黒騎士、帰還せり

    作者:立川司郎

     風が止んだ。
     ふ、と戒道・蔵乃祐(酔生夢死・d06549)は顔を上げて周囲をゆっくりと見まわす。それは、彼の性質故であったかもしれない。
     人の気配が……ない。
     たしかクラブの仲間と話し、元旦の町中を歩いて……それから。
     たまたま建物に挟まれた場所で、たまたま人通りが少なくて、たまたま目的地への近道で、たまたま人通りの多い場所が通行止めになっていた。
    「……」
     蔵乃祐は踵を返した。
     これは彼の感だった。
     ……何かがおかしい。
     歩き出した、と蔵乃祐は足を止める。それからポケットの中にカードがあるのを確認すると、すうっと振り返った。
     先ほどまで誰も居なかった建物の角に、人が立っていた。
     風になびく長い黒髪、そして整った美しい顔立ち。レースのついたキャミソールを重ね着して、上からジャケットと黒いコートを着ている。
    「……相変わらず、お元気そうですね」
     丁寧にそう言ったのは、自分を冷静に保つ為であった。最近姿が見えなかったが、テメェは向こうの組織に行かなかったのかとか、色々言ってやりたい言葉はあったのだが。
     黒騎士さくら。
    「……殺し損ねたのを思い出したものでな」
     ふ、と艶やかな唇を歪めて笑った。
     さあ、武器を抜け。
     さくらは戦いの幕開けを告げた。
     
     道着の上に華やかな振り袖を羽織り、エクスブレインの相良・隼人(高校生エクスブレイン・dn0022)は神妙な面持ちで道場に座していた。
     珍しく正座をしているのには、何か彼女なりに心身を正したい思いがあったのかもしれない。
     そして仲間が全員集まるのを確認すると、隼人は静かに口を開いた。
    「正月早々集まってもらって悪ィな。……実は、学園の灼滅者が六六六人衆に襲撃される予測が出た。……襲撃されると思われるのは、戒道・蔵乃祐(酔生夢死・d06549)。そして襲ってくるのは……」
    「黒騎士ですか」
     笑いを漏らしつつ、蔵乃祐が答えた。
     最近見ないと思ったら、突然闇討ちとは面白くない事ですねと呟く。隼人は何故蔵乃祐なのか、と首をかしげるが、理由は多分一つ。
    「僕を殺し損なったからじゃないですか? ほら、鳴神さんが闇堕ちして助けてくれたから」
     そう言い、蔵乃祐は少し考える様子を見せた。
     あの事件は蔵乃祐にとっても思う所があったのだろう。
    「さくらは以前なら相手にするのが困難な強敵だったが、今はお前達がずっと成長している。勝てない敵ではないはずだ」
     武器は愛刀一本。
     今までの情報からすると、彼女は周りの人間を一方的に攻撃する手段は取らないと思われる。どこで戦うにしても、こちらが相手をしていれば一般市民に怪我を負わせる危険は少ないだろう。
     ただし、灼滅を念頭に置くのであればそれなりに準備が必要だ。
    「どうだ、灼滅出来ると思うか」
     隼人が逆に聞くと、蔵乃祐はふと笑った。
    「逃がしはしませんよ。……何があっても」
    「そうか。……今回さくらは、お前一人を相手にするつもりで来ている。周囲の人払いをし、お前が一人になる瞬間を狙うだろう」
     それまでは、他の仲間が尾行している事も何もかも隠しておかねばならない。さくらが攻撃を仕掛けるまで、如何にして残りメンバーが見つからずに奇襲を仕掛けられるかが重要なポイントだと隼人は話した。
     身を隠す事。
     攻撃を仕掛ける場所とタイミング。
     逃がさない為の工夫。
    「さくらは、怪我人を生かしておかない。怪我をした仲間を庇い、フォローし合わきゃ前回と同じ目に会うことになるって覚えておけよ」
     これ以上さくらを野放しにしない為にも、ここで灼滅しておきたい。
     隼人の願いは、むろんここにいる灼滅者全員も同じ思いであった。


