猫神様の祟りじゃあ!

     フィア・レン(殲滅兵器の人形・d16847)は、こんな噂を耳にした。
     『巨大なにゃんこ(5m)が作物を荒らしている』と……。
     このにゃんこは都市伝説で、過疎化が進んだ村の畑を荒らして、村人達を困らせているらしい。
     そのため、村人達は『……あれは熊だ。冬眠が出来なかった熊に違いねぇ』、『いんや、あれは猫神様だァ。きっと、オラがお供えモンを食っちまった事に怒って……。ううっ、すまねぇ、すまねぇだァ!』、『何が猫神様だァ! あれは村を脅かす化け物だァ! ま、間違いねえ。オラが猟銃でぶっ殺してやるゥ!』と言う結論に至って、戦いを挑んでする。
     しかし、猫パンチで一発。たった一発で病院送り。
     それでも、村人達は畑を守るため……、村の平和を取り戻すため……、都市伝説に攻撃を仕掛けて、返り討ちにされているようだ。
     しかも、都市伝説を慕っているのか、能力的なものなのか、何処からともなく猫がゾロゾロ。『ここが僕達の楽園にゃ!』と言わんばかりに、都市伝説を守っているらしい。
     都市伝説自体は大きいため、すぐに見つけ出す事は可能だが、まずは村人達の説得、猫達の排除が必須。
     後は猫パンチやタックルに気をつけつつ、都市伝説を倒す事が出来れば、村に平和を取り戻す事が出来るはずである。


    参加者
    廿楽・燈(すろーらいふがーる・d08173)
    九条・雪音(紅玉姫・d16277)
    フィア・レン(殲滅兵器の人形・d16847)
    天草・刃(イクリプス・d17124)
    ルナエル・ローズウッド(葬送の白百合・d17649)
    ソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)
    カノン・アシュメダイ(アメジストの竜胆・d22043)
    天道・雛菊(天の光はすべて星・d22417)

    ■リプレイ

    ●猫神村
    「犬の次は猫、ねぇ。動物は長生きすると化けるって聞くけれど神様ではない、わよね? 猫と言ったら鍛冶が媼とかが妖怪だと有名だけど……。猫の神様だと何がいるのかしら……?」
     ルナエル・ローズウッド(葬送の白百合・d17649)は、仲間達を連れて都市伝説が確認された村に向かっている途中で疑問を口にした。
    「少なくとも、村に奉られていたのは、守り神だったようですね。数百年前に、村長の家で飼われていた猫が騒いだおかげで、村人達が洪水の被害に遭う前に、高台まで避難する事が出来たのがキッカケで、猫神様が奉られるようになったようですが……」
     カノン・アシュメダイ(アメジストの竜胆・d22043)が、村についた書かれた新聞記事の切れ端を片手に答えを返す。
     この記事がキッカケになり、村興しの一環として、猫神様のグッズ展開等も行われていたようだが、大失敗! 多額の借金を背負う事になり、当時の村長が自ら命を絶ったようである。
     それ以降は『何が村の守り神だっ! 単なる疫病神じゃねえか』というイメージが強くなり、お参りしているのは極一部で、ほとんど見向きもされなくなっていたようだ。
    「……とは言え、もし本当の猫神様がいたとしたら、祟り扱いされるのは悲しいだろうな」
     天道・雛菊(天の光はすべて星・d22417)は、思った。
     猫神様が本当に村の守り神であるのなら、この事態に心を痛めているはずだと……。
     もちろん、それは村人達が自らの利益を得るため、村の守り神である猫神を利用した事に対して、腹を立てていなければの話だが……。
    「……猫……もふもふ……」
     フィア・レン(殲滅兵器の人形・d16847)の頭の中は、もふもふでいっぱいになっていた。
     村が近づくにつれ、増えていく猫達。
     思わずダイブしてしまいたくなるほど、集まっている猫達。
     そんなパラダイスの主である事を示すようにして、都市伝説がずどーんと座っていた。
    「あれが噂の巨大にゃんこ……! ……かわいい……っ!!」
     廿楽・燈(すろーらいふがーる・d08173)は、ウットリとした。
     可愛らしさだけを残し、サイズを大きくして、もふもふ感を倍増させたような姿。
    「また随分と愛らしい都市伝説だな、倒すのが少々忍びないが、仕方ないか」
     そう言って天草・刃(イクリプス・d17124)が、恋人であるレンの頭を撫でる。
     無茶はするな、と言葉を添えて……。
    「お、お前ら! それ以上近づくでねえ。死にてえのか」
     薄っすらとハゲた村人が警告にやってきた。
     その途端、まわりにいた猫達が都市伝説を守るようにして集まり、『シャーッ!』と鳴き声を響かせて全身の毛を逆立てた。
    「村の為にもこのまま放っておくわけにはいきませんね!」
     ソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)が、覚悟を決めた。
    「だから、やめろって! お前達で勝てる相手じゃねえ」
     慌てて村人が行く手を阻む。
    「おっきい猫さん。……悪い事をしてなければ、こころゆくまでいっぱいもふもふしたんだけど、な……。とっても残念なの。……残念だけど、倒さないと、ね」
     しかし、九条・雪音(紅玉姫・d16277)の気持ちは変わらなかった。
     仲間達も同じ気持ちだったのか、村人の制止を振り切って、都市伝説の前に立った。

