微笑は死への誘い

    作者:立川司郎

     それは幹線道路からも離れた林の中に、ひっそりと在った。
     かつては人々が集い、神について語りあった小さな木造の教会は、今は朽ち果てて天井も崩れ落ち、空からぽっかりとまるい月が見えている。
     ただ、その崩れた天井から見える星空がとても綺麗で、いつも彼女達はそこでぼんやりとそらを見ていたのである。
     一陣の風の後、ぽんとそこに彼女は現れた。
     長い黒髪と白い肌。
     崩れた壁の端に、何時の間にかちょこんと座って笑っていた。楽しそうに、大きく口を開けて笑っていた。
    「あ……」
     まるで、おひさま様のよう。
     一人が、そう呟いた。
    「ルナ」
     私の名は、ルナと彼女が告げる。
     それから、教会に集った少女を一人ずつ見て回ったのだった。全部でそこに居たのは、八名。
     一人は腕に火傷の跡があり、一人は頬に青あざが。
     この教会に集まるようになったのは、一ヶ月くらい前からだっただろうか。居場所を求めて、少女達はここにやってきた。
     ルナは少女の手を取り、ステップを踏み始めた。
    「ねえ、躍ろうか」
     そして歌おう。
     流行の歌を歌い、躍るルナにつられて少女達に笑顔が戻る。笑顔を忘れた少女達に、笑顔を与えた。
     それでも、ルナの目的は少女達に単に笑顔を与えるだけでは収まらず。
    「全部壊しちゃえばいいんだよ。お父さんもお母さんも、友達もみんな……そうしたら、こんな苦しい事なんて無くなるんだから」
     笑顔で破壊を促す、ルナ。
    「あなた達の居場所は私があげる。全部壊して、帰ろう」
     両手を広げて、ルナは笑った。
     
     教室の窓を閉めると、エクスブレインの相良・隼人(高校生エクスブレイン・dn0022)は白い小袖をそっと肩に羽織った。
     昼間の教室とはいえ、空気は冷たい。
    「聞いての通り、ソロモンの悪魔、美醜のベレーザが動いている。朱雀門の戦力にする為に、デモノイドを量産化しようって魂胆らしいな」
     配下が現在、各地で素体となる一般人を拉致しているのだと言う。
     隼人が予測したのは、ルナというヴァンパイアの少女であった。年は十八ほど、黒髪に透き通るような白い肌をしている。
     月を意味する名前であるが、いつも笑っていて明るい性格であるという。
     そして笑いながら、殺す事の出来る人物……という訳だ。
    「ルナは他にも三名ほど強化一般人の少女を従えている。彼女達はいずれもセーラー服などの学校の制服を着ているようだし、元はこの子達のようにルナに勧誘された子なのかもしれねぇな」
     彼女達強化一般人のうちの一名は、命令を受けると十分間だけデモノイド化して戦う事が出来るのだと言う。
     ただしこれは不完全なデモノイド化である為、時間が切れると壊れたおもちゃのように死んでしまう。
    「胸糞悪い事に、使い捨てって訳だ。放っておけば、この連れ去られる女の子も使い捨てにされる運命だ」
     そこで隼人が告げたのは、林の中にある崩れた教会であった。深夜そこに、中学生から高校生くらいの少女が八名集まるのだと言う。
    「現在この女の子達は、ルナの意志に従おうとしている。ただ、説得次第で考えを変える可能性もあるだろう」
     ルナと強化一般人を押さえている間に、灼滅者一人二人で説得するしかない。あまり手数を割けば、ルナ達に押し切られてしまう。 
     今回の作戦の目的はデモノイドの素体にされてしまう一般人の拉致を阻止する事なので、ルナや強化一般人の撃破は二の次だ。
    「ルナと手下全てを相手にして撃破するのは、はっきり言って無理だ。十分経ってデモノイドが自壊したとしても、残りが居るからな」
     だからルナは撤退させ、一般人を保護するのが良いと隼人は話した。
    「この子達は、いずれも虐められていたり家庭内に居場所がなかったりする子なんだろう。だから教会に集まって居場所を求めた。でも、こんな使い捨てのデモノイドとして命が終わるなんて、寂しいと思わねェか?」
     隼人はふと溜息をつくと、視線を窓の外へとやった。 


