蠅叩きの新春殴り初め

    「ん?」
     ふと足を止めて、鬼形・千慶(破邪顕正・d04850)は周りを見回す。
     明確な理由があったわけではない。ただ、何となく違和感を感じての行動だったが、すぐそれが気のせいでは無かった事が分かる。
    (「何で周りに誰もいねーんだよ。そんな人通りがねー所だったか?」)
     嫌な予感がする千慶。そしてそういう嫌な予感は決まって的中するもので──、
    「ハッピィィニュゥゥイヤァァァァッ!!」
     テンションの高い叫び声に千慶が振り向くと、声の主と思しき1人の少女がそこにいた。年の頃は中学生か高校生、大きなバッグを肩に掛け、髪はバサバサ、着ている物も薄汚れている。そんないかにも家出中といった格好とは対照的に、彼女の目は目当ての獲物を見つけた獣のようにギラギラとして、口元はニタニタと薄笑いを浮かべていた。
    「てめえは、飯沼梓!」
     怒りの形相を顔面に刻み、千慶は少女──飯沼・梓を睨み付ける。
    「へ~、覚えてたんだ。アタシの事」
     意外そうに言う梓に、
    「忘れるわけねえだろ! てめえの事も、あの時の事も!!」
     吠えるように叫ぶ千慶。昨年、彼を含めた灼滅者達は梓1人に屈辱的な敗北を喫し、更に千慶が彼女に受けた恥辱は彼の心を浅からず抉ったのだった。
    「ま、それはそれとして、明けましておめでとう!」
     梓はいきなり話題を変えると、バッグから金属バットとラッパホーンを取り出し、
    「そしてアンタはアタシの殴り初めの標的に選ばれました。おめでとう!」
     そう続けて言いながら、右手で金属バットを持ち、左手でラッパホーンを鳴らす。
    「ああ、確かにめでてぇな!」
     千慶も言い返しながらスレイヤーカードを取り出す。
    「次にてめえに会ったら死ぬまで殺す、死んでも殺すと決めてたんだ。てめえから来てくれるなんてなぁ!」
     殲術道具の封印を解き、戦闘態勢に入る千慶に、梓はプッと吹き出し、
    「何それ、本気で言ってるの!? 相変わらず笑わせてくれるね!」
     声を上げて笑い出す梓。実際、六六六人衆と灼滅者の個々の戦力差は絶望的なほどの開きがある。
    「もしかして、普通に戦ったら勝てないから、笑い死にさせる作戦なの?」
     自分で言った事が壺に入ったか、梓は更に大笑いする。
    「クッ……」
     一般人ならばあっという間に追い散らせそうな凶相で梓を睨みつつも、千慶は首筋を伝う冷たい物に、ギリッと奥歯を噛み締めるのだった。
     
    「六六六人衆が、武蔵坂学園の灼滅者を襲撃するのを予測しました」
     重い表情で、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は教室に集まる灼滅者達にそう話を切り出す。
    「六六六人衆は闇堕ちゲームで生き残った灼滅者を狙っているようで、その中の1人、鬼形千慶さんが、放っておけば確実に殺されてしまいます。皆さんには急いで救援に向かって欲しいんです」
     千慶を襲いに来る六六六人衆は、序列470位、飯沼・梓(いいぬま・あずさ)。武器は金属バットで、殺人鬼とロケットハンマーの技に酷似した攻撃をしてくるという。
    「加えて、実際に梓さんと戦った人達からの報告によると、掴み所が無い性格で何をしてくるか分からない所があるそうで、ただでさえ強いのに厄介な相手ですが、以前戦った時よりも皆さんは強くなっているはずですから、力を合わせて上手く作戦を立てれば勝てない相手ではないはずです」
     灼滅者達を信じているという口調と視線で姫子は言う。エクスブレインの未来予測により、ダークネスに予知されずに作戦を練って戦闘を仕掛ける事ができるのが、武蔵坂学園の灼滅者達がダークネスに対して有利に立てる点であり、これまでもそうやって戦力で上回るダークネスを倒してきたのだ。
    「俺も行く。飯沼梓、今度こそ一太刀浴びせてやる」
     鳴瀬・慎一郎(中学生殺人鬼・dn0061)の言葉に、他の灼滅者達からも次々と声が上がる。
    「鬼形さんを梓さんの襲撃から助け出すのが、今回の作戦の第一目標である事は言うまでもありません。ですが、灼滅者を暗殺しようとする六六六人衆を野放しにするのは非常に危険ですから、可能な限りで良いので敵を灼滅させて、そしてどうか皆さん全員、無事に帰ってきて下さい──」
     そう姫子は説明を締めくくり、灼滅者達に向かって一礼した。