    ●猫の群れ
    「ちょっと待てぇ! おらが言っている事が分からねえのか」
     薄っすらとハゲた村人が、大声をあげて騒ぎ始めたため、まわりにいた村人達も集まってきた。
     だが、まわりに村人達が集まってきたおかげで、殺界形成を使うのに都合が良くなった。
    「私達は猫神様を鎮めに来たの」
     ルナエルの言葉に、髭面親父がイラッとした。
    「おいおい、寝言は寝てから言いやがれ! 俺が猟銃でバァーンとやっても、アイツの猫パンチで一発さ。ほうれ、この木を見て見ろ。弾の跡が残っているっぺ!」
     髭面親父が興奮気味に、近くの木をバンバンと叩く。
    「いや、正しくもてなしてあげれば、大人しく帰っていき、ご利益もある。一旦私達に対処を任せてみてくれないか?」
     すぐさま、雛菊がラブフェロモンを使い、この手の異変に詳しい専門家として振る舞って村人達の説得を試みた。
    「この人が言っている事は嘘でねえ。猫神様を巫女である、おらが保障するゥ!」
     ボロボロの服を着た老婆が、自分の胸をドンと叩いた。
     本当に巫女かどうかは別として、そのおかげで村人達が家に帰っていった。
     『何かあったら、お前達を猫神様の生贄にしてやる!』と捨て台詞を残して……。
     だが、都市伝説を守るようにして、猫達が全身の毛を逆立てていた。
    (「……刃と……一緒の……依頼……頑張らないと……ね」)
     猫変身をして小さめで金色のペルシャ猫になり、フィアがマタタビを咥えて都市伝説から遠ざかっていく。
    『あ、あれは……マタタビ!』
     それに気づいたトラ猫が、ビクッと身体を震わせた。
    『騙されるな。あれは罠ニャ! 考えても見ろ。あんな猫……、見た事がねえ』
     黒猫がフィアをジロリと睨みつけた。
    『さすが、兄貴ッ! 俺は危うく騙されるところだったぜ!』
     ミケ猫がヒヤッとした様子で汗を拭った。
    「ううっ……、もふもふしたい」
     そんな猫達を眺め、カノンはウズウズしていた。
     出来る事なら、このままダイブしたいと思ったが、そんな事をすればすべて台無し。仲間達の苦労が水の泡である。
     それが分かっていても……もふもふしたかった。
     おそらく、これは本能的なもの。
     頭で分かっていても、身体が勝手に動いてしまう。
     それ故に、抑え込むのも、至難の業であった。
    「猫……猫……、おっきい猫さん……もふもふ……」
     とうとう我慢の限界に達し、雪音が都市伝説に飛びついた。
     途端に全身を包むようなもふもふ感に襲われ、雪音が幸せそうに頬擦りをした。
    「邪魔にゃん!」
     次の瞬間、都市伝説の猫パンチが、雪音の顔面に直撃した。
     その一撃を食らったカノンが、華麗に宙を舞った。
     だが、思っていたよりも、ふんわりふわふわだったのか、天にも昇るほど幸せそうに見えた。
    「あれが噂の猫パンチ……!! うう……、攻撃だし当たりたくはない、けど……っ! わぁああ!!もふりたいー! 肉球ー!!」
     そんな衝動に襲われながら、燈がマタタビや猫缶をチラつかせる。
    『あ、あれは猫缶!?』
     これには警戒心がMAXに達していた白猫でさえ、大興奮!
    『だ、騙されるニャ!』
     そう言って黒猫が警告したが、他の猫達は我慢の限界。
     猫缶などレア中のレア。
     村暮らしをしている猫達にとっては、極上の御馳走。
     もうこうなると、我慢の限界。猫まっしぐら!
     慌てて黒猫が引き留めようとするが、既に手遅れ。
    「……遅いっ!」
     猫達が射程範囲内に入ったのを確認した後、刃が殺界形成を発動させた。
     途端に猫達が恐怖に襲われ、その場から逃げ出した。無論、黒猫も……。
    「それじゃ……、行きますよっ。チェンジ! カラフルキャンディ!」
     それと同時にソフィがベルトを出現させ、バックル部にデッキを装填して変身をした。

