恨みの巴

    作者:君島世界

     がしゃり、ぶしゃり。
     二つの音が鳴った。一つは鎖の、もう一つは生肉を食んだ歯牙のたてる音だ。
     同じような連続音が、さらに加えて二つ、同じ場所に響く。がしゃり、ぶしゃりと繰り返される雑音は、とある異形どもの争いが引き起こす、今のところただ一つの現象であった。
    「…………」
     片目の潰れた、小柄なオオカミの姿をした『スサノオ』は、争いの顛末を確かめずに立ち去る。この場に残されたのは、鎖によって地に繋がれた『三つの生首』であった。
     鎖は、首の断面から背骨の代わりに伸びている。そうやって縛められた自身を、生首たちはごろごろと転がしたり、あるいは跳ばすこともあった。
     生首たちは、そうやって怨敵たる他の首にかぶりついては、その肉を食いちぎる。しかしその傷は見る間に塞がっていき、元通りの、醜悪な恨みの面がその箇所に浮かび上がった。
     がしゃり、ぶしゃり。
     
     教室の黒板に、虫ピンのような図形が三つ、大きく描かれていた。針の頭は中心に集められ、そこから放射状に、それぞれの針が外へと引かれている。
     鷹取・仁鴉(中学生エクスブレイン・dn0144)は、チョークを置いて教卓の横に出た。絵を隠さないように、仁鴉はその場で手にした資料を読み上げる。
    「神奈川県の真鶴には、舞首と呼ばれる妖怪が伝えられていますの。小三太、又重、悪五郎という三人の武士が、仲違いの末に殺し合い、首だけになってもなお争い続けたと、大まかに言えばそういうお話ですわ。
     その伝説を基にした『古の畏れ』が、スサノオによって生み出されたようですの。『古の畏れ』と化しても、終わることの無い争いを繰り広げる彼らですが、放置すれば一般人に危害が出るかもしれません。そうなる前の対処を、皆様にお願いいたしますわ」
     
     舞首たちが現れるのは、海にほど近い真鶴岬のとある岩場の上だ。潮の満ち引きに関係なく陸地と地続きになる場所のため、人の出入りは十分考えられる。人払いは必須だろう。
     誰かが接近すると、舞首たちは同士討ちをやめて襲い掛かってくる。小三太はガンナイフ、又重は日本刀、悪五郎はロケットハンマーに相当する効果のあるサイキックを、それぞれクラッシャーとして使ってくるようだ。共通するサイキックとして、エフェクト『orヒール』を持つ噛み付きを行うこともある……が。
     この噛み付きを、舞首たちは第三者への攻撃としては用いない。戦闘時でない同士討ちの時は毎回必ず、戦闘中ならば『その直前のターンに射程・近単のサイキックでダメージを与えられていない』という条件を満たした時にのみ、別の舞首に対して使用する。
     鎖に繋がれてはいるが、その移動範囲は十分に広い。サイキックが届く距離であれば、自由に動けるものと考えてよいだろう。
     
    「皆様が到着しますのは、古の畏れが発生して間もなくの早朝となりますわ。ただ、スサノオはその時点で、既に姿を消してしまっていますの。その行方は未だ予知のしにくい状況ですが、引き起こされた事件を一つ一つ解決していけば、必ずや繋がっていくはずと信じておりますわ。
     ご武運を、お祈りしております。大きなお怪我などなさらないよう、お気をつけくださいましね」


    参加者
    久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)
    有栖川・へる(歪みの国のアリス・d02923)
    碓氷・爾夜(コウモリと月・d04041)
    天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)
    柾・菊乃(退邪鬼・d12039)
    鴻上・朱香(無銘の拳・d16560)
    南谷・春陽(春空・d17714)
    泉夜・星嘉(星降り・d17860)