    参加者
    クォーツ・インフェルノ(煉獄の焔・d01639)
    鳴神・月人(一刀・d03301)
    戒道・蔵乃祐(酔生夢死・d06549)
    立花・銀二(クリミナルビジー・d08733)
    人形塚・静(長州小町・d11587)
    ミツキ・ブランシュフォード(サンクチュアリ・d18296)
    高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)
    月叢・諒二(魍魎自若・d20397)

    ■リプレイ

     時折、考える事があった。
     自分の知らない所で、彼らは互いに殺し合い、だまし合い、そうして階級を奪い合う。
     自分の知らない所で、あの人はひっそりと下位に殺され、または上位に返り討ちに遭うかも知れない。
     自分の知らない所で、ひっそりと消えているかもしれない……と。
    「生きていたんですね」
     戒道・蔵乃祐(酔生夢死・d06549)はさくらを見つめ、静かな声で言った。
     ずっと、いつかこうなったらいいと思っていた。蔵乃祐の言葉を聞いても動じる事なく、さくらは鞘を左手で握る。
    「思ったより動揺が無いな。……私が来る事に、気付いておったのか」
    「……言っただろ、待ってたって」
     ずっと、ずっと。
     蔵乃祐は力を解放すると、さくらに斬りかかった。するりと踏み込んださくらの足捌きは、相変わらず流れるようで、音も無くしなやかである。
     だが、あの時より少し蔵乃祐も前へと進んでいた。
     あの時より、さくらに近づいている。
     蔵乃祐が閃光を放つ剣を叩きつけると、さくらが刀で受け流す。強烈な斬撃も刀で躱し、受け止めながらさくらはじっとこちらの動きを見ていた。
    「どうして僕を選んだんですか? 正直、相手にされていないと思っていました」
    「……そうだな」
     考えるように一息つき、さくらはすうっと手を伸ばした。
     ひと呼吸の間で、さくらの刀が蔵乃祐の腹部を貫いていた。体がしびれ、剣を持つ手が……足が鈍る。
     血だまりを踏み越え、蔵乃祐はバベルの鎖を瞳に集中させる。
     勝つ為なら、惜しみはしない。
    「理由か、上からの指示に納得した……としか言えんな。それに、殺し損ねた事を思いだしたものでな」
    「殺し損ねた、って何ですか?」
     血まみれの手で、蔵乃祐が剣を振り上げる。
     我が身を振り返らぬ一撃は、さくらの刀身をビリビリと振るわせる。ただひたすら、今までの経験と知識を総動員して、剣を振るった。
    「人を見下すのも大概にしろ、この糞女!」
     戦って戦って、死に物狂いで走ってきたんだ。
     僕は!
     この瞬間の為に!
     すうっと笑ったさくらの刀は、蔵乃祐の剣をわずかに致命傷を外して受けると、くるりと懐に滑り込んだ。
     光った刀身に、閑散としたシャッター街の路地裏が映る。
     蔵乃祐の背後に映る路地を、はっきりと映し出す。ソコから現れた影は、蔵乃祐の大切な友人と……そして駆けつけてくれた仲間。
     こちらに真っ直ぐ向けた刀から放たれた力が、蔵乃祐を越えてさくらの刀を弾く。
    「思ったより、市街地を走るのって大変だったの。ごめんなさい」
     少し息を切らせて、人形塚・静(長州小町・d11587)が言った。
     もう少しガイアチャージが出来れば良かったのだけれど、と呟き静も刀を構えた。見上げた蔵乃祐の視界に、立花・銀二(クリミナルビジー・d08733)の大きな背が見える。
    「初めましてですよさくら君! やっつけに来ました!」
     さくらにそう言うと、肩越しに蔵乃祐を振り返りつつ銀二はナイフを構えた。

