赤き爪のスサノオ~幸福の貸衣装~

    作者:日向環


     開け放たれた障子の向こうに見える庭に、陽は柔らかく降り注いでいた。
     優しい風が、静かに部屋に流れ込んでくる。
     広い和室の奥に、豪華な着物が陰干しされていた。
    「見事な着物ですね」
    「村長さんのところからお借りしてきました。先々代のお嫁入りの時のものとか。倉に仕舞い込んでいたそうなのですけど、うちの娘に着てもらえるなら是非にと」
    「まあまあ、そうですか」
     隣の部屋から話し声が聞こえてきた。襖で仕切られた向こうは、だいぶ賑わっているようだ。
     冷たい風が、庭先へと流れ込む。
     風は渦を巻き、その中心に全身が真っ白な毛で覆われたケモノが出現した。その姿は、ニホンオオカミに似ている。瞳は血のように赤く、爪も毒々しい赤色をし、立派な二本の尾を持っていた。白き毛は、炎のようにゆらゆらと揺らめいている。
     ケモノの赤い瞳は、陰干しされている着物を見詰めていた。
     隣の部屋で歓談している者たちは、ケモノの存在に気付いていない。
     赤き爪を持つ白きケモノは、縁の下に向かって、ほうと吐息のようなものを吐くと、一陣の風となって庭先から消えてしまう。
     冷たい風が和室へ流れ込み、陰干しされていた着物の袖を揺らした。
     ゆらゆら、ゆらゆら、袖が揺れる。
     袖口から何かが覗く。
     細くしなやかな、それは女性の「手」だった。


    「いゃぁぁぁ。怪談、嫌い~~~っっっ」
     自分で語っておきながら、両耳を塞いでいやいやをしながら悲鳴を上げているのは、木佐貫・みもざ(中学生エクスブレイン・dn0082)だ。が、いつまでも怖がっていては先に進めない。
    「……こほん」
     気を取り直し、事件の説明を始めるようだ。
    「結婚式に着る着物を、村長さんのところから借りてきたらしいのだ」
     村一番の器量よしと言われている娘さんの結婚式に花を添えようと、村長さんが倉で眠っていた着物を貸し出してくれたのだという。それはそれは、見事な柄の着物らしい。
    「せっかくのご厚意だからと、お借りすることにしたらしいのだ」
     問題なのは、その着物に「憑いているもの」だという。
    「この前も出てきた、赤い爪のスサノオが、その着物に憑いていたものを目覚めさせちゃったのだ」
    「小袖の手」と呼ばれる妖怪らしい。
    「袖口から伸びてくる、細い女性の手だけの妖怪なのだ。このまま放置しておくと、着物を着ることになる娘さんがとっても危険なので。早々に退治して欲しいのだ」
     着物は、少々厄介な場所にある。
     古い民家の庭に面した部屋で、陰干しをしているのだが、家の人がいるのでおいそれとは近付くことができない。
     何か理由を考えて、その家に近付く必要がある。
    「小袖の手は、女の子が着物に近付いて、袖を覗き込むと出てくるのだ」
     小袖の手自体はそれ程強くないという。着物が陰干ししている部屋に入る口実を考えることの方が、実際問題として難しいだろう。
    「由緒ある着物らしいので、その辺をネタにして何か理由をでっち上げちゃえばいいと思うのだ」
     けっこうな無茶振りのような気がする。
    「小袖の手は、手をびょ~~~んと伸ばして攻撃してくるのだ。イメージ的に、ウロボロスブレイドっぽい動きなのだ」
     注意すべき事がひとつある。
    「着物の方は全く関係ないので、着物を攻撃しては駄目なのだ。着物が汚れたり、破れたりしたら、たくさんの人が悲しむのだ」
     着物から伸びている「小袖の手」だけを攻撃しなければならない。
    「ちょっと面倒な依頼だけど、頑張ってきて欲しいのだ」
     戦闘そのものより、他のことに色々と注意を払わねばならないようだ。
    「せっかのなので、いとこのお姉ちゃんから教わった猫の怨念の怪談を披露するのだ」
     自信満々の笑みを浮かべる。何が「せっかく」なのか、ちっともよく分からない。
     おどろおどろしい口調で、語り始める。
    「階段に……猫が……おんねん……」
    「…………」
    「…………」
    「…………」
    「あ、あれ? みんなどこ行くの? ねぇ!」
     亀の呪いの話をしたいのにと、ブツブツ言ってるみもざを教室に置き去りにして、灼滅者たちは真面目に依頼の相談をすべく、場所を移すのだった。