    ●猫神様
    「わぁああ!! もふりたいー! 肉球ー!!」
     都市伝説を前にして、燈はもふりたい衝動に襲われていた。
     唯一、都市伝説にもふった雪音は、その時の感触を思い出して、とても幸せそうにしていた。それがとても羨ましく見えた。
    「皆殺し……にゃん!」
     だが、都市伝説を見る限り、そんな状態ではない。
     それこそ、近づく者は誰であっても、デストロイ。
    (「……これ以上……好きにはさせない……」)
     次の瞬間、フィアが都市伝説の懐に潜り込み、黒死斬を炸裂させた。
     その一撃を食らった都市伝説がバランスを崩し、信じられない様子でフィア達を睨んだ。
    「お、お前達、こんな事をして、覚悟は出来ているんだろうにゃ!」
     都市伝説が警告した。
    「ちょっとおいたが過ぎたわね。作物を荒らされると村人の生活に響くのよ。都市伝説として噂をした人達が、一番非があるけれど……、実害を出されたらほうっておけないわね。悪いけれど癪滅させてもらうわね」
     だが、ルナエルは気にせず、螺穿槍を仕掛けた。
     それと同時に都市伝説が猫パンチを繰り出したが……、届かない。
    「も、もう少し……もう少し……ニャ」
     必死に手首をクイクイさせたが、それでも届かない。それがニャンコの限界。痒いところに手が届かない!
    「俺の刀は斬るには向かないが、風の刃ならば関係ない!」
     刃の放った鬼神変が、都市伝説の右腕を斬る。
     途端に大量の血が吹き出し、都市伝説が表情を強張らせた。
    「大きいだけが強さではないです! いくよ! ブラン!」
     その隙をつくようにして、ソフィがライドキャリバーのブランに乗って、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
     都市伝説は残った左腕を振り回したが、それよりも素早い身のこなしで距離を縮め、ご当地キックを放ってトドメをさした。
    「皆さん、怪我はありませんか?」
     仲間達の無事を確認した後、カノンが都市伝説に黙祷する。
     都市伝説なりに何かメッセージを伝えたかったのかも知れないが、その思いがいつしか歪んだ形になり、村人達に危害を加えるようになったのかも知れない。
    「もっと……、猫さんと……遊びたかったな」
     雪音が深い溜息をもらす。
     都市伝説が消滅した事で、猫達も身の危険を感じたのか、まわりには見当たらない。
     もしかすると、新しい棲み処を求めて、旅に出たのかも知れなかった。
    「お、終わったのか?」
     瓶底眼鏡をした村人が、恐る恐るやってきた。
     自分の目で確かめてはいるようだが、それでも安心が出来ないようだ。
    「一時的に帰っただけだ。また猫神様らしきものが現れたら、今度はもてなしてあげると良い。どうも遊んでもらったり、もふもふされる事が大好きらしいぞ?」
     そう言って雛菊が村人達に別れを告げる。
     猫神様が現れる可能性は低いものの、村人達がそれで考えを改めてくれるのであれば、結果的に村のためになるのだから、嘘も方便と言ったところである。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 5
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