闇から出でる怨恨は続く

    作者:幾夜緋琉

    ●闇から出でる怨恨は続
     いつもの日常……それは、正月の何の変哲も無い時。
     祝うべき日ののんびりとした時間……風雅・月媛は、正月の時をのんびりと雨後為ていた。
    「……あれ、ここは……?」
     猫着ぐるみできょろきょろと見渡す風雅・月媛(史上最大の魔女ニャンドーラ・d00155)……すると不意に、上方から斬りかかってくる一撃。
     その一撃を寸前で交わす月媛、そして。
    「な、何よ貴方!」
    「ちっ……外したか。あんた、闇堕ちゲームを生き延びた男ね? その命を、私に暮れないかしら? 私の戦闘ゲームの勝利の為にね!」
     待ち構えていたダークネス。
     そんなダークネスに向けて、月媛は。
    「っ……貴方は、もしかして」
    「そうだよ。10ヶ月前、御世話になったよなぁ……その積年の恨み、晴らさせて貰うぜ!」
     と、月媛に向けて、攻撃を仕掛けてくるのであった。
    「みなさん、集まっていただけましたね? 正月という忙しい時期に集まって頂き、ありがとうございます。それでは、依頼の説明を始めますね?」
     と五十嵐・姫子は、集まりし灼滅者達へ微笑むと共に、依頼の説明を始める。
    「今回、私が予測したのは、六六六人衆による武蔵坂学園の灼滅者に対する襲撃です。この襲撃の被害に遭うのは……風雅・月媛さんです。みなさんには、急ぎ依頼に向かっていただきたいのです」
     媛個がターゲットとなると告げたのは、にゃんこスーツで有名な彼女。
     そんな彼女がなぜ襲われるのだろう……と疑問を抱くことだろう。
    「なぜこの六六六人衆が月媛さんを狙っているのかはわかりません……しかし彼は、月媛さんに恨みを持っている模様なのです」
    「このダークネスは、基本的に月媛さんを集中的に狙おうと動いてきます。逆に言えば、集中しているのをおとり作戦にてたたく……ということも可能です」
    「とはいえ六六六人衆は危険なダークネスの一つです。8人で相手するとなれば、互角、もしくは多少不利になるかもしれません」
    「しかしながら、ダークネスを放置する事は出来ません。ダークネスに対して、私たちには未来予測があります」
    「つまり、ダークネスに予知されない様、月媛さんへと誘い込むことがポイントになるかと思います」
    「なお、ダークネスが襲い掛かってくるのは昼過ぎ……あまり人のいない所模様です。逆に街角故に、あまり大きな音を立てすぎると、一般人が集まってくる可能性があるので注意が必要です」
    「また、六六六人衆の力を当然ながら使用してきます。容赦せず、殺すために……なので、下手に油断はしないようにお願いしますね」
     そして媛子は。
    「作戦の目標は、襲撃されている月媛さんの救出のほかでもありません。しかし、灼滅者を暗殺しようとする六六六人衆を放置しておくのは非常に危険です」
    「ですから、可能な限り灼滅を目指し、皆さんの力を課して下さい。宜しくお願い致しますね」
     と、深く頭を下げるのであった。


    参加者
    風雅・晶(陰陽交叉・d00066)
    風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)
    不知火・レイ(シューティングスター・d01554)
    水島・ユーキ(ディザストロス・d01566)
    不知火・隼人(蒼王殺し・d02291)
    乾・剣一(紅剣列火・d10909)
    日凪・真弓(戦巫女・d16325)
    セトラスフィーノ・イアハート(小さなストーリーテラー・d23371)

    ■リプレイ

    ●逆鱗に触れるは
     姫子より話を聞いた灼滅者達。
    「しっかし……新年早々、暗殺ゲームの標的にされるだなんてねぇ……」
     ペタ、ペタ、と……黒猫紳士の着ぐるみを着ながら歩く風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)が、肩を竦めて歩く街角。
     六六六人衆の襲撃事件……灼滅者達を個々に狙うというその事件は、全国各地、多数の灼滅者達に正月という晴れの日に多発発生すると聞いていた。
