超・多面体戦士 ダンバーン!

    作者:斗間十々

     それは遙か銀河の彼方からやってきた。
     ある日、平凡な高校生活を送っていたリューセイの身に流れ星の欠片が降り注ぐ。
     しかしそれは流れ星では無く、宇宙銀河文明の超アイテムであった。
     触れた瞬間リューセイの前に多面体ロボが時空を越えて現れる。
     廃棄されるはずだった試作型変形ロボットの核であり自我として同調(コンタクト)してしまったのだ。
     その偶然は、銀河の果てで繰り返される戦争への介入という結果となり、いつしか全人類をも巻き込んでいく事となる――。

     超・多面体戦士 ダンバーン!
     

     キラリ 輝く 多面体がやって来る。
     ダ・ダ・ダーン 四面体から八面体へ (今だ! 変形合体!)。

     灼滅者達が集まった教室に、全く聞いた事の無い、戦隊モノのような、熱いロボットモノのような歌が流れていた。
    「あ、皆さん。こんにちは。集まってくれてありがとうございます」
     花咲・冬日(中学生エクスブレイン・dn0117)だった。
     え、何なの今日の依頼。
     そう問い掛ける灼滅者達に、冬日はシリアス気に瞳を伏せる。
    「哀しい事件です……一般人が闇落ちして、ダークネスになろうとしています」
     闇堕ち事件――。
     人間としての意識を保ち、ダークネスと化すのを踏み止まっている者が居る事件である。
     灼滅せず、救う事が出来る。
     今回灼滅者に託されたのはそんな依頼であった。
     ――そこまでは良い。
     しかし、さっきの歌は何なのか。誰かが問えば、冬日はぐっと拳を握りしめた。
    「まずはその人の名前を……空乃・流星太さん。高校二年の男の子です。そして今の歌は、流星太さん自作アニメのオープニングテーマ曲です」
     まずは名前から突っ込んでいこう。
     一度聞いたら忘れられないようなその名前は、本人も気にしている所であるらしい。それが積もり積もって、やがて流星太は学校に行かなくなってしまった。
     幼い頃からアニメが好きだった流星太は、いつしか自主製作アニメ作りに没頭し、キャラクター設定からストーリー、果てはさっきのオープニング曲まで全て一人で仕上げるに至る。この度晴れてネット配信する事にしたのだが、緊張に心臓が耐え切れず外に出た。
     ――もしかしたら、知った誰かが見てくれるかも知れない。
     もう一日だって行けなくなってしまった学校への道をこそこそと歩いている時見つけたのは、ずっと昔のクラスメイト。小学生の時、同じアニメ好きとして話した事のある生徒だった。
     もしかしたら気付いてくれるかもしれない。或いは、ダンバーンを気に入って……と、淡い期待を胸に会話に耳を傾けた流星太に飛び込んできた言葉は――。
    『ダンバーンってネットで見たんだけどさー。ダサい』
    「……で、闇堕ちに片足突っ込んじゃったんです」
     それだけ彼にとってはショックだったのだろう。
     ダークネスの囁きのまま、その元・クラスメイトの夢にソウルアクセスしてしまう程に。
     そんな流星太の事だ。
     もし完全なダークネスとなったその時は、あらゆる人の夢を渡り、人の心を操りファンに仕上げ、またはダンバーンで頭をいっぱいにし精神を荒廃させてしまうだろう。
    「そんなの、間違ってますよね!」
     冬日もぐぐっと熱くなる。
     流星太はもうソウルアクセスを行っており、灼滅者達が対峙するのは夢の中となる。しかも、舞台は進みに進んで第九話が始まっている辺りになるようだ。
    「それは敵のパルサー軍により、友であり、先輩である戦士ミアプラがやられてしまった次の回です。ミアプラは吹き飛ばされた衝撃で時空を越え、地球に落ちてしまいます。
     哀しみと復讐に燃えながら、これから地球すら巻き込んでしまう焦燥――そんな、結構重要な回です。盛り上がり地点ですね」
     更に地上の人々は宇宙から争いを引き連れてきた異物としてリューセイを見る。
     孤独になった流星太、もとい主人公リューセイは、灼滅者達もそんな人達の一部か、もしくはパルサー軍の仲間かと話を進めるだろう。だから皆は、うまく話を合わせつつ、作りつつ、真っ当な人間に戻るよう説得するのが好ましい。
     しかしやってはいけない事もあると、冬日はぴっと指を立てた。
    「一つ、いきなり流星太さんの名前を出したり、現実を持ち出す事。
     二つ、『ダサイ』とか『センスが無い』とか、ズバリ言ってしまう事」
     確かに、夢の中だからこそなりきっているものの流星太は学校に行けなくなってしまった程、その実気弱な青年。
     現実なんて無いと耳を塞いでしまったり、心が折れて一瞬でダークネスにもなりかねない。ある意味厄介な人物ではあるが、世の中そんなに心が強い人ばかりではないのである。
    「もちろんパルサー軍もリューセイさんも実写さながら、サイキックを使ってきます。
     それにもし、説得が成功しても一度はリューセイさんの中の呪われし闇の力……ダークネスは灼滅しないといけませんから、最後はビシッと格好良く、決めちゃってください!」
     熱い夢――もとい展開に燃えていた冬日だが、はっと我に返る。
     こほんと咳払いをして。
    「それから……もし、流星太さんを助け出す事が出来たら、学園に誘ってあげてみてください。夢物語みたいな現実もあって、仲間も居て、学園生活を過ごせるって、とっても素敵な事だと思うんです」
     私も皆さんと出会えて今、幸せだからと、冬日は優しく笑んで――。
    「だからこそ! いざ行かん、新たな仲間を求めて! 出撃、シャクメツジャー!!」
     ビシィッ!
     冬日は指差し確認、号令を発した。
     ただ、
    「…………今のは少し無かったかもしれません」
     ちょっぴり自分でもどうかと思って尻すぼみになりながら。