    参加者
    東当・悟(の身長はプラス十センチ・d00662)
    如月・昴人(素直になれない優しき演者・d01417)
    紀伊野・壱里(風軌・d02556)
    梓奥武・風花(雪舞う日の惨劇・d02697)
    一色・朝恵(オレンジアネモネ・d10752)
    エール・ステーク(泡沫琥珀・d14668)
    月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)
    音森・静瑠(小学生サウンドソルジャー・d23807)

    ■リプレイ


    「おお、凄い……」
    「庭ひろっ!」
     村長さんのお屋敷の門の前で、如月・昴人(素直になれない優しき演者・d01417)と紀伊野・壱里(風軌・d02556)は、思わず声を漏らした。
     由緒正しき門構えの向こうには石畳が伸びていて、そのかなり先に大きな曇り硝子の玄関扉が見える。
    「庭に、ぜったい池があるよね」
    「錦鯉が泳いでると思うの!」
     エール・ステーク(泡沫琥珀・d14668)が呟けば、一色・朝恵(オレンジアネモネ・d10752)が応じた。朝恵の頭の上には、ナノナノのなー様が乗っかっている。
    「とにかく、まずは村長さんとお話をしましょう」
     門の前で、いつまでもうろうろしていたら不審人物だと思われてしまう。梓奥武・風花(雪舞う日の惨劇・d02697)はインターフォンのブザーを押すと、応対に出てくれた女性に自分たちが来訪した理由を簡単に説明する。
     玄関がガラガラと開かれ、中年の女性が姿を見せると、こちらに向かって小走りにやってきた。
    「庭の方へどうぞ」
     インターフォン越しに応対してくれた女性の声だ。
     灼滅者たちは案内されるまま、庭へと足を向ける。
     さほど豪華ではないが、よく手入れされている庭だった。予想通り池があり、見事な錦鯉が悠々と泳いでいる。
    「10匹もいました!」
     数を数えたらしい音森・静瑠(小学生サウンドソルジャー・d23807)が、小声で報告してきた。
     村長さんは縁側に腰掛けて、皆を待っていてくれた。
    「武蔵坂学園の生徒さんとか?」
     優しそうな、初老の村長さんだった。頭髪は多いが真っ白で、長い眉毛も白かった。これで白い顎髭でも蓄えていたら、どこぞのご老公様である。
    「初めまして。武蔵坂学園歴史研究クラブの東当悟って言います。いきなりすんません」
     東当・悟(の身長はプラス十センチ・d00662)が頭を下げると、続いて皆も礼儀正しくお辞儀をした。
    「各地の風習調べて回ってるんですけど、村の話聞かせて貰えませんやろか」
     いきなり着物の話をしては怪しまれる。多少遠回りすることにはなるが、まずは無難な話から始めるのが得策だ。
    「まずは年中行事からお願いします。一月の行事は何がありますやろか」
     悟が話を向ける。
     村長さんが語り始めると、風花とエールが熱心にノートに取り始めた。月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)」もメモ帳を開き、傍らに辞書も準備する。
    「正月あけたらお雛さん出すとこもあるって聞いた事ありますけど、ここはどうです?」
    「15日を過ぎた大安に出し始めるところが多いですかな」
    「なるほど、なるほど」
     笑顔で愛想良く、悟が相槌を打つ。
     悟が話の舵を取らないと、村長さんの話はすぐに脱線してしまう。けっこう話し好きの村長さんらしく、尋ねもしないのに村の古い風習についても語ってくれた。
    「大丈夫、分かるかな?」
     村長さんはエールと静瑠に笑みを向けた。小学生にも理解できるようにと、難しい言い回しを避けたり、時々注釈を入れてくれたりと、気を使ってくれている。
    「先程、外から拝見したのですが、裏に見事な倉がございますね」
    「倉とは名ばかり。今では、ただの物置です」
     風花が倉の話を持ち出すと、村長さんは、かかと笑った。
    「親王飾りの服は結婚式の衣らしいけど、こちらの結婚式の衣はどんなんです?」
     さて、いよいよ本題である。悟がさりげなく水を向けた。
    「あの、この村の結婚式ってどんなの? この村独特の儀式とかあるのかな?」
     エールが尋ねると、村長さんは目を細めた。
    「結婚式のお着物は、白無垢、黒引き振りそで、色打掛なんかがあるらしーの!」
     事前に予習してきた朝恵が。メモ帳を開いて目をキラキラさせている。
    「いやいや、ここは独特のしきたりはありません。ごくごく普通の神前式です。……そうそう。近々ご結婚される娘さんがいらしてね。この村一番の器量よしの娘さんです。披露宴で着て貰おうと、倉に眠っていた着物をお貸しすることにしたんですよ」
    「その着物、拝見できませんか?」
     少し遠慮がちに、紀伊野・壱里(風軌・d02556)が尋ねた。ようやく本題に入れたわけだが、ここで慌ててはいけない。
    「手縫いで施されたであろう模様がどんな物なのかも、写真で見るのと実際に見るのでは質感とか全然違うと思うし」
     可能ならば、この目で見てみたいと。
    「さぞ豪華なんやろな。実物見たいで」
    「着物にも歴史があると思います。実際に、その着物を見て、写真に収めてみたいです」
     悟が畳み掛けると、風花もカメラを取り出した。
     巴も、クラブで行う研究発表のために由緒ある着物を調べているので、その題材に使わせて欲しいと頼み込む。
    「色んな結婚式のお着物があるけど、あんまり見ないから、すごく気になるの! ぜひぜひ取材してみたいの!」
     朝恵が無垢な眼差しでお願いすると、村長さんはちょっと困ったような表情をした。
    「見せてあげたいのは山々なんですが、さっき申した通り、その着物はお貸ししてしまって、今この家にはないのです」
    「着物を貸してるお家に、着物を見に行く子たちが居るって連絡してもらえない?」
     少し強引だが、こんな強引なお願いは子供の特権だ。エールのしたたかな作戦である。
     村長さんは考え込んでしまった。
    「いいんじゃないですか、お義父さん。ちょうど陰干ししているところでしょうから、見ていただくのにもちょうど良いタイミングだと思いますよ。あちら様も快諾してくださるでしょう。勤勉な学生さんたちのために、一肌脱いで差し上げたらどうですか?」
     先程の中年の女性だった。どうやら、この家のお嫁さんらしい。とてもナイスな援護射撃だ。
    「うむ、そうだな。ちょっと待っていなさい」
     村長さんはそう言い置くと、屋敷の奥へと引っ込んでいった。


