赤鷺は跡を濁さず

    作者:波多野志郎

     ――九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)は、ふと気付くと見知らぬ場所に立っていた。
    「……? ここは」
     どこだ、と周囲を確認するよりも早く――獅央の視界の端に、その赤が見えた。
    「お前――!?」
    「ふふ、久し振りね? 元気にしてたようで何よりだわ」
     反射的に身構えた獅央に、その赤は笑みで言ってのけた。
     特徴的な女だった。燃えるような赤い髪。黒いコート。その下からでも強調するような女性的なライン。そして、他人へと悪意を撒き散らす事を当然と鋭い視線――。
     獅央は、この女を知っていた。忘れるはずのない、鮮烈な印象を獅央に刻んだ『敵』だ。そのコートから、ジャガン! とガンナイフを取り出し、女は改めて名乗る。
    「六六六人衆、五一六――『悪を成す』赤鷺。きちんと潰し残しを消しに来てやったわよ? 悪役らしくね?」

    「……と、まぁ、六六六人衆による、武蔵坂の灼滅者の襲撃が予測されたっす」
     正月早々っすね、と湾野・翠織(小学生エクスブレイン・dn0039)は深々とため息をこぼした。
    「今回、自分が予測したのは九牙羅・獅央さんへの襲撃っす。このまま放っておけば、確実に殺されてしまうっす」
    「……それは、急いで助けにいきませんと」
     そう返したのは、隠仁神・桃香(中学生神薙使い・dn0019)だ。その表情は硬く厳しい。
     翠織は、その表情に対してうなずいた。そして、冷静を心掛けて言葉を続けた。
    「そして、『悪を成す』赤鷺を灼滅する、またとないチャンスでもあるっす」
     武蔵坂学園の灼滅者達は、成長している。そして、何よりも狙われた獅央の安全さえ確保できれば、今までのような救出対象の一般人に力を割く必要がない。この状況でなら、戦術次第では強力な六六六人衆にも手が届かせる事も可能なはずだ。
    「こっちの未来予測さえ利用すれば、九牙羅さんが襲われるそこをまず逃走出来ないように囲む事が可能っす。これは、サポートの皆さんにお願いしたいっす」
     その上で、桃香を含めた九人で全力で戦いを挑めば、赤鷺は逃走する目を失う事になる。ただし、赤鷺自身が強力なダークネスだ。作戦の爪を誤まれば、逃亡を許してしまうだろう。そこにいたれば、すべては戦いを挑む者達次第だ。
    「作戦の第一目標は九牙羅さんを救出する事っす。でも、六六六人衆を野放しにするのも非常に危険っす。このチャンスを活かして、灼滅を目指して欲しいっす」
     ピンチをチャンスに返る事が出来るのか? それは、これからの選択にかかっている。


    参加者
    七里・奈々(淫魔ななりんすたぁ・d00267)
    シェレスティナ・トゥーラス(夜に咲く月・d02521)
    更科・由良(深淵を歩む者・d03007)
    九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)
    鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)
    榊原・智(鷹駆る黒猫・d13025)
    白雪・藍(雪月花・d17357)
    高辻・優貴(ピンクローズ・d18282)

