拙者の名はプロレスラー・ニンジャー!

    作者:相原あきと

     そこは都内でも大きなプールだったが、今日は特別にプールのど真ん中にプロレスの特設リングが設営されていた。
     とある金持ちが道楽で招致した水上デスマッチ。
     マンガのような話だが、おもしろいネタであることに間違いは無く、プールサイドに階段状に組まれた観客席は満員御礼だった。
    「さぁ、いよいよこの日がやって参りました。リングの周囲はプールとなっているこの水上デスマッチ、解説の中野さん、このリングで戦う上でのポイントは……って、ええ!?」
     実況は解説役を見た瞬間に言葉を失った。そこには解説の中野さんはおらず、覆面忍者装束の男が立っていたからだ。
     そして忍者男は「金縛りの術」と言うと解説の中野さんと同じく、実況の口に猿ぐつわをかませ、さらにロープでぐるぐる巻きにして転がす。
    「んーんーんー!?」
     わめく解説と実況のよそに、そこにやってくるは鳥マスクの女。
    「プロレスは派手でなければならない! 良いリングだ! 気に入った!」
     鳥マスクの女……ケツァールマスクがマイクを持ち。
    「今日の試合は我らが参戦しよう。観客たちよ、世紀の戦いを楽しんでいって欲しい!」
     堂々と宣言するとともに、横にいた忍者がボウンと煙に包まれ姿を消し、同時にリング上に現れる忍者男。
    「拙者ノ名ハ、プロレスラー『ニンジャー』デゴザル! 東洋ノ神秘タル忍術ノ数々、ゴ覧アレ!」

    「みんな、ケツァールマスクっていうアンブレイカブルについては勉強してある?」
     教室の集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が言う。
     どうやらケツァールマスクと言う幹部級のアンブレイカブルと、その配下レスラーアンブレイカブルが、格闘技の大会などに乱入する事件が起こっているらしい。
    「もっとも、ケツァールマスクたちはギブアップした者や観客を攻撃することは無いので死者は出ないんだけど……戦った相手はアンブレイカブルの強さに心を折られて、格闘技の世界から足を洗う人が続出しているみたいなの」
     人生を狂わされている……そう言えば重大っぽいし、と珠希はこの事件を未然に防いで欲しいと言う。
    「みんなに行って貰うのは都内のプールで行われるプロレスの大会なんだけど、主催者の趣味でプール上にリングが設置されてるの。そこにケツァールマスク達は乱入するわ」
     ちなみに試合をする予定だったプロレスラー達は4人、全員プールサイドにいるらしい。
    「すでに配下アンブレイカブルはリングの上にいるわ。その名もニンジャーっていう忍者っぽいレスラーよ。手裏剣と忍者刀を持ってるからその時点で反則負けね」
     え、違うの? とプロレスがわからない珠希が言うが、凶器OKならそれはそれで灼滅者達もやりやすい。
    「ケツァールマスクは戦いを見守ってるだけで、自分から何かをすることは無いんだけど……唯一、彼女が動く条件があるの」
     珠希は人差し指を立て。
    「それは、地味でつまらない試合をした場合、よ」
     プロレスはエンターテイメントである。それを理解しない戦いは言語道断、自らが乱入してでも盛り上げる、とそういうことだろう。
     ただし、彼女は幹部級のアンブレイカブルである、めっちゃ強い。
    「ケツァールマスクほどじゃないけど、ニンジャーも強敵よ! 危なくなったらちゃんとギブアップすること」
     あとは楽しい試合になるようがんばって、期待しているわ! そう珠希はみなを送り出すのだった。


    参加者
    月代・沙雪(月華之雫・d00742)
    タージ・マハル(リングネームはジャガーマスク・d00848)
    鈴屋・勇(盤上のご当地ヒーロー・d02090)
    川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)
    エイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)
    分福茶・猯(カチカチ山の化け狸・d13504)
    クリミネル・イェーガー(迷える猟犬・d14977)
    ハリー・クリントン(ニンジャヒーロー・d18314)

