首のない馬

    作者:天木一

     正月三が日を過ぎてもまだ神社にはお参りの人々が多く訪れる。
     そんな賑わう境内に長い石段を登って一匹の獣が入ってくる。
     それは灰色の美しい毛並みに、額の部分だけ白い毛が混じった獣。
     犬のようであるが、よく見れば別物であるのがすぐ分かる。それは狼。滅んだはずのニホンオオカミの姿だった。
     不思議な事にその姿を見ても誰も驚かず、擦れ違っても気にする事なくお参りを楽しんでいる。
     堂々と道の真ん中を歩き、狼はそのまま裏へと回る。暫く山の方へ入っていくと、そこには巨大な神木が立っていた。
    「ウォォォォォン!」
     狼が猛々しく咆えると、その呼び声に応じて違う声が聴こえる。
    『ヒヒィィィィィン!』
     応じて現われたのは馬。黒い毛並みの馬が前足を上げて嘶く。
     だがその声がどこから放たれているのかは分からない。何故ならばその馬には首から上が無かった。
     首のない馬の声、そしてジャランジャランと鉄の音が響く。
     見ればその足は鎖に繋がれ、先は神木へと繋がっていた。
     嘶き声が止むと、いつの間にか狼は消えていた。
     残された首のない馬は近くから賑わう音を聞きつけ、そちらへと歩み始めた。
     
    「やあ、冬休みなのに悪いねぇ」
     申し訳なさそうに能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が、教室で灼滅者を出迎える。
    「スサノオが出現してね、古の畏れが生み出されてしまうんだ」
     場所は徳島県の神社。そこで首切れ馬という伝承にある妖の類が現われるという。
    「人の賑わう神社の境内に現われて、人を襲うみたいなんだ。放っておくと大騒ぎになって死傷者まで出るようなんだよ」
     直接殺される人は少ないが、パニックになって逃げ出し、押し合って階段から落ちて死ぬ人が何人も出てしまう。
    「みんなには一般人の被害を抑えて、この首切れ馬を退治してもらいたいんだ」
     灼滅者が頷くのを見て、誠一郎は敵に関する詳しい説明を始める。
    「スサノオはみんなが到着する頃には現場に居ないから、相手をするのは馬だけだよ」
     古の畏れを発現させると、スサノオはすぐさまその地を去ってしまう。
    「首切れ馬とは名前の通り、首のない馬だよ。だけどものは見えてるみたいだし、どこからともなく声も出せるみたいなんだ」
     だから物が見えていない訳でも、死角が特別広い訳でもない。
    「それと鎖に繋がれているみたいだけど、どうもその所為であまり遠くまでは移動できないみたいだね」
     とは言っても、神社周辺を移動する位には問題がない。
    「馬だけあって脚力は強いだろうから、キックには気をつけた方がいいだろうね」
     一般人に被害を出すのも殆どが蹴りか体当たりだ。それと嘶く声には周囲の人間の動きを止める力もあるという。
    「新しい干支は午年だけど、今回の相手は全然めでたくないからね。新年早々だけど、みんなに退治をお願いするね。せっかく新しい一年が始まったばかりなのに、こんな被害を出すわけにはいかないよね。だからお願いするよ」
     誠一郎が頭を下げると、灼滅者は急いで現場に向かおうとする。
    「あ、そうそう。境内でお雑煮が振舞われるらしいんだ。白味噌に丸餅のお雑煮らしいから、興味のある人は帰りにでも楽しんできてね」
     お雑煮は各地で色んなのがあって面白いんだよと、語り始める誠一郎を置いて、灼滅者は徳島へと急ぎ移動を開始した。


    参加者
    橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)
    中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)
    アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)
    龍田・薫(風の祝子・d08400)
    小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768)
    天地・玲仁(哀歌奏でし・d13424)
    焔宮寺・花梨(理数が苦手な焙煎士見習い・d17752)
    シュウ・サイカ(人になろうとした鴉・d18126)