     無論、ターゲットになった月媛なのだが……矜持である黒猫紳士の着ぐるみを脱ぐこと無く、その服装で歩く。
     傍から見れば、ある意味正月の振り袖に近い……と思えなくも無い……いや、思えないとは思う。
     でも、それこそは彼女にとっての誇りでもある。だからこの姿で襲われ、もし死んでも本望であると言って憚らないし、それに。
    「……ふふ。全く以て景気が良いわね! 我等の後には道は無く、我等の前にも道は無し……ただ切り拓いて進むのみ、ってね!」
     ぐっと拳を握りしめ、はやる気持ちを抑えきれない月媛。
     勿論、そんな彼女を心配してくれた仲間達……作戦に報いる為にも、決して油断は出来ない。
     ……そしてぺたぺたと歩く彼女は、狙うのに都合の良い場所と考えている、人気の無い、障害物のある公園へと辿り着く。
     正月なのもあり、周りに人気は無い……そして、昼下がりのうららかな陽射しが、空から射し込んだ……その瞬間。
    『ケケケ……ヒヒヒ……』
     静けさに包まれたその場に僅かに聞こえた、人を小馬鹿にしたような笑い声。
     すたっ、とその場に立ち止まり、周囲を警戒……。
    『やーぁっとみぃつけたぁ……ヒヒヒ……ホラァ、ぶっころしてやるぜぇえ!!』
     その言葉と共に、飛び上がり、上から攻撃を仕掛ける六六六人衆。
    「っ……!」
     防御態勢を取る月媛……が。
    「……姉はやらせません!」
     咄嗟にその間に割り込み、攻撃を受け止めたのは……弟である、風雅・晶(陰陽交叉・d00066)。
     そして晶に続けて、次々と仲間達が、姿を現わす。
    「全く……六六六人衆の奴らも、本当碌な事しねぇんだな」
    「ええ。学園の灼滅者を個別に狙ってくるとは……まさかという事態ですね。今後学園が敵を増やし続ければ、より同じ事例や酷い事例が増えてきそうではありますが……」
    「ああ。本当胸糞の悪くなる話だ……まぁ、やる事は変わらんけどな。仲間を助け……どんな敵も……唯、撃ち抜くのみ。月媛、加勢させて貰うぜ」
     不知火・隼人(蒼王殺し・d02291)、日凪・真弓(戦巫女・d16325)の言葉、それに月媛は。
    「ありがとう。まぁ、襲われて、それを一人で倒すのも面白そうだったんだけどね」
     肩を竦める月媛……そんな彼女の言葉に、不知火・レイ(シューティングスター・d01554)は、晶へ。
    「……なんか、狙われた本人が、一番楽しそうじゃないか?」
    「そうですね……まぁ、困った姉です」
     僅かに苦笑……そんな灼滅者達の会話に対し、六六六人衆は。
    『てめーら、俺をさしおいて盛り上がってんじゃねーよォ!』
    「あら、ごめんなさい。でもこうやって、不意打ちで以て復讐を果たすなんて……心が小さいヤツだな」
     乾・剣一(紅剣列火・d10909)も挑発する。
     ……むしろその挑発こそが、月媛へターゲットを向けない為の、一つの作戦なのだが。
    『ウルセーウルセー、テメーラぜーいんぶっころしてやるぜぇ、ヒヒヒヒ!!』
     ……口調的には、まだおちょくっている様にも見えるが、ターゲットは……月媛だけではなく、灼滅者全員に拡がった様である。
     ……そんな彼の言葉に、水島・ユーキ(ディザストロス・d01566)と、セトラスフィーノ・イアハート(小さなストーリーテラー・d23371)は。
    「……新年、早々、暗い、ニュース、で、始まり、たく、ない、から……」
    「ええ……わたしが夢に描いた絵空事の世界。それが本当に実在して、それこそ悪魔のような存在が人々を脅かしているんだね……死と隣り合わせなのは怖い……けれど、わたしは、わたしという『物語』の主人公として、この世界の真実と、行く末を見届けるんだ」
     気持ちを整理するかの様に、言葉を紡ぐ……そして、そんな仲間達の言葉に月媛が。
    「さてと、それじゃ気を取り直して……と。にゃんこさんのパーティーにようこそ! 新年早々、狙ってくれたことは感謝。バベルの鎖に引っかかってから、楽しみで仕方なかったわ。だがしかし、にゃんこさんは早々簡単には当たってあげられないわよ!」
     その言葉と共に、晶が前に出て黒死斬の一閃を穿つ……が、六六六人衆は躱す。