    ■リプレイ


     忍者装束の男『プロレスラーニンジャー』、何やら面白い演出だと観客がざわつく中。
     その8人は明らかに常人には醸し出せないオーラをまとってプールサイドへ入場して来た。
     そして列からと飛び出す1人の男。
     実況席のテーブルに着地しマイクを取るとニンジャーを指差し。
    「『ジャガーマスク』推参! 真のプロレス魂を教えてやろう!」
     さらに口から虹色の血のりを吹き上げ、毒霧パフォーマンスを行うのはジャガーのマスクを被ったタージ・マハル(リングネームはジャガーマスク・d00848)だった、観客席がワァッと盛り上がる。
    「とはいえ、わしらは実況と解説じゃがのぅ」
     そう言ってタージと共に席へ付くのは分福茶・猯(カチカチ山の化け狸・d13504)だ。
     頷いて解説者の席につくタージに、リンク上のニンジャーが訝しげに目を細めるが――。
     その時だ、再び何者かが列から飛び上がり、リング……のニンジャーサイドのポールの上へ降り立つ。それは忍者姿のハリー・クリントン(ニンジャヒーロー・d18314)だった。
    「お主達のプロレス魂、気に入った! 拙者、こちら側につくでござる!」
     堂々と裏切り宣言のハリー。
     予想外の行動に思わず目が点になる灼滅者達。
    「……え、ええ? ハリーさん!?」
     常識人な月代・沙雪(月華之雫・d00742)が我に返りハリーに追求しようとするも。
    「シャーラーップ!」
     大声で一括。さらに口から火を噴いて盛り上げる。
    「多勢に無勢とは卑怯千万! 故に拙者、忍者ハリー、プロレスラーニンジャー殿を助太刀いたすでござる!」
     一瞬、ニンジャーがケツァールマスクを見るが、こくりと頷かれ。
    「ドウモ、ニンジャハリーさん、プロレスラーニンジャーデス」
     お辞儀をして即席タッグを認めるニンジャー。
     とにもかくにも、こうして2対7の変則デスマッチは準備が整ったのだった。


    「……aaaaAAAAAA?」
     叫びと共にプールサイドから助走をつけて飛び出したのは道着の上をはだけさせたクリミネル・イェーガー(迷える猟犬・d14977)だった。
     片手から伸ばした鋼糸と影業を駆使してまるで水面を走っているかのように、そのままリングイン!
     あんな細身で……と観客がクリミネルの姿にざわつくが。
     クンッと鋼糸を指で操ると、プールサイドに置いておいた鉄骨がフワリと浮き、クリミネルへと向って飛んで来る。
    「HA!」
     気合一閃、クリミネルの裏拳が背後から飛来する鉄骨に的中、グワンと音を立ててVの字へひしゃげ、そのままはね返されるように鉄骨がプールへと落下した。
     静まりかえっていた場内が、鉄骨の落水と共に一気に盛り上がり始める。
     そのタイミングでマイクのハウリングが響き、観客の視線が実況席のテーブルの上に仁王立ちし、マイクを掲げた人物、鈴屋・勇(盤上のご当地ヒーロー・d02090)へと移る。
     ビシッ! 勇がマイクを持ったままニンジャーを指差す。
    「ニンジャー! 東洋の神秘? 忍術? 古臭いんですよ! ここにいる仲間達の力を借りるまでもない。この、天才であるゆーにかかれば一撃でおしまいです」
    「フム」
    「さあ、ゴング鳴らすです!」
     そう言うとマイクを捨ててリングへと跳躍する勇。
     そのまま上空で巨大な籠手である縛霊手をカードから解放、装着すると落下の勢いも乗せた強烈な一撃を――。
     ドッ!
    「おーっと! 勇選手、逆に吹っ飛ばされたー!」
     ニンジャーのアッパーカットが炸裂、綺麗に放物線を描いて勇がプールへと落水する。
     ぷかー。ぴくぴく、ぴくぴく……。
    「解説のタージさん、勇選手は何がしたかったのでしょうか」
    「……さぁ」
     実況と解説の猯とタージの台詞が、観客のほぼ全ての気持ちを代弁していた。
    『あッ』
     しかし、実況解説のハモる驚きの声が、即座に試合へと観客の目を引き戻す。
    「クッ!?」
     勇が作った隙(?)に、クリミネルが一気に肉薄し、至近距離から超硬度の拳が連打され、ニンジャーの身体がドドドドと浮いた状態で打撃を受け続けていた。
     最後のフィニッシュ、ニンジャーの身体が上空へと吹き飛ぶ。
     しかし……。
     ガラランッ!
     上空から降ってくる忍び装束の丸太。
     戦いは……始まったばかり。


