雪降る里

    作者:零夢

     そこは何もない場所だった。
     見渡す限り一面の白。
     白、白、白、白――――すべてが雪で覆われた世界。
     夜空に浮かぶ星月だけが、白銀の世界を照らし出す。
     そこへ、ぽつりと現れた『黒』があった。
     オオカミだろうか。何かと激しくやりあったのか、片方の目がつぶれている。
     それは何をすることもない。
     静かに佇み、しばし雪原を睨みつけると、やがて、雪に紛れてどこかへ消えた。

     鎖の鳴る音がする。
     女の泣き声がそれに混ざる。
    「ややこや、吾子や……」
     真っ白な小袖から腕を伸ばし、女は深く積もった雪をかき分け我が子を探す。
     遠くへ行こうにも、裸の足首に繋がれた鎖がそれを許さない。
    「吾子はどこ、あこは…………」
     冷えきった女の肩に、雪はしんしんと降り積もる。


     
    「いわゆる『間引き』というやつだな」
     帚木・夜鶴(高校生エクスブレイン・dn0068)はかるく腕を組むと、集まった灼滅者達に事件のあらましを語り始める。
    「昔々はそれなりにあった風習だと聞くし、今だってあるところにはあるらしいからな。別に騒ぎ立てるほどの事でもないんだろう」
     ――生まれてきた子供を、物心つく前に殺してしまうことなんて。
    「だがな、生まれたばかりの我が子を殺したい親がどこにいる?」
     そんなことを思えるのなら、それはもはや人の親じゃない――そう言いたげに、夜鶴は口の端を小さく吊り上げる。そして、一つ息を吐くと、
    「その親の無念を、スサノオが呼び覚ましたんだ」
     事件の核心へと踏み込んだ。
    「スサノオが現れたのは、かつて小さな集落があった場所……といっても、今は廃れて、しがない田舎の雪原だがな」
     その集落では、既に二人の子がある家庭で、冬に生まれた赤子は必ず間引かれたのだという。
     夏ならば身請けや奉公に出すことで済ませた口減らしも、陸路の閉ざされた冬ではそうもいかない。
     飢えに怯える陸の孤島で、幾多の母親が泣く泣く我が子を雪に埋めた。
    「……その後悔は古の畏れとして蘇り、一人の女の形をとって、夜な夜な子供を探している。きみたちの役目は、これを終わらせることだ」
     それはどんな形でも構わない。
    「なにせ何もない雪原だからな。人払いの必要もないし、相手が鎖に繋がれている以上、逃げられる心配もない。ただ、気を付けるとすれば――女は気が触れる寸前だ」
     下手に刺激すれば何が起こるかわからない。
     しかも女が探しているのは自ら埋めた我が子である。そんなところを誰かに見られたいはずがない。
     戦闘を避けられないとはいえ、より穏便に済ませたいのならば、接触方法は考える必要があるだろう。
    「女は小さな子供の姿をした影業を使ってくる。皮肉といえば、皮肉だな」
     あるいはそれは、皮肉のような懺悔なのかもしれないけれど。
     夜鶴は薄く浮かべた笑みで以て、表情を隠す。
    「それと、この事件の元となっているスサノオの行方は予知できていないのが現状だ。ブレイズゲートのようなものだな。力及ばずで申し訳ない」
     とはいえ、手掛かりが全くのゼロというわけでもない。
     目の前の事件がまさにそれである。
    「……後手に回るとはいえ、引き起こされた事件を解決していけばいずれ元凶に辿り着けるはずだからな」
     そのためにも、気を引き締めて頑張って来てくれ。


    参加者
    アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)
    長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536)
    居島・和己(さらば金欠の日々・d03358)
    森村・侑二郎(宇治抹茶金時・d08981)
    蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)
    琴葉・いろは(とかなくて・d11000)
    英田・鴇臣(拳で語らず・d19327)
    不動・大輔(ガッツリスケベな旅人・d24342)