    ■リプレイ

    ●神社
     肌に刺さるような冬の寒気が吹き抜ける中、徳島県にある神社は人で賑わっていた。三が日が過ぎてもまだまだお参りをする人は絶えない。
     そんな大勢の参拝客に混じって灼滅者達も神社に足を踏み入れた。
    「日本の神社も色々あるのだな」
     去年日本に来たばかりのシュウ・サイカ(人になろうとした鴉・d18126)は、物珍しそうに周囲を見渡す。
    「今年は午年、だが首がないとなれば少々縁起が悪いな。これも一種の地縛霊か何かなのだろうか」
     少ない情報から天地・玲仁(哀歌奏でし・d13424)は敵について考えを巡らす。
    「地方によっては神様の乗騎、つまり神使らしいけど、徳島のは確か、人に噛み付く気性の荒い怨霊なんだってね……」
     首のない馬についての伝承を橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)は説明する。
    「スサノオも何が楽しくて古の畏れを甦らしているんだか……もしや、トモダチが欲しいとか?」
    「そうなら面白いね。スサノオくんの子供は何を考えてるのかわからないけど、とにかくこの首切れ馬はなんとかしないとね」
     まさかなと中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)は自分の思いつきを笑い、その想像をした小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768)もくすりと笑った。
    「スサノオの一件から気になる事だらけです。今回の事件から、スサノオに対する『何か』がつかめればいいのですが……」
     焔宮寺・花梨(理数が苦手な焙煎士見習い・d17752)は体が冷えないよう、持参した自家製の珈琲を仲間に振舞う。
    「首の無い馬って前どうやってみてるんだろう……」
     首を傾げてアイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)はそんな疑問を口にする。
    「古の畏れ、か。お前の由来となった伝承と戦う事もあるかもね、しっぺ」
     龍田・薫(風の祝子・d08400)は帰ったら調べてみようかと霊犬の頭を撫でる。
    「……そのためにも、無事に解決しないとね」
     灼滅者達は2つのグループに別れ、片方は石段付近へ、もう一方は馬の現われる方へと向かう。
    『……ヒヒィィィィィン!』
     遠く馬の嘶く声が聴こえた。すぐさま灼滅者達は行動を開始する。
    「緊急事態です。石段の上で馬が暴れていると報告がありました」
     銀都は警備員に成りきってカラーコーンで通行止めし、ホイッスルを吹くと人々へ階下へ避難するよう声を掛ける。
     その言葉に緊急事態かと、参拝客は慌てて一斉に動き出そうとする。
    「こっちこっち、こっちに降りてきて! 押したら危ないから落ち着いて行動して!」
     アイティアの声が騒音の中はっきりと慌てる人々に届く。その指示に多少は冷静になったのか人々が落ち着いて石段を下り始める。
    「おちついて! 大丈夫だからゆっくり!お年寄りや子供、上手く歩けない人には手を貸して!」
     階下で、まるで紅葉のような錦を纏うプリンセスモードに変身した薫が、人の目を惹き寄せて大きく手を振りながら誘導して混乱を防いでいた。
    「ここは危険だ、早く避難しろ」
     神社の関係者がこの場に残ろうとするのを、シュウは威圧して避難するように指示する。
     誘導の成果か、人々は怪我も無く順番に石段を下りてゆき、次々と神社から居なくなっていく。
    「よーし、こっちはもう誰も居ないぜ!」
     銀都が境内を見回って確認すると仲間と合流する。
    「こっちも避難終わったよ!」
     石段の下で避難誘導を終えたアイティアも声を上げる。
    「早くみんなと合流しないとね!」
    「急ぐとしよう」
     薫とシュウの言葉に皆も頷き、急ぎ神社の裏手へと駆け出す。