     最初の試合はクリミネルの猛攻を、ニンジャーが忍法を駆使して避け続け、隙を見せれば鋭い一撃を入れられる……そんな展開だった。
     未だ無傷のニンジャーに対し、クリミネルは傷も出血も多い。
     そんな中グラリと意識が遠のくクリミネル。
     今だ! トドメとばかりに振りかぶられるニンジャーの刀、だが次の瞬間。
    「ふふふ、ユーがアレでやられたとでも思ったですか」
     ロープ際にいたニンジャー、その足を水面からニュッと伸びた勇の手が掴んでいた。
     それは0.2秒にも満たない隙。
     だが。
    「ふん」
    「ッ!?」
     クリミネルが両手でニンジャーの腰をホールド、同時に足を離す勇。
     そのままニンジャーを首折りフランケンシュタイナーの要領で投げとばす。
    「グハッ」
     一瞬息が止まるニンジャー、ふらふらと立ち上がるが、その時すでにクリミネルはフィニッシュブローの準備へと入っていた。ロープ上を八艘飛びし、リングの揺れも利用しさらに加速、突き出した両手の前に鋼糸を螺旋に展開、ドリルのように特攻してくる。
    「こ、これは!?」
    「両手で2倍、八艘飛びで2倍、リングの揺れも利用し2倍、さらに螺旋の力で倍! 16倍パワー!」
     実況と解説が盛り上げる。
     そして――。

     カッ!

     一瞬の交錯。
     ドッパアーーンッ!
     派手な水しぶきをあげてプールへ落下したのは……クリミネルだった。
    「ああ!?」
     慌てて救出に向かうタッグ(?)の勇。
     ニンジャーは苦しそうに。
    「我ガ忍者デナケレバ……危ナカッタ。トテモ、良イ技デゴザッタ」