    参加者
    東雲・夜好(ホワイトエンジェル・d00152)
    伊舟城・征士郎(アウストル・d00458)
    六六・六(極彩色の悪猫アリス症候群・d01883)
    鬼形・千慶(破邪顕正・d04850)
    樹宮・鈴(奏哭・d06617)
    城守・千波耶(裏腹ラプンツェル・d07563)
    エリ・セブンスター(霧の守護者・d10366)
    紗秋・蓮司(黒獅子・d20459)

    ■リプレイ

    ●飯沼梓包囲網
    (「ったくよー、いくら田舎道、まして正月だからって、初詣や正月の挨拶に出ている奴や、外で遊んでるガキとかが1人もいないのに気付くのが遅れるなんてよ」)
     正月、実家へ向かう途中、周りは収穫が終わった田畑とまばらに建つ納屋だけの風景を、眼を動かすだけで見回しながら、鬼形・千慶(破邪顕正・d04850)は自分のうかつさに毒づく。だが早くに気付いたとしても、目の前で大笑いする少女──六六六人衆序列470位の飯沼・梓(いいぬま・あずさ)に出遭うのを避けられたかどうかは不明だが。
    「あ~新年早々笑った笑った。んじゃ死んでちょーだい」
     ようやく笑いが止まると、お年玉をねだるように気軽な口調で梓は言って金属バットを振り上げる。
    「灼滅者舐めんな!」
     割り込みヴォイスで叫ぶ千慶。それは死を目の前にしてなお最後まで戦い抜こうとする灼滅者としての意地か。いや、まるでそれを合図のように、周りの納屋や木の陰から少年少女達が現れ、梓と千慶を囲むようにやって来る。
    「やっぱり来てたか、信じてたぜ」
     姫子の未来予測を受けて救援にやって来た灼滅者達に、千慶はニヤリと笑って見せるも、首筋の冷や汗を拭う。
    「まさか直接狙ってくるなんてね! 千慶ちゃんはやらせてあげないわ!」
     男なのだが白いゴスロリ服に身を包み、東雲・夜好(ホワイトエンジェル・d00152)が言う。続いて六六・六(極彩色の悪猫アリス症候群・d01883)もスレイヤーカードを出して「にゃーお」と一声猫の鳴き真似をすると、エプロンドレス姿に変わる。
    「ご無沙汰しておりました、いい子ちゃんです。明けましておめでとう御座います」
     以前に千慶と一緒に梓と戦った事のある伊舟城・征士郎(アウストル・d00458)が、律儀に新年の挨拶をする。
    「今年も宜しく……と続ける所ですが、此処で今生の別れとしましょう」
     そう続けてからクルセイドソードを構える征士郎に、
    「せっかちだね、正月だってのに」
     呆れた口調で言う梓に、
    「遅れた大掃除だ、急いでやらないといけないだろう」
     鳴瀬・慎一郎(中学生殺人鬼・dn0061)が、日本刀をいつでも抜ける体勢で言う。
     クラッシャーの千慶と樹宮・鈴(奏哭・d06617)、ディフェンダーの征士郎と彼のビハインドの黒鷹、エリ・セブンスター(霧の守護者・d10366)が梓を取り囲み、その外側をジャマーの慎一郎と紗秋・蓮司(黒獅子・d20459)、スナイパーの夜好と六、メディックの城守・千波耶(裏腹ラプンツェル・d07563)と夜好のナノナノが囲む。更には──、
    「この間紫桜にぃを闇堕ちさせた奴だよね。返り討ちにしてあげるんだから」
     エリの言葉に応えて、サポートでやって来た黒崎・紫桜(日常を守護する葬焔の死神・d08262)が前に出る。
    「やっと会えたが……今回の俺は直接手を下すわけじゃねぇ。でも、覚悟してろよ、蝿叩き。絶対に、やらせはしないからな」
    「そんな事言っちゃってさ、本当の自分をさらけ出したのが恥ずかしいだけじゃないの?」
     鋭く梓を睨み付けて言う紫桜に、梓が挑発するように返すが、
    「お前と言い合いをするつもりはない。それに、お前との借りを返したいのは俺だけじゃない」
     そう答える紫桜に続いて、更に3人が前に出てくる。
    「懐かしい顔ですね、ひとごろし。また拝めるとは思いませんでしたよ。ここにいる人達はみんな、あなたの一振り程度、耐えられるくらいには強くなっているんですよ。ですからまあ、あまり甘く見ないように」
     沸き上がる激情を飲み込み、余裕ありげな無表情で久織・想司(錆い蛇・d03466)が涼しげに言う。
    「ヒヒヒ、あの時、早々に寝てしまい果たせなかった役目を此処で果たしますよぉ!」
    「よぉ……久しぶりだなぁ飯沼ぁ。まあ今回俺ぁただの脇役だが、前回の仕返し、ついでにさせて貰うぜ?」
     九井・円蔵(デオ!ニム肉・d02629)、北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)もそう宣言しながらそれぞれ武器を構える。彼らを含めてサポートが、総勢灼滅者31人とサーヴァント2体、梓を逃がすまいと何重にも取り囲む。だが当の梓は彼らを見回して、
    「あっそ、じゃあユー達みんなここで死んじゃいなよ!」
     相変わらずの軽い口調で言いながら、金属バットを向けた。

