魔法少女は暗殺を好む

    作者:るう

    ●殺人魔法少女、再び
    「あれ? おかしいっすね?」
     アプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)の周囲から、気付くと人の姿が消えていた。そう、まるで誰かが、ESPの『殺界形成』を使ったかのように。
     一体誰がこんな場所で……そう、彼女が首を傾げた途端!

    「こんな所にいたのね! 今度こそ、『悪いヤツ』を退治してあげる!」
    「その声は……『殺人魔法少女』! 生きていたっすか!?」
     殺人魔法少女。かつて灼滅者たちが戦い、闇堕ちした仲間と共に消えた六六六人衆。
     正義のためと称して殺戮を楽しんでいた、唾棄すべきダークネスの左頬には、かつてはなかった傷跡が刻み込まれていた。
    「あれしきの事で、負けるもんですか! だって、私は『正義』だから――!」

    ●武蔵坂学園、教室
    「六六六人衆が、アプリコーゼ・トルテさんを襲撃する未来を予測しました」
     園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)の表情は切迫している。それもそのはず、かつて『闇堕ちゲーム』に参加した灼滅者を、六六六人衆が狙っているというのだから。
    「いくら、みなさんが当時よりも強くなっているとはいえ、元々、八人がかりでも撃退できるかどうかという相手です。みなさんの力がなければ……最悪の自体は免れられないかもしれません」
     しかも事件の背後には、より高位の六六六人衆の存在すらあるかもしれないという。

    「襲撃者は、序列五七三位の『殺人魔法少女』……バスターライフルの能力を組み合わせた魔法の杖を使う六六六人衆です。跳躍や壁蹴りなどを多用して、アクロバティックな角度から攻撃を仕掛けてくるでしょう」
     彼女は襲撃の邪魔となりうる一般人を遠ざけてから、一人になった標的に襲い掛かる。だがその時、彼女の『バベルの鎖』は近くに灼滅者が隠れていることを察知できないはずだ、と槙奈は語る。
    「その際、殺人魔法少女は、その程度の邪魔は気にせず、撤退できなくなるギリギリまで当初の目的を遂行しようとするはずです。何故なら今回は、かつての闇堕ちゲームでの手痛い敗走を挽回するチャンスだからです」
     その執念は危険であると同時に、逆に敵を追い詰める機会でもある。撤退すべきタイミングを見誤れば死ぬ……それは、いかに凶悪なダークネスであっても同じなのだから。
    「できれば、相手が冷静さを欠いている今のうちに、完全に灼滅してしまって下さい」
     今回の襲撃から学園の仲間を守るだけならば、確かに敵を退けるだけでもよい。ただ……敵は、自分の限界まで執拗に標的を狙おうという相手なのだ。
    「野放しにすれば、いつ、次の襲撃が起こるとも限らないでしょう」
     この凶悪な魔法少女を灼滅して後顧の憂いを断つ事こそが、灼滅者たちのなすべき事なのだ。


    参加者
    平・等(眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡・d00650)
    アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)
    風真・和弥(壞兎・d03497)
    武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)
    桃地・羅生丸(暴獣・d05045)
    不破・桃花(見習い魔法少女・d17233)
    蓬莱・金糸雀(陽だまりマジカル・d17806)
    カツァリダ・イリスィオ(黒百合インクィジター・d21732)

    ■リプレイ

    ●魔法少女の襲撃!
    「行くわよ! 必殺……」
    「甘いっす、あっしの奥義を見せてやるっす……」
     赤茶けた汚れの付着したロッドを振りかぶる魔法少女へと、獲物であるはずのアプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)は不敵な表情を見せる!
    「三十六計逃げるに如かずっす!」
    「あっ、卑怯者! 待ちなさい!」
    「待てと言われて待つ奴はいないっすよ~!」
     まさに脱兎! 煌く奔流がそれを追い背を焼くも、アプリコーゼは次の瞬間、細い路地へと転がり込む!