    ■リプレイ


     もしも、それを目撃した人がいたのなら我が目を疑っただろう。
     深夜、ビル街に囲まれた公園。周囲を細い遊歩道が伸びており、四方に道路1本ずつ、他は高層ビルに囲まれている――都会である。
     いや、田舎であってもありえなかっただろう。木の上に身を隠した、カンガルーなど。
    「しおしおが危ないだと!? ならば全力で阻止するっきゃないよねっ
     木の下、シェレスティナ・トゥーラス(夜に咲く月・d02521)の呟きに真上でカンガルー……否、カンガルーの着ぐるみ姿の七里・奈々(淫魔ななりんすたぁ・d00267)がうなずき、小さくこぼした。
    「あ、おとーと」
     公園へ、二人が見知った人物がやって来る。九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)だ。獅央は、公園の中心へと歩み出ると振り返った。
    「あれ、久しぶり! ええと『悪を茄子』……」
    「悪を成す、ね。季節外れよ?」
     こっそりと携帯電話を操作した獅央の軽口に、そこに姿を現わした女も軽口で返す。燃えるような赤い髪。黒いコート。その下からでも強調するような女性的なライン。そして、他人へと悪意を撒き散らす事を当然と鋭い視線――六六六人衆、五一六『悪を成す』赤鷺だ。
    「ったく、人がきちんと潰し残しを消しに来てやったのに――」
    「氷雪の刃が全て凍らす」
    「しおしおがお世話になったわね」
     赤鷺の言葉の途中、赤い女を中心に凍気が吹き荒れる。物陰から、白雪・藍(雪月花・d17357)とシェレスティナがフリージングデスを繰り出したのだ。
    「切り裂けっ」
     そして、その凍気ごと渦巻く風の刃、鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)の神薙刃が放たれる! ゴォ!! と冬の大気よりもなお冷たい暴風が――内側から、爆ぜた。ハッ、と微笑み、赤鷺は軽い調子で歩を進める。
    「――こういうオマケがあるなんてね。いいわー、お姉さんも悪役冥利に尽きるじゃない」
    「『悪を成す』、ですか……悪役を自称するなら大人しくやられてもらいましょうか……!」
     ヒュオ! と榊原・智(鷹駆る黒猫・d13025)が放つ彗星撃ちの一矢が、赤鷺へと降り注いだ。その名の通り、彗星のごとき尾を引く一矢を赤鷺は素早く引き抜いたガンナイフで受け止める。そして、突撃してくるライドキャリバーの富士鷹を赤鷺は、その蹴り足で宙を舞わせた。
    「まだまだ!」
     そして、奈々の放つ妖冷弾の氷柱が赤鷺を狙い放たれる。赤鷺は降り向きざま、ガンナイフの銃弾でこれを迎撃、撃ち砕いた。そこへ、更科・由良(深淵を歩む者・d03007)が踏み込む。唸りを上げる槍の刺突、それを赤鷺はギィン! とガンナイフの刃で弾き、コートをひるがえして後方へと跳んだ。
    「『悪を成す』、心意気は嫌いではないがの?」
    「そういうあんたも、悪には一家言あり?」
     ニヤリと由良と赤鷺は、よく似た笑みを交わす。集った仲間達に、獅央は殺界を形成しながら言い放った。
    「わざわざ出向いてくれてありがと!」
    「ドウイタシマシテ、よ」
     赤鷺は皮肉混じりにそう答え、呼吸を整える。後方にもう一つ見知った顔、隠仁神・桃香(中学生神薙使い・dn0019)を見つけて、白い吐息と共に言い捨てた。
    「ここまでお膳立てしてくれたんだもの、悪役として存分に魅せてあげるわ!」
    「人を狙うなんてつまんねーことしてないで、俺のリサイタル聴いてきな!」
     カッ! と照らされたライトの中心。バイオレンスギターを手に、高辻・優貴(ピンクローズ・d18282)が言い放つ。それに、赤鷺はガンナイフを構え、地面を蹴った。
    「せいぜい、いい悲鳴を上げな!!」