    ■リプレイ

    ●探し人
     深々と降り続く雪のなか、灼滅者達は静かに時を待っていた。
     身を隠すもののない雪原で、7人は長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536)の持参した白い布を被り、息を潜める。物陰がないのは心もとないが、何もないよりマシだろう。持参した照明器具の電源もすべて切ってある。古の畏れとの戦闘が避けられないとはいえ、不用意に悟られたくはない。
    「……しっかし、寒ぃな」
     布の下で英田・鴇臣(拳で語らず・d19327)がぼやく。
     雪の降る場所での依頼は二度目だが、東京と違う寒さはやはり辛い。
     麗羽はそんな彼の様子に気付くと、そっとカイロを差し出した。 
    「平気? よければ使いなよ」
    「えっ、でも」
     それじゃあ長姫先輩が、と言いかければ、
    「オレは寒冷適応があるからさ」
    「ああ」
     なるほど。
     ならばと受け取った鴇臣は、早速くしゃくしゃ揉んで指先を温める。そうして広大な雪原を見据えると、不意に、ぽつりと零した。
    「…………なんか、そういう時代に生まれなくてよかった、としか、言えねぇよな」
     それに頷いたのは、居島・和己(さらば金欠の日々・d03358)だった。
    「かーちゃんの想いって、すげー重……あ、いや。ギャグとかじゃなくてさ」
     違う違う、と小さく首を横に振る。
     そう。
     それは本当に、重いものだと思う。
    「俺んちのかーちゃんも……」
     と、何かを思い出し、じっと見つめる蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)の視線に気づいて言葉を止めた。
    「――や、何でもないぞ?」
    「?」
     きょとんと見返す結唯に、和己はにっこり笑って途切れた先の言葉を誤魔化す。
     本当に、かーちゃんくらい何でもない。
     それでも結唯は、しばし不思議そうに首を傾げていたが、やがて、微かに瞳を伏せると、
    「……家族は、大切ですよね」
     とだけ、切なそうに口にした。
     その胸によみがえるのは、八年前の惨劇。
     どういう経緯であれ、家族を失う事には痛みが伴う。
     境遇が違うとはいえ、それは森村・侑二郎(宇治抹茶金時・d08981)にとっても同じ想いだった。
     大事な人と引き離されることは死にも等しい苦痛だったろう。
     ましてや自らの手で引導を渡さねばならなかった者にとって、それはいかほどだったのだろうか。
     そして、二度と帰らぬ我が子を探し彷徨い続ける心とは。
    「……早く終わらせてあげたいですね」
     無表情な侑二郎の声が、祈りにも似た色を帯びる。
     その声に、不動・大輔(ガッツリスケベな旅人・d24342)は決意を込めて拳を握りしめた。
    「できるよな、俺達なら」
     いや、言い直そう。
     これは俺達にしか出来ない役目であり、他の選択肢など存在しない。
    「ええ」
     琴葉・いろは(とかなくて・d11000)が短く、けれど柔らかく頷く。
     ほう、と洩らしたいろはの白い吐息が、じわりと雪を水に変える。
     ――春に雪が溶けるように、この方の物思いも溶かして差し上げられたら。
     見つめる視線の先では、永遠の冬に閉じ込められた母親が小さな光に照らされていた。