    「逃がさないわ……って、誰!?」
     追って路地を曲がった殺人魔法少女の前に、眼鏡の少年とナノナノが立ちはだかる。
    「なるほど、聞いていた通りキケンそうだな」
     杖以上に染みのついたファンシーな衣装を上から下まで眺めると、平・等(眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡・d00650)の眼鏡がぎらりと光った。それに合わせ、ナノナノの『煎兵衛』も少女を睨む。
    「魔法少女なら、とっととメルヘンの世界に帰ってもらおうか」
    「……そうなのね! あなたも『悪い奴』の仲間って事ね!」
     杖を、指先で弄ぶ邪悪な少女。その様子をじっと見据える等の横に、風真・和弥(壞兎・d03497)も肩を並べた。
    「確かに、仮に支配者側を正義とするのなら、ダークネスに楯突く俺たちは悪……って事になるんだろうけどな」
     それ自体を、否定しようとは思わない。だが和弥には、自らを闇に委ねた時ですら失わなかった信条がある。
    「勝てる相手ばかり狙って喜ぶ奴を、『正義』と認める気にはならないな!」
     鮮明な対決の意志が、殺意と化して少女を襲う!
    「だってそうでしょ? 勝てなければ『正義』とは言えないもの!」
     少女の杖が唸る!
    「させはしないぜ」
     すかさず割り込む等の篭手! 凶悪な魔力と清浄なる霊力が衝突し、切り裂くような悲鳴を上げる!
    「邪魔しないで……っ!?」
     叫ぶ少女。その背中に、新たな方向から破壊の音波が突き刺さった。
     不破・桃花(見習い魔法少女・d17233)から、放たれたものだった。
    「人を、笑顔にするのが魔法少女です! 歪んだ『正義』を振りかざして命を弄ぶあなたには……あなただけには、絶対に負けません!」
     すぐさま体勢を立て直し、高い場所から周囲に視線を走らせる邪悪な少女へと、桃花は指を突きつけた。対して……にたり。少女はそれを一瞥してから、嘲笑とも憤懣ともつかない笑みを桃花へと向ける。
    「どうしてそんな怖い顔をするの? 同じ魔法少女なら、あなたもいつか、きっとわかってくれるはず! そうでしょう……ねえ、四人目の魔法少女さん?」
    「あたしの事かしら?」
     唐突に呼ばれ、物陰から姿を現したのは、蓬莱・金糸雀(陽だまりマジカル・d17806)。自作の変身ヒロインの衣装に身を包んだ彼女は、光の盾を広げつつ冷めた眼差しを返す。
    「お前みたいなのに同類扱いされるのは気に食わないわね。負けてまた出てくるなんて、まるで悪役の三下みたい。魔法少女の風上にも置けないわ」
    「待ち伏せして挟み撃ちするような奴に言われたくなんてないわ!」
     杖を握り直し、喚き散らす魔法少女……が、その時突如、跳び退った。
    「弱っちまったぜ。かわいこちゃんに逃げられちまうとはよ」
     強靭な筋肉を見せつけながら、桃地・羅生丸(暴獣・d05045)が歩み出た。少女が避けた拳には、雷と化した闘気。
    「よう、そこのかわいこちゃん。そんな険しい顔してないで、このイケメンな俺と付き合わねえか?」
    「いいわ。でもその前に、アイツを倒さなきゃ!」
    「何がお前にそうさせる。それが『正義のため』だからか」
     武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)が問うた。そうよ、と少女。
    「正義を標榜する輩に碌なのは居ねぇ、というのが俺の印象なんだがな。お前の『正義』の対義語は、弱者や敗者なんだろうよ」
    「だったら、どうするの!?」
     その問いに、勇也は答えない。代わりに返すのは、鉄塊のごとき大剣の一振り!