    参加者
    六乃宮・静香(黄昏のロザリオ・d00103)
    陽瀬・瑛多(中学生ファイアブラッド・d00760)
    赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)
    廿楽・燈(すろーらいふがーる・d08173)
    天神・ウルル(インサニア・d08820)
    クリミネル・イェーガー(迷える猟犬・d14977)
    ジオッセル・ジジ(ジジ神様・d16810)
    神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)

    ■リプレイ

     笑顔は警戒心を薄れさせるというが、楽しそうに笑う彼女の笑顔はまさに心の壁を取り除いた。崩れた教会の壁にぽんと座り、笑っている。
    「ルナ」
     彼女は自分の事を、ルナと名乗った。
     それはお月様の事だと、8人も知っている。お月様の名前なのに、笑顔はまるでおひさまのようだった。
     ひとりひとりの顔を見て回るルナは、そっと少女の腕についた火傷に触れる。
     体だけでなく心まで傷を負った彼女達に、手を差しだした。
    「ねえ、躍ろうか」
     そして歌おう。
     軽くステップを踏むルナは、ただ顔を合わせて夜の教会に蹲るしかなかった少女達を外へと誘い出したのだった。
     流行の歌を歌い躍るルナは、彼女達の前に現れた救世主だったのかもしれない。
     それでも、ルナの目的は少女達に単に笑顔を与えるだけでは収まらず。
    「全部壊しちゃえばいいんだよ。お父さんもお母さんも、友達もみんな……そうしたら、こんな苦しい事なんて無くなるんだから」
     笑顔で破壊を促す、ルナ。
    「あなた達の居場所は私があげる。全部壊して、帰ろう」
     両手を広げて、ルナは笑った。
     運命は、少しだけ流れを変える。差しだした手を弾いた者、彼らの来訪はルナの予定にはなかった事であった。
     少女達とルナの間に割って入り、甘楽・燈(すろーらいふがーる・d08173)は背に少女達を庇った。
     大きく手を広げ、ルナをじっと見つめる。燈は決して感情を揺らがせる事なく、凛とした声をあげてルナに警告する。
    「連れて行かせない。……守りに来たんだから!」
     全員、無事に連れて帰る。
     燈は強い意志を込めて、そうルナに言った。うなり声を上げる霊犬のギエヌイの背を撫で、ジオッセル・ジジ(ジジ神様・d16810)は後ろを振り返る。
     燈とギエヌイ、双方がルナ達の行く手を阻んで立ちはだかる。
     ジオッセルは8名の少女達の方へと、歩き出した。オロオロと双方を見まわす少女達に、六乃宮・静香(黄昏のロザリオ・d00103)が下がるように言い含める。
    「……邪魔しに来たの? ほんとうに鬱陶しい人達ね」
     ふ、と笑いながらルナが言った。
     厳しい表情で、セーラー服を着た強化一般人の少女がルナの前に立つ。どうやら、彼女がデモノイドであるようだ。
     静香は刀の柄に手を掛け、駆け出した。
    「おいで」
     少女に語りかけるルナに、静香は眼前で刀を一閃させる。刃は間一髪でデモノイドの少女に弾かれ、空を切った。
     立て続けに、静香と動きを合わせて神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)が剣を上段から斬り降ろす。静香と葎、二つの刃がデモノイドの少女を追い詰める。
     力の発動を待ちながら、彼女はただじっと耐える。ちらりと葎がルナの動きを見ると、ルナもまた攻撃を仕掛ける様子はない。