     赤鷺が、その髪を翼のように広げ黒き殺気を放つ。それは、まさに夜の津波だ。黒い濁流となって、灼滅者達を飲み込んだ。
    「紫、頑張ってね」
     藍の呼びかけに、霊犬の紫がうなずきを返す。隣にいた桃香も、合わせて右手を頭上へ掲げる。
    「言の葉よ……傷を、蝕む毒を癒して」
    「風よ、ここに!」
     藍のクルセイドソードから祝福の言葉が、桃香の真摯な祈りが、二つの風となって戦場を吹き抜ける。音もなく吹き飛ばされる鏖殺領域の殺気の中から、紫の眼差しに癒された由良が、真っ直ぐに駆け出した。
    「派手にやってきれるのぅ!」
     零距離、由良が繰り出した氷柱を、赤鷺は素手で受け止める。ジャ!! と赤鷺の靴底がなって、後方へ下がる――そこへ、ライトの中から優貴が跳び出した。
    「踊れるか? あんた」
    「ついて来れるなら、付き合ってあげるわよ?」
     優貴の隣に、霊犬のモモが併走する。優貴が軽快なステップを踏めば、薔歌が淡い退紅の色をした影の花を咲かせた。優貴のパッショネイトダンスとそれに合わせたモモの斬魔刀に、赤鷺は小さく口笛を吹いてガンナイフを閃かせる。無数の火花が夜に散っては掻き消えていく、その舞踏の中へ伊万里が加わった。
    「殺人鬼の方って、もっとみんな自分勝手な人なんだと思ってましたっ」
    「ああ?」
     赤鷺が目をすがめたのは、伊万里の言葉にではない。自分を殴ろうとした瞬間、顔をしかめた事にだ。
    「暗殺ゲームだなんて、誰が声かけてるんですかっ? 五一六っていったら、あと少しで四〇〇台じゃないですかっ! 冥途の土産に、なんてのは勘弁ですけどっ。教えてくれませんか?」
     砲弾のように繰り出された伊万里の拳を、赤鷺は左手で受け止める。その顔が、触れそうなほど近く寄せられると女性が苦手な伊万里は耳まで赤くなった。しかし、隙にならなかったのは、目の前の女から香る血の臭いのためだ。
    「本当に、どっからそういうのを知って来るのかしらね? あんた達は」
    「そもそもよ?」
     死角から、獅央の呟きが赤鷺の耳に届いた。振り返った時には遅い、獅央の紅牙槍はコートの裾ごと、赤鷺の足を斬っている。
    「俺を狙ってくれて嬉しいんだけど、暗殺ゲーム何かおかしくね? 誰かの企みにハマったんじゃないの?」
    「企み、ね」
     赤鷺の視線が、鋭く周囲に走った。この公園を囲む多くの灼滅者達に、気付いたのだろう。表情で察して、獅央は笑っていった。
    「暗殺されるのは赤鷺、あんただ」
     そこへ、富士鷹の機銃掃射が降り注いだ。着弾し砂煙が巻き上がる中心へ、智が繰り出した妖冷弾がドン! と突き刺さった。
    「これまでは一般人を犠牲にした闇堕ちゲーム、今回は学園のみんなを狙った暗殺ゲーム……こんな血生臭いゲームなんて止めてやるわ……!」
    「そうなのです、ましてやおとーとを――」
     そして、そこへ大きく跳躍して飛び込んだ奈々が鋼糸を繰り、砂煙を無数に断ち切るのと同時、赤鷺を縛り上げる。
    「――しおしおを狙うなんて、許せないわ」
     続き、駆け込んだシェレスティナが破邪の白光を宿すレッドクルセイダーを横一閃に振り抜いた。胴を薙ぐ、そう思った瞬間だ。ギィン! という甲高い金属音が鳴り響いた――赤鷺が、ガンナイフで受け止めたのだ。
    「ふ、ふふ……は、はははははははははははははははははははは! なるほどねぇ!! これは、してらられたわ。退くにも、配置が面倒。取れる人質もなく、状況はとにかく不利極まりない、と……随分と、えぐい包囲網を引いてくれたわね」
     笑い出した赤鷺に、しかし、場の空気は凍りつく。その殺気は冬の空気など問題もないほど冷え込み、凄まじいものになっていったからだ。
    (「……難敵、ですか」)
     智は、脳裏に浮かんだその言葉の意味を思い出した。六六六人衆は強い、だがそれ以上に厄介だったのは、戦況を判断する能力だ。
    「逃げるのも困難だってなら? もう、いいわよね?」
     赤鷺は、判断を下した。逃亡出来る確率は低い、と。だからこそ、この女は――。
    「後先考えず、殺しちゃっても――ね?」
     己の身よりも殺す事を、六六六人衆の本能に従う事を赤鷺は迷わず選択した。