    ●古の畏れ
     ジャラン――ジャラン――。
     鎖の音と共に現われたのは首から先が無い栗色の馬。傷口から赤づく肉と骨が覗く。だが不思議な事に血が溢れてくる事は無い。
     一般人が避難する時間を稼ぐ為、神社裏の神木へ続く道に灼滅者は陣取り、首のない馬と向かい合う。
    「来たな、みんな準備はいいな? 行くぞ!」
     音が漏れないよう結界を張ると、槍を手に玲仁が先陣を切って駆け出す。それに対し、馬はまるで顔があるように体を捻って首先を向ける。
    「折角の干支ですのに、年始から倒さねばならないというのはやや心苦しいですね」
     だが人を傷つけるものを見逃せないと、花梨は真剣な目で馬を見やる。
    「燃え咲かれ、我が焔!」
     武装すると指輪から魔力の弾丸を放つ。玲仁を迎撃しようとしていた馬はその弾丸を蹴り上げて弾く。その隙に玲仁は槍を振り回し、馬の胴を斬りつけた。
    『ブルルルゥゥッ!』
     どこからか、怒りの籠もった嘶きが響く。馬は前足を下ろすと玲仁に向かって突進し、槍を構える玲仁を勢いに任せて弾き飛ばした。
    「こっちだよ」
     亜樹が馬の注意を引くように前に出ると、手にした注射を馬の首筋に刺す。馬はそれを嫌がり弾けるように間合いを開けた。
    「御許に仕える事を赦したまえ……」
     紡ぐ言葉と共に瞬兵の手に護符が現われる。
    「怨霊を鎮めるのは祓魔師のお仕事だよね……ここから先には行かせないよ……」
     光が自らの体を包み込み、放った符が玲仁を守るように傷を癒す。
    「いくよっ」
     亜樹が馬に向けて槍を振るうと、氷柱が放たれる。馬は後ろを向いたまま後ろ足で氷柱を蹴り飛ばした。
    「首がなくても見えてるのかな?」
     亜樹は攻撃が見えているような動きに首を傾げた。そこに続けて玲仁が氷柱を放った。
    「見えていようが無かろうが、叩きのめすだけだ」
     氷柱はお尻に刺さり皮膚を凍らせる。
    『ヒヒィィィン!!』
     馬の大きな嘶き声。近くに居た玲仁と亜樹はその声に衝撃を受け足が止まる。そこへ馬は地面を蹴り突進する。
    「そうはさせません!」
     花梨の指が繊細に宙を舞う。すると馬の動きが鈍くなった。良く見れば細い鋼の糸が馬に巻き付き動きを封じていた。
    『ブルルォォァッ』
     馬は糸を引き千切る。だがその間に瞬兵が穏やかな風を起こし、玲仁と亜樹の呪縛を解いていた。
     突進してくる馬。花梨は続けて糸を飛ばして動きを止めようとする。だが足に巻きついた鋼糸に傷つけられても馬の突進は止まらない。玲仁と亜樹は身構える。その後方には神社がある、避ける訳にはいかない。両者は衝突し、馬は足を止めたが、玲仁と亜樹は吹き飛ばされ地面を転がる。
     そこへ更に追い討ちしようと、馬が助走をつけるように地面を蹴り駆け出そうとする。その時、横手から人影が飛び込んできた。
    「待たせたな、平和は乱すが正義は守るものっ! 中島九十三式・銀都。参上! 危険な乗馬ショーもここまでだっ」
     銀都が飛び出し、足元から伸びた影が触手のように馬を拘束する。
     続いてその後ろから他の仲間達も合流する。
     新たに現われた敵に馬の注意が向いている間に、瞬兵は玲仁と亜樹に身を守る符を貼り付け傷を癒す。
    「ひっ、これは外見怖すぎでしょ……夢に出るよ……」
    「うん……あまり見ていたいものじゃないね……知人に聞くと『夜行さん』て神さまじゃないかって聞いたけど、草鞋を頭にのせて地面に伏せてれば襲われないんだとか……でも、試す気にはなれないね」
     首の無い馬を見たアイティアはその不気味さに息を呑み、薫も同意して眉をしかめた。
    「参拝客の避難は終えた、次はこの首なし馬を仕留めるぞ」
     仲間に声をかけながらシュウは槍を構えて馬と向かい合った。