    「ルナ様の邪魔をするなら、容赦はしない」
    「暴れる青い悪魔になりたくないなら、あれらの声を聞いてはいけません」
     静香は、彼女を差して鬼と称した。
     攻撃に転じようとしたデモノイドの少女を、ルナは手で制した。飛び出して来た静香が強化一般人の横に回り込もうと飛び込むと、彼女は静香の刀をナイフで受け止める。
     受け止めきれない衝撃で、少女の手から血が伝い落ちる。
    「……ルナ様、ここは私達が引き受けますから彼女達を連れてお下がり下さい」
     デモノイドはそう言ったが、ルナは首を振る。
     ルナはまだ、あの子達を連れ去る事を諦めた訳ではない。撤退する様子のないルナに痺れを切らし、陽瀬・瑛多(中学生ファイアブラッド・d00760)と燈が同時に攻撃を仕掛けた。
     巨大な縛霊手を振り上げた瑛多と、ロケットハンマーを構える燈。地響きを踏みならすように瑛多が飛び込み、縛霊手でデモノイドの少女に掴みかかった。
     この姿では満足に対応出来ず、デモノイドの少女は縛霊手に捕まれて呻き声を上げる。ルナはそれを見て、うっすらと周囲に霧を放った。
    「随分乱暴な方法ね。……そう」
     ふ、とルナは笑った。
     瑛多は手を緩めず、ルナを見据える。
    「もうじき学園から増援が来る。逃げ場はないよ」
     瑛多が言うと、その言葉を裏付けるように赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)が携帯を出してみせる。しかしルナは、慌てる様子もなく笑った。
     ならば今すぐ呼べばいい、と。
    「今来ないで増援が来るなんて言うのは、来ない証拠ね。増援って言うのは、あらかじめ相手に言ってちゃ意味が無いわ」
    「その割に本気出さねぇじゃねえか。何余裕こいてんだ」
     怒りを露わにして、布都乃が叫ぶ。
     攻撃をしないルナ達に対して、布都乃は攻撃に転じた。後方から3名の少女に影をけしかけ、喰らわせる。
     だが、彼ら灼滅者の攻撃を受けて再びルナは霧を放った。
     そして手を止める。
    「どういうつもりだ!」
    「……そんな顔したら、あの子達が怖がるわ。やめて、そんな事をしないで」
     ルナはそう言うと、拉致されかけていた少女達を見た。彼女達との間には天神・ウルル(インサニア・d08820)が立ちはだかっていたが、ウルルはハッとして少女達を見た。
     ラブフェロモンを使ったせいでウルルに対して羨望の眼差しをしていたが、それと同時に不安も表情も現れていた。
     いかにフェロモンを使っても、許せない行為や恐怖は抑えられるものではない。
    「あなた達は怪物にされて捨てられるだけなんですよ! あなた達の居場所はあなた達自身で掴むもの……そうじゃないんですか?!」
     ルナは途惑いも無く怪物になれと命令するだけで、戦いで命を落とすか十分経過して自壊して死ぬだけだ。
     ウルルはそう、説得する。
     今仲間が使っている力も同質に近いが、あのデモノイドの少女が使うのは一度だけの……命と引き替えのものだった。
    「命を引き替えにして、それで全てを壊して、それが本当の願いなんですか? ルナが与えてくれる力は、戻れぬ破滅の道です」
     ジオッセルは強い口調で言った。
     私達なら、貴女達を救ってあげられるから、一緒に進むべき道に行きましょう。ジオッセルは少女達に、手を差しだした。
    「……じゃあ」
     事態を見守っていたルナが、この時はじめて口を開いた。

