遅れてきたサンタガール

     千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)は、こんな噂を耳にした。
     『ビキニサンタガールの都市伝説が現れた』と……。
     既に、クリスマスも終わっているし、季節外れでは……と思ったりもしたが、、ビキニ姿と言う時点で夏を見越していた可能性も捨てきれない。
     それに、噂とは常に進化するもの。
     求める者がいれば、季節なんて関係ない。
     故に、都市伝説は寒さなど気にせず、ビキニ姿で走り回っているのである。
     しかも、都市伝説の催眠によって、街の人達はみんなビキニ姿!
     ビキニ姿にならなければ、何やら気持ちがソワソワしてしまい、何も出来なくなってしまう。
     そのため、街がカオス状態になっており、都市伝説を見つけ出す事は困難。
     例え、手当たり次第に捜したとしても、マトモに捜したのでは、見つかる可能性はゼロ!
     だが、都市伝説はビキニを着ていない相手に対して敏感で、自分から寄ってくるため、それさえ利用すれば誘き寄せる事は難しくない。
     ただし、都市伝説がいる間は無性にビキニを着たくなるので、注意が必要である。


    参加者
    江良手・八重華(コープスラダーメイカー・d00337)
    李白・御理(アウトシェルリペアー・d02346)
    三森・深湖都(せーぎのまほーつかい・d07589)
    城戸崎・葵(素馨の奏・d11355)
    千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)
    四季・彩華(蒼天に咲く舞白雪・d17634)
    魅咲・沙希(風前の灯歴八年・d23420)
    墓守・白露(トンベリのランプ・d23522)

    ■リプレイ

    ●遅すぎたクリスマス
    「クリスマスは……半月ほど前に……終わりました。今はお正月ムードも過ぎ去って、街やスーパーの装飾はすっかり……2月のバレンタイン仕様なの……。何が言いたいかと言うと……季節外れよ……。あと……すごく、さむそう……。どうせなら……温かいお汁粉の都市伝説を見つけたかったわ……」
     千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)はそんな愚痴をこぼしながら、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     だが、都市伝説からすれば、そんな事などおかまいなし!
     『クリスマス? バレンタイン? 何それ美味しい』と言った感じである。
    「確かに、聞くだけで何だか寒そう、というか寧ろ寒いけど……」
     城戸崎・葵(素馨の奏・d11355)が、思わず身体を震わせた。
     あまりの寒さに指の感覚がなく、ほとんど動かない。
     こんな寒空の中、ビキニ姿になる事など、決してあり得ない事だった。
     それでも、都市伝説と愉快な仲間達は、ビキニ姿で街を練り歩いているらしく、街はカオス状態。
     普段着を着ている者などほとんどおらず、例え着ていたとしても、ビキニ集団によって襲われ、同じような姿にされていた。
    「季節外れもそうだけど、ビキニなサンタガールって……」
     四季・彩華(蒼天に咲く舞白雪・d17634)が、期待半分、呆れ半分で溜息を漏らす。
     色々とツッコミを入れたいところだが、ひとつあげれば芋づる式に問題点が出てくるため、口にする事さえ面倒に思えた。
    「何でこんなに寒いのにあんな格好をするのでしょーか?」
     三森・深湖都(せーぎのまほーつかい・d07589)が、不思議そうに首を傾げた。
     寒さを防ぐため深湖都は厚手のコートを着ているのだが、まわりにいる一般人はみんなビキニ姿。
     そのせいで、深湖都の方が場違いな恰好をしているように思われているようだった。
    「要するに最初からビキニを着ていれば襲われないって事だろ? まあ、着ないがな」
     江良手・八重華(コープスラダーメイカー・d00337)が、さらりと流す。
     それに都市伝説を引き付けるのであれば、ビキニを着ていない方が好都合。
     その結果、ビキニ集団に襲われ、恥ずかしい姿にされてしまうかも知れないが、すべて倒してしまえば済む話。
     いくら催眠状態にあるとはいえ、元は一般人なので、それほど恐れる相手ではない。
    「ビキニじゃなきゃ来るんだから、その方が何かと都合がいいかも」
     墓守・白露(トンベリのランプ・d23522)も、ローブ姿で納得をした。
     そのせいか、まわりの視線が突き刺すように痛々しい。
     『なんだ、あいつら。この町の事情を知らねえのか!?』と言わんばかりに、冷ややかな視線を送られている。
    「何だかデジャブを感じますね……どうして寒い時期に限って寒くて恥ずかしい格好をさせる都市伝説が居るのでしょうか?」
     そんな疑問を感じつつ、李白・御理(アウトシェルリペアー・d02346)が辺りを見回した。
     そこで御理は異変に気づいた。いつの間にか、まわりを囲まれている。
     その中に都市伝説が混ざっているのか、この時点では定かではないが、服を脱がされようとしている事だけは間違いなさそうだった。
    「ほれ~! うちに付いてきー!!」
     それと同時に魅咲・沙希(風前の灯歴八年・d23420)がラブフェロモンを発動させ、まわりにいた一般人を引き付けるようにして走り出す。
     だが、逃げる事が出来たのは、ほんの一瞬。
    「……がはっ!? あ、あかん……。大声を出すのは医者に止められてるんやった……」
     その途中で吐血をした沙希は、そのまま地面に突っ伏すようにして、倒れるのであった。