    『ヒヒ……こっちも簡単に受けちゃらんねーぜぇ?』
     僅かに距離を取る彼……そして。
    「しかし……暗殺ゲームとはな。自分が殺される可能性は考えていないのだろうな……だが退くつもりはない。ここで終わらせてやる」
    「そうだぜ! ウチに手を出してそう何度も無事で済むとは思うなよ! 誰も殺させやしないし、逆に殺させないようにせいぜい気をつけろよ!!」
     と、そんな灼滅者達の言葉に対し、彼は。
    『ヒヒヒヒ……面白いじゃねーか。すげー面白えーぜ。ケケケケ!!』
     ……そんな彼の言葉に、セトラスフィーノは、ぐっと拳を握りしめながら。
    「……初めての実戦。恐ろしい敵に、まだどきどきしてる……けど、みんながいれば大丈夫。絶対に、負けられない感……!」
    「そうだな……頑張ろうぜ。という訳で……行くぞ。俺の相棒は、凶暴だぜ?」
     続く隼人がニヤリ笑みを浮かべながら、強化外骨格を見せつける。そしてレイも殺界形成をその場に展開……。
     その展開と同時に、更に真弓もサウンドシャッターをその場に展開し、戦闘の音を外部に漏らさないように戦場を組み立てる。
     そして仲間達がポジションに付いたと同時に、月媛は晶に。
    「さぁ晶、準備は良いわね? いつも通り私がオフェンス、あんたがディフェンスでいくわよ!」
    「ええ……何時も通りですね、解りました」
     あうんの呼吸で、頷き逢う二人……そして、月媛が動き出す直前に、レイがソーサルガーダーを月媛に使用し強化。
    「ありがと! さー、にゃんこさんの超弩級攻撃を食らいなさいっ!!」
     黒猫紳士で以てずかずかと接近……そして、鮪で一閃叩き込む……が、軽やかな動きで躱す彼。
    「ほう……結構素早い様だな。だが……ならば力尽くで押していくまでだぜ!」
     続く剣一も、閃光百裂拳で殴り掛かる。
     ……だが、その一撃も……寸前で躱す。
    『ヒヒヒヒ。あー、止まって見えるぜぇ!? どーした。それで勝てるとでもいうのかよぉ?』
     本当、人を食ってかかった言葉をポンポン口から出していく彼。
     そんな彼に対して、セトラスフィーノが。
    「勝てます……勝たなければいけないのです!! わたし達に撤退の二文字はない。視力を尽くして戦って、絶対につかみ取ってみせるんだ、勝利を! 灼滅者を……わたしたちの絆を、舐めるなぁっ!!」
     と大声で言うと共に、制約の弾丸を穿つ……流石にスナイパーの効果を伴うことにより命中……彼にパラライズの効果が及ぶ。
     それに真弓も頷き……先ターン体制を整えつつ使用した鬼神変の効果をのせた黒死斬……足止めのバッドステータスを付与。
     そんな二人のバッドステータス攻撃が、体を蝕んだ所で……晶、レイ、隼人のディフェンダー陣三人、更にユーキが後衛で、扇形に陣形を整えて対峙。
    「さて……この私を倒さずして、姉に攻撃を届かせられるとは思わない事です」
     双刀をかめる晶……その背後に浮かぶバトルオーラが、怒りを示す。
     そして怒りを示す中、雲櫂剣で斬りかかる。
     ……先ほどの二つのバッドステータスの効果もあり、その一撃は、かろうじて命中する。
     そしてその勢いに乗って、レイもDMWセイバー、隼人も。
    「いくぞ! 伊達や酔狂でこんな角がある訳ではない!!」
     と、蹂躙のバベルインパクトで攻撃を叩き込む。
     回避のワンランクダウンから、更なるバッドステータスの雨あられ。
     又、ホーミングによる攻撃の命中アップが、相対的に攻撃が当たりやすくなる。
     ……しかし、灼滅者達の攻撃に対して。
    『チッ……まったく面倒くせえ奴らだよなぁ……ほらほらほらぁ!!』
     ……舌打ち、面倒臭そうな言葉を呟きつつも、反撃の猛攻を嗾ける。
     勿論ターゲットは月媛……なのだが。
    「させない、と言ったでしょう……!」
     晶がしっかりと、ディフェンダーで攻撃を庇う……そして受けたダメージを、ユーキが即座に防護符で回復。
    「……だい、じょう、ぶ?」
    「ええ……回復、ありがとうございます」
     晶の御礼に、ん、とこくり頷くユーキ。