    「突然私達に襲いかかって、問答無用で攻撃を仕掛けてるあなた達は、怪物じゃないの? 力におびえてきた子の前で暴力を振るいながら、救ってあげるって……何を救うの?」

     ああ……。
     ウルルは分かった。
     突然現れたルナは、力ではなく手をさしのべた。
     突然現れた灼滅者は、手をさしのべたルナに斬りかかり、一方的に滅多打ちにしている。血まみれの手を差しだして、もう大丈夫と言う。
     今の少女達は、灼滅者達と自分達に振るわれた暴力を重ねているのだ。何の説明もなく、突然振り下ろされた拳。
    「あなた達灼滅者のやり方は、相手に反撃も弁解も許さず暴力を振るう事なの?」
     そう笑顔で言うと、ルナは手を差しだした。
     複雑な表情で様子を見ていた少女達へと。
    「行きましょう。私はあなたに、居場所をあげたいの。来てくれるなら、私はあなた達を彼らから守ってあげるわ」
    「そんなのは違う……力を振るえば、強くなればおびえなくてもいいなんて嘘だったんですから……あなたの言う居場所は、決して安住の地なんかじゃない!」
     思いの丈を叫んだウルルの前で、クリミネル・イェーガー(迷える猟犬・d14977)は小さく呟く。
     ……居場所。そりゃ、魅力的な言葉やな、と。
    「うちらもあんたらも、そしてこの子らも居場所探して彷徨ったもんばかりや。そんな喉から手が出るほどほしいものちらつかせたら、抵抗出来る訳あらへん」
     それでも。
     今は、最初に切ってはいけないカードが灼滅者達にあった。それを真っ先に切ってしまったのは、灼滅者達にとって痛恨の極み。
    「(いっそ一気に拉致るか……せやけど、もうそんな隙あらへん)」
     考えたあげく、クリミネルは攻撃を続行する事にした。
     デモノイドをまず、叩く。
    「そいつは必ずデモノイドになるはずや、自分の目ェで見てみい」
     そこから十分耐えれば、デモノイドは自壊する。
     確かに自壊を目にすれば、女の子達を説得出来ると燈も思っていた。しかし、流れは自分達に分が悪く、それまでに女の子達を連れて撤退される可能性の方が高い。
     燈は クリミネルを振り返った。
    「女の子を引き留めると、ルナも残るよ。ルナだけ追い返さないと、十分後も全員無事で戦うのは難しいよクリミネル先輩」
    「そん時はうちが囮になる」
     きっぱりと言い切ったクリミネルに、ウルルが首を振る。
     分かって居る、そうしなければ少女達を守る事が出来ないという事は、ウルルにも分かって居た。それでも闇堕ちしていいとは言えなかった。
     一気に攻勢に出る六名と、見守るしかないジオッセルとウルル。

     そこからは壮絶な戦いとなった。
     避難が完了しなければ撤退は出来ないと、葎が剣を振るう。
    「デモノイドから片付けてください!」
    「……ならば、お相手するわ。私も、おめおめと帰る訳にいかないし……どうやら相手をしてほしいようだから」
     笑顔でルナはそう言うと、少女達を見た。
     少し、待つようにと言って太陽のように笑う。ゆっくりと手を上げ、デモノイドの少女の肩を叩いた。
    「ありがとうね、お願いするわ」
    「……心得ています。あなたは……そしてこの子達は私が守る!」
     力を解放したデモノイドが、巨体を晒した。
     呆然とする少女達であったが、ルナは笑顔のまま。剣を構え、デモノイドに斬りかかる葎は攻撃を受け止めてくれている燈を信じ、ひたすら攻撃を続ける。
     デモノイドの力が燈を掴み、切り裂き、そしてギエヌイをはね飛ばした。強化一般人二名は、ルナの指示に従いギエヌイに斬りかかる。
     地面に叩きつけられたギエヌイを強化一般人が切り裂き、動きを止めた。
    「そうして……ここで終わってしまう命なのに……あなたは使い捨てにされてしまう駒で、いいというんですか」
     デモノイドの少女が必死にルナを守る姿が、葎には痛々しい。
     それでも多分、あの子は止めはしないのだ。だからこそ葎も、手抜きをせずにここで殲滅を心に誓う。
    「これ以上汝や私のような人を増やしてはいけない、ですよね」
    「こんな風に……壊れてしまいたいって言うの? 今が辛くても……諦めちゃ駄目だよ」
     デモノイドの拳を受け止め、燈が少女達に話しかける。集中攻撃で、燈の体力は限界であった。ルナはつ、と顔を上げて斧を擡げる。
     不気味な斧にヴァンパイアの力を漲らせ、掲げる。
     放たれたオーラは燈に直撃し、膝を付かせた。意識を失う燈の視界に見えたのは、あのルナのたいようのような不自然な笑顔。
     燈を庇いながら、瑛多が縛霊手を構える。
    「……せっかく出来た仲間じゃないか。ここに集まった子だって、仲間だろ。みんなで頑張れば、辛い事だって乗り越えられる」
    「守ってやるだなんて言いながら、結局仲間が犠牲になってんじゃねえか!」
     布都乃の言葉は、やや厳しめにルナへと投げかけられる。ジオッセルに抱えられた燈が下がるのを見守りながら、ルナは溜息を一つついた。
    「……あなた達は選べるの。生きる場所も、笑う場所も、そして死ぬべき時も。彼らを信じるのか、それとも私を信じるのか、どっちかしら」
     そう言うと、ルナは刃を燈の方へと向けた。
     それは、もし邪魔をするなら今度はここにいる全員を殲滅するという意思表示であった。