    参加者
    七里・奈々(こっちむいてべいびー・d00267)
    細氷・六華(凍土高原・d01038)
    崇宰・亜樹(ウィッチワークス・d01546)
    犬塚・沙雪(黒炎の道化師・d02462)
    三和・悠仁(モルディギアンの残り火・d17133)
    宮武・佐那(極寒のカサート・d20032)
    大塚・左斗彌(大鎌の穢れし生贄・d20942)
    一色・紅染(穢れ無き災い・d21025)

    ■リプレイ

    ●まさか……地球軍!?
     いつもの風景。
     いつもの日常――その中に舞い降りてしまった、ダンバーンという異物。
     引き連れてきたのは、宇宙の争い。
    「クッ、どこまで行っても、俺は理解されないんだな……」
     ダンバーンに合体したリューセイは寂しげに呟いた。
     しかし今はそれを嘆いている時では無い。
     目の前にはパルサー軍、そして背後には――。
    「ミアプラ……!」
     崩れかけている仲間の姿。独りでも、戦わなくてはならない。

     ――リューセイの孤独な戦いが今、始まる!――

     どこからともなくナレーションが響き渡った。
     そしてそれを聞いていたのは同級生だけでは無かった。
    「食らえッ、この俺の……!」
    「待って!!」
     リューセイが機体をパルサー軍に向けたその時、鋭い声がそれを遮った。
     はぁはぁと息を切らせて走ってくるのは金髪のシスター、宮武・佐那(極寒のカサート・d20032)。
    「えっ、誰あの美人。あんな配役居たっけ……?」
     思わずリューセイ、もとい流星太が一瞬素に戻ったが、踏み込んだ八人の配役、灼滅者達は事情を知って乗り込んだ者達。
     それを追究せず、むしろ平然と『超・多面体戦士 ダンバーン』の住人となっていた。
    「貴方は、宇宙人さんですか……?」
    「……」
     それは、地球の人間から見た自分への真っ当な問い掛けだろう。
     答えられないリューセイの姿は、誰かに異物と言われる流星太そのものにも見えた。
    (「お友達に自分を否定されたと感じたんですね……」)
     その沈黙につきりと胸を痛めながらも、佐那は更に歩み出してゆく。
     しかし何をかを告げる前に、凜々しい命令が空に響いた。
    「今だ、撃てぇぇい!!」
    「――!?」
     驚いて振り向くリューセイを掠めて飛んでいく軌道は魔法の弾丸。
     その全ては黒く浮かぶパルサー軍へと吸い込まれていった。
    「今度は、誰だ!?」
     その視線の先に居たのは見慣れない装甲隊。
     アーマーに包まれた崇宰・亜樹(ウィッチワークス・d01546)がパルサー軍に向かい指揮を振り下ろし、その命令のままに控える影が四つ。
     被弾したパルサー軍の球体はよろめくものの、墜落には至らない。
     それを追いかける一色・紅染(穢れ無き災い・d21025)の光の刃は、どこか楽しそうに踊っていた。
    「戦い、いっぱい、倒し、ます」
    「一色さんずるいよ。でも、へえ、あれがダンバーン……かぁ」
     大塚・左斗彌(大鎌の穢れし生贄・d20942)と、その後ろに続いて仲間を庇うべくふわりと浮かんだ足の無い装甲兵、ビハインドのかいん。
     かいんは淡々と立ち塞がるのに対し、左斗彌の言葉には棘があった。
    「何、だ――?」
    「お前が、地球に争いを持ち込んだのだろう」
    「!?」
     リューセイが攻撃されるパルサー軍に呆然としていれば、低い声が降りかかる。
     その声色には左斗彌と同じ、排他的な響きがあった。
    「何――」
    「ダンバーンがいるから地球が狙われるんだ、出て行け! さあ、やってくれ。地球防衛軍!」
     それを説明口調という無かれ。
     犬塚・沙雪(黒炎の道化師・d02462)の一言でリューセイはそれが、地球が要していた兵団だと理解する。
     矢張り俺は理解されない――それでも、と、リューセイはミアプラを見る。
     崩れていくたった独りの仲間を見ながら、
    「それでも……それでも俺は戦うんだ。独りで。いや、ミアプラ!!」
     ギ、ギ――と、最後の力を振り絞って動こうとするミアプラは、まだ、何も動けない。
     だからこそリューセイはもう独りなのだと、その背が示していた。