    ■リプレイ

    ●見地し、見鬼す
    「よっ、ほっ、た……と」
     てん、と身軽に着地した先で、小石がいくつか低い崖を落ちていった。踏み足に乗る柾・菊乃(退邪鬼・d12039)は、海面に消えた波紋からついと目を離す。
    「この程度の岩場、私たちなら大丈夫そうですね。もう少し険しいものと思っていましたが」
     潮に湿った岩場だが、彼ら灼滅者にとっては何の気なく飛び跳ねられる立地なのであった。どちらかと言えば波をしぶかせる陸風の方が、厄介と言えば厄介だ。
    「あ! こーら『はやぶさ』、待て待てっ!」
    「ワン、ワンッ!」
     その冷たさをまるで気にせず駆け回っているのが、泉夜・星嘉(星降り・d17860)と霊犬『はやぶさ』のコンビである。持って生まれた毛並みと用意してきたジャケットとが、両名から波の飛沫混じりの空気を問題なく遮断していた。
    「あはは、みんなやる気いっぱいだね♪ スタイルとしてボクも負けてられないなあ」
     有栖川・へる(歪みの国のアリス・d02923)は、そう言って自分も何度かステップを踏んだ。今日も調子よく、思い通りに自分の重心を振り回せそうだ。
     進む彼らの足音の他に、『殺界形成』で人気の絶えた岬に音は少なく――と。
     ある一線を踏み越えた直後に、ぞくりと、全員の感覚が嫌な何かを捉えた。形も色もなく、しかしはっきり在るとわかる強烈な悪意が、あの岩場の影にある。
     久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)が、気配を殺して様子を窺った。一足先にそれを見た彼女は、端正な眉を僅かな嫌悪に歪ませる。
    「顔と鎖のモンスターって、何かのゲームでありましたよね。あれとは……いえ、見たほうが早いですか」
     振り返った撫子の言葉に、数人の仲間が頷く。連想し、追って岩から顔を覗かせた灼滅者たちは、果たしてそれ以上の光景を目の当たりにした。
     がしゃり。ぶしゃり。
     その表情。目は濁り頬は破れ、黄色く汚れた犬歯がお互いをむさぼり合う。
     それらにはゲームキャラクターのように記号化させられた見せ掛けの攻撃性はない。喰い喰われ、次から次に湧き出る憎悪を見せ付ける――呪われた伝説の具現。
     そのザマを前にして、誰もが嘆息を禁じえなかった。南谷・春陽(春空・d17714)も、トーンを落としたまま胸の前で手を組み合わせる。
    「ただの喧嘩なら、もしかしたら判り合えたのかもしれないのに……どうして、あんなになるまで」
     春陽が接近をためらうのは、舞首どもの見た目の恐ろしさからだけではない。ある意味では、人間としての浅ましさの極致が、そこにあるからだ。
    「仲違いの末に殺し合い、首だけになっても争い続け……更には死して尚、か」
     恐ろしい話だと、天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)は呟く。物思いに閉じた瞳が、しかし再度開く時には、彼女は戦士の表情を取り戻していた。
    「ボクの相手は、さて、どれだったか」
    「準備が出来次第、仕掛けよう。私の『サウンドシャッター』は、首尾よく展開できている」
     ESPを維持する鴻上・朱香(無銘の拳・d16560)は、手の内の武装を改めた。暗器のように隠し持った殺人注射器を、沸いた複雑な感情ごと握り締める。
    「無手を身上とする我が主義に反するが、致し方ないか」
    「役割分担という奴か。お互い、良い仕事をしよう」
     と、碓氷・爾夜(コウモリと月・d04041)は、無意識の視線を切って己の集中に戻った。すると灼滅者たちの纏う空気が、戦いのそれになっていると、肌で感じられるようになる。
    「音に聞く怨霊――その恨みの念、ここで断ち切ってやろう」
     陣形最後尾の爾夜も、じわりと進み始めた仲間たちの流れに乗った。終わらぬ共食いを続けていた舞首どもが、ここでその視線を初めて外に向ける。