     全てが終わった後、教会跡には二人の少女が残されていた。
     だけど、彼女達は決して灼滅者達を信用して残った訳ではなく、デモノイドの姿や灼滅者達におびえているだけなのである。
    「最初から私達の力とデモノイドの力を見せて、この子達を怖がらせれば簡単だったんでしょうか。それとも、やっぱり戦う前にこの子達を確保してルナを撤退させるべきだったのでしょうか。それとも、強引に散らせる? ……もう、そんな議論をしても仕方ありませんけど」
     静香は自嘲するように、くすりと笑った。
     ただ、ここを荒らしたくなかっただけなのに。
     布都乃は先ほどから、自分の拳をじっと見つめていた。
     笑いながら全て奪い去った……それを今度こそ阻止したかったのに……チラリと見下ろすと、おびえた少女達の視線が布都乃の視線と交差した。
    「くそっ……何だよ、俺は同じ事をしたかった訳じゃない! なんで……」
     何でそんな目で見るんだ?!
     周囲を見回りしてきたクリミネルが、戻って来て布都乃を見る。それから状況を察して、軽く肩を叩いた。
     優しい言葉を掛ける事はなかったが。
    「……残りは全員連れ去られたみたいや。もう周りにはおらへんかった」
     ジオッセルはクリミネルから報告を聞き、こくりと頷いた。しんと冷たい風が、妙に落ち着かない。
     落ち着かない気持ちを静めるように、意識を失ったままの燈の様子を見に行った。苦しそうな表情で、燈は眠り続ける。
     その額にそっと手をやると、熱を帯びたように温かかった。
    「少し、熱いです」
    「帰る頃には目を覚ますでしょう」
     葎はそう言うと、ウルルを振り返った。
     あの二人はこれからも、ここに残るのだろうかとウルルが小さく呟く。もうここには仲間は二人しか居らず、彼女達は目の前の力におびえて居場所も何も奪われてしまった。
     その恐怖だけが、残されたのだ。
    「私も同じでした。……あなた達の気持ち、私にも分かります。だから何をしてでも、助けたかったんです。ここに居る皆、それは同じです。それだけは、分かってくださいね」
     もう二度と、ルナに会っても付いていってもいけないとウルルは少女達に話した。目を細めたウルルの目にうっすら光るものが見えた気がする。
     使い捨てにされて、実験台にされて、一瞬の力に溺れて消える。そんな人生に終わってしまう少女達を思い、言葉を濁らせた。
     瑛多はそんな二人の手を取り、お互いに握らせる。
    「二人とも、この手を放しちゃ駄目だ」
     握り会った手が、この先もずっとお互いを支えてくれるように瑛多は祈った。出来れば……自分達のように、守るべき人や仲間がまた出来るように。
     居場所を取り戻せるようにと。

    作者:立川司郎 重傷:廿楽・燈(花謡の旋律・d08173) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:失敗…
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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