     剣と壁とに挟まれる前に、少女は体を反らせて力を逸らす。だが、それを機に始まった灼滅者たちの猛攻は、彼女をして失態とでも言うべき時間のロスを生じさせていた。
    「あまり大事にはなっていないようで、安心しました」
     生まれた猶予を縫うように、カツァリダ・イリスィオ(黒百合インクィジター・d21732)の光輪が浮かび上がる。その光に照らされて、アプリコーゼはポーズを取る。スレイヤーカードからも光が飛び出し、現れたのはわんこ耳、わんこ尻尾の魔法少女! その背には、先程の傷はほとんど残っていない!
    「折角、もうちょっと頑張れば退治できたのに、回復した挙句、変身までさせるなんて!」
     少女の抗議を、カツァリダは聞こうともしない。もちろん、変身は彼女のシールドリングの効果ではない、というのもあるのだが。
    「無意味に人を殺すだけの『正義』など、下らない。貴女に相応しいのは正義の称号ではなく、異端者の烙印です」
     宣告するは断罪の言葉。異端者を処刑するための殲術道具の数々が、聖なる威光に照らされる!
     その光に後押しされるように、アプリコーゼは再び前に出た。その瞳で、電柱を蹴り、自らに迫り来るダークネスの動きを、手に取るように映しながら。

    ●路地裏の死闘
    「サニー!」
     金糸雀の声に、彼女の霊犬は丸くなった。
     どうしてこの子は、こんなに臆病なの? 伏せたまま敵をやり過ごすサニーに代わり、金糸雀は自ら飛び込んでゆく。
    「相手はあたしよ?」
     フェイントを交えて振るわれる魔力の渦が、金糸雀の防御を掻い潜り、足を裂く。サニーはそれを回復はしてくれる。けれど、あともう少し勇気を持ってくれれば……と願う暇は、金糸雀にはない。相手は彼女の盾を足場に、空中から再び標的を狙っていたのだから。
    「闇堕ちゲームの生き残りなら、格好の獲物だとでも言うのかね」
     突如、勇也の大剣に、炎が宿った。
    「ダークネスらしいと言えばらしいが、気に入らんのに変わりは無いな」
     一度は振り切られた鉄塊が、今度は下から敵を討つ! 少女は身を焦がしながらその刀身を蹴ると、すぐさま建物の壁に足を着く!
    「あまり跳ね回られるのは厄介だな……」
     冷静に動きを観察する勇也へと、和弥は指を立てて見せた。
    「守るにも攻めるにも、狙いが決まっているなら好都合。どれだけ変則的な動きだろうと、最後は必ず同じ場所にやってくる訳だからな」
    「その瞬間が狙い時、か。これは、一つ借りだな」
     勇也へと頷いた後、少女の攻撃の瞬間を、和弥はただ、ひたすらに待つ。そして、杖を振りかぶった一瞬を見計らい、手にした刀を真っ直ぐに伸ばす!
    「危ないじゃないっ!」
     間一髪、少女は強引に杖を引き戻し、刀を弾いて致命傷を避ける! だが杖の柄には、篭めた魔力が漏れ出すのに十分な傷が刻み込まれていた。

     暫らくぶりに地上に降り立った殺人魔法少女の側頭部に、衝撃が走る。
    「かわいこちゃんを殴るのは気が進まねえが、仲間がやられちまうのも見過ごせねえ」
     羅生丸にとって、少女は身軽さでは勝ち得ぬ敵。けれど、それを一たび捉えたならば、力は速度を捻じ伏せる!
    「信じられない! 女の子を殴るなんて、とんだ悪党ね!」
    「悪いな! こいつが俺の流儀なんでな!」
     軽口を叩く余裕など消し去ってやると羅生丸。だが少女の口元の冷酷な笑みは、そう簡単には消えそうにない。
     殴打の嵐から、少女が抜け出す。その口元には依然、微かな笑み……だが。
    「くっくっく。そんな余裕、すぐに失せるとも」
     等の篭手が後に続いた。
    「じっとしいて貰おうか、ジャマモノ魔法少女め」
     眼鏡を直す動きに合わせ、広がっていた霊力の糸が、少女の体を縛める!
    「負けるものですか! あたしは、こんなものには縛られない!」
     毒性の殺気を置き土産に、張り出た窓枠の上に跳び上がる。余裕そうに宙返りなどして見せるが、これまでの戦いは彼女に、必要以上の消耗を強いていた。