    ●蠅叩きを叩け
     次の刹那、梓の体からドス黒い殺気が立ち上り、周囲に向けて迸る。それは紛れもない鏖殺領域だが、灼滅者のそれとは量も濃さも桁違いだった。
    「アタシはデキる女だから、慎重なのだ」
     そう呟く梓の前で、千慶を始め前衛の灼滅者達が、彼女の殺気に顔面を蒼白にして胸を押さえる。
    「どうしたせんけー、震えてんじゃねーぞ! へばったりしたらへたれてた時のせんけーの様子を皆にお知らせしちゃうからな!」
     自身も膝が崩れそうになるのを耐えながら、鈴がそう叱咤すると、
    「ふ、震えてねぇよ! 外だから寒ぃんだよ!」
     千慶も負けじと言い返し、ブラックフォームを発動させて耐える。殺気が周囲に拡散、霧消するまで僅か数秒間ながら、灼滅者達にとってはその何倍、いや、何十倍にも感じられた。
    「こっちからも、お返しだ……」
     蓮司が言って鏖殺領域を展開する。先程梓放った殺気には明らかに劣るが、それに紛れて征士郎が黒鷹と同時に梓に向かい、黒鷹の霊障波はかわされるが、それで生まれた隙を突いてクルセイドスラッシュで斬り付ける。
    「新年から幸先が良い。借りをお返しせねばならない方と早々にお会い出来たのですから」
     浅いながらも肩口の傷から流れる梓の血を見て、感慨深げに征士郎は言う。
    「エリ、俺の分まで思いっきり殴れ!」
    「イエッサー!」
     そう紫桜に答えてエリが突っ込み、勢いを乗せて抗雷撃を繰り出すが、
    「甘ーい!」
     そう余裕の表情で梓にバットで防がれる。
    「千慶先輩!」
     千波耶がリバイブメロディを奏でると、前衛が先程梓に受けたダメージが回復し、更にサポートからも回復やエンチャント付与のサイキックが来る。それに物心共に力付けられた鈴の黒死斬が梓の足を切り裂く。
    「一年近く経つのに序列いっこも上げれてないじゃんだっせぇ! 私達あんたと違ってちょー成長してるもんねー!」
     そう挑発する鈴だが、
    「チマチマ上げてくなんてみみっちいじゃん。上げるなら一気にドーンとやるに限るよ。例えばここでアンタ達皆殺しにしてさ!」
     大袈裟に両腕を広げて梓は言い返す。
    「せんけーくん殺そうとかきらい! ぶーす!」
     いささか稚拙な悪態を吐く六の鏖殺領域と、夜好のヴァンパイアミストが同時に展開される。更にそれに紛れて慎一郎を先頭にサポートの近接戦闘担当の灼滅者達が、ナノナノのしゃぼん玉を含む、後方からのサポートの援護を受けながら殺到する。
    「ようやくお前を殴って、刺して、斬って、殺せる」
     自身が付けた梓の太股の傷を日本刀の切っ先で指して、慎一郎が言う。
    「やれるものならやってみな!」
     梓は叫んで、アカンベーをしてみせた。

