●目指すは海の向こう迄
発機案内が響き渡る、名古屋の国際空港。
『ふわぁぁ……』
英語で、大きく欠伸をする青年……若いながらも、スーツがビシッと決まっているのは……若いけれども、海外ではやり手のビジネスマンなのかもしれない。
『……ふぅ。なんだろう、この眠さは。今迄仕事で、こんなに眠くなったことなんてないのになぁ……ふぁ』
仕事で眠いことはあるけれど、今日は異常に眠い。
慣れない地に来たからかも知れないし……それとも、他の何かかもしれない。
『……うーん、登場までまだ時間はあるし、少し仮眠でも取るか……な……』
と言いながら、ロビーの椅子に腰掛ける彼……でも、何故か周りの席は空いて無くて、ふらふらと彼は開いている席を求めて歩き廻るのであった。
「みんな集まったか? んじゃ早速だが、説明を始めるぜ!」
ヤマトは集まった灼滅者にニッ、と笑みを向けると、早速説明を始める。
「今回は、この青年を救って欲しいんだ」
と差し出した写真には、大学卒業して少しした位の青年が写る。
金髪青眼のアメリカ人である事は、一目で分かる……そして、スーツを着た姿からも、ビジネスマンである事が解るだろう。
「彼に、どうやらシャドウが息を潜めて潜伏している模様なんだ。そう……最近ちらほらと起こり始めている、シャドウの国外への脱出事件の一つ、って訳になる」
「まだまだシャドウの目的は解らないし、この方法で実際シャドウが国外へ移動出来るかはまだ未知数な行動だ」
「しかし最悪の場合……日本から離れたところでシャドウがソウルボードからはじき出されてしまい、海外への飛行機の中で実体化……そうなれば、起こるのは最悪の事態しかない。だから今、ここでシャドウを叩きつぶしてきて欲しいって訳さ」
「無論シャドウは、彼のソウルボードの中に潜んでいる……どうやら彼のソウルボードはアメリカのウォール街の様だ。まぁ……そこで戦うとなれば、スチームパンク的な感じになるのかもしれないな」
「まぁ殺伐とした雰囲気ではあるけれど、そういった所が居心地が良いという人もいるのかもしれない。夢の中だから、現実世界に被害が出るという訳ではないものの……彼の夢の中であるのは間違い無い。あまりにもたたき壊すと、寝覚めが悪いっていったところになるかもしれないしな」
「ともあれ皆がソウルボードの中にアクセスしてくれば、シャドウは邪魔者が着た、と言わんばかりにやってくる事だろう。それをしっかり叩きつぶしてくれって事だな」
そしてヤマトは続けて、詳しい状況へ。
「彼は名古屋の国際空港で、眠気に苛まれながら歩き廻っている。皆が探せば、そんなに時間は掛からない事だろう」
「とは言えソウルアクセスするには、周りに人が居るのは余り宜しくない……彼は席を探して空港内を歩き廻っているだろうから、そんな彼の安メレ琉場所を提供出来るように言いくるめられれば、きっと着てくれると思う」
「そしてシャドウ自身の戦闘能力だが……まぁ、国外脱出を企てようとしているくらいの奴だから、戦闘能力自体はさして強くは無い。更にソウルボードの中故に、戦闘能力はかなり制限されている、という所だ。だが油断すれば返り討ちに合うかもしれん。油断は大敵だぜ?」
最後にヤマトは。
「何であろうと、シャドウの国外脱出を放置しておく訳にはいかない。皆の力で、ここでせき止めてやってくれ!」
と言って、送り出すのである。
参加者 | |
---|---|
清浄院・謳歌(アストライア・d07892) |
カイル・フォンティーヌ(一射必中・d08720) |
ホセ・ロドリゲス(マカロニ弾丸特急・d10060) |
竜崎・蛍(レアモンスター・d11208) |
片倉・光影(神薙の戦巫者・d11798) |
柳・晴夜(夢の旅人・d12814) |
天城・理緒(不完全な黄金の理・d13652) |
佐倉・結希(ファントムブレイズ・d21733) |
●シャドウの求め
シャドウが国外へと脱出する事を企てて居る……そういう話を聞いた灼滅者達。
彼らは名古屋の海辺にある国際空港へと降り立つ……インターナショナルな雰囲気漂うその空港。
当然クリスマスも近付いている訳で、クリスマスイルミネーションも辺りを包み込んでいて、美しい。
「しかし……ったく、どいつもこいつも逃げだしやがって……何やってんのかねぇ?」