    ●尋ね人
    「こんばんは」
     さくりさくりと雪を踏み分け、女のもとへと辿り着いたアリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814) が声をかける。
     首元のライトが照らす背中がびくりと震え、あかぎれた指は動きを止めた。
     しかし、こちらを向くことはしない。
    「――……、ぁ……、……な、…………」
    「? 大変そうね。手伝いましょうか?」
     小さく何かを呟く女に、あくまで知らぬふりを装ったアリスが一歩、踏み込めば。
    「……たな、見たな、見たな――――――!!!!!」
     途端、頬の痩けた女が振り返り、月明かりを浴びた影は異形となって目を覚ます。
     それは、わかっていたこと。
    「――ッ、『Slayer Card, Awaken!』」
     即座に叫んだ解除コード、同時に放った白き魔法の矢は影の刃とすれ違う。
     そして。
    「ぎっ、ああああぁぁぁぁぁっっ」
     響いたのは、女の悲鳴だった。その身を貫いたのはアリスの矢――だけではない。
    「どうにかうまくいったっすね?」
     危険を察し、駆けつけた仲間たちの後方では、スナイパーの和己がガトリングガンを構えていた。その銃口からは、細い煙がたなびいている。
    「大丈夫?」
     言いながら集気法で傷を塞ぐ麗羽に、アリスは、ええ、と頷く。
    「平気よ、ありがとう」
     覚悟はできていたから、と。
     一斉に姿を現した灼滅者達に、女が向けるのは明らかな警戒。子供の姿をとった影から滲み出るのは余所者への敵意。
     ここからが、本番だ。
    「……『咎人に、永久の安らぎを』……」
     小さく呟く結唯の声は、灼滅者本来の能力を呼び起こす。
     だがこの場合、『咎人』とは一体誰を指すべきなのだろうか。
     ――わからない。
    「ですが、このままその苦しみを放っておくなんて出来ません!」
     五芒星状に符を放ち、発動させるは攻性結界。
     そうして女の動きを封じれば、すかさず侑二郎と鴇臣が飛び出した。
     二人のヘッドライトが照らす先は寸分たりとも違わない。
    「手加減はしません、……行きます」
    「つーことで、悪いな」
     展開する障壁、叩き込むシールドバッシュ。
     振り切った腕には一撃の重さがジンと広がり、女はその身に受けた衝撃を逃がすように息を吐く――暇も、ない。
     雷を帯びた鴇臣の拳が容赦なく胴を撃ち抜く。
     ふらりと揺れる細い体。それを支えるように、影の子どもが足元へと走り寄る。
     だが、それより早く、いろはの影が動き出していた。
     黒い子供をかわすように滑り込み、素早く女の身体を絡めとる。抱くように、けれど、決して動けぬように。そこに一切の手加減はない。
     理不尽に痛めつける気がなくとも、彼女の『冬』を長引かせる気も毛頭なかった。
     真っ白の小袖を締め上げる黒い影――そこへ、斬艦刀を握った大輔が走り込む。
    「悲しいよな、生きる為とはいえ……」
     我が子を、殺さなきゃいけなかったなんて。
    「だがな、同情はしても敵は敵だ。灼滅するぜ」
     超弩級の一撃が、振り下ろされる。

