路地裏スパイダーズ

    作者:本山創助

    ●新宿の路地裏
     深夜二時。
     怪しい三人組が、人気の無い路地裏を歩いていた。
     一人目は、肩に西洋剣を担いだ、学ラン姿の中学生男子。はだけた胸元からは、中学生とは思えない精悍な肉体が覗いている。
     二人目は、度の強いメガネが印象的な、小学生四年生くらいの男の子。紺の短パンに黄色い半袖シャツ。右手には、大振りのサバイバルナイフをぶら下げている。
     三人目は、セーラー服を着た、骸骨。その後ろ姿は、ストレートヘアーの女子高生にしか見えないだろう。骨は青みがかかった水晶で出来ており、腰には日本刀を下げている。
     さらにもう一つ。
     彼らの頭上を、大きな影が覆っていた。
     ビルとビルの間を、足を突っ張りながら移動するそのシルエットは、八本足の足長蜘蛛を連想させる。
     彼らは一言も発せず、身を潜めながら、路地裏をさまよう。
     彼らを目撃して生きて帰った者は、居ない。

    ●教室
    「キミ達には、新宿に行ってもらいたいんだけど」
     賢一が説明を始めた。

     深夜二時、新宿の路地裏に、病院勢力の灼滅者を元にしたアンデッドが現れるんだ。キミ達にはこれを灼滅してもらいたい。
     このアンデッドは、人間形態で武器を操ったり、ダークネス形態でサイキックを操ったりしてくる特性があって、普通のアンデッドよりも強力なんだ。どうやらこの手のアンデッドは、新宿周辺に出現するらしい。何かを探しているようなんだけど、それが何かは分からない。人目を避けるように行動しているけど、誰かに見つかったらその人を殺そうとするから、放っておく訳にはいかないんだ。
     今回戦う灼滅者アンデッドは、小学生、中学生、女子高生、そして足長蜘蛛の四体で行動している。小学生と中学生はキミ達二人分、女子高生と足長蜘蛛はキミ達三人分程度の強さだよ。全員共通して人造灼滅者のサイキックを使ってくる。その他の細かい部分に関しては、別紙の『敵戦力まとめ』を参考にしてね。
     敵戦力の総和は、キミ達を上回っている。でもキミ達には、それを跳ね返せるだけの、情報とチームワークがあるんだ。みんなで力を合わせれば、きっと大丈夫。
     それじゃ、がんばってね!


    参加者
    葛木・一(適応概念・d01791)
    忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)
    更科・由良(深淵を歩む者・d03007)
    アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)
    トリハ・エーレン(護盾の紅十字・d05894)
    ファリス・メイティス(黄昏色の十字架・d07880)
    夕鏡・明(烟・d23002)
    ヴィア・ラクテア(歩くような速さで・d23547)