    ●首のない馬
    『ブルルッ……ヒィヒィィィッ!』
     影の拘束を引きちぎろうとする馬に、シュウは大きく踏み込んで槍を突き出す。
    「馬刺しは美味しいと聞くが、この馬は食べれるのだろうか?」
     穂先が胴に喰い込むと、捻って傷口を広げる。馬は槍を抜かせようとシュウに蹴りを放つ。
    「美味くはなさそうだな……」
     腹を壊しそうだと、玲仁は軽口を叩きながら前に出てその蹴りを槍で受け流す。
    「ほらほら、じっとしててよ!」
     暴れようとする馬にアイティアの影も絡み付き、その動きを鈍らせる。
    「今だ、仕掛けるよしっぺ」
     その機に薫が雷を放ち、霊犬が重ねるように六文銭を撃ち込む。銭は雷を帯びて馬に撃ち込まれた。
    『ヒヒィィッ』
     痛みに驚くように馬が身を翻して後退する。そこへ銀都が突っ込むと、馬はまるで後ろに目があるように、絶妙なタイミングでカウンターの後ろ蹴りが放たれた。
    「このっおとなしくしてなよ」
     咄嗟に亜樹が割り込み槍でその攻撃を受ける。だが勢いに負け宙に蹴り飛ばされた。
    「唸れ俺のドリル! 正義の一撃は悪を貫くっ!」
     馬が足を下ろすよりも先に、銀都は近づくと巨大な杭を撃ち出す。高速回転する杭は馬の腹に突き刺さり、捻って体の奥まで侵入しようとする。
    『ブルルルォッ!』
     怒りの籠もった声と共に、馬はもう一度後ろ足を蹴り出し、銀都を蹴り上げて吹き飛ばす。
    「気持ち悪いからどっか行っちゃって! どっかーん!」
     側面に回ったアイティアが縛霊手で馬の腹部殴りつける。衝撃に馬は仰け反り、その体には網のような霊力が絡みつき自由を奪う。
    「ここからは本気で行きますよ」
     花梨が指を躍らせる。すると鋼糸に炎が伝わり、まるで炎が宙を舞うように奔る。糸がふわりと曲線を描いて馬に襲い掛かった。馬は身動きがとれずにその一撃を背に喰らう。
    『ヒイィゥッ!』
     背中の焼ける痛みに悲鳴のように大きく嘶くと、馬は絡みつく糸や影を引き千切って花梨に向かって走り出す。
    「何処に行くつもりだ、先にこっちの相手をしてもらおう」
     その前に玲仁が立ち塞がり、腕を異形化させて迎え撃つ。馬と拳が正面からぶつかり合う。馬の重量の乗った突撃に玲仁は吹き飛ばされる。だが馬もまた拳の一撃に前のめりに足が止まっていた。
     そこへシュウと銀都が攻撃を仕掛けようとする。だがそれよりも早く馬は大きく嘶いた。
    『ヒヒィィィン!!』
     何処から発しているのか分からないその声は、魂に響くように聴く者の体に呪縛を掛ける。近くに居る者の足が止まった。
    「荒ぶる御霊を鎮めたまえ……」
     すぐさまそれに講じて瞬兵から癒しの風が吹き抜け、呪縛を打ち破る。
     突進してくる馬の前に亜樹と玲仁が立ち塞がり、左右から槍で押さえ込むように勢いを削ぐと、霊犬が正面からぶつかって動きを止めた。
    「祓い給え清め給え」
     薫が朗々と祝詞を唱える。すると鋭い風が巻き起こり、刃となって馬を斬りつける。
    「暴れ馬は神社に迷惑だぜ! 大人しくお縄になれっ」
     銀都が影を縄のようにして投げると馬の体を縛る。
    『ブゥルルルォッ!』
     馬は体を捻って銀都を前足で蹴り飛ばそうとする。
    「いいのか、腹ががら空きだぞ」
     そこにシュウが魔法の矢を撃ち込む。矢は馬の腹部に突き刺さり、怯んだ馬の足が止まった。その間に銀都は間合いを開けると、入れ替わりに花梨が接近し両手を振るった。すると鋼糸が包み込むように馬を囲み、全身を斬り裂く。
    「足癖が悪いようですね」
     傷口が抉られ血が流れ落ちる。それでも馬は強靭な生命力で体を動かす。
    「輝く御名の下、荒ぶる太古の怨霊を裁きの光以て浄化せん……」
     瞬兵の放つ光が馬を照らし射抜く。馬はそれを嫌がるように、光を放つ瞬兵へ向けて突進しようとする。だがその足が進まない。見れば足が凍結していた。
    「全部凍っちゃえ」
     亜樹の放つ氷柱が次々と馬を氷漬けにしていく。
    『ヒヒィ……』
     馬は無い首で嘶こうとする。しかしそのタイミングで花梨が魔弾を放った。穿った傷跡から魔力が流れ込み、馬は声を出せずに動きを止めた。
    「迷惑ですから静かにしていてください」
    「これで終わりにする」
     突撃するシュウの槍が馬の胴を貫き、そのまま捻じるように押し込むと反対側へと貫通して木に縫い止めた。馬が反撃しようとすると槍を手放して飛び退く。
    「ちょっと大人しくしてろ」
     槍を抜こうと暴れる馬を、玲仁が氷柱を放ちながら相手取る。
    「ほいほい、どうしたのそれで終わり? それじゃあ次はこっちだよ!」
     アイティアは影で馬の動きを縛りながら、間合いの外からからかうように槍を振るう。放たれる氷柱が馬の体を凍らせていく。
    「俺の正義が深紅に燃えるっ! 真の午年を迎えろと無駄に叫ぶっ、くらえ、必殺! お年玉ぶった切りっ」
     気合を入れた銀都が、上段に構えた巨大な刀に炎を纏わせ、大きく跳躍して馬の頭上をとる。落下する勢いに体重を乗せて振り下ろす。
    『ブルルルゥッ!』
     馬もそれに対して抵抗しようとする。しかし、アイティアの影と花梨の鋼糸に動きを止められ、避ける事も受ける事も出来なかった。真っ赤に染まった刃が馬の首から胴体へと侵入し、じゅっという音と共に内臓から燃やしていく。
     衝撃で凍っていた体は砕け、馬は燃えながら崩れ落ちていく。
    「荒御霊を鎮め給え」
     瞬兵の光が馬の体を包み込むと崩壊が早まり、まるで始めから何も無かったように、跡形も無くその姿は消え去った。
     ジャラン――。
     最後に残った鎖も、そのまま吸い込まれるように地面へと消えていった。

