●熱くほうとうの心燃えて
「ふ、ふはは! さー食べるのだ。最近は別の怪人が現われている様だが、ここは俺の領地だ。誰にも邪魔はさせーんっ!!」
山梨県は甲府市。
マントには沢山の幅広のうどん……いや、ほうとうがたなびく格好をした男。
そんな男は片手には熱々のほうとうを持ち……夕闇の煌めく中、声高らかに叫ぶ。
「さぁ、まず手始めに何も知らぬ奴らをこのほうとうで腹一杯にさせてやるぞ。そして腹一杯になったら私の配下にし、そしていつかは世界を征服してやるのだ! 待ってろよ、お腹をすかせた者達よ!!」
そう言うと共に、彼……いや、ほうとう怪人は、ほうとう片手に駆けていくのであった。
「……お、皆集まった様だな! よし、それじゃ始めるぜ!」
パチン、と、ルービックキューブの最後の一手を解き、振り返った神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)。
そして集まった灼滅者達に、初っ端から口にしたのは……。
「皆に向かって貰う場所は山梨県の甲府市だ。少し前には鳥もつ煮で有名になった所なんだ」
「別に皆に鳥もつ煮を買ってこいって言う訳じゃないぜ? そう……此処にお前達の宿敵、ダークネスが、事件を起こす様なんだ」
「無論ダークネスは、灼滅者にとって強力で、危険な敵だがな? だがダークネスを灼滅するのもお前達の役目! という訳で、お前達にはこのダークネスを倒してきて欲しいんだ!」
「ダークネスはお前達も知っての通り、バベルの鎖の力による予知があるが、この俺の全能計算域から導き出した生存経路に従えば、その予知をかいくぐりダークネスに迫ることが出来るって訳だ。という訳で、皆にこの生存経路を叩き込んでやるぜ!!」
そしてヤマトはバン! とホワイトボードに色々と書き連ねた生存経路……というか、ダークネスに関する様々な情報を言う。
「ダークネスはご当地怪人、甲府という事で皆も知っての通り、ほうとう怪人だ!」
そんなの知らない、という灼滅者達の視線は一切気にする事は無く。
「ほうとう怪人はその熱いほうとうを鞭のようにして遠隔位置から単体攻撃してくる事が出来る。無論近接されても、そのほうとうをなぎ払いながら列を対象としての攻撃する事が出来るんだ!」
「またダークネスは一般人達にほうとうを腹一杯食べさせて、それを通じて世界征服を企もうとしている。つまり皆が戦う際には、周りに一般人も居る可能性が高い訳だ。ただほうとう怪人は、ほうとうの事を貶されたりすると、貶した奴に対して攻撃を集中させるらしいから、おとり役を作ると良いと思うぜ!」
そして最後にヤマトは。
「こっちに未来予測という、状況的優位はある。しかしご当地怪人もダークネスである事に変わりは無い。その戦闘力は決して侮ることが出来ない実力だ。お前達で協力し、必ず勝ってきてくれ!」
と、威勢良く言い放つのであった。
参加者 | |
---|---|
ガム・モルダバイト(ジャスティスフォックス・d00060) |
クラウス・リノイエ(高尾の白天狗・d00225) |
宇佐美・瑞希(快傑ウサミミ頭巾・d01421) |
東雲・和哉(天神ガッシャイン・d03081) |
黒部・秋(イモジャージャー・d03121) |
安河内・明良(瑠璃苦菜は己が心の思うままに・d04527) |
白・颯馬(丘を駆ける順風・d05139) |
大豪寺・健五郎(高校生ご当地ヒーロー・d07204) |
●命より大事な……熱い魂と熱い麺!