    ●あやかしの煩悩
    「――!」
     喉笛から断たれた生首は、おそらく声を挙げることはできないのだろう。が、見る者に狂乱の絶叫を思わせる形相で、それら舞首は飛び掛ってきた。
     その先頭、へるが応対する『小三太』の口内から、毒々しい涎が吐き出される。岩場にジィッと音立てて落ちた体液を、少女は一顧だにせず駆け抜けた。
    「ほら、こっちこっち――そっちじゃないよ!」
     回り込むようにして敵の後頭を薙いだへるは、振り向く小三太からロンダートで距離を取る。
    「首になっても争い続けるなんて、みっともないったらありゃしない。ボクなら海に身投げしてしまうよ」
     ぎり、と歯軋りの音が響いた。その一方で、飛鳥はクルセイドソード『雷花』を横に構え、齧りつこうとする『又重』の犬歯と競り合っている。
    「お前が又重だね。しばらく……いや、最期までボクと付き合ってもらうよ」
     強引に押し返すと、又重を繋ぐ鎖がたわむ。その間隙を、大上段から振り下ろされる白光が断ち割った。
    「たああああぁぁぁぁっ!」
     ズ――ウゥン……。
     手応えを残し、斬撃の余韻が岩肌を洗う。落ち着いた聖剣を、飛鳥は咄嗟に引き戻した。
     間に合わず、指先に荒々しい噛み傷が刻み付けられる。赤い血の小さく奔る先に、嫌らしくほくそ笑む又重の首が浮いていた。
    「天樹さん! ――くっ」
     そちらに注意を向けかけた春陽は、しかし作戦を念頭に踏みとどまる。残る舞首『悪五郎』をまず排除するというのが、自分に任された作戦だったはずだ。
     元は一体どのような巨漢がくっついていたのか、春陽のものより数倍大きな生首が、次の瞬間大きく縦に跳躍した。落下する肉塊へ、彼女は意を決して立ち向かう。
    「大丈夫、いける! 怖くないっ!」
     バトルオーラを瞬時に展開させ、春陽は逆に拳を突き上げるようにして迎撃した。貫き抜けた衝撃が踵から逃げ、薄くはない岩場に新しいクラックを生成させる。
    「夜霧よ……彼らを隠し給え」
     ぐらりと膝から落ちていく彼女の姿が、その時ふっと虚ろににじんだ。瞬時の判断で、爾夜が己に使うつもりであった『夜霧隠れ』を前線に送ったのだ。
    「邪悪なる古の畏れよ、その醜さは見るに堪えない。ここで滅びるがいい」
     解体ナイフを懐にしまった爾夜は、低く広げた両掌に魔力を集中し始める。その眼前を、朱香が残像を膨らませながら横切った。
     滑るような足取りに乗って、朱香は悪五郎の間合いに踏み込む。柔らかく握った拳を、逆の脇下からコンパクトな鉄槌打ちで突き込んだ。
    「こっちも本命だ」
     と同時に、開いた親指で殺人注射器のプランジャーを叩き込む。衝撃ごと注がれた毒液が、悪五郎に即座の侵食を開始した。
     のた打ち回る悪五郎が、顎の力で再跳躍する。菊乃はそれに対し、目を見開いて観察し続けた。
    (「相手の挙動を把握して――」)
     三次元軌道を予測し、確実に交差するよう射線を想定する。チャンスは一度きりか……菊乃は短い猶予の中で、身を沈めてサイキックソードを振りぬいた。
    「――当てます!」
     宙を走る光刃が、狙い通りに悪五郎へ命中する。派手な鎖音を立てて落下した舞首に、続いて星嘉が縛霊手を斜めに打ち下ろした。
    「捕まえたぞ悪五郎……! お前らを倒して、僕はスサノオもふりへの道を手に入れるっ!」
     言いながらも星嘉は油断なく縛霊手を操作し、敵を縛める霊力網を放出する。多重の束縛を受けた悪五郎の周囲に、ふと季節はずれの花弁が振り落ちた。
     触れた端から小さく火の手を上げるそれは、撫子の操る炎の余波だ。と、悪五郎の額に彼女の妖の槍が突き刺され、そのまま無造作に投げ上げられる。
    「『殺戮・兵装(ゲート・オープン)』」
     返す刀で、悪五郎は宙に浮いたまま焼き尽くされた。撫子は槍を払い、脂を落とす。

