦姫プレネルニカ・d16530)も、必死に頼み込む。二人のやや後ろでは、大きなリュックを背負った佐々・名草(無個性派男子(希望)・d01385)が、「まだ荷物が増えるの?」といった表情で肩を落としている。
    「おいおい、嬢ちゃん達。無茶を言いなさんな。これは俺達がちゃんと金を払って買った物だぜ? はいそうですかと譲れるはずが……」
    「お金なら、ちゃんと用意しておりますわ!」
     黒スーツの男に皆まで言わせず、セイナは手に持っていたアタッシュケースを開いてみせる。ケースの中には、みっしりと札束が詰まっていた。
    「……おいおい、マジかよ」
     男達が思わず絶句する。
    「もし譲ってくれたら、おじさん達もパーティーに招待してもいいですから! だからお願いします!」
     黙り込んだ男達に名月が勢いよく頭を下げる。
    「ちょっと二人とも、声が大きいよ……。迷惑になるし、向こうで話そう? すいません、向こうで続き、よろしいですか?」
     二人の話し声と、札束の詰まったアタッシュケースに周囲の人の視線が集まっていることに気付いた名草が、セイナと名月を諫めつつ、黒スーツの男達に階段の方を指し示す。ショッピングモールにはエスカレーターやエレベーターも設置されているため、普段階段を使う人はほとんどいない。今も、人影が全く見られなかった。
    (おい、どうする? 俺達が買い占めに使った金額の、優に十倍以上あるぜ、ありゃ)
    (小金井さんに連絡するか? いや、こんな美味しい話、小金井さんに知られて上前はねられるのもつまらねえ。俺達で話をつけて山分けと行こうぜ)
     黒スーツの二人組は頷き合うと、先に階段へ向かっているセイナ、名月、名草の3人を追いかけていった。

    「子供たちの夢とサンタさんのためにも許すわけにはいかないっすよね」
     階段の踊り場に身を潜めて様子を伺っていたアプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)が小声で呟く。
    「全く、子供の夢奪おうなんて怪人じゃなくても言語道断よ!」
     その呟きに強く賛同の意を示したのは藤浪・三保(フジサンガール三保・d21229)だ。
    「でも、巧妙な企みというより、どうにも迂遠な作戦としか思えないの」
     作戦通り黒スーツの男達が誘い出されたことを確認しつつ、古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)が呆れたような顔を浮かべる。
     階段には今、智以子の張った殺界形成の影響で、灼滅者達以外は誰もいない。短時間なら多少の荒事をしても、誰も気付かないだろう。
    「まさかこんなのもハルファス軍の末端とか言わないでやしょうね?」
     男達が殺界形成の影響範囲に入った瞬間、真っ先に動いたのはギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)だった。ギィはすでに構えていた斬艦刀を、男達目掛け全力で振り抜いた。
    「ヒィッ!」
     咄嗟の事に対応しきれず、一人の男が吹っ飛ばされる。
    「な、なんだてめえら!?」
     突然踊り場から現れた灼滅者達に驚きを隠せないもう一人の男に、今度は船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)が動いた。
    「お金の力って怖いですねぇ。けど世の中ではお金で買えないものもあるのですよぉ。よくその身に刻んであげましょう」
     亜綾が腕に装着した縛霊手を階段に叩きつけると、彼女を中心に発生した結界が、男達を包みこんでその動きを封じていく。
     後はもう、勝負にもならなかった。何せ全力の灼滅者8人対全く戦闘を想定していなかった強化一般人二人である。男達はなんとか階段を使って逃走を図ろうとしたが、上に向かう階段には亜綾の相方たる”団長代行猫”烈光さんが、下へと続く階段には名草のライドキャリバー“轟天”が立ちはだかり、逃走を阻止する。
     そして、智以子の神速の居合い斬りが、逃げようとしていた男の一人を打ち据える。
     智以子が無言で鞘に刀を収めると同時に、男はその場に倒れ伏した。
    「これで最後よ! 三保の松原ダイナミッククラッシュ!」
     もう一人の男も、ほどなく三保の放った必殺技の前にダウンしたのだった。
     
    ●尋問にはカツ丼が不可欠
    「さあ、アジトの場所を教えてもらうっす。でないと、もっと痛い目に遭うっすよぉ?」
     目を覚ました男達に、邪悪そうな笑みを浮かべたアプリコーゼが迫る。別に拘束されているわけではないので、男達はなんとか隙を見て逃げだそうと周囲を見回すが、そんな彼らの鼻先に、ギィの斬艦刀が突きつけられた。
    「ああ、心配入らないっすよ。喋る口は一つで十分なんすから」
     にっこりと笑って恐いことを言うギィを前にし、男達は逃走を試みても無駄だと悟る。
    「カツ丼食べますかぁ? これ食べて場所を吐いたほうがいいですよぉ。大丈夫、腐ってはないので変なの吐かないでくださいね」
     亜綾がカツ丼を差し出すが、とても食べる気にはならないだろう。
    「わ、分かった! 話すから命だけは助けてくれ!」
     こうして灼滅者達は、今回の首謀者・小金井の潜むアジトの位置を突き止めることに成功したのだった。
     