     ミツキ・ブランシュフォード(サンクチュアリ・d18296)が蔵乃祐に駆け寄ると、銀二はクォーツ・インフェルノ(煉獄の焔・d01639)とともにさくらを包囲した。
     まずは諒二に癒やしの矢を放ち、続けて高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)は鳴神・月人(一刀・d03301)に矢を向ける。
    「焦りがない。さくら、援軍が来るだろうと気付いてたのかな」
     一葉はさくらの様子を見つつ、思案する。
     包囲したとは言え、さくらは当面逃げる気は無さそうである。そういう約束で来ているのか、それとも負ける気がしないのかは分からない。
    「……まあいいわ、みんな逃がさないように包囲よ!」
    「収穫がなければ私も帰れぬな」
     銀二とクォーツが刃物を持っている事を確認し、さくらはすうっと唇の橋を歪めて笑う。ナノナノを蔵乃祐に放って寄越し、銀二はじわりと足下から霧を放った。
     白い霧が、雲のように足下から覆い尽くしていく。
     踏み込む事なく、相手の動きを銀二とクォーツは見極めていた。
    「蔵乃祐君をよろしくですよ、ミツキ君!」
     声を掛け、銀二はさくらの刀を躱した。
     横に飛んだ銀二であったが、さくらは動きを見切っている。擦り上げるように刃を返して切り、銀二の肩を切り裂く。
     さくらの二の太刀は、クォーツが防ぐ。
     ワイドガードと霧、それでも油断が出来ねェとクォーツは深呼吸をして心を落ち着けた。聖剣を使って、防戦の準備を整えるクォーツ。
     銀二は影でさくらの動きを止めようと図るが、するりと躱してさくらは懐に踏み込んだ。
    「こっちだ!」
     背後からクォーツが剣を叩きつけるが、さくらは峰で流す。
     炎を纏ったクォーツの攻撃は、さくらに致命傷を与える事が出来なかった。
     銀二とクォーツ、さくらの攻撃を受け止めるのが目的とは言え、まださくらを追い詰めるには至らない。
     刃を使っての攻撃と防御は、まださくらの方が上手であった。
     その間、一端ミツキの元まで下がった蔵乃祐は癒やしの矢と銀二のナノナノから治癒を受けていた。
    「開戦前、少し、距離…開けすぎた。500m、走るの大変だった」
    「いや。僕も、もう少し驚いたような顔すれば良かった」
     蔵乃祐がそう返した。
     ミツキは傷が塞がったのを確認すると、さくらに吠え立てる霊犬のういろを見た。彼女の心に、以前の光景が思い起こされる。
     前に蔵乃祐と一緒に行った依頼では、ヒトを死なせてしまった。それはミツキにとって忘れる事が出来ず、ちくりと心に残っていた。
    「今度は、ちゃんと守るの」
     黒騎士と戦ってきた月人や蔵乃祐。
     蔵乃祐を守る為に来た、銀二や月叢・諒二(魍魎自若・d20397)。
     ミツキは、彼らの背を支える為にここに来たのである。駆け出した彼の背を見送り、ミツキはさくらの刀で切り裂いた銀二へと癒やしの矢を放つ。
     狙いを定める矢に、ミツキの精一杯の意志を込めて撃った。

