忌み子の社

    作者:カンナミユ

     その場所は全てのものから忘れ去られていた。
     人々から忘れ去られ、神からも忘れ去られ、朽ち果てていく運命――だった。
     オオオオオオォォォォォ……!!
     忘れ去られたその場所に、青白い炎を纏った獣が訪れた。真っ白な毛の、額に傷を持つ、狼にも見える獣。
     『それ』を知っていたのか、たまたま通っただけなのかは分からない。今にも崩れ落ちそうな本殿の屋根に立つと獣は咆哮を上げた。よく通る、聞くもの全てを威圧する咆哮を。
     ォォォォォォ……
     その声は静寂に包まれた場所を震わせ、『それ』を呼び起こす。
     一息に咆哮を上げた獣は満足したのか、ひょいとその場から飛び去った。
     獣は去り、忘れ去られたその場所に静寂が戻る。
     ――くすくす。
     ――くすくす。
     鎖の重い音がじゃらりと鳴り、幼い声が静かな社に響き渡った。
      
    「スサノオにより、古の畏れが生み出されました……」
     集まった灼滅者達を前に、園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)はそう言うと手にする資料を机に置いた。
    「スサノオは既にその場を去っていますが……畏れは縛られ、留まっています」
     古の畏れを倒して欲しい。それが彼女からの依頼である。
    「俺達に任せてくれ」
     力強いその言葉にありがとうございますと頭を下げた槙奈は資料を開くと説明をはじめた。
     場所は山奥にある古びた神社。拝殿はなく、鳥居と本殿があるだけの小さな神社である。
     近隣の村は廃村となっており、山道や神社は手入れもされず荒れ果てている。
    「現れるのは双子です」
     足枷で地に縛られた二人の名は伊那と阿那。おかっぱで着物を着た幼い、小学校低学年くらいの双子だ。
     茶色の着物に黒帯が伊那、赤の着物に白帯が阿那で外見からは見分けの付かない双子の姉妹に見えるが、伊那は男の子である。
    「珍しいな、男女の双子なんて」
    「この地域では古くから双子は忌み子とされ、生まれた双子は……殺していた、そうです」
     説明を聞く灼滅者の言葉に頷き槙奈は説明するが、それは徐々に弱く、重くなる。伝承に対する彼女の心境が言葉に表れているかのようだった。
     槙奈の説明によれば、その地域では双子が生まれる事が多かった。時代と共にその風習は廃れたものの、消された命は多い。生み出された畏れはそういった双子達の怨嗟が実体化したものだという。
    「伊那は斧、阿那は短刀を持ち、襲ってきます」
     本来なら持つ事すら出来ないであろう巨大な得物は自分の運命を知った双子達が見た恐怖が具現化したものでしょうと槙奈は話した。
     灼滅者達と同じほどの力を持つ二人は幼く無邪気だがヒトではない。怨嗟渦巻く邪悪の塊だ。外見に惑わされれば痛い目を見るだろう。
    「この双子は鎖につながれているんだろ? って事は移動範囲は限られているのか?」
     説明を聞いていた灼滅者達の一人の問いに槙奈は資料をめくり確認をする。
     双子は足枷をしており、地に鎖で繋がれている。神社から出る事はできないが、敷地内を自由に行動できるようだ。
    「スサノオの行方ですが……予知がしにくく、足取りは掴めていません」
     閉じた資料を胸に抱えると槙奈は灼滅者達を見つめ、言葉を続ける。
    「ですが、生み出す畏れを倒せば、いずれ辿り着く筈です。……みなさん、よろしくお願いします」


    参加者
    古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)
    王子・三ヅ星(星の王子サマ・d02644)
    アレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)
    フランキスカ・ハルベルト(フラムシュヴァリエ・d07509)
    村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)
    彩織・竜伍(万色彩光・d20306)
    ヘリヘルス・ヴィルチェ(下弦月・d23415)
    南条・花音(小学生シャドウハンター・d23523)