    ●札束を積まれても反応は人さまざまで
     小金井のアジトは、ショッピングモールにほど近いオフィスビルの最上階にあった。
    「ここが玩具の転売屋のアジトっすか。ソロモンの悪魔が絡んでなければ、消費者相談センターに一報して終わるケースっすね」
     ギィがエレベーターホールから様子を伺いつつ呟くと、
    「買い占めから闇落ち誘導、とか、わかりにくいだけに厄介だね」
     名草が相槌を打つ。そして密かに、
    (……僕が欲しいものも買い占められる前にとっちめよう)
     とか思ってる名草だった。
    「どうでもいいから、はやく済ませて、コタツで暖まりたいの」
     智以子が日本刀“追憶の黒”の柄に手を添えたまま、そんなことを言う。
     亜綾は全員の準備が整ったのを確認すると、
    「みなさぁん、状況開始ですよぉ」
     と小声で合図し、アジトに通じるドアを蹴り開けた。同時に、むんずと烈光さんを掴んで室内に投げ入れる。
    「何事だ!? ……って、なんだ犬か」
    「なんだ犬か、じゃねえ! カチコミだ!」
     内部で混乱が起きたのを見計らい、まずは三保と名月、二人のご当地ヒーローが突撃する。
    「子供の夢と希望を奪おうなんて言語道断!! このフジサンガール三保が成敗してくれる!」
    「金の力に飽かせて子供たちの心を踏みにじるその非道、許すわけにはいかない! お前たちを倒し、みんなのクリスマスプレゼントを取り戻す!」
     二人はそれぞれにスレイヤーカードを構えると、解除コードを宣言した。
    「三保の松原の神代ここに! 高潮舞え!」
     三保はカードを手甲に装着し、松の木をモチーフにしたバトルスーツ姿に一瞬で変身する。
     一方、名月は無駄にキレッキレの変身ポーズを決めると、「月昂!」の掛け声と共に兎耳のスーツ姿に変身。
    「私は月より舞い降りた正義の使者! 月光戦姫プレネルニカ!!」
     高々と決め台詞を叫ぶ。
    「ああ! 二人ともかっこいいっす! あっしもそういうのやりたいっす!」
     遅れてアジトに入ったアプリコーゼが、あわててマテリアルロッドを振ると、杖から放たれた光の奔流が彼女を包み込み、
    「子供の夢と希望のため、あなたたちの悪事はつぶさせてもらうっす!」
     魔法少女っぽいフリフリミニスカ衣装にロングジャケット姿に変身し、ビシッとオフィス内で戸惑う男達に指を突きつけた。
    「やれやれ、何事かと思えば。ヒーローごっこなら余所でやって欲しいものですね」
     オフィスの最奥部にある豪奢なデスクに腰掛けていた30代半ばのビジネスマン風の男が、悠然と立ち上がる。
    「あんたが小金井さんっすか? あんたたち、誰の許しでダフ屋なんてしてるっすか? ちょいとお仕置きが必要っすね」 
     その男が小金井と判断したギィが、まっすぐに部屋を横切りつつ、「殲具解放」の掛け声と共に無敵斬艦刀『剝守割砕』を解放、そのまま小金井に向けて振り下ろそうとした。が、
    「やれやれ。これだから子供というものは。お前達、危険手当は出す。私を守れ」
     小金井が室内にいた3人の男達に指示を出すと、男達は自らの身を盾にして小金井をかばう。
    「部下を盾にするなんて、汚いわね」
     ならばとセイナはまずは配下の男達を排除すべく、拳の連打を部下の一人に叩き込んでいった。
     そこからは乱戦だった。オフィス内を敵味方のマジックミサイル(と、投げられた烈光さん)が飛び交い、小金井の部下達と前衛陣の拳や刀が交錯する。さらにはライドキャリバー“轟天”が駆け抜けながら機銃を掃射し、オフィス内は戦場さながらの様相を呈していた。
     そんな中、智以子は部下の男達の隙をつき、独り小金井に突撃をかけていた。
    「ふん、金の力にひれ伏しなさい」
     小金井が懐から札束を取り出し、オフィス内にばらまく。智以子がお金に気を取られて足を止めることを狙った行動だったが、智以子は黙々と小金井に迫り、マテリアルロッドを突きつける。
    「ぐうっ! 金の価値も分からぬとは、これだから子供というものは嫌いなのです!」
     呻きつつ後退する小金井。智以子は追撃をかけようとするが、駆けつけた部下の男に阻まれる。そしてそんな智以子の背後では、アプリコーゼがばらまかれた札束をこっそり拾い集めていた。
    「ほほう。そこの犬娘。君には金の価値が分かるようですね。どうでしょう、これで、私の部下になりませんか?」
     そんなアプリコーゼに、小金井が札束を取り出してみせる。
    「バカじゃないの? そんなことで、私達が惑わされると思って……」
     セイナが皆まで言い切る前に、アプリコーゼは全力で小金井の元に駆け寄り、札束を受け取っていた。
    「へっへっへっ、親分、あいつらどうしてやりやしょうか」
     挙げ句、さっそく揉み手して小金井に媚びへつらうアプリコーゼ。そんな彼女に、名月が黙って近づいていき、
    「アプリコーゼ、しょうきにもどって」
     棒読みで説得しつつ、思いっきりアプリコーゼをぶん殴った。
    「ぶげふっ!? はっ!? あっしは一体何を!?」
     周囲を見回し、仲間達の冷たい視線に気付いたアプリコーゼは思わず土下座する。
    「つい魔がさしただけでやんす、裏切った振りをする作戦っす!」
    「いや、札束を懐に入れつつ言っても説得力ないよ?」
     名草は思わずつっこんでいた。
     