ぼやきの言葉を呟く柳・晴夜(夢の旅人・d12814)、それに天城・理緒(不完全な黄金の理・d13652)
「確かにそうですね。国外脱出か……何を企ててるんだろうね。第一シャドウって、本来最強クラスといいますし」
と頷く。
確かにシャドウは、現実世界に現れれば、今の灼滅者ではまだまだ勝ち目が無いと良く言われている位に強力なダークネスである。
そんな彼らが、何故に国外へと脱出しようとしているのか……それは、まだまだ良く判らない。
とは言えこのままみすみすと国外逃亡を許す訳にはいかないし……そんなシャドウに苦しめられている彼も助けなければならない。
「まぁシャドウと戦うのは初めてなんだけど……夢を悪用されるとか最悪ですね……私は、自分の夢に入られるとか絶対に嫌だなー……良い夢でも怖い夢でも、誰かに見られるなんて、考えられません……
「そうだね! 私も人に夢を見られるだなんていやだなー……でも、今回入り込む人の夢って、スチームパンクみたいな世界なんでしょう? 楽しみだね!」
佐倉・結希(ファントムブレイズ・d21733)に、竜崎・蛍(レアモンスター・d11208)がぐぐっ、と拳を握りしめる。
……まぁ、人が見る夢は千差万別。見られたくない夢もあれば、見たい夢もある訳で。
でも、シャドウが見せる夢は、もれなく悪夢になってしまうのは……シャドウのなせる技。
それがもし飛行機の中で現実かしてしまえば……最早、悪夢以外の何者でもなくなってしまう。
「ともあれかいがいとーぼーなんてさせちゃいけないんだよ! だって、皆が迷惑して困ったことになるモンね?」
とカイル・フォンティーヌ(一射必中・d08720)が拳を振り上げると、晴夜、理緒、そして片倉・光影(神薙の戦巫者・d11798)らも。
「ああ……ま、仕事なんだし、潰すしかねーわな」
「ええ。逃がす訳にはいきませんよ」
「そうだな。シャドウと戦うのは初めてだが、なんとも厄介な相手だ。なんとしてでも確実に倒せる状況に持ち込まないとな」
と言葉を継げる……そして、清浄院・謳歌(アストライア・d07892)が。
「何はともあれ、まずはその青年さんを見つけないといけませんね……あの、声かけはどうします? 私……英語、物凄く苦手で……」
と言っていると。
「ヘーイ、ユー。お待たせシマシター!」
手を振って、歩いてくるのはホセ・ロドリゲス(マカロニ弾丸特急・d10060)。
その英語にびくっ、となる謳歌だが、すぐに安堵した表情になって。
「ビジネスマーンを探すのは、ミーに任せて下さいデース。これがあるから十分デース!」
と尻ポケットから取り出したのは、名古屋のガイドブック……ただ海外向けだから、色々誇張されている部分もあり。
「これを見ると、ナゴーヤでは語尾にダギャーをつけたほうがイイデスカネー?」
と小首傾げる。
……まぁ、名古屋弁が大きく胡蝶されている気がしないでもないが……でも、それが名古屋らしいとも言える訳で。
「何はともあれ、ビジネスマンに接触するのは、同郷の人っぽく見える方が良いだろうし、カイルとホセの二人に任せても良いか?」
「ええ、もとよりそのつもりだよ」
「イエース! それじゃカイル、行きマショー!」
二人頷き合い……ホセとカイルはビジネスマンを探しに、一歩先に搭乗口へ……そして残る仲間達は、地図を元に、人気の無さそうな場所を探すのであった。
●青く青く
そして青年を眠らせる場所を探して、制限区域内を歩く灼滅者達。
一番端っこの方にある、コイン式のマッサージチェアのスペースがある……とは言え空港内だから、人の数は結構多い。
ここに人の影がなくなるとしたら……このゲートの飛行機が出発した、丁度その時位だろう。
時刻案内を見る限りでは、後大体30分後……丁度、エリアアナウンスで、間もなく搭乗を始めます、というアナウンスが始まっている。
「……うーん……流石に今ここで王者の風を使用するのは不味いでしょうね……」
「そうだね。少なくとも大迷惑なのは、間違い無いだろうし、ね」
理緒に頷く謳歌……分かりました、と頷き、結希がカイルにメールを一つ。
「飛行機の頭の様な感じの所。ただ、30分位後がちょうどいいかも」
と打つ……それに帰ってきたメール。
「了解。こっちもターゲットは発見したよ。30分位したら、作戦開始するね」