    ●お雑煮
     境内に避難した人々が戻り、何事も無かったように賑やかな活気が戻っていた。
     寒い中、熱々のお雑煮が振舞われ皆がそれを頬張っている。白味噌に丸餅と里芋の入った雑煮が体を温める。そんな中、一仕事終えた灼滅者達もご相伴に与っていた。
    「お味噌の入ったお雑煮って初めてなんだよ……」
    「わたしの地元も角餅・醤油のお雑煮ですから、お味噌のお雑煮は初めてです!」
     ほくほく顔で瞬兵と花梨は、とろりと伸びる餅を美味しそうに食べる。
    「ぼくの故郷もすましに角餅だけど、母さんが作ってくれたのと似てる……しっぺも食べたいの?」
     薫が雑煮を食べようとすると、隣で霊犬が見上げてくる。具を小さく切ると分け合って一緒に食べる。盛んに尻尾を振る霊犬と一緒に、薫も美味しいと笑顔になった。
    「おいしそー。いただきまーす」
     温まるねと、亜樹は笑顔で雑煮をすする。
    「やっぱ正月と言えばお餅だな!」
     銀都は大きく口を開けて餅を頬張る。だが大きすぎたのか喉を詰まらせて胸を叩く。
    「大丈夫か?」
     シュウがお茶を手渡すと、銀都は一気に飲んで今度は咳き込み、大丈夫大丈夫と手を振ってみせた。
    「これには馬は入ってないよな?」
     雑煮を珍しそうに見ながらシュウは口にしてみる。うんうんと確かめるように頷きスープを味わう。
    「末吉、待人……来ず」
     玲仁は引いたばかりのおみくじを見入っていた。待人来ず。口に出しても結果は変わらない。
    「来ないならこちらから行けばいいんだ。うん、そうだそうだ。俺も雑煮をいただくとしよう」
     この程度で動揺などしないと丸餅と里芋の入った雑煮を頬張り、丸餅も美味いなと言いながら口にしているのは里芋だった。
    「ぷは~っ。お雑煮美味しいね! おかわり!」
     勢い良く食べ終えたアイティアは満面の笑みでもう一杯を貰いに行く。
     じゃあ俺も私もとお雑煮を平らげた仲間が後に続く。
     寒い場所で皆と共に食べる雑煮はまた格別だった。美味しそうに雑煮を食べ、正月気分を満喫するのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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