●白きは邪道! 黒こそ正義!
冬下がりの静岡県。
昼といえども肌寒くなり始めた頃……そうとなれば、暖かいものが食べたくなるのは当然のことな訳で。
休日の昼下がり、商店街の某所のお店にて……。
「へぇー。これが黒はんぺんかー……確かに黒なんだねー」
「うん。そうなんだよー。折角静岡に来たんだし、やっぱりこれは食べて貰わないとねー♪」
「そっかー。それでどういう食べ方するんだい?」
「んー……色々あるんだよー。そのままでわさび醤油で食べたり、バター焼にしたり……でも、やっぱり一番美味しいのは……」
そう言おうとした瞬間。
『……一番はとーぜん、おでんだろう!! 黒はんぺんの入っていないおでんはおでんではない!! 白はんぺんが入っているのなどはもってのほかだ!!』
突如現れたのは、顔がおでんだねの形になった男。
「……あなたは?」
冷めた目で見られるも、決して怯まないご当地怪人。
『オレは黒はんぺんを心の底から愛している黒はんぺん大王だ!! 黒はんぺんの事なら任せろー!! ほら、おまえらにもふるまってやるぞー!!』
そう言う黒はんぺん大王は、嬉々としておでんの鍋に黒はんぺんを大量に投入、そして言葉を言う二人だけでなく、店に居る人々に振る舞いまくるのであった。
「さて……皆さん集まりましたね? それでは説明、始めます」
五十嵐・姫子が、集まった灼滅者達に軽く微笑むと、一枚パンフレットをまずは見せる。
そのパンフレットに記されているのは、静岡県名物の静岡おでん。
静岡おでんの特徴はいろいろあるけど……その中で一番大きな特徴なのは、黒はんぺんで、そのパンフレットも黒はんぺんを大フィーチャーしている。
「どうやら今回、この黒はんぺんをプッシュしている黒はんぺん大王というご当地怪人さんが出てしまっているみたいなのです……皆さんには、この黒はんぺん大王さんを、倒してきて頂きたいのです」
それに空本・朔羅(うぃず師匠・d17395)は驚いた表情を浮かべる……予想が当たったのだから、それも仕方ない訳で。
「幸い黒はんぺん大王さんは、黒はんぺんを食べさせることに夢中で、一般人さんに直接的な危害を加えてくることは無いみたいです。しかし……このまま放置しておく訳にもいきませんので、皆さんに早々に灼滅してきて頂きたいのです」
続けて姫子は。
「この黒はんぺん大王さんは、黒はんぺんを投げつけてきての攻撃がメインです。また、この静岡おでんのちょっとした特色である味噌を味噌玉とか、辛子を投げつけてきたり、青のりを目眩ましの為に振りまいたりしてみるみたいです」
「とは言え攻撃方法はこの4つだけです。攻撃方法はそれだけですが……彼は店の中で暴れ回ってますので、店の中から引っ張り出さないといけません」
「ただおでん愛しすぎてる彼は、中々店の外に出ようとしないでしょうから……わがままな困った人を説得するような感じでお願いしますね……?」
そこまで言うと、最後に姫子は。
「何はともあれ、ダークネスの闊歩を許す訳にはいかないでしょう。皆さんの力で、対処の程宜しくお願い致しますね」
と、軽く頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
神田・熱志(ガッテンレッド・d01376) |
鏡水・織歌(エヴェイユの翅・d01662) |
佐渡島・朱鷺(第五十四代佐渡守護者の予定・d02075) |
前田・光明(中学生神薙使い・d03420) |
赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996) |
天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243) |
ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263) |
リヒター・クライデンヴァイス(光よりも速く・d22975) |
●白対黒
姫子より話を聞いた灼滅者達。
彼らが向かうは静岡県は某所、商店街……寒い季節に丁度良い、おでんの暖かい匂いと薫りが漂い始める頃。
「……しかし、黒はんぺんかぁ。珍しいのがあるんだな、ここには」
「そうだね。黒はんぺん……ちょっと気になるかな、本当はね」
神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)に、鏡水・織歌(エヴェイユの翅・d01662)がくすりと笑う。