    ●リューセイ、孤独な戦い
     カッと、パルサー軍の球体が銀河のように渦巻き輝く。
     途端次々と邪悪なる星が降り注ぐ。
     煙を払って、三和・悠仁(モルディギアンの残り火・d17133)はアーマーの具合を確かめた。
    「……損傷軽微。任務続行可能と判断します」
    「うむ。命令は続行だ、敵を排除せよ!」
     亜樹の言葉に悠仁の身が沈む。
     かと思えば高く高く舞い上がってパルサー軍の球体に迎撃する。
     その姿はまさに兵士。
     命令に忠実に、融通すら効かず。しかしその姿勢は大佐への絶対の信頼の証。
     ――というのが悠仁の役。
     なりきるのも大事だから、うん。
     依頼の為だから。
     決して演じるのが楽しいとかそういう事じゃないですよ?
     なんて、閑話休題。
    「す、凄い。パルサー軍を、圧倒してる……。それに、」
     ごくりと息を飲むリューセイは見ていた。
     地球軍は最終兵器まで準備していたのだ。
    「――そう、TAMAGOだよ」
     左斗彌がにんまりと笑ってみせる。
     その響きには力を誇示する響きがあり、友好的には至らない。
     その様子は派手なアーマーに見て取れるよう、新米兵が名を売り、勲章を勝ち勇んでいるようにも見えた。
    『そう、TAMAGOとは! 地球軍がパルサー軍を真似て作った強力な汎用卵型決戦兵器!
     地球軍の指示に従うようにプログラミングされなら自立行動までとるのである!』
     ――決して、七里・奈々(こっちむいてべいびー・d00267)の声では無い。
     TAMAGOは喋らないから。
    「俺、は――」
     リューセイは混乱していた。
     地球人達は自分を疎外する。――当然だ、自分は異物なのだから。
     けれど、地球軍はまだ自分に攻撃をしない。
     何故だろうか。そんな風に、自分はこの話を作り上げただろうかと、流星太の意識が徐々に擡げていく。
     しかし――しかし――。
    『この者達も、――やはり敵だろう?』
    「リューセイさん」
     闇から誘うようなその声を遮って、細氷・六華(凍土高原・d01038)の声が凜と響いた。
     その弓から思わせるのは狙撃手。
     確実に敵を撃ち抜くその一撃は、決してリューセイに向いていない。
    (「六華たちは、情熱を注ぐほどの夢を貶したりはしません」)
     その思いを胸に秘め、「六華たちは、そのパルサー軍とは違います」と、言葉を紡いだ。
    「……しかし、」
    「ええ、もちろん。貴方をそう簡単に味方と信じる事もまた、出来ません。貴方はどうですか?」
     その言葉にリューセイははっとする。
     自分は今何を考えていたのか?
     疎外していたのは、もしかして、自分だろうか?
     悩むリューセイを庇うように佐那が地球軍の前に立ち塞がる。
    「リューセイさん……」
     その瞳はとても悲しそうに。
    「私はこの戦いを止めたいの。貴方のお友達も助けないと!」
     視線の先にはミアプラ――そして佐那の視線は遠く、このダンバーンを鑑賞している同級生にも向けられている事に、流星太は気が付いた。
     展開される実写版・ダンバーンの被弾から護るように、同級生の前に現れている黒い一輪バイクもきっと、彼らの仲間なのだろう。
     ――この者達はやはり、自分が創り出した人物では無いと、流星太は確信する。
     その上で、彼らが自分に何かを告げようとしている事。
     そして何より、この者達は自分を――この世界を否定していないとも、流星太は気付いていた。
     しかし――。
    「うお、おおおおッ!!」
     リューセイが吼えた。