     殺気の淀みを、聖なる風が吹き払った。カツァリダが祈りの言葉を終えると同時に、辺りには清浄な空間が取り戻されている。
    「一対十だなんて、なんて卑劣な奴らなの!」
     ダークネスが罵るが、カツァリダはそれを一笑に付した。
    「異端者を葬り去るためになら、卑劣にも、恐怖にもなりましょう。Amen」
     裁きの光が、闇へと駆ける! だが光は、跳び上がった脚の真下をすり抜けてゆく。
    「そんなものは、当たらないわ!」
     だがその正面へと、桃花が思い切り跳躍する!
    「正義というのは、みんなで力を合わせるものです! 一人では足りなくても、二人で、三人で、全員で!」
     桃花の小さな体が、それと比べれば大きな敵と交錯した。角度を持って衝突し、再び角度を持って離れるまでの刹那で交わされる、腕の腕。突き崩されたのは……。
    「信じられない! 魔法少女のくせに、拳で攻撃してくるなんて!」
     殺人魔法少女の方だった。体勢を立て直すため、さらに一度大きく跳躍し、建物の上へ。すぐさま殺到する無数の攻撃をいなしながら、少女は魔法を、次々と標的へと打ち込んでいった……アプリコーゼを守る灼滅者たちに、その大半を阻まれながらも。

    ●滅びるはいずれか
    「しぶとい奴ら! そろそろ潔く諦めなさい!」
    「往生際が悪いのは、あっしにとっても美徳っすよ!」
     多数の傷が積み重なる中、アプリコーゼは、彼女にとっては幾度目かの殺人魔法を杖の先に生んだシールドで弾き返した。少女はすかさず、二発目の構え。
     そんな敵を地上へと叩き落したのは、金糸雀の盾だった。
    「悪役から女の子を護って、ついでに倒してこそ本当の魔法少女よ」
     光の盾を構え、挑発するような目で見下す。
    「今までの行ないのつけを、苦しんで味わうといいわ」
     ぞくっとするような瞳に、六六六人衆でさえもが息を呑んだ……その時。
    「これでもくらえっすー!」
     魔法陣と共に生まれた魔法の矢が、アプリコーゼが杖を振るうと同時に加速する!
    「痛っ!? あれだけ痛めつけたはずなのに、まだこんな力を残してたって言うの!?」
    「そういう事になるな」
     答えたのは、等だった。

    「くっくっく、彼女に倒れて貰っては困るのでね。煎兵衛も、よくやってくれていたよ」
     篭手からの光を止める等の傍らで、ナノナノもハートを浮かべながら得意げに胸を張る。
    「どうかね? この方が、キミにとっても命懸け……『ゲーム』らしくなっただろう?」
     冗談。そう、少女は吐き捨てた。六六六人衆にとって、ゲームは勝利と引き分けのみ。
     それを睨みつけたのは、桃花だった。
    「勝っても負けても、楽しく終われるのがゲームです。一方的な殺戮なんて、ゲームとは言えません!」
     魔法少女という憧れの存在を穢したばかりか、ゲームという概念をも貶めた敵へと、黒い影が伸びてゆく。少女の白い衣装の上に、新しい赤が広がって行く!
     済まねえなぁ、と羅生丸は嘯いた。
    「俺の抱擁で、そのひねくれた心を治してやれりゃ良かったんだがなあ。……ま、遊びはこれで終わりにしようぜ、お嬢ちゃん」
     その表情が不意に、真剣さを帯びる。次の瞬間……突如引き抜かれた傷だらけの刃が、強引な軌道で少女へと迫る! ……が!
    「ちぃっ! 逃したか!」
     忌々しげに舌打ちする羅生丸の上を、少女は軽々と跳び越えていった。
    「もう、やってられないわ! 次こそは必ず勝つから、覚えてなさい!」