    ●失せ者
    「ふ、ふふ……あはははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!」
     狂ったような女の笑い声が、夜空にこだまする。
     まるでそれは、重ねられた攻撃で彼女の何かが切れたように。
     女が揺れれば黒い子供も肩を震わせ口を開け、そして、そのまま、灼滅者へと牙を剥いた。
    「――!」
     真っ先に反応したのは侑二郎だった。
     影の狙いが彼だったせいもあるだろう。
     すぐさま膝上まで積もった雪を蹴り、器用に跳ねるが影の速さは容易くそれを上回る。
     ばくん――っ。
     と。
     飲み込まれたのは一瞬のこと。
     心の深淵から呼び覚まされるトラウマに、侑二郎の瞳の奥に翳が差す。
    「森村さん、大丈夫ですか!?」
     言うが早いか、結唯は防護符を飛ばしていた。
     与えられる癒しは、脳裏によみがえったトラウマごと身体の痛みを鎮めてくれる。
     侑二郎は心配そうに見つめる結唯を振り返ると、こくりと頷いた。
    「……大丈夫です、ハイ」
     平静を取り戻したその声に、結唯はほっと安堵の息を洩らす。だが、彼一人ですべての攻撃を受けとめられるわけではない。
     麗羽は盾を構えると、行く手に塞がる影の子を軽くいなし、女の懐へと一気に踏み込む。
     引き付けるように繰り出されるシールドバッシュ。女は咄嗟に身を捩り、しかし逃げそびれたその足元で鎖が鳴る。
     それは、女をこの地に縛り付けるもの。
     いろははそこへフォースブレイクを振り下ろす――ミス――しかし、それもあながち無駄ではなかった。
     行き場を失った魔力が柔らかな新雪を撒き上げれば、突如として現れた自然の煙幕が女の目をくらませる。その中心を、鴇臣の真っ赤な逆十字が切り裂いた。会心の手応えに、その口元が微かに上がる。二人の背後では、女の注意が削がれている隙にと、和己が予言者の瞳で己を強化する。
     反撃を許すことなく大輔が絶え間ない拳撃を押し込み、さらにアリスのオーラキャノンがその身を撃ち貫けば、女は堪りかねたように雪の上へと倒れ込んだ。
    「ああ、ああ…………」
     細い指が、無造作に雪を掻く。
     しゃくり、しゃくり、しゃくり――。
     掻いて、掻いて、掻いて、もがいて――。
     ゆるゆると半身を起こす女に、いろはは穏やかに問いかけた。
    「貴女は、お子さんを守れなくて苦しんだのでしょう? それを攻撃の手段にしてしまって良いのですか?」
     錯乱しているとはいえ、単なるサイキックだとはいえ。
     それでも胸は、痛むのだ。
     たとえそれが、ただの感傷に過ぎないのだとしても。
     だが、やがて女の口からもたらされたのは、いろはへの答えなどではなかった。
    「吾子や――」
     言って、女は夜空を仰ぐ。
     白い頬を、一筋の滴が伝う。
     その目の焦点は定まらない。
    「ごめんね、ごめんね……」
     寒かろう。冷たい雪は痛かろう。
     待っているんだよ。
     今に見つけてあげるから。
     皆で探し出してあげるから。
    「あ、ァァぁあ、ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――!!!!!!!」
     咽も割らんばかりの叫び声。
     いや、もしかすると泣き声だったのかもしれない。
     女が髪を振り乱せば、立ち上がった子供は小さな体をふるりと揺する。
     するとその身は、二つに分かれ、三つに分かれ、四つに分かれ――ひとつだった影は、幾人もの子供に枝分かれる。
    「……もう、終わりにしましょう」
     何かを断ち切るように、侑二郎が告げる。
     これは、あまりにむごすぎる。
     胸に過るのは目を逸らしてしまいたい衝動。
     それを振り切り、纏うは炎。
     想いは静かな熱に変え、レーヴァテインを叩き付ける。
     女の着物に火の粉が散れば、大輔はDMSセイバーでもって斬りかかった。迷いは、ない。
    「ァ――――!」
     女の口から漏れる短い悲鳴。
     すると彼女を中心に、幾筋もの影が放射状に走り出す。
     黒い子供たちは足あともなく雪を駆け――けれどそれは、何人いようとも所詮はひとところにしか狙いを定められず、威力が変わるわけでもない。
     何人いても、出来ることは一つなのだ。
     何人増えようと、選択肢などなかったのだ。
     それは、誰に分け与えることも許されず、生き残った母親が背負い続けた痛み――。
     麗羽が誘うように踏み出せば、影たちは容赦なくその身に絡み、息の根も止めんばかりに締めつける。
     だが、それは決して予想外の一手ではない。動じることなくオーラを纏い傷を癒す麗羽に、結唯も護符を飛ばしてそれを手伝う。
     同時に、無防備となった女のもとへ銀色の影が滑った。アリスの影業だ。
    「影業は勝手知ったる何とやら……つけ込める弱点は利用させてもらうわよ」
     そう。
     銀の影が喰らい、生み出すは積もり続けた『彼女たち』の心の傷。
    「ぁ、や…………め、……――っ!!」
     影の中心にうずくまる女は、両の手で顔を覆い、いやいやをするように首を振る。
     一体、何人の子がこの雪原に埋まったのだろう――。
     結唯は悲痛な面持ちで彼女を見つめる。
     『家族』という単語から、どうしても同情が拭えない。
     わなわなと震える女の肩。
     やがてそれも治まれば、顔を覆っていた手ははらりと落ちる。
     そして、真っ直ぐに上げた酷く鋭い双眸が和己を射抜いた。
    「――――っ」
     瞬間、何かが和己の心を絞め上げる。
     強すぎる愛情と後悔の奥に見えたものは、恐怖か救いか、はたまたそれ以外の『何か』か。
     いや、違う。
     全部全部、気のせいだ。
    「子供のいるとこに連れてってやるから、落ち着けっての!」
     構えたガトリングガンから吐き出される銃弾が次々に女を襲い、無数の銃創を残す。
     倒れそうな身を支えようと腕を伸ばした女の指先に触れるのは、すべてを隠した冷たい白。
    「こんなに雪が積もっていても、暦の上では春なのですよ。貴女がその愁いごと浄化されるように……」
     私は、祈ります。
     いろはが翳すは、神薙使いの深層に眠る力を宿した異形の腕。
     強烈な一撃が決まれば、あと一押し。
    「これで決めてやるぜ!」
     女を掴んだ鴇臣は、一気に地獄投げの体勢に持ち込む。
     ぐらりと揺らぐ重心。
     腕に抱えた重みを勢いよく地面に投げつけ、自らもそのまま倒れ込めば、二人分の衝撃に吹き上げられた雪が空高く舞う。
     重力に従い、再び舞い降りたそこに――最早、女の姿はない。
    「あー…………――。終わったぜ」
     大の字に寝転んだ鴇臣は、さみ、と白い息を吐き出した。