    ●一喝
    「俺には――俺は一人なんだ! 誰も理解してくれない。世界の異物は……俺じゃない!」
    『そうだ、ダンバーンの真の力をもって! 敵を蹴散らしてくれる!!』
     リューセイの心を暗闇が覆う。
     それは紛れもなくダークネスの囁きであり、その声に従うリューセイはダンバーンの銃口から灼滅者達へと光線を弾き飛ばす。
    「駄目……ダンバーン!!」
     佐那の声が空しく響く。その声を遮ってリューセイが呼んだのは、灼滅者達では無く、その心が産んだシャドウの欠片。
    「ミアプラ! 今一度、俺と戦ってくれ――!」
     まるで暗い心の表れのように、ダンバーンの背後には瀕死のパルサー軍までもが浮かび上がる。
     パルサー軍も、ダンバーンも全て同じく闇に包まれるかの演出――実際は、シャドウの力が邪魔者である灼滅者達に襲い掛ったという、夢の現実。
    「チッ、TAMAGO!!」
    『リョウカイシマシタ――ブラックホールエッグキャノン』
     リューセイの声に瀕死の片手を挙げたミアプラまでもが闇に染まった弾丸を撃ち出したが、同時に飛ぶのは亜樹の指示。
     エネルギーをチャージした全人類の希望、TAMAGOが光り輝けば拡散性のある卵型ビームを乱射する。
     ボ、ボンッと煙を燻らせながら落ちていくのはパルサー軍のみであり、地球軍の矛先は矢張りダンバーンにも、ましてミアプラにも向かっていなかった。
     ぜえぜえと肩で息をするリューセイは、光と闇その狭間で苦しんでいる。
    「やめろ、ダンバーン! 全てを放り投げて戦いに生きるなど間違っている!」
    「大尉……?」
     その叫びに、左斗彌がいぶかしんだ。
    「皆、聞け。私はダンバーンを敵と断定しない!」
    「……軍師が決めたのなら従うよ。でも、何故?」
     亜樹は一歩進み出る。
    「彼――そう、リューセイ。君にも戻るべき日々が、帰るべき場所が、守るべき人が居るはずだろう。「司令部」が君を敵と判断しようとも、私は私で判断する。それにな……」
    「?」
     アーマーに身を包んだ女は、リューセイをリューセイ個人と認めるような、そんな判断を自己で下したと言葉が語る。
     そして深く頷き、嬉々として言い切った。
    「なにより、ダンバーンの性能に心惹かれてしまったのだよ! この気持ち、まさしく(母性)愛!」
    「大尉……」
     リューセイへの防衛戦を一歩引いて見守っていた六華がその言葉に苦笑する。
     でも、とても大尉らしい――というような。
    「そうだ!」
     気が付けばリューセイの傍には白い仮面の男が立っていた。
     リューセイを責め立てる男は――居ない。
     居るのはまるで謎の師匠のようにリューセイを諭すコートの男。
    「周りをもっと見ろ、戦いはただ力を振るえば良いだけじゃない!」
     ダンバーンの機体、――シャドウの力を得たリューセイがその事を自覚してか言葉に詰まる。
    「心無き力は暴力でしかない、リューセイよ。お前にならできるはずだ」
     心のあり方を訴えるような口調は、リューセイの手を止まらせる。
     ちらりとリューセイが見たのは紅染。
     踊るように舞っていた光の刃をしまい込み、首を傾げている。
    「……一人は、寂しいです。きっと、リューセイも寂しいです」
     問い掛けるでも無いそれは、独り言のように紡がれていた。
     寂しい――それを、リューセイは飲み込んで。
    「僕、難しい、こと、よく、わからない、けど……、世界、には、色んな、人が、いて…色んな、繋がりが、あって……。
     だから、リューセイ、を、受け入れて、くれる、人、きっと、います、よ?」
     その言葉に、リューセイはどこか縋るように紅染を見た。
     その先に見たものは、排他では無く、小さな笑み。
    「僕も、リューセイ、嫌いじゃ、ないです、し」
     夢が、悪夢が崩れるような一言に、リューセイは俯いてしまう。
     掠れるような声で、問う。
    「俺は、独りじゃないのか? お前達と仲間に、……なれるのかな」
     暗い闇の囁きは止まないが、それでも、誰かを信じて――この者達を信じて、独りでは無いと信じて、良いのだろうか、と。
     ダンバーンの機体を握りしめて、未だ力をふりほどけないまま。
     だから悠仁はひくりと眉を跳ね上げた。
     見せつけるのはガトリングガン。
     この銃一つで、人は殺人鬼になれると告げるその表情は変わらなくとも。
    「ましてや、貴方ほどの力があるのであれば……使い道を誤れば、その行く先は言わずもがなでしょう。
     貴方は今、自身の力を正しく扱えていると……そう、言えますか?」
     六華の瞳も同じ。
    「貴方が本当にヒーローであるのなら。きっと、力の使い方は、他にあります」
    「うっ、あ――」
    『……ダンバーン!』
     闇の声が響き渡る。
    『俺は独りなんだ。どうせまた、お前達も、俺を笑うんだろう!』
    「リューセイさん!!」
     ――ぱぁん。
     乾いた音と、沈黙。
     ひりひりと痺れたそれは、頬を叩かれたからだとリューセイは一呼吸遅れて理解した。
     争いを求めないシスターが、ダンバーンの機体の腕を握りしめている。
    「私の知ってるダンバーンはもっと流星のようにキラキラと輝いていましたよ。だから――」
     帰ってきて、リューセイ。
     暖かく迎え入れるその言葉が、八人分。
    「――ああ、」
     リューセイが顔を上げる。
     独りではない。
     こんなにも、自分を叱って、戻してくれる人達が居る。
     輝く流星の尾は拳だけでは無く、きっと、頬を伝う熱いものも同じ色をしているはず。
    「…………皆、」
     そんな地球軍にリューセイは願い出た。
    「皆を――信じる。だからどうか、俺の中の闇を払ってくれ!
     俺は、お前達と生きたいんだ――!」
     その言葉に全員が頷いた。
    「「さあ。来い、ダンバーン!!」」
     怒りも憎しみも無く、踏み出したダンバーンと地球軍。
     ――独りでは、無い。
     ――ああ、そうだ。……ミアプラ、と。
     振り返らない背の向こうで、たった一人の理解者――で、あったモノが崩れていく。
     得たものは確かなる拳。
     暖かな仲間達。
     身の内の闇が払われれば消えるミアプラはそれでも、最後に笑って手を振ってくれた気がするんだ――。