    ●お金の暴力(物理)
    「往生せえやあっ!」
     小金井の部下が、渾身のアッパーカットを繰り出す。だが、ギィはその一撃を歯を食いしばって耐え抜いた。
    「強化一般人ごときにやられたら、魔法使いの従姉に笑われるっす!」
     そして、カウンター気味に繰り出された紅蓮斬が、男の腹部を切り裂く。その一撃で、男は力尽きたように倒れた。
     ほぼ時を同じくして。
    「これで終わりだ! ムーンライトソード・斬!!」
    「喰らえ、三保の松原キーック!!」
     名月の放った光の斬撃と三保の放った跳び蹴りが別の部下の男を戦闘不能に追い込み、
    「名づけてぇ、烈光さん直球ミサイルなのですぅ!」
     亜綾が、もうすっかりあきらめ顔の烈光さんを残る一人の部下に投げつけ、その一撃でその男も大の字に倒れ伏した。
    「さて、小金井だったっすか? あんたで最後っす」
     ギィが無敵斬艦刀を小金井に向けると、小金井は溜め息混じりに首を横に振った。
    「いやですねえ。金の価値も分からないバカな子供というのは。玩具を買い占められたことが、そんなに悔しかったのですか?」
    「別に。僕のクリスマスプレゼントは、買い占めるのは難しいだろうしね」
     名草の言葉に、小金井は即座に言い返す。
    「バカなことを。金で買えないものも、買い占められないものもこの世にはないのですよ?」
    「だって僕のプレゼントはお花の種だもの。『好きな人に、花の種をあげましょう』ってね」
     名草の回答に、小金井の顔が歪む。いくら金があっても、この世の花の種を買い占めることなど不可能だ。
    「ふん、そんな無価値なものに、意味はないんですよ。そこの犬娘。君なら金の価値が分かるでしょう?」
     小金井は先程の3倍の札束を取り出し、見せびらかすように振ってみせた。だが、アプリコーゼは不敵に微笑む。
    「買収なんて無駄っす! 賢いあっしは気がついたっすよ、今お金を受け取らなくても、おまえを倒せばそのお金は全部あっしのものにできるということを!」
     ドヤ顔で最低な台詞を吐いたアプリコーゼに、仲間達の冷たい視線が突き刺さった。
    「ああもう、これだから子供というものは! ならばそこの君、君はどうです? この金で、私の部下になりませんか?」
     次に小金井が目を付けたのは、セイナだった。だが、セイナは小金井の申し出をぴしゃりとはねつけた。
    「その程度のはした金で惑わそうなんて、小物すぎるわね。私を惑わそうと思ったら、これ以上は用意しなさい!」
     そして、先程の交渉に使っていた札束がぎっしり詰まったアタッシュケースで、思いっきり小金井をブン殴る。
    「ガハッ……!」
     金に固執し、金で全てを解決しようとした男は、金の前に敗れ去ったのである。
     
    ●クリスマス商戦異常なし
    「……今回は依頼のために用意したけれど、いくらウチがお金持ちだからって、普段はこんな使い方しないわよ? 本当よ?」
     戦いが終わって。セイナはアタッシュケースを掲げながら誰にともなくそんな弁明を繰り広げていた。
    「こんなところに、もう用はないの」
     一方、智以子は寒さに体を縮めながら、とっととエレベーターの方へ向かっていく。
     そして名月は、小金井が買い集めた玩具を、可能な限り回収していた。適当な理由を付けて店に返せば、玩具を買えなかった子供達も喜ぶだろう。
    「ところでこの変身ベルト、ひとつくらい……いや、ちゃんとお金を出して買うからね!」
     特撮好きな名月にとっても、変身ベルトが買い占められずに済んだことは、嬉しいことだったのだ。

    作者:J九郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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