    ●執念払い
    「一体ずつ、確実に行きましょう。……次は、飛鳥ちゃんの方ね」
    「そうさ撫子。皆も、急いでくれると有難い!」
     残身を解いた撫子に、又重との立ち回りを続ける飛鳥が手短に応えた。痺れの残る左指を握力で抑えつけ、ショートレンジを保ったまま肘を引きつける。
     半身となった彼女の前方で、すると又重は数メートルの距離を取った。逆剥けた唇から覗くヤニ色の犬歯から、シィイとすするような風鳴りが聞こえる。
    「そうくるか……だが」
     敵の技の正体は、事前情報から予測が付いた。日本刀の技の中でも、おそらく『月光衝』に相当する範囲斬撃だ。飛鳥はすべきことを定め、左拳に影を集める。
    「逃がさないよっ!」
     炸裂する風刃を、防具頼りに突っ切った。脱力感を踏み込みで紛らわせ、拳を叩き込む!
    「お友達のお願いでしたら、ここは一つ露払いを」
     追撃を狙う撫子の槍が、直前の炎とは真逆の冷気を引き出した。間もなく生み出された氷柱が、鼓膜を震わすような高音を弾いて飛んでいく。
    「これでどうでしょう、飛鳥ちゃん。――菊乃ちゃんも」
    「はい、十分以上の仕上がりです!」
     冷気に清められた回廊を、菊乃が駆け上がっていった。大きく足音を立て、マテリアルロッド『神木刀・丸太丸【祓】』を突き出すが、これは視線の誘導を狙うためのフェイク。
    「その首、貰いますよ……っと?」
     よく見なくとも首だけでできた舞首に、菊乃は足音を殺してすれ違った。逆手斬りにした刃が、振り向く動きで血を撒く。
    「ここまでだ。その存在、無に返そう」
     爾夜は既に、詠唱を完成させていた。ありったけの魔力で編み上げられたマジックミサイルが、周囲に浮かび主の命令を待つ。
    「矢を――喰らえ」
     彼の金眼が邪悪に焦点を合わせると、矢が見る間に鋭化していく。そして人差し指がゆらりと持ち上げられ、魔弾は文字通りに又重へと殺到していった――。
     ギ、ギ、ギ、ギ、ギ!
     怨敵が滅ぼされたことを知ってか知らずか、最後の舞首である小三太の歯軋りが激化する。ばきん、ばきん、という何かが折れる音が、敵の口中で連続した。
    「何を狙おうと、ボクたちには通用しないと思うけど?」
     へるが視線を尖らせていく先で、小三太は頬を大きく膨らませる。そしてどうやったものか、小三太は噛み折った歯をマシンガンのように吹き出してきた。
     カカカカカッ!
     岩肌に噛みつくほどの鋭さが、灼滅者たちを襲う。と、その脅威を目の当たりにしていたはやぶさが、主の指示を待たず命令を遂行した。
     即ち、仲間たちを救え、と。はやぶさの浄霊眼が、最も傷を受けた菊乃へと向けられる。
    「……はやぶさ? よし、ナイスだはやぶさ! よくやってるな!」
     気づいた星嘉は、愛犬をべた褒めにしていた。さすがに頭を撫で回すのは我慢して、小三太へ影の触手を走らせる。
     バシ、と縛り上げられた小三太に、へるがさらに接近していく。その頬に浮かぶのは、変わらぬからかいの微笑だ。
    「これは本当に、『片付けられない男』もびっくりだ。君の代わりによい子のボクが、何もかも片付けてあげるよ!」
     またも小三太を飛び越えたへるは、その頂点で殺人注射器の針を刺し込んだ。瞬間的にエネルギーを吸い上げ、針を折らぬように引き抜く……と、間髪いれずに朱香が、敵を串刺しにする。
    「打撃のインパクトと共に、スイッチ!」
     先ほどとはうって変わって、腕の長さを超える巨大な杭打ち機での一撃だ。手応えを全身に感じながら、朱香はバベルブレイカーを制動した。
    「ドグマスパイク!」
     初動の震えは一瞬、操者の意識を白くさせるほどの激動が響く。敵を中心に渦を撒いて広がる風を、春陽が大きく跳躍して越えた。
    (「静脈の位置はわからないけど、刺さればなんとかなる……かしら?」)
     着地した春陽は、視線をそらしながらも一気に注射器を突き立てる。びくびくという痙攣が次第に大人しくなるのを、彼女は腕の影からおっかなびっくり確かめた。
    「白目剥いてる……うう、最後までちょっと怖かったなあ」
     そんな敵もざらりと砂のように崩れるのを見て、灼滅者たちはようやく一息を付いた。