     狭い路地で前後を塞げば、退路は断てる……その考えは、この敵においては通用しない。三次元的な動きを好む少女は、壁を足がかりに上へと逃げてゆく。
    「逃がしません! 我に神威の加護よあれ!」
     カツァリダの審問具が、異端者の体に罪過を刻む! だがそれは……邪悪を砕くには僅か及ばず!
    「やっぱり『正義』は、最後に勝つのよ!」
     少女はふらつく足に鞭を打ち、窓枠を、看板を蹴り離れてゆく……。

     呆然と見上げる和弥へと、勇也は短く、強く言った。
    「今、借りを返そう」
     自分へと、水平に差し出された大剣。その意味を悟り、和弥は無言で歩み寄る。
     和弥が剣へと足をかけたその途端、辺りに轟く嵐のような声! 和弥を乗せた大剣が浮き上がり、機関車のごとく力強い、垂直の大回転を見せる!
    「殺人魔法少女。精々あの世で後悔する事だ!」
    「何の声なの!?」
     振り向いた少女の目の前に、声の主ではなく、和弥の不敵な笑みが飛び込んできた。剣に跳ね飛ばされたままの弾道を描きながら、和弥は上段に刀を掲げる!
     そんなの反則――そう抗議しようとした声は、音にならずに消えてゆく……。
     風のごとく閃いた刀が、少女の胴を袈裟懸けに分かっていたのだった。

    ●それぞれの未来へ向けて
     ちん、という金属音が鳴る。片膝を立てて着地した和弥が、刀を納める音だ。
     やがて、重いものが落ちる二つの音。悔しげな形相で虚空を睨み続ける少女の亡骸を、和弥は一瞥し、そして黙って目を閉じた。
    「やったのか」
    「ああ」
     短いやり取りの後、勇也は静かに黙祷を捧げる。迷惑極まりない暗殺ゲームも、そんなものを戯れに始めた六六六人衆も、唾棄すべきものには違いない。だが、だとしても。死者に手向ける事を忘れれば、彼らと同じ場所に堕ちてしまうのだから。

    「皆、無事かね?」
     煎兵衛と共に仲間たちの傷を癒しながら、等は辺りを見渡した。闇の気配はもう、ない。
    「が、黒幕がどっかでオレ達を眺めていると思うと気分が悪くなるね。くっくっく……」
    「全くだ! かわいこちゃんを死地に送り出すような奴は、このイケメンな俺が許しちゃおけねえな!」
     豪快に笑う羅生丸。もっとも、六六六人衆にとっては安全だったはずのゲームを死地にしてしまったのは、他ならぬ彼自身のせいでもあるのだが。
    「いずれにせよ」
     と、カツァリダが口を挟む。
    「いつかその黒幕が、ボク達の前に現れる日が来るはずです。審判は、その時に下されることでしょう」
     それは予想でも、願望でもない。一つの、宿命であったのかもしれない。

    「そういう訳でみんな、今日はあっしを守ってくれてありがとー! おかげで、偽者の魔法少女は打倒したっすよー!」
     勝ったとわかるや否や、アプリコーゼは調子に乗っていた。喉元過ぎれば何とやら、だ。
     その能天気な態度が、金糸雀にとっては何よりの救いだった。臆病なサニーにははらはらさせられたが、浄霊眼にはいつも以上に気合を入れてくれた甲斐あってか、彼女たちは今、一人も欠ける事なくここに立っている。
     もちろん、緊張を浮かべていた桃花の口元にも、綻びが訪れていた。
    「私……勝ちました」
     正義は勝ち、悪は滅びる。単純だが、心強い法則。それを実現できた事は、見習い魔法少女が一人前になるための、大きな一歩だったと言えるだろう。

     だが、六六六人衆の襲撃を受けたのは、決してアプリコーゼだけではない。
     同じ学園の仲間たちを安全を願いつつ、灼滅者たちは帰路に着くのだった。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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