    ●最悪の事態
    「……厳密には『!!』が付いたらアウトやねん。あ、あかん! ビキニはあかんって!! がはっ!」
     そのまま血溜まりの中に沈んだ沙希を、まわりにいた一般人達が連れていく。
     彼ら専用のお着替えルームへ。れっつごーである。
    「まずは御一人様、ごあんなーい。さあさあ、みんなビキニ、ビキニ!」
     サンタビキニ姿の都市伝説が、にぱっと物陰から飛び出した。
    「い、いや、男の子がビキニを着て誰が得をするの。……で、でも……」
     悪くないと、彩華は思った。
     葛藤の末、気がつくと純白の女性用ビキニを着ていた。
     無い胸を隠すようなビキニブラは膨らみがないのが逆にいやらしく、ビキニパンツのVラインが際どく、男のエロスを強調させていた。
    「わおっ! 凄く似合っているわよ、本当に! それじゃ、次、次!」
     都市伝説が楽しそうに鼻歌を歌って、今度はヨギリを誘う。
    「……ごめんなさい。ヨギ……、子供だからビキニは早いって、クラブの先輩が言っていたの……。あとビキニ自体、持ってないわ……」
     そう言ってヨギリが首を振るが、問題なしっ!
    「大丈夫。サイズは大小様々。子供から大人まで。お望みなら、ペットの分まであるわよぉん」
     都市伝説の準備は、バッチリだった。
     やはり、その道のプロだけあって、死角なし!
     そのため、ヨギリは……目を逸らした。
     都市伝説がツッコミを入れるほど、あからさまに!
    「ちょっ、ちょっと、あからさま過ぎでしょ! まあ、いいわ。アタシって、楽しみは後に取っておくタイプだから!」
     そう言いつつも、都市伝説は涙目であった。
     まわりにいた一般人達も同情した様子で、都市伝説に視線を送っている。
    「ジョルジュ、ビキニを着たくなったら、気を付けるんだよ」
     葵がビハインドのジョルジュに警告をした。
     だが、ジョルジュはビキニを持って、身体をビクン!
     てっきり、葵がビキニを着るものだと思っていたのか、酷くあたふたし始めた。
    「いや、ジョルジュ……。その手に持ってるビキニを放しなよ。僕は着ない、着ないよ、絶対に!?」
     葵が激しく首を振る。
     しかし、ジョルジュも『せっかく、見繕ってもらったのに、それはさすがに……』と言わんばかりの雰囲気で、とても困っているようだった。
    (「この感覚は……まさか!」)
     八重華が表面上は平常に振舞いつつ、湧き上がってくる感情に戸惑った。
     ビキニパンツが穿きたい。無性に穿きたい。脳裏に浮かぶのは、ブーメランパンツ。考えただけでも、ゾクゾクする。
     だが、それは都市伝説によって作り出された偽りの感情。普段の八重華であれば、考えもしない。
    「受け入れましょう」
     御理が湧き上がる感情を、潔く受け入れた。
     その途端、御理を包む解放感。
     念のため、最初は腰下まで丈のあるパーカーを羽織っていたが、それを放り投げて跳ね回りたいほど、心地良い気持ちが全身を支配した。
    「ふふふっ、ひょっとして、恥ずかしいの? だったら手伝ってあげる♪」
     都市伝説が含みにある笑みを浮かべ、白露に襲い掛かった。
    「……あれ?」
     そこで違和感を覚えた都市伝説は目を丸くした。
    「ひょっとして、重ね着!?」
     都市伝説は信じられなかった。信じる事が出来なかった。
    「しかも、四枚。まだ三枚あるよ」
     白露の口から発せられた言葉。
     それは都市伝説にとって、死の宣告にも等しかった。
    「む、無理。一枚ならまだしも、まだ3枚もあるなんて……!」
     無論、相手が一人であれば、それほど難しい事ではない。
     だが、この状況で服を脱がせて、ビキニを着せる事など、自殺行為に等しかった。
    「大丈夫だ、姐さん。俺達で力を合わせれば!」
     真っ赤なビキニパンツを穿いたガチムキマッチョが、自分の胸を力強く叩いた。
    「皆さん、ごゆっくり避難をお願いするなのですよ~」
     しかし、それも深湖都が殺界形成を使うので、だった。
     途端に、まわりにいた一般人達が手のひらを反すようにして、深湖都に誘導されて安全な場所まで避難した。