確かに黒はんぺんというものは、静岡県内では結構販売されているものだけれど、静岡県外となると、黒はんぺんはそうそうみかける者では無い。
「黒いはんぺんですかぁ……はんぺんを大盤振る舞いだなんて、太っ腹な怪人さんですねぇ~……」
「そうだな。まぁ今の所は特に被害が無い様子との事だろう? となれば、灼滅するのは少々気が引けるんだよな……しかしながらダークネスである以上は、いつどうなるか解らんし、放置するわけにもいかんか」
「そ、そうですかぁ……が、頑張って倒さなくちゃ……ですよね? えぅ……」
天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)は、前田・光明(中学生神薙使い・d03420)の言葉に僅かに泣き顔に。
ダークネスを倒す……倒さなければいけない敵であるのは理解しているけれど、でも……ご当地怪人を倒すというのには、些か罪悪感を感じてしまうのは何故だろう。
ともあれ、意識は様々ではあるけれど、思いは一つ。
「しかし白でも黒でも、食べ物は好きな方を食べればいいんじゃないかな~って思うんだけどな~。ご当地名物を広めたいのは解るけど、無理矢理はダメだよね!」
と、赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)の言葉に、佐渡島・朱鷺(第五十四代佐渡守護者の予定・d02075)、ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)、そしてリヒター・クライデンヴァイス(光よりも速く・d22975)も。
「全くもって同意ですね。我が新潟が誇る日本米は、白米と玄米で棲み分けが出来ています。なのに、同じはんぺんにも関わらず白だ黒だとは嘆かわしい限りです」
「そうだよね……美味しければ邪道とか、正道とかどっちでもいいと思う。でも……拘る人は拘るのかな……少なくとも、こういうご当地怪人達は、そういうイメージが強い、かな……私は、色は白いのが好き……」
「まぁ……白も黒も、おでんにすればどっちも美味しいものだと思うしね」
「そういえばおでんって、なんであんなにいい匂いがするんでしょう。あれ、日本に来て、コンビニに入って、気付いたら買ってしまっています。ちなみに俺は、大根と卵が好きです。はんぺんは……普通、かな」
「コンビニのレジ前にあるからかなぁ……ついでに、って買っていく人が多いらしいしね」
なんだか、いつのまにかおでん談義になっていたり……ともあれ、気を取り直して。
「ともかく、好きな物を押しつけて人に迷惑を掛けるのは良く無いな。だから……ソレを解らせてやるとしようぜ」
と織歌の言葉に。
「そうだな。という訳で……おとりは織歌と光明という事でいいよな? 俺達は近場の公園……ここだここだ。ここで待ってるからな」
「了解」
熱志に頷く光明。
そして光明、織歌の二人は、ご当地怪人、黒はんぺん大王の下へと向かい、残る灼滅者達は、その公園でおでんを食べる準備を始めるのであった。
●黒至上主義
そして黒はんぺん大王の居る店へと向かう織歌と光明。
おでんを出している店を探すことは、さして難しい事は無い。
更に黒はんぺん大王が活動中かどうかは……外から騒がしいかどうかが解るから、さして察知も難しくは無い。
商店街をぶらぶらと歩きながら……暫しの時間。
そうすると。
『はーははははー!! 静岡に来たからには、黒はんぺんを食べずに帰るなどさせーんぞー!!』
大きな声が、店の中から聞こえてくる。
その言葉に、嫌でもご当地怪人のものである……というのは直ぐに解る訳で……。
「……この店か……発見した、っと」
と光明が一本、仲間達にメールを送る……了解、と帰ってきたのを確認してから、二人は店の中へ。
居酒屋の様に、おでん鍋がカウンターにあって、カウンターを挟んでおでんを作る人が居る。
……そして、既に数人の客が居て、おでん鍋から取った色々な具材を美味しそうに食べている……ちなみに、皆のおでん皿には、もれなく黒はんぺんが入れられている。
「さーて、と……何を食べるかな……そうだ。大根とこんにゃくとはんぺんを下さい」
席に着くと共に、光明が注文……その注文を聞いて、うんうんと頷く黒はんぺん大王。
そして更に乗せられてきたのは、大根、こんにゃく……そして黒はんぺん。