「ほうとう怪人か……すまん、始めて聞いたんだが、みんなしってるか?」
「いーや、しらんな。でもまぁ、俺達と同じご当地怪人なのは間違い無いだろ」
ヤマトの事件解決の依頼を受けた灼滅者達。
しかし相手にするほうとう怪人について……東雲・和哉(天神ガッシャイン・d03081)が皆に尋ねるも、黒部・秋(イモジャージャー・d03121)は肩を竦める。
対し。
「わたしもそうなのです。ほうとう怪人? ……いや、私は新潟出身なので、甲府の怪人はライバルなのです!! かわなかじま以来なのです」
「えっと……結構昔からの因縁ですね。まぁ、ほうとう怪人はぼくもちょっとしらないですね」
宇佐美・瑞希(快傑ウサミミ頭巾・d01421)に白・颯馬(丘を駆ける順風・d05139)が軽く苦笑。
それは怪人の話ではない気がする。遥か遙か昔の戦国時代の話し。
サッカーの話になる可能性もある訳だが……既に新潟は上位リーグに行ってたり……と、それはさておき。
「ガハハ、まぁともかく、だ。俺様達と同じご当地怪人が悪事を働くとなれば黙っちゃいられん。ほうとう怪人よ、貴様の好きにはさせないぞ!!」
腰に手を当て、高笑いを上げながら告げるガム・モルダバイト(ジャスティスフォックス・d00060)。
……そう、ふと見てみれば、今回この依頼への参加者は、みんなご当地怪人の仲間達。
だからこそ、ダークネスに落ちたご当地怪人は宿敵……見過ごす事等出来るわけも無い。
「そうだな。何でもいいか……悪さをする怪人は放っておけえねぇしな!」
「そうだ。ほうとう怪人……いいぜ、食い尽くしてやるよ!!」
和哉に安河内・明良(瑠璃苦菜は己が心の思うままに・d04527)が頷くと、大豪寺・健五郎(高校生ご当地ヒーロー・d07204)、クラウス・リノイエ(高尾の白天狗・d00225)も同意。
そして灼滅者達は、ほうとう怪人の出没する地域へと急ぐのであった。
●灼滅者V.S.ほうとう怪人! 熱いうどんの戦い!
「ふははははー!! さー食べろ、さーー食べろーー!! オレの熱い熱いほうとうをたべるのだー!!」
マントに沢山の幅広のほうとうを棚引かせ、何処かのスターを思い浮かべさせる姿形をしながら大声を張り上げるほうとう怪人。
その周りには、強制的にほうとうを口中に突っ込まれてもぐもぐ苦しんでいたりする一般人達。
どうやらほうとう怪人は、まずは食べさせる事をするのがセオリーらしい。
無論、食べさせるのは大人子供、そんなのは一切関係なし。
「さわがしいだけかと思ったが……それだけじゃないか」
クラウスの一言に。
「だな。ほうとうで攻撃……? あの野郎……食べ物を粗末にしやがって!!」
「ええ、本当むちゃくちゃですね。皆さん、準備はいいですか?」
「ああ……セーフティーアンロック! ご当地パワーへの接続、完了!! 嘆きに沈むご当地の代弁者、大豪寺健五郎がいざ参る!!」
明良の憤りを抑えつつ、颯馬に健五郎が頷きながらカード解放。
そして灼滅者達が、一斉にほうとう怪人の下へ登場。
「ん……? ああ、てめぇらもほうとうを喰えぇ!!」
灼滅者達の到着に対し、ほうとう怪人はほうとうを振り回して攻撃。
その一撃を軽く交しながら、秋が。
「そこまでだ、あくと……あァ、続きはこの子らから聞け」
宣告しようとするが、すぐに引き下がる。そしてそれを受けて。
「ウサミミ頭巾参上! なのです!!」
「ガハハ!! ほうとう怪人よ! 貴様の好きにはさせないぞ!!」
瑞希とガムの登場宣言。更に瑞希は続けて「はたし状」と書かれたものを、ほうとう怪人に投げつけて。
「甲斐のほうとうに、越後のうさみみが勝負をいどみにきたなのです!! 今こそ決戦の始まりなのです」
その背中には「かわなかじま」と書かれた垂れ幕。既に瑞希の心は甲斐国に攻め入る越後国の戦国武将。
「な、その手があったか! かっこいいじゃねーか!?」
何故かその果たし状に特に反応したのは健五郎だったりするが、それはさておきとしよう。
「ともかく、だ。ほうとうをぶん回してる奴は、郷土の物を大事にしてねぇ……お前はご当地怪人として、やっちゃいけねえ事をやってるんだよ!」
と、和哉の言葉に、クラウス、颯馬も更に。