    ■リプレイ


     煌々と輝く月明かりを頼りに、灼滅者達は山道を歩いていた。
     かつては村人達の手により手入れされていたであろう道は荒れ果て雑草だらけだ。伸び放題の草木をかきわけ、灼滅者達は目的地である神社へと進む。
    「スサノオが生み出した古の畏れ、ね」
     今回灼滅者達が戦うのは、南条・花音(小学生シャドウハンター・d23523)が口にした古の畏れだ。スサノオが生み出した、悲しい風習の犠牲者達である。
    「何ともやりきれない話ではありますな」
     今回が初めての依頼だという花音の言葉に彩織・竜伍(万色彩光・d20306)は言いながら薄灰色の着物に引っかかった小枝を払い、歩を進める。
     この地域では双子は忌み子とされ、殺すという風習があった。時代の流れと共にそれは過去のものとなったが、灼滅者達はスサノオに呼び起こされた双子達の怨念と戦う事になる。
     風習により命を消された悲しき双子達。何ともやりきれない、同情すべき存在だが……
    「だが、だからこそ容赦しない。躊躇もない」
     全力で戦い、その魂を鎮めよう。ざりっと砂利を踏みしめ、村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)の瞳はまだ見えぬ神社を見据えた。
    「再び鎮め元に戻してやらねばなるまい」
    「ええ、祝福を受けられなかった命を繋ぎ止める妄執の鎖、せめてこの剣にかけて断ち切りましょう」
     ライドキャリバー・スキップジャックに跨るアレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)の言葉にフランキスカ・ハルベルト(フラムシュヴァリエ・d07509)も決意と共に騎士剣レオンハルトを握り締める。
     それにしても。ヘリヘルス・ヴィルチェ(下弦月・d23415)は用意してきた登山靴で大きな石に足をかけ、石段を上る。
    「今を生きる者としては、古い慣習の犠牲者をわざわざ蹴り起こすスサノオに、報復してやりたいところだな」
     双子を忌み子と忌避する風習は古い時代にはままある事だと聞いていたヘリヘルスだったが、その犠牲者を畏れとし、呼び起こしたスサノオに対して憤りを感じられずにはいられない。
     神社へと向かう石段を上る灼滅者達の中、王子・三ヅ星(星の王子サマ・d02644)の心境は複雑だった。
    「男女の双子で、何が悪いのさ?」
     現れるのは男女の双子と知り、古の畏れと自分の境遇とを重ね合わせてしまう。双子という存在は昔も今も、苦労する。
    「見えてきたの」
     長い石段を上り、冬の夜だというのに額に汗をかいた古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)の言葉に仲間達は顔を上げた。
     伸びきった草と石段が途切れ、目の前に古びた鳥居と本殿が現れた。手入れもされず、雨風に晒されたこの神社は何組の、何人の子供達の命が消え行く瞬間を見守っていたのだろうか。
     この鳥居をくぐれば幼い男女の双子が現れるだろう。畏れとはいえ、幼い子供を手にかけるという事に灼滅者達の胸にそれぞれの思いがよぎるが――
    「外見に惑わされるなんて、そんな心配は要らないの……どうせ、わたしも同じようなものなの」
     自嘲気味に呟き、ふっと落ち込むように視線を落とした。どこか危ういその表情を浮かべるそんな智以子は、この春で中2である。
     今にも崩れ落ちてきそうな鳥居をくぐると仲間達も続き、境内へと足を踏み入れた。
     