     まるで、紙を切るようにさくらの刀は肉を切る。
     傷口を押さえ、銀二が笑う。
    「およよ、切れ味バツグンなのです?」
     のらりくらりとした銀二の言動と対照的に、ストレートに踏み込み斬り付けるクォーツ。さくらの動きには柔軟に対応しているが、彼女のスピードとパワーに少しずつ押されていた。
     絶対に、ここで灼滅する。
     クォーツの瞳には、激しい感情が込められていた。叩き込まれる刃を半身で躱し、さくらはクォーツに構わず銀二に詰め寄った。
     血を求めるかのように、さくらが刃で半円を描く。
    「堕ちるか、死ぬか選べ」
    「どちらも嫌ですよ」
     今の所は。
     銀二が答えると同時か、諒二が縛霊手で掴みかかった。巨大な手の一撃を躱したさくらの動きで、銀二はさっと後方へと身を引く。
     諒二のフォローに礼の言葉を返し、銀二は呼吸を整える。
     す、とその横に蔵乃祐が並んだ。
    「無茶は程ほどに……といっても、下がる気はないんだろうね」
     諒二が声を掛けた。
     ゆるりと移動しつつ、諒二はさくらへの攻撃の隙を伺う。下がれといって下がるとも思えず、それに今回の戦いはさくらとこれまで戦ってきた三人にとっても引き下がれない一戦だろう。
     その一撃に掛ける真剣な彼らの表情を見れば、諒二にも分かる。
    「三人がかりでも、長く阻止するのは難しいですよ。一気に攻めないと、こっちが押し負けてしまいます」
     銀二の言葉に、クォーツは無言であった。
     それは、前に立っている自分も感じて居る。攻撃手を変えつつ様子を伺っていた静も、諒二や月人の攻撃が当たりづらいのは気付いていた。
    「隙を作って、攻撃をこっちに向けるわ」
     静は力を刀身に込め、ビームを放った。
     次々と後方からさくらを狙い、視線がちらとこちらに向いた時静が口を開いた。
    「刀に興味があるのなら、私が相手をするわ」
     詰め寄って切り下ろした静の刃を弾き、さくらがにやりと笑う。その笑みと、返す刃で斬り付けたさくらの一刀に、ひやりと冷たいものを感じる。
     距離を取りつつビームで引きつける、静。
     ぞろりと殺気を漲らせ、さくらは刀を鞘へと仕舞う。いつでも攻撃出来る姿勢を保ったまま、さくらは殺気で静たちを包み込んだ。
    「……何て冷たい気」
     冷たく、そして血なまぐさい。
     思わず掴んだ自分の刀の柄が、ほんのり温かい気がした。この刀には、ガイアの力と自分の意志と信念があるのだ。
     それを思い、静は気を奮い立たせた。