     人の姿をした悪夢が、状況を蹂躙する。
    「富士鷹」
     智に応えて、富士鷹は突っ込む。悠然と歩く女に、全速力で突撃――ミシリ……、と肉の軋む音を響かせた。だが、赤鷺は一切意に介さず、無造作に踏み出すだけだ。
     しかし、富士鷹のキャリバー突撃は隙となる。死角へ回り込んだ智は影の鷹の翼で赤鷺の足を斬り裂き、モモの斬魔刀が脛を切り付けた。
    「おおおおおおおおおおおおおお!!」
     そこへ、獅央が渾身の力で妖冷弾を叩き付ける。バキン! というすんだ破砕音と共に氷が夜気に舞い散り――直後、赤鷺の鏖殺領域が吹き荒れた。ゴォ!! と全てを情け容赦なく薙ぎ払う殺気の奔流は、富士鷹を撃ち砕き、獅央を守ったモモを弾き飛ばす。二体のサーヴァントを一気に戦闘不能へと追い込み――桃香が、鋭い警告を発した。
    「まだです!」
     それだけで、意味はわからずとも灼滅者達は本能で察する。赤鷺の動きは、止まっていない――ガンナイフのナイフが地面に突き刺された瞬間、衝撃が大地を揺らした。
    「本当、とんでもないね!?」
     跳躍したカンガルー、奈々がその槍を繰り出す。螺旋を描く刺突を、赤鷺は左手で引っ掴み、鮮血を撒き散らしながら振り払った。
    「まぁだ、まだぁ!!」
     血に飢えた鮫のように笑い、赤鷺ははしゃぐ――そう、赤鷺ははしゃいでいた。追い込まれたこの窮地を、心の底から楽しんでいたのだ。
    「それは、こっちの台詞ですっ!」
     伊万里が切り刻む烈風を放ち、由良が真っ直ぐに立ち塞がる。一合、二合、三合、と打ち合いながら、由良はニヤリと笑った。
    「さっきよりも、良い表情じゃぞ? お主」
    「褒め言葉でも、嬉しいわね」
     その剣戟の中に、シェレスティナが加わる。夜明け前の闇をその拳にまとわせ繰り出す連打を、赤鷺は血に塗れた左腕一本で受け止め、流し、逸らしていった。
    (「みんな、堪えてね?」)
     シェレスティナは意識を逸らさず、公園を囲んでいる仲間達にそう願った。自分達の窮地に仲間達が駆けつければ、薄くなった包囲網を赤鷺は食い破っていくだろう――赤鷺は、賭けに出たのだ。
    「上等だ!」
     それがわかるからこそ、優貴は一撃一撃に全力を込める。アンチサイキックレイの光線を、赤鷺へと降り注がせた。
    (「誰かが、闇堕ちすれば――状況は、大きく動く……」)
     藍はセイクリッドウインドを吹かせながら、そう思う。赤鷺も承知の上のはずだ、誰かが闇堕ちしてしまえば敗北しかない。そのギリギリを見極めているのだ、このダークネスは。
     ――これは、いわば綱渡りだ。先に足を踏み外してしまった方の負け、そういう勝負に赤鷺は、引き戻した。だからこそ――。
    「堕ちてなんか、やるか!!」
    「いいねぇ、あんた等のそういうとこは好きだよ?」
     獅央の宣言に、赤鷺が駆ける。そこへ割り込んだのは、伊万里だ。そのシールドに包んだ正拳突きを、赤鷺の胸元へ叩き込んだ。
    「お――っ!」
     そのまま、伊万里が押し切り、赤鷺が後方へ跳ばされる。着地と同時、シェレスティナが真紅のクルセイドソードを純白に輝かせて袈裟懸けに振り下ろした。
    「誰も、しなせたりしない……!」
    「ああ、いい覚悟だよ」
     シェレスティナの言葉に、赤鷺は笑う。
    「だからこそ、それを覆す意味があるわ!」
     その赤鷺へ、真正面から由良が突っ込む。それに赤鷺が反応した瞬間、後方から影が赤鷺の手足を絡め取った。
    「随分と、悪どくやるものね?」
    「確か、『悪を成す』じゃったか……殺す程度の事は世間に溢れとる。どうせなら……このように騙し、欺き、悪を見せ付けねばの」