    ●かしこみ、かしこみ
     凪いだ空に、菊乃が読み上げる詞が通った。ざ、ざぁっと、波と御幣とがそれに混じる。
     最後に、菊乃はうやうやしく一礼して儀式を終えた。掲げた御幣を収め、居並ぶ仲間たちに振り返る。
    「略式ながらお祓いを。気休めにしかならないかも知れませんが……」
     菊乃は謙遜するが、なんとなく、場が綺麗になったような印象があった。こうして静かになった今、決着が付いたのだと実感できることも、大きな効果があるのかもしれない。
    「なんとかなったな……。それにしても、恨みとは恐ろしいものだ」
     改めて実感したよと、飛鳥は溜息をついた。ああはなるまいと、内心に思う。
    「この地で本当は何が起こって、それがなぜ現代まで伝えられたかはわからないけどさ」
     神妙に、へるが呟く。
    「きっと、それはこの地で眠らせておくべきだったモノ。眠りを妨げられた舞首たちも、またスサノオの被害者だったのかもね?」
    「……ん。アリスの言うことも、わからなくはないかな」
    「でしょ?」
     同意に頷く飛鳥を、へるは破顔して見上げた。
    「なんにせよ、僕たちの対処に大きな誤謬はないはずだ。邪悪として現れた物の始末を、最小限の被害で抑えられたのだから」
     爾夜は無表情に言うと、十分に残った余力を掌に集める。癒しの光が、そこに灯った。
    「傷、痛む者はいるか」
     爾夜はメディックとしての役割を果たすべく、仲間たちを見回す。手を挙げた数人に、爾夜はサイキックを当てていった。
    「……念の為『DSKノーズ』で探ってみたけど、この辺りにそれっぽい感じはしないよ」
     という春陽の言葉には、わずかな落胆が混じる。こんな事件を起こすスサノオの手がかりが、少しでも見つかればと思っての行動なのだが……。
    「はやぶさ、何か見つからないか? 毛とか足跡とか、そういうもふっとした狼っぽいの」
    「わう……?」
    「そ、そんな目で僕を見るな……ええいっ、こっちゃ来いはやぶさ! 撫でたげる!」
     と、星嘉たちのほうは需要と供給が一致したのか、仲睦まじくじゃれあっていた。春陽はそんな光景を見て、目を細める。
    「舞首たちも、あれくらい――は行き過ぎかしら。恨みあいを終わらせてくれればいいのだけど」
    「執念深さが裏返って、意外とディープに行く可能性は捨て切れませんよ」
     撫子の発言に、一同は若干の不安を覚える。当人はさらりと流し、真鶴港の方を指差した。
    「さて。この辺りはお魚料理がいい感じらしいですし、どこかに朝ご飯を食べに行きませんか?」
    「言われてみると、時間が時間だったな。何気に朝飯前で戦ったことになるのだな」
     朱香もつられてそちらを眺める。来る途中にいくつか飯屋を通り過ぎたことを思い出すと、その中ならどれがいいかと考え始めていた。
    「……まともな食事も、たまにはいいか」
     戦場食をしまい、朱香は帰路を戻り始める。道を同じくして背を向けた灼滅者たちを追って、岬の波濤が送り出すように岸を打ちつけていた。

    作者:君島世界 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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