     村長さんの口添えで、着物を貸し出しているお宅に、すんなりと訪問することができた。
     灼滅者たちが訪ねると、ふくよかな中年女性が出迎えてくれた。花嫁さんのお母上らしい。
     花嫁さんが外出中だったこともあり、訪問するとすぐに、着物が陰干ししている和室へと通された。
    「それはそれは見事な着物ですよ。どうぞ、心ゆくまでご覧になってください。お茶の用意をしておきますので、終わりましたらお声をかけてくださいね」
    「いえいえ、どうぞお構いなく」
     こちらがかえって恐縮してしまうほどの歓待ぶりだ。
    「鶴かなぁ……鶴だといいな」
     壱里が思わずわくわくしながら、部屋へと足を踏み入れる。
    「……じゃなくて古の畏れ退治でしたよね」
     本来の任務を忘れそうになっていたので、思わず苦笑い。
    「怪談が実体化……まるで一昔前の学園ホラードラマだね」
     昴人はそう独りごちる。「古の畏れ」というだけあり、まるで各地の怪談話のような存在だ。スサノオらは、果たしてこれをきっかけに何を目論んでいるのか。
    「これは……とても綺麗な着物ですね……」
     静瑠が感嘆の声を漏らす。朝恵は声も出ない。
     翼を大きく広げ、飛翔している丹頂鶴は見事としか言いようがない。松や牡丹が鮮やかに彩りを添えていた。
     鶴は幸福を、松は繁栄を、そして牡丹は美と富を願うとされている。
     思わず溜息が零れた。
    「大切なハナヨメさんのお着物だものね! しっかり守って、シアワセな結婚、してほしいの!」
     朝恵が決意の声を上げた。
     そうだ。いつまでも見取れているわけにはいかない。
    (「また、凄いものに憑いたね……大切なモノだから汚さないように注意しないと」)
     エールは慎重に自らの立ち位置を選ぶ。戦闘で、この着物を傷付けてしまうわけにはいかない。
     悟が持参した大きめのビニールシートを、畳の上に敷いた。畳を汚さないようにするためだ。
    「それじゃ、始めるか」
     昴人は伊達眼鏡を外すと、それを握り締めて破壊した。スレイヤーカードに封印されていた力が、解放される。砕けた破片は、スレイヤーカードに吸い込まれていく。
     壱里がサウンドシャッターを展開した。準備完了だ。
     古の畏れ「小袖の手」は、女性が袖口を覗き込むと現れるという。
     覗き込むのは、風花の役目だ。普段から喪服姿の彼女は、実は着物自体が好きなのであった。なので、今回の事件に関しては並々ならぬ意気込みがあった。それに、素敵な婚礼衣装を傍で見られるチャンスだ。
    「なんか、わくわくしてないか?」
    「……」
     気のせい、気のせい。その証拠に、表情は普段と変わりないじゃないですか。
     とても鋭い男性陣のツッコミを背中で聞き流し、風花は着物へと近寄っていく。
    「どういう構造になっているのでしょう?」
     どうしても興味の方が先行してしまう。
    「……何も出てきませんね」
     慎重に袖を覗き込むが、何か出てくるような気配がしない。
     何故か背後が騒がしい。「うしろー! うしろー!」と叫んでいるような気がする。
     ちょん、ちょん。
     左肩を突かれた。
    「はい? ……」
     こんにちは。
    「あ、はい、こんにちは。って!?」
     風花の目の前に、「小袖の手」が。
    「反対の袖から出てくるなんて、聞いてません!!」
     してやったりと、「小袖の手」はサムズアップ。意外とお茶目さんだった。


