皆川・綾(闇に抗い始めた者・d07933)は、こんな噂を耳にした。
『淫魔の眷属、フライングセーラー服が確認された』と……。
この衣服に魅了された一般人が着用すると、強化一般人となって、淫魔の配下眷属になってしまうらしく、その魅力で配下を次々と増やしているようである。
衣服を着用しているのは、バブル全盛期に青春を謳歌していた熟女で、その溢れんばかりの魅力で周囲の一般人数人を魅了し、強化一般人として配下にしているらしい。
彼女自身はそれほど強くはないため、身に纏っている服さえ破壊する事が出来れば、強化一般人としての力を失って倒れる事だろう。
ただし、フライングセーラー服を着ていた時の記憶がないため、熟女が目を覚ました時に色々な意味で面倒になるかも知れないので、その点だけは注意しておかねばならない。
参加者 | |
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向井・アロア(お天気パンケーキ・d00565) |
九条・雷(蒼雷・d01046) |
日向・和志(ファイデス・d01496) |
皆川・綾(闇に抗い始めた者・d07933) |
久瀬・一姫(白のリンドヴルム・d10155) |
イヴ・アメーティス(ナイトメアキャット・d11262) |
胡麻本・愛(戦場のお天気お姉さん・d11864) |
北道・アリサ(男の娘ハンターリターンズ・d21816) |
●失われた青春
「何の変哲もない淫魔の眷属のフライングシリーズのはずなのに、何か雰囲気が違うというか普通と違う気配がするの。BBAが年甲斐も無くセーラー服を着てはしゃいでる地点で普通じゃないけど……。でも、これって撮影して正気に戻った後にその映像を見せつけたら、面白い事になると思うの」
そんな事を考えながら、久瀬・一姫(白のリンドヴルム・d10155)が仲間達と共に、フライングセーラー服が確認された場所に向かっていた。
バブル世代の熟女が纏うセーラー服。それだけで破壊力抜群であった。
「まさか、ふらいんぐ、せーらーふくが、じゅくじょの、もとに、ゆこうとはー。すいりした、この、あやーんで、あっても、みぬけな、かった、わー」
皆川・綾(闇に抗い始めた者・d07933)が、死んだ魚のような目をして呟いた。
噂を聞いた頃は予想もしていなかったのだが、蓋を開けてみればバブル世代の熟女とセーラー服のコラボである。
確かに、色んなものがコラボしている昨今だが、ここまで突っ込んでくださいと言わんばかりの組み合わせはないと思った。
「……まぁ、あたしは魔法少女よりはセーラー服派だけど……。何でこうもオバさんばっかり着るかねぇ……」
胡麻本・愛(戦場のお天気お姉さん・d11864)は、げんなりとした。
おそらく、フライングセーラー服との相性がピッタリだったためだが、もう少し若い女の子に適合しなかったのが、逆に驚きであった。
もしかすると、互いに求め合った結果なのかも知れないが、まわりからすればいい迷惑である。
「熟女のセーラーって、ヤバくない? 何よりその魅力に取りつかれてる一般人がいる事にビビってるよ。なんで? こわい、こわいっ!!」
そう言って向井・アロア(お天気パンケーキ・d00565)が、全身に鳥肌を立たせた。
だが、熟女好きを甘く見てはいけない。
彼らにとって、熟女は女神。もしくは菩薩。
そんな尊き存在である熟女が、三種の神器のひとつであるセーラー服を身に纏っているのだから、破壊力抜群。並の熟女好きであれば、そのまま跪き、場合によっては土下座をするレベルである。
「欲に従って生きる事は否定しないけど……コレは酷いわね(主にビジュアル面で)」
事前に配られた資料を眺めつつ、北道・アリサ(男の娘ハンターリターンズ・d21816)が唖然とした。
問題の女性は、かつてミスシャイニグフィンガーの準優勝経験者であり、そこそこ美人のようだが、年齢的な事を考えると、セーラー服を着るのは無理がある。
「……と言うか、誰得? ねェ、誰得なの? まあ、あたしも今年でセーラー服を着なくなるんだけどねェ。嬉しいような、寂しいような……。あたしもいつか青春を思い出すことなんてあるのかなァ。でも、バブルってこういうアグレッシブなおばさまが大量発生してたのかなァ? だったとしたら、怖いよねェ、ほんと」
九条・雷(蒼雷・d01046)が、気まずい様子で汗を流す。