「そうだ。おまえのほうとうへの愛情はそんなものか? 本当にほうとうを大切に思っているのなら、ほうとうを武器になど出来る訳がない。おまえのほうとうは、信玄公の愛したほうとうではあり得ないのだ。おまえのは、ただの小麦粉をこねて伸ばしただけのものだ!!」
「そうです。この熱いのに、そこにも更に熱いほうとうを振る舞うのですか! ほうとう怪人! 貴方の思い通りにはさせませんよ!」
ずびしっ、と指を差して指摘すると、明良が更に加えて。
「そうだ! てめぇ、食べ物を粗末にすんじゃねーよ!! お腹減ったヤツラにほうとう喰わせてやるんじゃねーのかよ!? 武器になんて使わず、さっさと喰わせろよ!!」
『ぐぅぅ』
「……べ、別に俺が腹が減ってるとか、そういう訳じゃねーんだからよ!!」
明良はお腹を鳴らして、ちょっと説得性に欠けるものの……口調は真剣。
そんな灼滅者達の言葉に、ぐぬぬぬぬ、と唇を噛みしめながら睨み付けるほうとう怪人。
そしてほうとう怪人は。
「うるさいうるさいうるさいっ!!! お前になんとかぐらんぷりとかで、一気に人気をかっさらわれたヤツの心が解るかってんだ!! おまえらは解らないだろうさ!! だから一泡吹かせてやるんだっ!!」
なんだか逆恨みの様な気がしないでもないが……仕方ないと言えば仕方ないかもしれない。
とは言え、それですっかりほうとう怪人の興味は灼滅者達に向いているわけで……その間に、周りに居た一般人達をさっさと逃がしていく和哉や颯馬、秋。
そして辺りがすっかりクリアになった所で。
「どうやら言っても無駄な様だな……ならば実力行使だ、行くぜ。みなぎれ富士のパワー!」
と秋がガイアチャージで甲州パワーをその身に吸収……他の灼滅者達も同様にガイアチャージで力を吸収すると共に。
「よし、では行くぞ! 健五郎!」
「ああ!!」
声を掛け合い、クラッシャーに立つガムと健五郎がご当地怪人に向けて接近。
「ガハハ、これでも喰らえっ!」
「ダイナミィィックアタァァック!!」
ご当地キックと、ご当地ダイナミックの合わせ技。
ぐはぁ、とほうとう怪人は喰らうものの、踏みとどまりながら。
「やるじゃねぇか……ならこっちも本気で行かせて貰うぞ!!」
そのマントのほうとうを伸ばして、鞭のようにしならせて攻撃。
とりあえずターゲットは、攻撃してきたガムと健五郎……意外に素早いその一撃を、交しきれずに食らう。
「ぐっはーー!! や、やるじゃねーか!!」
むくりと立ち上がりながらも、その眼の光は失われては居ない。
続けてディフェンダーの立場にいるクラウスが。
「その攻撃はこっちが引き受けるぜ!」
「ああ、頼むぜ!」
頷き、そしてクラウスが。
「お前の相手はこのオレだ!!」
とご当地ビームを放ち、ターゲットをこちらに向けさせる。
そして颯馬も。
「そのうどんみたいなのをブツ斬りにされたくなかったら、掛かってきて下さい! ぼくの剣を突破出来るのでしたらね!」
と、戦艦斬りで斬りかかる。
怒りとプレッシャーをほうとう怪人に与えつつ、ダメージも与える。
そして更にキャスターの和哉、スナイパーの瑞希も。
「本当目障りだぜ! 邪魔だ!」
「ウサミミ頭巾は、ご当地の平和を守る正義のヒーローなのです。だから悪は必ず打ち倒すなのです!!」
影喰らいでプレッシャーを与えつつ、高速演算モードで狙いを付けて次のターンに備える。
そして最後尾のメディックの秋、明良は。
「俺が健五郎を回復するから、秋はディフェンダーを頼めるか?」
「OK。じゃ明良はクラッシャーの二人をメインで頼むぜ」
「ああ」
回復ターゲットを打ち合わせて、そして癒やしの矢で明良が回復。
そして秋は、ディフェンダー二人の体力がまだ大丈夫なのを確認すると、ほうとう怪人へ。
「しかしほうとうとうどんって、どう違うん? 同じやん」
制約の弾丸で攻撃しながら、そんな一言。
その一撃を食らいつつも、ほうとう怪人は。
「断じて違うっ!! ほうとうとうどんは断じてっ!!」
「幅広な麺である以外に何が違うん?」
「ほうとうは塩を使わないんだっ。塩を加えるなど邪道っっ!!」
「塩を使わないんじゃ、コシが無いやん」
「ほうとうはコシで味わうモンじゃない!! そんなのずっこいわ!!」
……その後1分間の間、ほうとうとうどんの違いについて叫びながら説明するほうとう怪人。
ほうとうの知識がついたような気がするが、それはまぁ関係無いとして……次のターン。