     武蔵坂学園スナイパー部隊が、即座に武器を構えた。
     ターゲットとなる「小袖の手」に確実に攻撃を当てるため、4名のスナイパーを配置したのだ。
    「さて。……遊ぼう、僕と」
     巴が狙いを定めた。
     風花の体に巻き付こうと腕を伸ばしていた「小袖の手」に、悟の黒死斬が命中する。エール、巴の攻撃が次々と命中していく。
     その間、朝恵は予言者の瞳を使用して、自らの命中率を高める。
    「幸せな結婚式、その邪魔はさせません!」
     風花がスナイパーのポジションに下がると、なー様が彼女がいた位置にふよふよと移動してきた。
    「小袖の手」が、再び腕を伸ばしてくる。狙いは風花のようだ。
     だが、壱里がその攻撃を通させない。WOKシールドで「小袖の手」を弾く。
     更に彼らを援護するべく、昴人と静瑠が癒しの矢を放って味方の命中率を上げていく。
    「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
     巴は「小袖の手」を挑発するようにゆっくりと移動しながら、細い腕に狙いを定めて鬼神変を叩き込んだ。
     たまらず、「小袖の手」は着物の中に引っ込んだ。だが、直ぐさま反対側の袖から飛び出すと、腕を目一杯伸ばしてぶんぶんと振り回してきた。
     後衛陣がその攻撃に晒されるが、威力が分散してくれたので、大したダメージは受けなかった。
     反撃とばかりに集中攻撃。「小袖の手」は身を守るべく、自らの腕に腕を絡め始めた。
     しかし、それは朝恵が許さない。彗星の如き放たれた矢が、「小袖の手」の守りを打ち砕く。
    「小袖の手」は、しつこく腕を伸ばして攻撃してくる。
    「お前の動きは見切った」
     開戦当初から動きのパターンを観察していた壱里は、完全に「小袖の手」の動きを読み切っていた。
     伸びきって無防備になった腕に、シールドバッシュを叩き込む。直後、エールのデッドブラスターが直撃する。
     瀕死の「小袖の手は」見境がない。闇雲に腕を振り回す。
    「あかん、着物が!」
     悟が飛び込む。「小袖の手」が着物に触れる寸前、悟が身を挺してそれを受けた。
    「折角のおめでたい話に、折角の綺麗な着物があるというのに、理不尽な不幸が起こるのを認めるわけにはいきません!」
     静瑠の放ったシールドリングが、悟の身を守っていた。
     巴の持つマテリアルロッドの先端が、「小袖の手」の手の甲にそっと触れる。
    「―――おやすみ」
     注ぎ込まれた魔力が爆散し、「小袖の手」は光の粒子となって飛び散る。
     チャラリという音がして、着物の中に隠れていた鎖が畳の上に落ちた。
     この鎖の先に、もしかするとスサノオが――。
     壱里が手を伸ばしたが、彼が触れるよりも先に、鎖はまるで初めから存在していなかったかのように、唐突に消滅してしまった。