「ん……? あれ? はんぺんをお願いしたんですが、何ですかこの黒衣の。腐ってるんじゃないのか? ゴミみたいな色だな」
『いや、これは黒はんぺんというものでして……静岡名物なんですよ?』
店員が額に汗を浮かべながら捕捉するが、更に光明は。
「いや、はんぺんは真っ白で、おでんのダシの色にうっすらと染まっているのが綺麗なんだよ。黒はんぺんなんて存在自体が信じられん。ゲテモノだ、こんなもん金貰ってでも食えるかってんだ」
と光明が言うと……。
『まてまてまてぇぇいい!! なんだお前達!! 黒はんぺんを貶すとはどーいう領分だこらぁーー!!』
烈火の如く怒りの表情でやってくるご当地怪人。ダンっ、と机を叩いて黒はんぺんの顔を間近に近づける。
「ふん。黒はんぺんというのか、これは。でも、こんなもん食べものじゃないだろう?」
『いーや、ちがーーう。れっきとした食べ物だ!! 白はんぺんなど邪道っ!!! ダシが染みるだぁ? そんなの邪道の食べ方以外の何者でもないわぁ!!』
そんな二人の言葉の応酬……それに織歌が。
「あの……あなたはおでん好きで仕方ないんだよね? けど、此方だと狭いし、暴れてたら黒はんぺん、食べて貰えなくなっちゃうのでないかな?」
と言うのだが……意識は完全に光明の方。
「ま、食べる気は無い。もし話があると言うのならば外で聞こうじゃないか。ここではおでんを食す皆さんの迷惑になるからな」
『ぐぬぬぬ!!』
じたんだを踏むご当地怪人……許す事は出来ない言動ながらも、おでんを食す人達、と言われてしまってはそれを蹂躙する訳にもいかない。
……それに、更に織歌が。
「そう。大丈夫、外にも貴方の好きなおでんが沢山あるでしょう? ほら、一緒に外に出ようよ。おでんのある場所へ、案内してあげるからさ。そこでは、黒はんぺんを知らない人達が一杯いるんだ。その人達に黒はんぺんを教えてあげてくれないかな?」
と、助け船を出す……と。
『なにぃ! 黒はんぺんを知らないだとぉお!! それは私が、是非とも黒はんぺんの素晴らしさを教えて上げなければならないだろう!! よーし、連れてけー!!』
織歌の提案に、ご当地怪人は頷く……そしてご当地怪人を連れて、二人は仲間達の元へ。
空き地でおでん鍋をぐつぐつ煮ている光景……ちょっとシュールな光景だけれど、気にしない。
「……おいしそうです」
とリヒターがおでんを見てぽつり……そしておでん鍋から取り出したるは、白はんぺん。
「おでん美味しいのです~♪ はんぺん大好きなのです! はい、ポルター様とエンピレオ様も、おでnどうぞですよ~」
優希那がはんぺんを取り出し、紙皿にちょっと小分けにしてナノナノにも食べさせてあげる。
そしてリヒター、緋色も。
「うん……美味い。やっぱりはんぺんは白ですよね?」
「そうですねー。白はんぺんはやっぱり美味しいのです」
そんな会話を、黒はんぺん大王に聞こえるように話し続ける。
……それに。
『なぬぅ……白はんぺんだとぉおお? そんなの邪道だぁぁあっ!!」
速攻で近付いてくる黒はんぺん大王……凄い剣幕。
『静岡に来たからには黒はんぺん!! 黒はんぺんを食べなくては静岡に来た意味はなぁぁい!!』
熱い彼の言葉……その内に、優希那がサウンドシャッターを使用し、その場の音を外部に漏らさない様にする。
そして……熱志と朱鷺、リヒターが。
「黒はんぺん? ……黒くする意味が解らないよ」
「そうですね。違いは良く判りませんが、白か黒かと言われれば白でしょう、普通に」
「やっぱりはんぺんは白ですよね?」
『いーーや、黒はんぺんだぁっ!!』
「でも黒いはんぺんは、食べたことないのですよ」
優希那がだめ押しの言葉。
『くっそーー。んなら、力尽くで解らせてやるわぁあ!!』
半ばキレるご当地怪人……それに。
「よっしゃやるって事だな? 火事と喧嘩は江戸の華、ガッテンレッド!!」
ちゃきーん、とポーズを取って構え、戦神降臨を纏う熱志、そして織歌も。
「ったく。黒はんぺんがっていうより、アンタすげー人に迷惑かけてるよナァ? アタシがその根性、たたき直してやるぜ!」
と、威声を放ち、先手のティアーズリッパーで服破りを付与。
服破りに、ご当地怪人の黒はんぺんがちょっとひびが入る……でも、それだけで。
更にリヒターがクルセイドスラッシュ、緋色が螺穿槍……と、クラッシャーで攻撃力が倍加されたアタックを次々と叩き込んで行く。
……そして、クラッシャーが一巡すると、続いて中衛キャスターの光明が、神霊剣で攻撃。