    ●在りしもの
    「飢えの恐怖からの口減らし、ね」
     まるで、19世紀のアイルランドで起きたジャガイモ飢饉みたい。
     広大な雪原を見渡し、アリスは故郷からほど近い彼の国に思いを馳せる。
     あれが原因で、アイルランド島の人口は半減した。
     かつてこの地に存在した集落も慣習も、あまり他人事とは思えない。
     何かを考えるように瞼を下ろし、ゆっくりと開けた瞳でもう一度、白銀の世界を見つめる。
     もう、この雪のなかには誰もいない。
    「……歴史の影で泣くのは女ばかりね」
     そんな呟きに頷く者も、誰も。
     麗羽は、かつての母親たちが縛られ、今や無人となったその場所に簡素な花を手向ける。
    「たとえただの思念だったとしても、俺たちは確かに……その女性と会ったんですよね」
     無かったことにはしたくないと、侑二郎が手を合わせれば、皆もそれに続く。
     子供たちの冥福を願う大輔に、母親たちの念が二度と起こされぬよう祈りを捧ぐ和己。
    「皆さん……今一度、安らかに眠ってください……」
     小さな結唯の呟きには、いろはが胸の内でそっと願いを重ねていた。
     どうか、彼岸では親子離れぬように、と。
    「……スサノオも嫌なもんを呼び起こすよな」
     そっとしておいてやればいいじゃねぇか――。
     やがて黙祷を終え、吐き出すように言った鴇臣の不満を聞き届ける元凶はここにはいない。そして、どこにいるかも未だわからない。
     畏れと鎖が消失した後には何も残されておらず、手掛かりと呼べるようなものは何一つ手に入らなかった。
     残されたのは、八人が踏みつけ固くなった雪と、一人が掻き続けた跡。
     冷たい風が吹き結び、雪は変わらず振り続ける。
     いずれ変わりゆくその場所を、星月だけがいつまでも照らしていた。

    作者:零夢 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