ガムと健五郎ペアのクラッシャー攻撃が、確実にほうとう怪人にダメージを喰らわせる。
そしてクラウスと颯馬の二人がしっかりほうとう怪人の攻撃についていく事で、ダメージを受け止めるように動く。
……前衛に属する四人の動きが、川の流れの様にスムーズな連携を取る。
そしてその一方、和哉と瑞希のキャスター&スナイパーは。
「そこはもう俺の間合いなんだよ!」
「ひえひえの新潟豪雪攻撃なのです!!」
斬影刃と、フリージングデスで攻撃を加える。
勿論バッドステータスが消えるか、命中率が低くなればバスタービームと影喰らいに切り替え、命中率の低下を防ぐ。
攻撃手段をぐるぐると切り替えつつ、バッドステータスも蓄積させていく。
無論メディックの二人は、闇の制約と癒やしの矢で、適宜回復行動を取り、被害を残さないようにする。
……そして、そのまま6ターン程が経過。
見た目には変わっていないが、マントのほうとうが結構ズタズタな状況のほうとう怪人に。
「ガハハ!! どうした? もう限界か!?」
「くっ……まだだ。まだまだ戦ってやる!!」
「その意思良し! しかし意思だけでは戦えぬのだ!!」
ガムはそう最後通牒を突きつける。そして。
「そろそろ頃合いだ。皆、準備はいいな?」
「ああ、OKー」
秋が頷き、他の仲間達も頷く。
そして。
「ガハハ! では行くぞ!!」
「ああ。怪人は、俺らヒーローにブチ抜かれな!!」
ガムに明良の言葉。
そしてガム、健五郎が周りを取り囲むと共に、閃光百裂拳。
下方から叩き込まれた一撃に、その身体が少し浮くと。
「ヒーローに負けはねぇって事よ!! ヒーロー達の連携攻撃を食らえ!!」
「生半可な考えのダークネスには負けられねぇんだよ! ご当地ダイナミィック!!」
「そうなのですっ!! 必殺!! ウサミミびーーーむ!!」
和哉、クラウス、瑞希もそれぞれ、渾身の一撃を次々と喰らわせる。
その連携攻撃を受け……地上にどさり、と臥せるほうとう怪人に。
「全てを断ち割る無敵の斬撃! くらえ! 新羅万象断!!」
「はァい、おっつー」
颯馬の新羅万障断、秋のペトロカース……そして。
「正義は勝ーーつ!!」
ガムのご当地ダイナミックの一撃が決まると共に……周囲で大きな火花が上がる。
その火花に包まれながら、ほうとう怪人は。
「くそ……くそおおおおお。しかし、しかし第二第三の怪人が必ずやぁぁあああ……!!」
そんな捨て台詞を吐き捨てながら……その姿が消え失せるのであった。
●喉元過ぎたらほうとうを
「……ふぅ。どうにか倒せた様だな?」
「ええ。これは私達ヒーローの団結の勝利なのです! 甲府の平和は、かくしてまもられたなのです!!」
クラウスに瑞希がウサミミ頭巾をぴくぴくさせながら頷く。
確かにこれで甲府の平和は守られたのだろう……でも、まだ第二第三のほうとう怪人が現われるとも限らない。
いや、きっとこれからもいたちごっこが続くのだろう。
「ガハハハ。まぁ今日はこれくらいで勘弁してやるとするか! さぁ皆、この後はどうする?」
「そうですねー。ぶどうジュースのみたいのです!! 勝沼って所はぶどうが有名みたいですし、石和はももとかで有名なのです。デザートが一杯なのです!!」
「おお、それはいいな! しかしせっかく甲府まで来たのだから、ほうとうを食べるのもまた良くないか?」
「そうだな。怪人も倒したし、ほうとう喰って帰るとしないか? 悪いのは怪人であって、ほうとうじゃねぇしな?」
「そうだな。うどんとどう違うのか気になるし」
「そうだそうだ。鳥もつ煮もあるんだっけ、そっちもいいけどなぁ……地元から俺出たことなかったからなぁ、どっちも喰った事ねぇんだよ」
「ガハハ。よーし解った! それでは食い倒れに行くとしようではないか!!」
ガム、瑞希、和哉、秋、そして明良の会話に、他の仲間らも頷く訳で。
そして灼滅者達は、甲府の街に繰り出し、地元の名産に舌鼓を打つのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年9月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 12
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