    「こっちこっち!」
    「まってー」
     じゃらじゃらと重い音を伴い、幼い声が響き渡る。灼滅者達は身構え、周囲を見回すが、
    「……あァ、いましたね」
     気付いた竜伍はすい、と指差した。
     指差す先には月に照らされた小さな本殿。その周りを幼い子供達が走っているではないか。エクスブレインが説明したように、足枷で鎖に繋がれたおかっぱ頭の双子。
     茶色の着物に黒帯の伊那と赤の着物に白帯の阿那。スサノオが生み出した古の畏れ。
     二人はきゃあきゃあとはしゃぎながら、ぐるぐると追いかけっこをしていたが――ぴたりと阿那の足が止まる。
    「ねえ、いっしょにあそばない?」
     歳が近いと思ったのか、くりっとした瞳で見つめた花音に声をかけてきた。仲間達と並ぶ花音はきょとんとして自分を指差す。
    「わたしと?」
    「うん!」
    「だめだよ、あな。しらないひととあそんじゃだめだって、ととさまが――」
     花音に、灼滅者達の元に駆け寄ろうとする手を伊那は握り、大きな人影を前に言葉が止まると幼い顔がくしゃりと歪んだ。
    「おとなだ」
     隠れなきゃと手を引き二人は建物の影に隠れてしまう。どうやら背の高い者が大人に見えたようだ。
    「大丈夫、怖くないから出ておいで」
     物陰に隠れる双子に三ヅ星が優しく声をかけると二人はひょこりと顔を出す。が、大柄なアレクサンダーと目が合い、さっと隠れてしまった。
    「私達、大人じゃないの」
    「……ほんと?」
    「本当だ。わしらと遊ばないか?」
     フランキスカの言葉に阿那が反応し、しゃがんで目線を合わせたアレクサンダーの言葉に伊那も反応した。双子はひそひそと言葉を交わし、物陰から飛び出す。
    「あそぶ!」
    「いっしょにあそぼ!」
     無邪気な声で双子は灼滅者達の前に駆け寄り、しゃがむと自らの影に触れ、ずるりと何かを掴み上げた。
     子供はおろか、大人でさえも扱うのに苦労しそうな巨大な斧と短刀。短刀とは言うがもはや刀に近い。それらを二人は軽々と持ち上げる。
     自分達の命を消したその得物を手に遊ぼうと無邪気に声を上げる双子を前に、感情を消した智以子がオーラを纏い武器を手にすると仲間達も武器を手に取り構えた。
    「死線の果てに、雷刃を」
     硬い言葉と共にばちりと音を立て、ヘリヘルスの両手足から紫の電流が走る。隣に立つ昌利も指貫きの黒グローブを嵌めた。
    「……さて――遊ぼうか」
     手首を軽く揉みながら昌利は目の前に立つ双子――ヒトの形をした畏れへと目を向ける。
     ぎらりと瞳を輝やかせ、古の畏れは灼滅者達へと飛びかかった。
     