……どうやらあちらも見つけたようで……後は頃合いを待つばかり。
……そして30分後。そのゲートの出発便が丁度出て、人気がまばらになり始めるところで……。
「それじゃこっち、始めるね」
カイルからのメール、それに皆で頷く……そしてその場に理緒が王者の風を展開……更に柳も殺界形成を使い、人払いを行う。
そして……それに合わせてカイルとホセは、ビジネスマンの元へ。
「Excuse me!? チョーットイイデスカー!」
ちょっと訛りのある英語で話しかけてくるホセに、うつらうつらしていたビジネスマンの青年は目覚め、振り返る。
『What?』
「Sorry、We are not well Japanese、Because We tell you」
「Ye-s! Our Natural is nobody Not Know、Hahaha!!」
カイルとホセからの英語の会話に、ちょっと安心したようで、二人は彼と共に色々と会話する。
……世間話、日本にどうして来たかの話……そうしてると、また眠気が来たのか、ふわぁ、っと大きな欠伸をする青年。
「Oh、You are Sleepy? We are same too!」
「Yes、OK、Let go to a resting room」
『OKOK、Where?』
「Here we go!! Hahaha!!」
ホセが笑い、ビジネスマンと共に待ち合わせた場所へ。
……そして真ん中のマッサージチェアに彼を座らせ、両サイドに二人が座る……そして、数分後。
マッサージチェアの作り出す振動が心地よく……程なくしてすぅ、すぅ……と寝息を立て始める彼。
それを横目で確認すると……すっと立ち上がり、そして待ち伏せていた仲間達もその身を現わす。
近づき、手を振ったりしてみて……深めに眠りに付いている事を確認。
「うん……眠ってる眠ってる。それじゃ余り時間を掛けたくないし、早速だどソウルアクセスするよ!」
「うん……ボクは僕。敵を撃つ……一発の弾丸……」
蛍の言葉にカイル自分に向けて呟く……そして。
「頼む」
晴夜が促し……そして蛍がソウルアクセスを使用し……皆一斉に彼の夢の中へと突入するのであった。
……そして夢の中。
周りは正しくアメリカはウォール街……ただ、人の影は無い。
「……よーーーし、アメリカだーーっ!! スチームパンクな世界だーーっ!!!」
蛍が大変に喜ぶ……更にESPのアルティメットモードで、この世界観に合いそうなスチームパンクの衣装へチェンジ。
それにくすくすと理緒も笑いながら。
「そうですね。虚構とはいえ、本当に海外へ来たようで、少しワクワクします。と……なつくん、はぐれちゃダメですよ?」
ふらぁ、っとした影、理緒はシャドウを慣れない様子で引き寄せると、シャドウのなつくんは心外だ、と言わんばかりに首を振っている様にも見える。
……そして灼滅者達は、ウォール街を歩く。
と……程なくすると、灼滅者達の侵入に気付いたのか、ずももも、と姿を現わすシャドウ。
「出てきたか……真風招来!」
スレイヤーカードを解放する光影……そして構えると。
『……誰だ、おまえらは』
シャドウの言葉に、晴夜はニヤリと笑いながら。
「どうもシャドウ。同族狩りに来たぜ」
彼の右目は、仄かにスペードのスートが浮かぶ……それに、シャドウは。
『……邪魔しに来た、という訳か。邪魔はさせん!!』
と、黒いオーラを纏って、体を大きく見せるようにする。
しかし、そのオーラに怯む事は無く、灼滅者達もスレイヤーカードを解放……そして。
「一射必中……狙い撃つ……!」
カイルが先手を取って、狙い澄ましたバスタービームの一撃を放つ……。
体の真ん中を貫く一撃……しかしダークネスは、冷静に、動く。
「おら、いくぜ!」
と晴夜が接近し、影縛りで縛り付けると、謳歌も真っ正面から戦艦斬りを叩き込む。
更にディフェンダーはホセが。
「さぁさぁ、みんな頑張りまショー、HAHAHA!」
とワイドガードを放つと、続けて理緒がフェニックスドライブ、なつくんも命中重視の一撃を食らわせる。
……そして、キャスターの光影&ライドキャリバーは。
「神風。仕掛けろ」
光影の指示に従い、ライドキャリバーはエンジンをフル回転させ、直撃、高速のキャリバー突撃。