    ●最後に笑う者
     その後も戦いは続いた。
     もちろん皆楽観はしていなかったが、人数で圧倒的に勝るにも関わらず、灼滅者達は梓1人に長期戦を強いられる事になる。
     前回の戦いから約10ヶ月、その間に灼滅者達が送ってきた戦いと鍛錬、その他による経験値は、梓への攻撃の命中率を確実に上げていたが、それでも少なからぬ回数の攻撃がかわされ、防がれた。対して梓の攻撃も、一撃で受けるダメージは以前と同様大きかったが、即座に千波耶やナノナノ、サポートが回復のサイキックで治療し続けたおかげで1人も戦線離脱者を出さずに済んでいた。
     しかし、サイキックで治せないダメージは灼滅者達の体に徐々に積み重なっており、全身傷だらけの血塗れでなお動き回り、バットを振り回す梓とどちらが先に倒れるかの我慢比べとなっていた。
    「いい加減、潰れろ!」
     梓は叫びながら、すっかり歪み、曲がったバットを振り上げる。大上段からの一撃が千慶の脳天を直撃し、千慶は倒れる。が、
    「まだまだだ、コラァ!」
     額からの流血で顔のほとんどが血塗れになりながらも、千慶は立ち上がり、更に凄みを増した凶相で梓を睨み付ける。
    「何でだよ、何で立つんだよ!?」
     苛立たしげに叫ぶ梓に、
    「ハッ、お前なんぞに殺されてたまるか。むしろ返り討ちにしてやるよ。転生できねぇレベルでこの世から灼滅したらぁ!!」
    「ええ、今度は逃がさない。あの日、目が覚めて仲間が闇墜ちしていなかった時の絶望を、二度と味わうものか!」
     千慶の言葉に続き、征士郎も傷だらけながら力強く言い、千波耶のディーヴァズメロディをBGMに、黒鷹と一緒にクルセイドスラッシュで斬り込む。更に鈴の居合斬り、蓮司のジグザグスラッシュが梓の傷を増やし、流石の梓もいよいよ膝が震え出す。それを見たエリは、
    「少し無理したけど……これなら、行ける!」
     意を決し、後ろから梓に組み付くと、大木を引き抜くような気合と共に梓の体を持ち上げ、その勢いで後頭部から地面に叩き付ける。完璧なジャーマンスープレックスに、(「やった!?」)と快哉を叫びかけるが、
    「放せ!」
     梓は自由な足で蹴りつけて強引に脱出、そのまま後転して立ち上がる。
    「もうボロボロだよ。サボってた君と、僕たちの立場はとっくに逆転してるんだ」
     自身もかなりボロボロの身で六は言うと、足元の影を伸ばして梓を飲み込む。
    「うるさいうるさい! 我慢我慢我慢って、もう沢山なんだよ!」
     影の中から声がして、梓が出てくると、憎々しげに六を睨み付ける。
    「こっちが留守になってるぞ」
     荒い息を懸命に隠しながら慎一郎が近付いて、梓の体を服ごと、続いて夜好が放つギルティクロスが十文字に切り裂く。
    「やっちゃえ、千慶ちゃん!」
    「おう!」
     夜好の声援を受けて、千慶が突っ込む。迎え撃つ梓のバットを紙一重で避け、カウンターでマテリアルロッドの先端を梓の腹にねじ込み、ありったけの魔力を叩き込む。次の刹那、梓はガハッと大量の血を吐き出す。
    「どうだ、今度は忘れ物はしてねーぞ!」
     過去の屈辱を利息付きで叩き返そうとするように、千慶は叫ぶ。
    「そーみたいだね……」
     血の混ざった咳をしながら弱々しい声で梓は答えると、その手からバットが落ち、次いで膝が崩れてドッと地面に倒れる。梓の性格から、倒れた振りをして再び襲ってくる事も考えられたので、灼滅者達は構えを解かずに距離を詰めて警戒するが、幸い杞憂だったらしく、梓の体は砂のように崩れ出す。
    「あーもー、今年も目一杯遊ぶつもりだったのに、正月早々大勢にフクロにされて死ぬなんてね……アンタ達の事だから、これが友情だとか絆とか言うんだろうけど、六六六人衆には上の序列がまだ沢山いるし、他にもアンタ達が想像も付かない位強いダークネスがごまんといるんだ。そいつ等を相手にしてもまだ友情とか絆とか言って戦ってられるか、あの世で高みの見物もいいし、地獄でアンタ達が来るのを待ってるのもいいなぁ、あー楽しみだなぁ、アハハハハッ!」
     そのまま梓は大笑いを始め、彼女の体が完全に崩れ去るまで、正月の空に心底楽しそうな笑い声が響いた──。