    「みんなであそぼ!」
    「まけたらくびはねちゃうぞ!」
     甲高い笑い声と共に二人の刃が灼滅者達へと襲いかかった。
    「させるか!」
     がつん! 紫電を放つヘリヘルスの腕が手が刃となり火花を散らす。三ヅ星と昌利に向けられた攻撃を彼女と共に防いだアレクサンダーは受けた強さに二人は立ち位置を把握した。
    「クラッシャーか。……三ヅ星」
    「任せて!」
     左手にロッド・ミカヅキを、右手にクルセイドソードを構えた三ヅ星は盾を手に前に立つアレクサンダーを横切り右手を閃かせるとオーラを纏い昌利も斧を構える伊那へと殴りかかる。
    「あはは、こっちこっち!」
     小柄な体を活かした伊那は昌利の拳をひらりと避け、続く竜伍の拳を、花音が生み出す氷の炎を続けて巨大な斧で受け止める。三ヅ星の攻撃を受け、腕から血を滲ませるが気にする気配は無かった。
    「なかなかやりますな」
    「まだこれからだ」
     拳を防がれ肩をすくめる竜伍にアレクサンダーは声をかけ、跨るスキップジャックと共に攻撃する。ライドキャリバーには後衛を任せるつもりだったが、騎乗している以上、自分と同じ立ち位置になってしまうが仕方がない。
    「疾く征きて守護の盾となれ!」
     ヘリヘルスと共に手にするデストラ=テネレッツァを使い仲間達を癒し、守りを固めると表情を消した智以子の影が伊那目掛けて襲い掛かる。
    「そんなかおしないであそぼ!」
    「ねえあそぼ!」
     足元に立て続けに絡みつく闇を跳び避けると三ヅ星と昌利が伊那めがけて地を蹴った。
     人々から忘れ去られた神社に人と、人でないモノとの戦いの音が響き渡る。拳が振り下ろされ、刃が火花を散らした。
    「なかなかしぶといじゃん」
    「そうですね」
     手にする武器を影に納める花音とフランキスカが言葉を交わす。
     その幼い体を竜伍の放つ影がざくりと切り裂き、花音のクルセイドスラッシュもえぐったというのに、伊那はまだ余裕なのだ。
    「だが、どうにかなるだろう」
     ヘリヘルスの言葉に二人は頷き視線を畏れへと向ける。無邪気な、それでいて邪悪な顔の双子は足元の影をゆらりと揺らし、灼滅者達へと襲いかかった。
    「こわーい! おとなこわいのー!」
    「ころされちゃうよー!」
     避ける暇はなかった。笑い声と共に二人の影は三ヅ星と智以子を飲み込んだ。
    「……!」
     暗闇に飲まれ、智以子の消えた表情がぐらりと揺らぐ。
     目の前に見えるのは数え切れないほどの幼い双子達。ある双子は涙する両親の、またある双子は見知らぬ大人達の手により小さな命が消えていく。
     その光景に失われた双子の姉が何故か、被る。
    「大丈夫ですか?」
     仲間達が攻撃を続ける中、フランキスカからの癒しによりその姿はふつりと消える。無言で頷き智以子は畏れ達へ視線を向けた。
     灼滅者達の立て続けの攻撃を受けた伊那はふらりとよろめき姿勢を崩す。
    「いな!」
     声をあげて阿那が駆け寄ろうとするが、灼滅者に阻まれてしまう。
    「これで最後だぜ!」
     昌利、竜伍の攻撃を避ける事ができなかった。ざっくりとえぐられ血を流す伊那に花音の一撃。
    「あな……」
     ぐしゃりと倒れ、血に濡れる手が伸びるが、駆け寄る阿那が触れる前に限界を迎えてしまう。事切れ、その姿はざあっと消えていく。
    「いな! いな……!」
     ぼろぼろと大粒の涙を零し、阿那は泣きじゃくる。
     一人となった阿那はそれでも灼滅者達と戦う事を止めなかった。手にする短刀を振りかざし、向けられる攻撃を受けた。
     畳み掛けるべく攻撃に専念する昌利と共に仲間達も手を緩めない。立て続けの攻撃に阿那は戦い続けたが、この人数差では長い時間、戦い続ける事は不可能だった。
    「いたいよ! いたいよ! ととさま! かかさま!」
     灼滅者達の攻撃を受け、その痛みと苦しみに涙し嗚咽する幼い少女。その姿に心のどこかがちくりと痛む。
     ――だが。
    「大丈夫さ。長く続いた苦しみもこれで――終わる」
     スサノオにより呼び起こされた双子達の怨嗟。長くこの地に眠っていたそれを今、この場で、断ち切ろう。
    「すべての憂いを……祓い放つ!」
     自分の境遇と悲しい運命を背負った子供達を重ね合わせ三ヅ星がミカヅキを叩きつけると昌利、竜伍も拳を振るい、影の鞘から抜いたクルセイドソードで花音も切りかかる。
     限界が近いのか、ふらつく阿那は攻撃を避ける事ができない。アレクサンダーの攻撃を受け、がくりと膝を突く。それでも何とか立ち上がった。
    「いたい……いたいよ……」
     がらんと得物を地に落とし、阿那は泣きじゃくった。白い帯は赤い着物と見分けがつかないほど真っ赤に染まり、刻まれた箇所からぼたぼたと血が零れ落ちる。
    「祓魔の騎士・ハルベルトの名に於いて、汝を解放する」
     フランキスカは悲しき畏れの前立つと鞘に収まる剣の柄に手をかけた。
    「天へ還るが良い」
     一閃。
    「……かか、さま」
     嗚咽を体ごと騎士剣が斬り伏せる。幼い子供はその一撃を受け、その姿を消し去ると辺りは静寂に包まれた。
     