     次回! 超・多面体戦士 ダンバーン
         『 仲 間 』

    「で、最後まで浮かんでたあの卵は何だったんだ?」
    「……」
     ED後の五分劇場にて。
     リューセイが尋ねても、TAMAGOは最後まで喋らなかった。
     喋らないったら喋らない。
     奈々は卵ですから。

    ●キミは、独りじゃない
    「あの――何か、迷惑掛けたみたいで……」
     現実に戻った流星太は、リューセイの勢いは何処へやら、意気消沈してしまっていた。
     夢と現実は違う。
     また突き放されてしまうかと不安がるような流星太の手を、佐那がしっかりと握りしめた。
    「さあ、流星太さん、一緒に行きましょう!」
    「あ……」
     その手に、ほんの少し頬を染める流星太。
    「あ、宮武さんは男の子ですよ。私も気付きませんでしたが」
    「な、何だって――!?」
     そして悠仁による瞬殺。
     崩れ落ちる流星太だが、よくよく聞けば何をか呟いていた。亜樹が手を貸すがてら耳を傾けてみると、それは。
    「ヒロインは男の娘……それもアリか。いや、いっそ男の娘を全面に押し出したダンバーン……はっ、そういえばあなたもダンバーンに愛を注いでくれた。まさかのダイバーン・主人公がモテモテな深夜放送枠ストーリーに!?」
    「違う!?」
     ダンバーンの明日は何処へ向かうのか。
     八人と一人が光り輝く帰路に着く。
    「流星太ちゃんの次回作をお楽しみに! ってねー」
     にっこり笑った小柄な少女――そういえば見なかったその姿に首を傾げる流星太は、後に知る。
     それが、謎の兵器TAMAGOの正体であったと――。

    作者:斗間十々 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 12/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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