    ●零下
    「さ、寒い……」
     ビキニ姿で仲間達の所に戻ってきた、沙希は今にも死にそうな表情を浮かべていた。
    「真冬にビキニとか……死ぬ……」
     そう言って沙希が倒れた。ろくに戦う事も出来ぬまま。
    「なるべく、早く終わらせます」
     沙希を守るようにして陣取り、白露がスレイヤーカードを解除した。
    「えっ? ちょっと待って! ひょっとして、殴ってから考える系!?」
     都市伝説が酷く動揺した。
    「殴るも何も、こんな格好をさせて、笑顔で握手という訳にはいかないよ」
     葵が肋骨の浮いた体を隠すようにして、ビキニ姿で体を震わせた。
     都市伝説の催眠が影響しているおかげで、高揚感はあるのだが、それ以上に寒くて、まるで全身を針で刺されているような感覚に襲われていた。
    「男の娘を辱めた罪に……、僕がクリスマスプレゼントをあげるよ!」
     葵と同様にビキニ姿になった彩華は、パーカーを羽織った状態で赤面すると、怒りと羞恥心で寒さも忘れ、都市伝説にそのすべてをぶつけるため、鋼鉄拳で制裁を行った。
    「い、嫌よ。このまま消滅するなんて、お断り!」
     都市伝説が痛みを堪えて、大きく頬を膨らませた。
    「サンタビキニは……南半球に帰って……どうぞ」
     ヨギリの冷たい言葉が、神薙刃と共に都市伝説の身体を傷つけた。
    「なんで、アタシがわざわざ、そんな場所に。アタシはここが好きなの。大好きなの!」
     傷ついた体を庇いつつ、都市伝説が反論をする。
    「ならば、ここを墓場にするといい」
     そして、八重華の放ったフォースブレイクが、都市伝説の身体を消滅させた。
    「さむい、さむい、さむーいなのですっ!?」
     都市伝説が消滅した事を確認した後、深湖都が慌てた様子でコートを羽織った。とにかく、寒い。シャレにならない。
     我に返った一般人も寒さに耐える事が出来なかったのか、あちこちで悲鳴を上げている。
    「いつも思うのですが、ああゆう伝説ってどこかに伝説の元でも居るのでしょうかね……」
     先程まで都市伝説がいた場所を眺め、御理が深い溜息をもらす。
     そんな中、沙希がビキニ姿のまま、血まみれで救急車に乗せられた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:魅咲・沙希(吐血鬼・d23420) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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