     ニヤリ、と笑みを交し合った。
    「確か、ゲームじゃったよな……ゲームの悪役なら、ソレらしく。次のステージを、道筋やら情報を提示すべきじゃろ……。ただ、やられる雑魚になるか…配役に徹して悪役を貫くのか――決めるのはお主じゃよ」
     由良の言葉に、赤鷺は小さく肩をすくめる。直後、強引に赤鷺はガンナイフを地面に突き刺した。衝撃のグランドシェイカー――その衝撃に、シェレスティナと由良が地面に宙を舞い、叩き付けられた。
    「殺す――!!」
     巻き上がる砂煙を吹き飛ばし、赤鷺が駆ける。その狙いは、獅央だ。最初の標的は必ず殺す――その覚悟を決めた特攻だ。
    「させ――ませんっ!」
     だが、獅央へ届く直前、伊万里が割り込みガンナイフの斬撃を替わりに受ける。それに伊万里が崩れ落ちた瞬間、桃香を見た。桃香は、大きくうなずく。
    「お願いします!」
     その合図に、包囲網を敷いていた者達がバスタービームの援護と共に駆け込んで来る。矜人のロッドが、隼鷹の兇刃:葬爪が、赤鷺を捉えた。
    「逃げるのかよ、赤鷺。悪役ってのは、華々しく散るもんだぜ?」
     隼鷹の言葉が、赤鷺に一瞬の隙を生む。突然生まれた逃亡の好機、しかし、得物を前にした殺意がその判断もコンマ秒狂わせた。
     それだけあれば、充分だ。智の放った矢が、赤鷺の右肩を射抜き大きく体勢を崩す。それに、藍の斬影刃と紫の六文銭射撃が重なった。
    「今です! 狙ってください」
     藍の言葉に、優貴がうなずく。そして、激しくバイオレンスギターをかき鳴らした。
    「あんたのための特別ライブだ、最後まで聞いていきな!」
     藍のソニックビートの振動に、赤鷺の膝が揺れる。横へ、包囲網の空いた場所に行くべきだ――しかし、赤鷺はその判断を否定した。
    「ああ、逃げるなんて、性に合わない!!」
     そこへ、奈々が死角から跳躍と共に跳び込む。鋼糸によるティアーズリッパーで赤鷺を大きく切り裂くと、奈々が叫んだ。
    「おとーと!」
    「おう、奈々おねーちゃん」
     獅央が、駆け出す。赤鷺は、ガンナイフを振りかぶる。そのナイフが獅央の首筋に触れた瞬間――獅央の姿が、消えた。
    「あんたのこと気に入ってた」
     その呟きは、真下から。視覚の死角から、獅央は紅牙槍を振り上げた。
    「血で染まる姿も綺麗だな……じゃあな」
    「……ああ、じゃあな」
     微笑み、赤鷺は崩れ落ちる。悪役が、倒れる――それこそが、この戦いの終幕だった……。


     倒れた者達に駆け寄る灼滅者達に、赤鷺は小さく笑った。由良を見て、赤鷺は小さくこぼす。
    「……あんた達が、あんた、達であるなら、いつか出くわすわ。ま、そん時は……地獄があるなら、そこであんた達、を、応援、してやっても、いいわ……」
     その呟きと共に掻き消えた赤鷺に、智は小さなため息と共に内心で呟いた。
    (「闇堕ちゲームの生還者の襲撃……六六六人衆も大々的に動き出しましたか……」)
     灼滅出来た――これは、大きな成果だ。それでも、状況をあそこまで有利に持ち込み、あれだけの綱渡りを強いられたのだ、ただ楽観する事は出来ない。
     だが、今はこの価値ある勝利を喜んでもいい――深夜の公園に、勝利の喝采が響き渡った……。

    作者:波多野志郎 重傷:シェレスティナ・トゥーラス(夜に咲く月・d02521) 更科・由良(深淵を歩む者・d03007) 鈴虫・伊万里(黒豹・d12923) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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