     足下から、這い上がるような殺気が満ちる。さくらの殺気が後ろの仲間に向けられるのを感じながら、バベルブレイカーを構えた月人がさくらに突っ込む。
     突撃を片腕で受け止め、さくらはほうと声をあげた。
     そこに居たのは、どこかで見た顔。
    「なるほど、お前は以前私が堕とした灼滅者か」
    「……どこに行ってたんだ。こっちは、寝ても覚めても堕ちてもお前の事を考えてたってのによ」
    「殺しがいのある相手を探して、ふらりとな」
     一歩、後退して構えたたさくらに月人が迫る。バベルブレイカーを掴む月人の腕に、後方から一葉の矢が刺さった。
     ちくりとした痛みと、そして暖かな気。
     その温もりが、このさくらの殺気の中でほんのりと心に染みてくる。
    「気合い負けしちゃ駄目、絶対大丈夫!」
     一葉は月人にそう言うと、再び矢を番えた。
     二度目は、諒二に。
     こくりと礼を言うように頷き、諒二が拳を振り上げる。
     茫洋とした諒二の表情から、猛撃が繰り出される。月人と諒二、双方の猛撃にも拘わらずさくらはそのパワーにも怯む事なく、なお笑みを絶やさない。
     当たらない……訳ではない。
    「逃がさないよ、『敵』だから。当たるまで、続ける」
     戦争以外で初めて諒二が『敵』だと思った相手だった。
     一葉がくれる矢だけが、自分を現実に引き戻してくれているような……感覚。さくらははっと怒りを解くと、刀を蔵乃祐へと向けた。
    「勝ち逃げする気? ……なら、逃がさないよ」
     低い声が、諒二の口から漏れた。
     この手が届くように。
     この手が引き裂くように。
     伸ばした腕は、さくらが放った反撃にも怯まず彼女の腕に食らいついた。白い刃が縛霊手を貫くが、その傷は大した問題じゃあない。
     掴んだ腕を放さぬように、諒二は力を込める。
    「どこ行くんだ、やろうよ……死ぬまで」
     笑みにも似た形相で、諒二が言う。
     掴んだ手は、なお深く腕に穿たれる。
     ミツキは一葉に声を掛けると、自分も弓を構えた。銀二やクォーツが防御の姿勢を取ると、ミツキも月人へと矢を撃つ。
    「ういろ、蔵乃祐を守って」
     もし支えきれなかったら、ういろが守って。
     ミツキの指示に従い、ういろが蔵乃祐の前に立つ。一葉とミツキ、二人の矢が空を飛んで月人と諒二に刺さる。
     月人は至近距離からキャノンを放ち、さくらへと叩き込んだ。
     ギリギリと縛霊手を剥がそうとするさくらに、銀二の縛霊手が諒二の手に添えられる。静がちらりとクォーツに視線を投げると、クォーツは剣を振り下ろした。
    「身動き出来なくても、容赦はしねぇ! あんたはここで灼滅する!」
    「もう誰も……殺させないから」
     クォーツの剣と桜の刀がさくらの肩を貫いた。
     痺れるような殺気が、今は薄れている。静が一息に刀を引き抜くと、月人の腕がさくらの体に杭を打ち込んだ。
    「戻って来たと……いう訳か」
     自分の傷を見下ろしながら、さくらは笑う。
     月人は戻ってきた。
     月人の所に、仲間が迎えに来てくれたからだ。
     仲間が居るから、戻ったのである。
    「でも、お前は逃がさない。俺も戒道も、堕ちてでも絶対お前は逃がさない」
     もっとも……もうその時は来ないだろうが。
     月人の声は、蔵乃祐の剣でかき消された。腕から伝わる感触、そしてさくらの体が血だまりの中に崩れ落ちていく。
     最後まで、笑っていた。
     最後まで血まみれで。
    「……届いた……んでしょうかね」
     手を見下ろし、蔵乃祐が呟く。
     届いたさ、と月人が答える。
     あの時逃した手は、確かに届いた。死にものぐるいで伸ばした手も、あの時はするりと躱してさくらは逃げた。
     今度は届いた。
    「ああ……そうですね」
     蔵乃祐がほっと息をつき、薄く笑った。
     ぺたりと地面に座り込み、クォーツが肩の力を抜いている。六六六人衆も、少しゃ数が減ったかとクォーツは頭を掻いた。
     ちらりと見上げ、クォーツは蔵乃祐の傷を指さした。
    「怪我してんぞ」
    「待って。怪我、治すから」
     ミツキはちょんと空き箱に腰を下ろし、弦を爪弾く。
     流れる音楽が、ひと気の少ないシャッター街路に響き渡り、皆の心に流れ込んできた。柔らかいミツキの音色に、傷だけではなく心までほんのり温かくなる。
     静は傷の具合を見ると、ふと見まわした。
     みんなこんな片隅に座り込んでいるが。
    「少し落ち着ける所に移動しない? こんな所で座ってないで」
    「あ、じゃあ何か食べに行こうよ。えーと、蔵乃祐君の地元だから、蔵乃祐君が案内してくれるよね」
     そう言いながら、一葉は既に何か口に入れている。
     食べに行くどころか、既に食べているし。
    「食ってばかりだな、お前は」
     呆れたように月人が言うと、嬉しそうに一葉は笑って頷いた。道中も食っていた気がするが、たしか襲撃を待っていた時も手に何か持っていた気がする。
     ぽんと銀二が手を叩き、何か思いついたように蔵乃祐を振り返る。
    「蔵乃祐君の地元なんですから、蔵乃祐くんのおごりという事ですね」
    「え?」
     ぴくりと顔を上げて、蔵乃祐が見まわす。
     みんなもうぞろぞろと歩き出していて、何を食べようかと算段中。ゆるりと振り返り、諒二が声を掛けた。
    「先輩、行きましょうよ」
    「割り勘なら案内しますよ」
     頼もしいその背に、蔵乃祐は最後に小さく、ありがとうと呟いた。

    作者:立川司郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