     場面は二戦目へと移る。
    「おっと! 次の試合は沙雪選手のようだー!」
     実況が叫ぶと同時、プールサイドから飛ぶ沙雪。そして――。
     ボチャン。
    『………………』
     跳躍が足りなくリング前に落水する沙雪。
    「ふみゅ! 足りなかったです!?」
     ちょっとスケスケな感じでリングへ何事も無かったかのように上る沙雪。
    「あ、下に水着来てるので大丈夫です」
     ちなみにスクール水着らしい。
    「役不足デゴザル、アト数人イタナ……マトメテ全員カカッテ来イ!」
     そして――。
    「いいだろう」
     その声はプールの天井付近から聞こえた。
     見上げれば宙空で停止した箒の上、ウィザードローブ&ハットに身を包んだ川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)がいた。
    「この血に連綿と受け継がれし西洋の神秘、運命すら裏切る我が魔法の前で……朽ち果てるがいい!」
     ばっさぁとローブをひるがえし、そのままニンジャーへ急降下を開始する咲夜。
    「フンッ」
     良い的だ、と手裏剣を乱れ投げするが、昨夜はそのことごとくを空中で回避。
    「神秘の精髄を見せてやろう」
     プールの水面ギリギリで水しぶきを上げで急停止し、そこから一気に高速回転を開始、周囲の水が竜巻のごとく巻き上がりニンジャーへと襲いかかる。
    「コノ程度カ!」
     ニンジャーが忍者刀を振り抜き、衝撃波で昨夜の水竜巻を相殺する。
     どぱんっ、と水が弾け周囲に一時的な豪雨が降る。
     その雨の中、ドロンと煙幕が巻き起こり黒い影で作られた巨大蝦蟇がリング上に現れる。
     蛾魔の上には腕を組みして立つ忍者姿のエイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)。
    「忍は己を語らず……ゆえに忍と言う。しかし此度の戦場では魅せる他あるまいな、武蔵坂の忍者魂というものを!」
     蛾魔を消しリングに立つエイジ、さらに箒から降りた咲夜も合流、沙雪と3人が並ぶ。
    「チーム・ザ・魔法忍者、がお相手します」
     沙雪の宣言と共に攻撃を開始する3人、最初に飛び出したのはエイジだ。
    「ちぇえい! 忍法回し蹴り!」
     速攻で放ったご当地キック相当の周り蹴りがニンジャーの胴体にクリーンヒット、ロープへ吹っ飛ぶニンジャー。
    「フッ、笑止」
    「気を付けて下さい」
     余裕を見せるエイジに咲夜が警告するも。
    「ぐぇえ?」
     全く別方向からニンジャーの一撃をくらい倒れるエイジ、慌てて沙雪が符を投げ回復する。
    「ニンジャー殿! 今でござる! タッチタッチ!」
     なぜかこのタイミングで手を伸ばしてくるハリー。
     正直、今じゃないだろう。
    「ここでタッチしなければ、いつやるでござ――いつやるの?」
     釈然としないが盛り上がりの為にも交代は必要だ、しぶしぶタッチするニンジャー。
     そしてすれ違う2人、そうしてニンジャーがロープを越えようと背を見せた瞬間だった。
    「神秘のヴォルテックス!」
    「ジェイッ! ご当地ビーム!」
    「事前にガイアチャージしていたプロレスの聖地、後楽園ホールニンポー・イガ忍者ビーム!」
     咲夜とエイジ、そしてハリーの攻撃が一斉にニンジャーの背を直撃、コーナーポストに叩きつける。
    「奇怪千万! ハリー選手とエイジ選手の両眼から光線が発射された! これが忍術というものなのかぁ!?」
    「そのとおりです! 人間、鍛えれば全身がバネになる。目からビームくらい出せます!」
     驚く実況と断言する解説。
    「グッ、ハ……ナ、ナニヲ、卑怯ナ」
     ニンジャーの言葉にハリーが答える。
    「はっはっは、忍者が卑怯で何か悪いでござるか? それに拙者は元々武蔵坂の一員でござる。さぁエイジ殿!」
    「応! 武蔵坂の忍びこそが真のニンジャである事を、ハリー殿! 一緒に証明するでござる!」