バブル世代は今とは比べ物にならないほど裕福で、ほとんど下着のような恰好で踊っていた女性までいたと言われている。
そんな世代であるからこそ、セーラー服を着ても、動じる事がないのかも知れない。
「なーんでこんな事になったか分からんが、受けちまった以上はしょうがねぇ。男もなぜか俺だけだしな! ……あんま相手したくないけど、やるしかないか」
日向・和志(ファイデス・d01496)が、深い溜息を漏らした。
ある意味、運命……いや、宿命なのだろう。
これから先に、どんな困難が待っているのか分からないが、おそらくこれは乗り越えなければならない障害。運命を切り開くために必要な事なのだ……と思いたい。
「まあ……、実害も出てるわけだし、サクッと灼滅してしまいましょう」
そう言ってイヴ・アメーティス(ナイトメアキャット・d11262)が、力強い足取りで歩き出す。
それからしばらくして、イヴ達はセーラー服姿の熟女に遭遇した。
●視覚テロ
「……男性が着るのとは、また違った意味で破壊力があるわね、これは……」
セーラー服姿の熟女を目の当たりにしたイヴは、しばらく言葉を失った。
確かに、年齢の割には美人である事は認めるが、だからと言ってセーラー服を着ていい理由にはならなかった。
それでも、似合っていないと言えば嘘になるが、セーラー服姿の熟女を受け入れる事も出来なかった。
「……おぞましいの」
一姫は思わず本音を漏らした。
まるで自分が気に入っている漫画を、安っぽい実写映画で再現されたような気分。髪型と雰囲気をそれっぽく見せれば、良いという考えが滲み出ているようなモノを見せられた感覚に近かった。
「色々な意味で目に毒だねぇ、これは……」
視線のやり場に困りながら、愛が小さくコホンと咳をする。
しかし、熟女に気づいた男達が、下着見たさにゾロゾロと集まってきた。
これには愛もすっかり呆れて頭を抱え、溜息混じりに殺界形成を発動させた。
その途端、男達が熟女から離れていった。
「えっ? あれ? これって、どういう事?」
それに気づいた熟女がキョトンとした。
いつもであれば、男達の視線を釘づけにして、骨抜き状態にしてしまうのだが、今回に限っては全く効果がないようだった。
「てめぇに言っても無駄だとは思うが、これだけは言わせてもらおう。熟女のセーラー服とか誰得だ! むしろ目と精神に深刻なダメージが入るわ!」
嫌悪感をあらわにしながら、和志が熟女をジロリと睨む。
「あらぁん、ボウヤにはこの魅力が分からないようねぇ。この匂い立つほどの魅力が! まあ、いいわ。これからじっくりと教えてあげればいいんだから」
そう言って熟女が舌舐めずりをする。
同じような手口で男達を誘惑していたのか、絶対の自信と気迫が感じられた。
「せーらーふく、には、せーらーふくで、たいこう、ですん!」
次の瞬間、綾が膝上10cmなセーラー服姿で登場し、パッションネイトダンスでヘソをチラチラさせつつ、熟女に若くて躍動感のある肉体を見せつけた。
「な、何よっ!」
そう言って熟女も豊満な胸を強調させたが、若さには勝てない。
圧倒的なまでの差があった。後5年……いや、10年早ければ、対等に戦う事が出来たかも知れない。
だが、この状況で誰が見ても、結果は明らか。
村一番の美人が芸能界デビューをして、最低ランクに位置づけられるほどの屈辱感。
「若いだけ……じゃない」
喉の奥から絞り出すような声で吐き捨てた。
しかし、瞳から溢れ出た涙を止める事が出来ない、止められない。
ここで泣いたら駄目。その時点で負けを認めた事になる、と思っていても、零れ落ちる涙を止める事は出来なかった。
「じゃ――ん! やっぱねー、セーラーって10代が着るもんなんだよね」
しかも、アロアが高校女子冬服のセーラー服を身に纏い、クルリと回ってニコリと笑った。
これには、熟女も後ずさり。
心の柱がポッキリと折れる音が耳元で響いた。
「とりあえず、おばちゃんには悪いけど、サクッと仕事を終わらせて、とっとと帰らせてもらうわね」
そう言ってアリサが熟女の前に陣取って、スレイヤーカードを解除した。
●奥の手
「こ、小娘達がっ!」
熟女にとって、最悪の日。
それ以外に、この状況を説明できる言葉はない。
だが、熟女には奥の手があった。
すぐさま、指をパチンと鳴らすと、物陰に潜んでいた男達が姿を現した。