     そして次のターン。
    「当たりやすくなったみたいだし、本気の一撃、喰らってみなさい!!」
     今度は影業で作り出した大漁旗を大きく振り回して攻撃する月媛。
     大きく振りかざした一撃は、彼の体を下方から掬い上げる様な一撃を叩き込む。
     そしてその一撃に続き、剣一は、上方から閃光百裂拳。
     下と上の両面から与えられたクラッシャーの一撃……その体が地面に叩き付けられる。
    『っ……この、てめぇら……うぜぇったらありゃしねーよなぁ……でもよ、これくらいじゃ俺は折れねーぜ!!』
     しかし彼は、すぐに立ち上がり……黒いオーラを纏い、怒る。
     そんな怒りのオーラと共に、素早く動いた彼……立ち塞がる晶、レイへと、強力な黒い殺気で襲いかかる。
     黒い殺気は、範囲で以て体力を削り去る……が、回復に徹するユーキが、セイクリッドウィンドでの回復。
     ……流石に今度は、全てを回復しきる事は出来ない……やはり六六六人衆の一人故に、その攻撃力はかなりのもの。
     1対8と言えども、六六六人衆は戦況をほぼ互角にて進めていく……元々の人を喰った様な言葉は、崩れることは無い。
     それで彼は精神的優位に立とうとしていたのかもしれない……しかし、灼滅者も。
    「わたし達は絶対に負けないんだ。そう……絶対に!」
    「……ん……」
     セトラスフィーノに、ユーキがこくこく、と頷く。
     そして……10ターンを軽く経過。
     両者、中々に譲らぬ戦いが続いたが……蓄積されたバッドステータスは、ジリジリと彼の体を蝕んでいて……。
    『はぁ……はぁ……』
     流石の彼も、息を荒げ始める……勿論、灼滅者達も。
    「っ……中々、手強いじゃねーか。こちらも楽しくなってきたぜ?」
     ニヤリ微笑む隼人、そして真弓、レイも。
    「そうですね……このような強敵と戦える事、大変嬉しく思います!」
    「ああ……でも、だからといって負けてやるなんて事はない……タイミングを合わせて、強烈な一撃を叩き込むぞ!」
    「解った……タイミングは任せたぜ!」
     そのレイの言葉に、剣一が頷く。
     そして……レイが真っ正面から突撃、ウロボロスブレイドを真っ正面から打ち据えると……左右より月媛、剣一が斬りかかる。
     左右の一閃が、六六六人衆の腹を切り込み、吹き出る血潮。
     視界が真っ赤に染まり……彼の体がフラリと揺らめいた所に。
    「出力最大ッ、マキシマムシュート!!」
     隼人の渾身のご当地ビームが、彼の体を突き抜ける。
    『っ……う……がぁああ……!!』
     そんな断末魔の叫びが響き……そして彼は灼滅されるのであった。

    ●悪は潰える
     そして……。
    「……ふぅ。全員無事か? ……無事以外の返答は認めねーからな、ったく」
     息を吐きながら、剣一が皆の具合を確認する。
    「大丈夫よー、大丈夫……流石に疲れたわ。でも……まぁ、楽しかったけどね、ふふふ」
     月媛は不敵な笑みで微笑む……それにまた、晶ははぁぁ、と溜息。
    「あれ、晶どうしたのよ? そんな溜息なんてついて」
    「……いえ、何でもありませんよ」
     姉に何を言っても、この心労を理解しては貰えないだろう……そんな事をぼんやり思いつつ晶は微笑む。
     ……とは言え、戦い終わった後の疲労感はとても強くて。
    「しかしよ……しばらく動きたくないな」
    「そうですね……あの人を食ってかかった感じは、いらついてしまいますしね」
     剣一に頷く真弓……そのまま暫し、その場で息を整えるように休息を取る。
     そして……一通り休息を取った後、やっとこ立ち上がれるようになって。
    「さて……と。まぁ無事依頼も完遂した事だし、さっさと帰ろうぜ」
    「そうだね……うん、帰ろうよ、帰ろう」
     隼人にセトラスフィーノが頷いて……そして灼滅者達は、夕方の夕焼けが燃える中、袋小路の公園を後にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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