     手早く後片付けを済ませると、一同は早々にお暇することにした。
     土産にスマホで着物を撮影し、悟はほくほくして部屋を出る。
    「うん。似合いそうや」
     思わず笑顔が零れた。
     昴人が念入りに着物の汚れをチェックする。
    「頼む」
    「はい、お任せください」
     念のためにと、静瑠がクリーニングを施した。
    「腕だけじゃなくて本体が見たかったなぁ」
     壱里がちょっと残念そうだ。いや、腕そのものが本体だと思う。
    「しかしスサノオの落し子とは2度目の対峙だけれど今回も鎖、地面に繋がってるのかね?」
     だとしたら、古の畏れは大地に縛り付けられているということなのか。それを解き放ったら、いったいどうなるのだろうか。壱里の興味は尽きない。
    「ところで……猫が……おんねん……は無いですよね」
     思い出したように、静瑠がクスリと笑う。エクスブレインがぶちかました、くだらないダジャレだ。本人は怪談話のつもりだったらしいが。
    「あれはないな」
     昴人が応じた。
    「おんねんがおんねん……」
     リアクションに困ると、エール。
    「いやぁ、場を和ませようと放った台詞に罪はないだろう」
     巴は笑いを堪えていた。
    「最後まで聞く奴がどこにおんねん……」
     悟も苦笑い。
    「亀の呪いって、のろい、だったんでしょうか……」
     聞き逃した怪談の方も、ちょっと気になる風花だ。
    「ねこさんとかめさんのおんねん……のろい……は、コワいのかなって思ったけどそんなことなさそうな気がするのよね! フシギ!」
     感心する朝恵。ふむ、それもまた才能か。
    「みもざさんすごい」
     ちょっと棒読み気味の壱里だった。

     一同が部屋から出ると、若い綺麗な女性が出迎えてくれた。噂の花嫁さんだ。
     道化師よろしく、巴が慇懃に一礼する。
    「お嫁さん、シアワセになれるといいの! ね、なー様!」
     なー様を抱き締めたまま、朝恵がキラキラした目を花嫁さんに向けた。
    「ありがとう」
     とても嬉しそうに花嫁さんは笑うと、くらげちゃんのぬいぐるみを抱いているエールにも、優しい笑みを向けた。
    「素敵な結婚式になると良いですね」
     風花の言葉に、花嫁さんは、はにかんだような笑みを浮かべた。
    「お茶の用意ができてますから、こちらへどうぞ」
     花嫁さんは、一同を居間へと招いてくれた。
    「よかったな」
    「よかったですね」
     灼滅者たちは、小さく囁き合う。
     花嫁さんの幸せを守れたのだと思うと、とても誇らしかった。

    作者:日向環 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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