    ●新年の凱旋
    「お、終わった……ハハ……生きてるよ……ハハハ……」
     梓がこの世から消え去るのを確認するや、気が抜けたか千慶の膝がガクガクと笑い出す。そこへ、
    「いえー! 勝った-!」
     鈴が快哉を上げて飛びつく、と言うよりほとんどタックルをしてきたので、千慶は抵抗できず倒れ込む。
    「勝った勝ったー! せんけー肩のっけて、肩車ー!」
     そう無邪気にせがむ六に、「この状況見えねーのか!」と千慶は怒鳴る。
    「皆さんお疲れ様でした。温かいお茶はいかがですか?」
     椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)がポットと紙コップを持ってやって来る。
    「全く、最後の最後までふざけた奴でしたね」
     征士郎が感想を漏らすと、「全くだ……」と蓮司も答える。
    「あんなのに沢山の人が殺されて、こっちも殺されかけたり闇墜ちが出たり、倒した後なのにまだ腹が立つのよ」
     千波耶もそう、自分が『好きだ』と思える場所を壊されそうになった事への怒りを口にする。
    「世界にはまだそう言う奴が沢山いる。あいつが最後に言った通りにな」
     不機嫌そうな、だがいつもの口調で慎一郎は呟く。
    「あいつのおかげで、俺は大切なモノを沢山見つけられたよ、そういう意味では感謝してもいいかな」
     梓によって闇墜ちした1人である紫桜が、そう自分の思いを口にする。
    「あ~、疲れたし汚れたし、お風呂入りたいなぁ~。近くに温泉とかない?」
     そう夜好が尋ねると、「じゃあ、みんなで行こうか?」とエリが提案。周りから一斉に賛成の声が上がる。
    「おい、俺の帰省はどうなるんだ!?」
     千慶が1人、抵抗の声を上げるが、
    「「そんなの後!」」
     灼滅者達の声が唱和し、今回の主役を有無を言わさず担ぎ上げる。
     そうして正月の空の下、田舎道を賑やかな行列が行進を始めた──。

    作者:たかいわ勇樹 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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