しかも、先程の男達とは、明らかに目つきが違っていた。
「また、妙な連中が現れたわね」
アリサが警戒した様子で間合いを取った。
「ふふっ、彼らはアタシの忠実な下僕……。アタシの命令なら、何でも聞いてくれる、心強い人達よ」
熟女がニヤリと笑った。
それを合図に、男達がワラワラと群がってきた。
「そうやって都合のいい人間しかまわりに置かないから、自分が勘違いしている事にも気づかないんだよ。あんたみたいなババアが着たって全然かわいくないし、セーラーを着たって青春なんて戻って来ないし、勘違いもいいところだよね」
ナノナノのむむたんと連携を取りつつ、アロアが皮肉混じりに呟きながら、熟女の男達を手加減攻撃で倒していく。
「そ、そんな事ないわよっ! まだまだ、現役だもん。みんなも似合っているって、言ってくれたもん!」
熟女が子供っぽくキレた。思いっきり可愛らしく。
わずかに残った若さを絞り出すようにして強調しつつ。
だが、そのせいで、まわりはドン引き。
冷ややかな視線ばかりが送られている。
しかも、男達はアロア達によってすべて倒され、みんな床に突っ伏していた。
「やっぱり、早く倒してしまった方が、世の中のためね」
すっかりげんなりした様子で、イヴが攻撃を仕掛けていく。
例えるなら、娘の制服を着て上機嫌で歌う母親を見たような感覚。
頼むから、やめてくれ。そして、父親も無駄に褒めるな。調子に乗るから。しかも、妙なアイコンタクトを送って、ニヤつくなよ、そこのふたり、と言った感じになった。
そんなどんよりとした気持ちを振り払うようにして、イヴが熟女にティアーズリッパーを放つ。
その途端、熟女の豊満な胸があらわになり、イヴが反射的に口元を押さえた。
年齢の割には綺麗だが、あくまでこの年齢は、と言う話である。
「ふふっ……、なんだかんだ言いつつ、このボディに嫉妬しているんでしょ? いいのよ、好きなだけ見ても」
しかも、熟女が調子に乗った。
乗って、乗って、乗りまくって、あらわになった胸元を見せつけた。
「つーか、こういう時に、俺はどんな顔をすればいいんだ」
和志が霊犬の加是と一緒に、微妙な表情を浮かべた。
好きで見た訳ではないが、出来る事なら見たくはなかった。
しかも、年末に。
「しょくしゅA、B、C! しゅつ、どー!」
すぐさま綾が影縛りを仕掛ける。
その途端、熟女のボディラインを強調するような形で、完全に動きが封じられた。
「……さようなら」
熟女に対して別れを告げ、一姫が閃光百裂拳を叩き込む。
その一撃を食らった熟女が宙を舞い、フライングセーラー服が断末魔を上げるようにして、散り散りになって弾け飛んだ。
「……もう関わりたくないねぇ。フライング服を着た熟女とは」
落下してきた熟女をキャッチし、愛が疲れた様子で溜息を漏らす。
「あ、あたしは何を……きゃあ!?」
我に返った熟女は愛と目が合い、自分の恰好に気づいて、慌てた様子で胸元を隠した。
自分がどうしてここにいるのか。どうして、こんな格好をしているのか分からない。
ただ、長い夢を見ていたような気がしていた。
「どうも、どうも、驚かせてごめんねェ? いきなり全裸でびっくりしただろうけど、とりあえずこの服を着て貰って良い?」
苦笑いを浮かべながら、雷が熟女に服を渡す。
だが、熟女は何が起こったのか分からず、キョトン。
自分の身に何が起こったのか分からず、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
「ゴメンね、ひどい事を言っちゃって。でも、年齢に合った格好をするのが一番だと思うんだよね」
申し訳なさそうにしながら、アロアが熟女に対して謝った。
しかし、熟女は何を言っているのか理解しておらず、ハテナマークを浮かべて首を傾げていた。
もしかすると、熟女も自分の意思で、セーラー服を着た訳ではないのかも知れない。
だが、心の奥底で若かった頃の自分を……、何事にも恐れず突き進んでいった自分を取り戻したいと思っていたのだろう。
そんな気持ちにフライングセーラー服が惹かれ、互いに欠けていた部分を補うようにして、ひとつになったのかも知れなかった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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