またディフェンダーの朱鷺、ポルターは。
「さぁ、佐渡の分化を体で感じてもらいましょう……佐渡おけさビーム」
「……文字通り、白黒ハッキリさせないと……あと私、色だったら白い方が好き……さぁ、黒きより迫る刃の制裁……」
ご当地ビームと、DMWセイバーで、続いて攻撃。
……そこまでいくと、対するご当地怪人の攻撃のターン。
彼の攻撃は、味噌玉を投げつけて攻撃……かなり固めに固められていて、結構痛い。
「大丈夫ですか? 今、回復しますね」
しかし優希那がシールドリングや、清めの風によって回復を施していく。
……そして2ターン、3ターンと続く毎に、灼滅者達の攻撃はジリジリと黒はんぺん大王の体力を削り行く。
一方、黒はんぺん大王、カラシを固めたのを投げつけたり、黒はんぺんを投げつけたり……味噌玉含めて、三種の攻撃は全部投げつける攻撃。
更なる一手は、青のりを目眩ましの様にばらまいてみたりする。
……そんなご当地怪人の攻撃に対しては、的確に優希那がシールドリング、もしくは清めの風で回復を施し、優位に進める。
……そして、戦いながらも織歌が。
「ナァ、はんぺんは白だからこそ味がしみこんでるのが良く判って美味しいんじゃねぇのか? 黒なんて邪道。好きな物は人それぞれだ。それを押しつけるのは良く無いって事、解っておけよ」
と言い放つと、それに黒はんぺん大王は。
『う、うるせえうるせぇえ!!』
最早、意地だけで対抗しているご当地怪人……そんなご当地怪人に。
「そろそろ頃合いだな。よし……みんな、一気に行くぞ!」
「りょーかいです!」
熱志の言葉に緋色、リヒター、朱鷺が列を整える。
「それでは先手を……佐渡の祐大な自然、感じて貰いますよ……佐渡金山ダイナミック!」
朱鷺が一挙に接近すると共に、ご当地怪人の体を掴みかかり、持ち上げ、地面へと頭から叩き付ける。
強烈な一撃に、ピク、ピクと脳しんとうを起こす彼……更に。
「くらえー! いちげきひっさつ!!」
「町の人に裏切られたハーメルンの笛吹き男の嘆きを乗せた、切なく重い一撃をここに!」
「いくぜ、神田明神ダイナミック!!」
熱志、緋色、リヒターの連携ご当地キックが、三方から一挙に叩き込まれると……ご当地怪人の体は大きく跳ね飛ぶ。
そして……跳ね飛んだ所に待ち構えていたポルターが。
「……蒼き寄生の大刃……対象割断……」
と、DMWセイバーを穿ち、トドメを刺したのである。
●黒も解って
『う、うぅぅう……』
そして……ご当地怪人が、完全に動けなくなり、それを包囲する灼滅者達。
『こ、ころせぇ……でも、俺が死んでも、黒はんぺんは死なないぞぉぉお……!』
苦し気に言うご当地怪人……そんな怪人の傍らに座る光明。
……その顔を、真っ正面から見て。
「おい……さっきは悪かったな。実は俺、本当は、黒はんぺんの事、嫌いじゃないんだぜ?」
『ほ、ほんとうかぁ……?』
「ああ、本当だ。むしろ物凄く食べてみたい。お前がきっかけで、そう思ったんだよ」
そう言うと、黒はんぺんをおでん鍋から取り出し、そして……一口。
「ふ……美味いな。確かにこれはわさび醤油やバター焼……何にでも合いそうだ。ごちそうさん。いいもの喰わしてくれて、有り難うな」
『ふ……ふふふ……』
光明の言葉に、満足したのか……ご当地怪人は、満足気な表情を浮かべて灼滅される。
……そして、ご当地怪人の姿が消えゆく中、優希那は。
「……ごめんなさいですよぅ」
とぽつり、呟く……そして完全に消え失せた後。
「……皆さん、お疲れ様でした。お怪我の具合はいかがでしょうか?」
「ん……大丈夫大丈夫。ま、ちょっとばかし疲れたけどね」
と、織歌はヘッドホンを耳に戻しながら言うと、それに熱志、緋色も。
「そうだなぁ……って、折角静岡まで来たんだし、時間あれば皆で黒はんぺんを食べに行かないか? 俺達自家製じゃなくって、ちゃんと店で作って貰った黒はんぺんを食べてみたくないか?」
「そうだね。私、黒はんぺんって食べたこと無いから、おでんで食べてみたい」
「私も折角だし食べてみたいかな……それじゃ、お店に行こうか」
織歌の提案に、皆も頷いて、そして灼滅者達は、先ほどご当地怪人を誘き寄せたお店へと向かうのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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