     4人を同時に相手するようになり、ニンジャーの動きがますますをもって高速になる。
    「は、早いですねジャガーマスクさん」
    「駄目だ! あんな動きをしていては1分と体が持たない……いや、すでに2分を越えて……まさかあやつ、自分の限界を突破したと言うのか!?」
     盛り上げる実況と解説。
     だが、実際に闘っている方はそこまで余裕は無かった。先ほどまでの戦いとは打って変わって、本気のニンジャーは強い。8人で闘ってやっと互角、とかそれぐらいだろうか。
     リング上を手裏剣が乱れ飛び。
    「ヴォルテックス!」
    「アーンド・ビーム!」
    「同じくビーム! 合成ニンポー」
    『熱線竜巻の術!』
     忍者二人がハモる。
     しかし、実力の差は着実に現れ……。
    「直撃ー! エイジ選手たまらずダウーン!」
    「む、無念……」
     そのまま場外、プールへ落下するエイジ。
     だが、即座に反応したのは沙雪だった。周囲に展開していた護符を飛ばす。
     護符はエイジを追うように水面へと吸い込まれ――。
     シュパッ!
     水面から飛び出し再びリングに立つエイジ。
    「ホウ」
    「これぞ、水遁でござる!」
     言い切るエイジ、完全に沙雪の回復のおかげです。
    「デハ、コノ強イ手裏剣、耐エラレルカ!」
     背中に手を回したニンジャーが巨大な手裏剣を取り出しエイジへ投げる、微動だにしないエイジ。
    「ああっと、避けようとしないエイジ選手!」
    「いや、レスラーの体は鋼でできている。だから攻撃を避ける必要がないのだ。まだ、彼は80%の力しかだしてない。見所はこれからだ」
     冷静に解説するタージ。
     エイジはそこで目を見開き、両手で真剣白刃どりの構えを見せる。まさか――
     ドカーンッ!
     白刃取りもむなしく、至近距離で手裏剣が爆発し、それに巻き込まれたエイジがプスプスと煙をあげながら倒れ伏した。
    「解説のジャガーマスクさん、今のは……」
    「爆裂手裏剣、でしたね」
     思わず言葉が止まる2人。
    「オイ、オ前達モ来イ、戦レルノダロウ?」
     ニンジャーが実況と解説を指差す。
     一瞬顔を見合わせる2人だが……最初に動いたのはタージだった。
     マントを脱ぎ去りプールサイドへ。
     さらに――。
    「では、わしも混ぜてもらうぞい!」
     タージと共にリングへ立つ猯。その身体は燃えており演出効果は抜群だ。
    「まさか実況と解説が指名されるとは……この試合、どう見ますか? ケツァールマスクさん」
     空席の実況席に座った勇が話を振る。
    「………………」
    「魅入ってますね」
     無視されたので適当に繋げる勇。ある意味凄い。
     ジャガーマスク達の戦いはいつの間にか開始されていた。
     主に関節技と空中殺法を繰り出すジャガーマスクと、それをフォローする猯。
     ついにジャガーマスクがニンジャーを鯖折りしつつ捕まえる事に成功。
     すかさずコーナーポストの上に乗る猯。
     そして繰り出される2人の合体必殺技。
     ニンジャーを抱えたまま猯の方向へ跳躍するジャガーマスク。
    「必殺! ジャガー」
     逆に2人に向かってポストから飛ぶ猯。
    「ファイアー」
     そして宙空で衝撃が!
    『ダブルインパクト!』
     猯の火達磨キックがブチ当たり、逆コーナーまで吹っ飛ぶニンジャー。
     さらに起き上がろうとするニンジャーへ飛び込みマテリアルロッドを振り下ろす咲夜、放電するほど溜めていた雷の魔力を一気に注ぎこむ。
    「相手が痺れたぞ、今がチャンスだ! やれぇーー!」
     咲夜の声にハリーが動く。
     ニンジャーに肉薄し数手拳をブチ込むと同時、身体を捻ってその身を巨大な手裏剣に見立てて決死の回転体当たりを慣行。
    「甘イ!」
     ニンジャーは忍者刀を立ててハリーの特攻を防ぎつつ傷を与える、ジリジリと押されてコーナーポストに追い込まれるがハリーの勢いもそこまでだった。
     ニンジャーがトドメとばかりに放った闘気の篭ったアッパーでリングの中央へ吹っ飛ばされるハリー、大の字で倒れる。
     その時だ、大の字のまま倒れるハリーがボソリと呟いた。
    「負ケ惜シミカ?」
     息も荒く、コーナーで膝に両手を付きながらも立ち上がったニンジャーが笑う。
    「そこだ、それでいい……そこの位置がいいッ!」
     ニヤリと笑って倒れたままのハリーが叫ぶ。
     突如、ニンジャーを囲むように足元が5カ所輝く。
    「ッ!?」
     見れば5つの光り、それは5枚の護符だった。
    「それなら、逃げれませんよね?」
     沙雪だった。
     こっそりと配置していた護符の魔法陣が軌道する。
    「オノレ……誘イ、コマレ――」
    「これは痛いですよ? 符術・五星結界!」
     光の柱が立ち昇りニンジャーの悲鳴が響き渡る。
     ガクリと膝を付いたポーズで煙を上げるニンジャー。
     一方、灼滅者側も満身創痍だった。
     しかし――
    「マ、マダダ……」
     立ち上がったのはニンジャーだった。個別に闘った分、まだまだ体力的には余裕がある。
     結局、試合はニンジャーの辛勝で幕を閉じた。
     だが、観客のスタンディングオベーションと鳴りやまぬ拍手に、リングで倒れていた者も、プールサイドで治療していた者も、皆がどこかやり遂げたような爽快な気分になったのは決して錯覚なんかではない。
     最後、「また闘える日を楽しみにしている」と去って行ったケツァールマスク。
     灼滅者達は闘ったプロレスラー・ニンジャーと固い握手を交わし、その姿を見送ったのだった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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