    「……ふむ」
     古の畏れは灼滅者達の手により無事に鎮める事が出来た。
     戦いを終え、アレクサンダーはスサノオの痕跡がないか調べていたが、手がかりになるものは見つからなかった。それでもと周囲を見回すが成果は上がらず、切り上げて仲間達と神社の片付けを行う事にした。
     スサノオの足取りを掴む事は出来なかったが、エクスブレインが話したようにいずれ分かる日が来る。
    「駄目だ、南条さん! それ以上やると壊れてしまう!」
    「大丈夫っ! これくらいじゃ壊れないよっ!」
    「いやいやいや、もう駄目だ!」
     べきょり、と派手な音が被ったヘリヘルスと花音の声に数人が振り返る。……まあ、多分、大丈夫、だろう。
     いや、大丈夫ではなかった。
    「危ないっ!」
     不意に降ってきた大きな枝からアレクサンダーと竜伍がヘリヘルスを庇い、昌利が枝を打ち落とす。
     か弱い少女を守る騎士のような男達に、無事かと訊かれても彼女は鮮やかな青の瞳を見張ったまま。
     しばらくぽやっとしていたが、はっとしてぶんぶんと首を縦に振りながら無事だとだけ伝える。
     改めて全員で清掃し、荒れ果てていた神社は綺麗になり、戦闘の形跡もほとんどなくなった。
    「まあ、お神酒よりはこっちの方がイイっすかね?」
     子供に酒は早いだろうと用意したのは甘酒二人分。それに饅頭二つと鞠、人形が一づつ。古びた本殿に昌利が置くとヘリヘルスもお供えを置いた。
    「この地に眠る全ての魂に、安らかな眠りの訪れん事を……」
     弔花を手向け、フランキスカが祈りを捧げる中、子供達を弔う品々に黄色く細長い花弁の花が智以子の手により添えられる。神社の近くにあった木から手折ってきた、小さな花。
    「可愛い花だな」
    「蝋梅っていってね、花言葉は、『優しい心』なの」
     ヘリヘルスの言葉に答え、智以子は手を合わせる。
     何の罪もなく奪われた命。次に生まれて来る時は、こんな形でなく、優しい心の人になってもらいたい。
     灼滅者達はしばし、子供達の為に手を合わせ、冥福を祈る。
    「……スサノオに感謝すべきなのかもしれませんな」
     ぽつりと言う竜伍の言葉にアレクサンダーと花音が顔を向けた。
     善悪関係なく強い想いを残して死んだ者の想いを叶える存在というものがいると何かの本で見たという。人々から忘れ去られた地の双子に仮初の『生』を与え、記憶に残るようスサノオが会わせてくれたのではないだろうか。
    「少なくとも俺の記憶の中には二人の存在が刻まれましたから」
    「俺達、だろ?」
    「……あァ、そうでしたね」
     昌利の言葉に竜伍は言いながら記憶を残す仲間達へと視線を向けた。
     やるべき事は全てした。これ以上ここに留まる理由はない。灼滅者達は神社に背を向け鳥居をくぐろうとすると、
     ――あな、みんながいこうって。
     ――うん! いく!
     嬉しそうな声。すると、どこからともなく沢山の子供達の笑い声が降り注ぐ。
     ――ととさま! かかさま!
     その声に思わず三ヅ星は振り返ると――本殿に供えたものが消えていた。
    「もう大丈夫そうですね」
    「そうだね」
     仲間達と共にその光景を目にしたフランキスカの言葉に三ヅ星は応えると、神社へ挨拶するようにはにかみ、後にする。
     灼滅者達は去った後、古びた神社に双子が現れる事は二度となかった。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 7
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