光影自身はホセに防護符でバッドステータス耐性を付与していく。
……そしてスナイパーの蛍は。
「延々とスローを叩き込みます! 地獄ですよこれは!!」
と嬉々としながらの黒死斬。
……そして、シャドウの攻撃。
シャドウ自身は、流石にソウルボード内故に制限された能力での攻撃となる。でも……灼滅者達からすれば、それでも強力な敵であるのは違いない。
黒い気配を纏い、弾丸のようにして放出する一撃……深く、ホセにダメージを与えるも、それを即座に結希が。
「メディックは倒れない事が一番大事って、何かで聞いた事があります。だからしっかり立って……皆さんをサポートしますよ!」
と気合いを込めて、シールドリングによる回復。
「サンキュー、助かったデース!」
ニヤリ微笑むホセ。
そして次のターンからは、灼滅者達の総攻撃開始。
謳歌の神霊剣をスタートに、晴夜がWOKシールドからクルセイドソードを引き抜いて。
「おら働けヒルコ、とっととあいつをぶちかませ!!」
と、渾身の神霊剣で攻撃。
クラッシャー効果もあり、そのダメージ量はかなり高く、シャドウの体力を大幅に削る。
そして苦しむシャドウに向けて、謳歌が。
「シャドウ、なんで貴方は、国外に脱出しようとしているのですか?」
と訊ねるが、シャドウの答えは無い……。
ただ、体に記されたスートが、スペードであるのは見て取れる。
「どうやら答える気はねえって事みたいだな」
「ええ……ならば、倒すのみです……!」
光影、カイルの中衛二人は短く会話を交し、そして光影はバッドステータス耐性の付与に更に周り、一方カイルはフリージングデスで攻撃。
ホセ、理緒も。
「続くデース!」
「うん……剣の如き焔を……!」
フォースブレイク、レーヴァテインの連携で攻撃。
ジリジリとシャドウの体力を削り行く……ほぼ、一方的な攻防状況。
……その状況を次第に理解したのか、6刻ほど過ぎた辺りで。
『……っ!』
咄嗟に身を翻し、その場から逃げようと……が。
「悪いが、こっから先は一方通行だ。無様に日本に、とっととお帰りィ!」
回り込んだ晴夜の黒死斬が、彼に足止めを与える。
動き辛くなり、そして……完全たる包囲網……。
「……take this too!」
蛍の渾身のデッドブラスターが撃ち込まれると、シャドウは断末魔の叫びと共に、夢の中より灼滅するのであった。
●海の向こうは灰色と
「……ふぅ。大勝利♪ フォンティーヌ家家訓第八番、正義と愛は必ず勝つ! ってね♪」
にこっ、と微笑むカイル……そして程なくして、灼滅者達の視界は、白に包まれる。
再び、気を取り戻した時には、周りは突入時と同じ空港内、マッサージチェアのある休憩室。
……傍らに寝ている、ビジネスマンの青年の顔は、何処か安堵の寝息を立てている様にも見える。
「うん……大丈夫そうだね。でも……飛行機の時間、大丈夫かな……?」
「……確かにそうだね! ねえ、ねえお兄さん。起きて起きて! そろそろ時間じゃないの?」
謳歌に蛍が、ビジネスマンの彼の肩を揺すって起こす……そして時計を確認。
『オー、サンキューサンキュー!!』
と、感謝の言葉を継げて、そそくさと搭乗口に向けて走って行く彼。
その後ろ姿は、世界を舞台に動き回る……好青年の姿。そしてその好青年の姿を手を振り送り出すと共に。
「さて……皆もお疲れ様ー♪ ねぇねぇ、これでものむ?」
カイルがバックに入れて置いた飲み物を、取り出して、皆に差し出す。
湯たんぽか何かで暖めていたようで、まだ仄かに暖かい……そしてその飲み物を手に取ると、結衣機が。
「あ……折角ですし、展望デッキで飛行機を見ながらにしない? 折角空港に来たんだから、飛行機眺めて帰らないとさ!!」
結希の言葉に、ホセも。
「オー、それはいい話デース。是非是非行きまショー!」
と諸手を挙げる。
そして灼滅者達は、一番飛行機が見渡せる所へ……沢山の飛行機が飛び立ち、降り立つ光景は、とても綺麗で……そんな綺麗な光景を見ながら、灼滅者達は、クリスマスイルミネーションと共に、ゆっくりとした時間を過ごすのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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