    ■リプレイ


     オフィスビルに挟まれた、一方通行の狭い路地。
     切れかかった街灯が、三体の歩く死体を黄色く照らす。
     その十二メートルほど上には、悠然と歩く巨大な足長蜘蛛。
     敵達と灼滅者達の距離は、約三〇メートル。
     両者とも、歩み寄るペースを変えない。
    (「まさかこんな形で再会とはね」)
     ヴィア・ラクテア(歩くような速さで・d23547)が、メガネ小学生を見つめた。左に首をかしげながら、舌をだらりと垂らしている。そこに、あの頃の面影は無い。
     ヴィアの白目が黒く染まっていった。銀髪は漆黒となり、ぶわっと伸びる。
     あと二〇メートル。
     忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)が、祈るように鍵のペンダントを握った。
    「さあ、始めましょう」
     押さえ込まれていた衝動が、今、解放される。
     学ラン中学生が、肩に担いだ西洋剣を左手に下げた。
     あと十五メートル。
    「Bete nur(ただ祈れ)」
     スレイヤーカードが光を放ち、トリハ・エーレン(護盾の紅十字・d05894)の左腕が、西洋甲冑風の縛霊手に包まれた。
    (「……すぐ楽にしてやる」)
     縛霊手を構えるトリハ。
     骸骨女子高生が、両手を胸にあてながら、祈るように空を見上げた。
     その胸から青い炎が溢れ出し、奔流となって灼滅者達に襲いかかる!
     路地裏が、青く染まった。
     冷気に頬と耳を切られながらも、玉緒はぐっと腰を落として三体の動向を伺った。その背中に降ってくる、何か。
     ドンッ!
     押しつぶされ、玉緒はアスファルトに這いつくばった。体をひねって上を見る。
     空を覆う、紫色のスペードマーク。
     そしてもう一回、ドンッ!
     足長蜘蛛の足が、玉緒のみぞおちにめり込む。
    「はうぅぅっ……!」
     熱いモノが体内に流れ込み、爆ぜた。
     血が逆流し、口から噴出!
     真っ赤に染まった瞳に映るのは、空に弾けたメガネ小学生。
    「ぴゃぁうっ!」
     体から染み出す黒い殺気が、泥沼のように重くのしかかる。
     更科・由良(深淵を歩む者・d03007)が、歯を食いしばりながらメガネ小学生を睨んだ。肺と喉に、刺すような痛み。まるで空気に無数の針が混入してるかのよう。
     槍を振りかぶる由良。その脇腹に、ズンッ! 重い一撃がめり込む。学ラン中学生のボディーブローだ。そのまま右腕を突き上げ、由良を天高く持ち上げた。
    「がはっ」
     強烈な吐き気。だが、息すら吐けない。
     由良の長い黒髪が、学ラン中学生の顔に落ちる。濁った瞳が、無感動に由良を見上げていた。
    「シャキーン!」
     葛木・一(適応概念・d01791)の元気な声が、路地裏に響いた。
     背中に感じる、熱い力。由良は呼吸を取り戻した!
     学ランの右腕をとりながら体をひねって、その肩に着地。
     自陣のど真ん中に飛び込んでいたメガネ小学生を確認するや、弾丸のように跳躍!
     メガネ小学生が四つん這いになって由良を見上げた。
    「ぴょっっ!」
     ズガガッ!
     槍がアスファルトに突き刺さる。彼は真横にひとっ飛び。その腹にマテリアルロッドが食い込んだ!
    「爆ぜろ!」
     ファリス・メイティス(黄昏色の十字架・d07880)が叫び、メガネ小学生は吐血! 受け身も取れずに地を転がって、ビルの壁に激突!
     ずれた眼鏡を押し上げ、ファリスを睨みながら立ち上がる。ふと、頭上に殺気。
     見上げれば、空から舞い降りる、青のポニーテール。
     アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)が、振りかぶったマテリアルロッドをビュン!
     肩にズドン!
     たまらず尻餅をつくメガネ小学生。その脳天に、夕鏡・明(烟・d23002)の異形化した右拳が!
    「ぴ……」
     グシャァッ!
     顔面からアスファルトに突っ込むメガネ小学生。
    「……ぃぃやうっ!」
     その首を思いっきり振って、明の右腕をはねのける。割れたメガネから、怒りに燃える瞳が覗く。
    「捕縛する……!」
     その頬に、トリハが左フック!
     ガントレット越しのドデカい一撃を食らって、メガネ小学生はアスファルトを滑りながら、次いで転がりながら吹っ飛んでいった。
     その先には、血を吐きながら膝をつく玉緒の姿が。
     ガリガリガリガリ!
     メガネ小学生が、アスファルトにナイフを突き立てバランスを回復。勢いそのままに、ナイフを構えて玉緒に突撃!
    「あっ」
     玉緒の腹を、漆黒の矢が射貫いていた。感じたのは、ヴィアの匂いと温もり。血に溺れていた喉が、スッと楽になる。さらに、ファリスのナノナノ『シェリル』のふわふわハートが玉緒を包み込み、一の霊犬『鉄(くろがね)』の瞳も玉緒を癒やす。
     と、同時に、メガネ小学生が玉緒の懐に飛び込んだ。
     ズブリッ!
     玉緒のポニーテールがパッと花開き、すぐにしぼんだ。
     ズズズッ……。
     大ぶりのサバイバルナイフが、玉緒のへその下を、笑みを描くように切り裂いていく。
     絶叫する玉緒。
     そこに、割り込む鉄。
     メガネ小学生が跳び退いた。頬に付いた返り血をなめて、ニヤリ。
     だが、何かヘンだ。
     その首が、回転しながらずるりと滑った。
    「……後ろに跳んだのは、失敗だったわね」
     メガネ小学生の頭が、アスファルトに転がった。体も、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
     ひゅんっと鋼糸をたぐり寄せる玉緒。懐に飛び込まれたときに、首に回しておいたのだ。
     玉緒の両脇を、鉄とシェリルが支える。
    「ありがとう。お陰で――」
     助かったわ、と言おうとして、玉緒は硬直した。
     目の前で、由良が蜘蛛の足に貫ぬかれていたのだ。


     由良の手から、妖の槍がこぼれ落ちる。
    「ぐうぅっ!」
     歯を食いしばりながら、由良は体が宙に浮くのを感じた。蜘蛛が足を引き上げている。次に感じたのは、重力。胸の穴から血が溢れ、由良は蜘蛛の足を滑り落ちていた。
     蜘蛛の腹で光るスペードマークを見ながら、由良は両手を掲げた。
     指先に魔力が集結し、弾ける。
     ボスンッ!
     スペードマークに風穴が空いた!
    「ルルルン♪」
     歌うような声を発する蜘蛛。
    「ヨイショッ!」
     落ちてきた由良を、一がお姫様だっこでキャッチ!
     すかさず、胸の穴に防護符をぺたり!
     そこに襲いかかる、かまいたちのような烈風。
     骸骨女子高生が、日本刀を振り抜いていた。
     深手の由良の前に、玉緒が立つ。腕を十字にして、風を受け止めた。
     風が去ったかと思えば、眼前に居るのは学ラン中学生。振りかぶった西洋剣で、玉緒を袈裟切りだ!
     ズシャァッ!
    「玉緒さんっ」
     明が泣きそうな悲鳴を上げる。
    「攻撃は引き受けるから、役割に専念して頂戴」
     かなりのダメージが蓄積しているが、玉緒の目はまだ死んでない。
    「もう少し頑張ってください」
     ヴィアの矢が、再び玉緒を射貫き、癒やした。鉄とシェリルも玉緒を癒やす。
    「次は蜘蛛だよ!」
     マテリアルロッドをアスファルトに突き立て、アイティアは両腕をブンと振った。渦巻く風の刃が、蜘蛛の足を切断! 黒く長細い足が一本、空から降ってきた。
    「ルルルン、ルン♪」
     また歌う蜘蛛。おそらく、これは奴の悲鳴なのだろう。
    「もっと歌え!」
     ファリスが天を指さすと、裁きの光が一直線に立ち昇った。判決は、ギルティ!
     足の付け根を貫かれ、バランスを崩す蜘蛛。
    「大人しくしてもらおうか」
     トリハが縛霊手を振ると、蜘蛛の周囲にレーザー光のような結界が張られた。
     結界に焼かれながらも、蜘蛛は六本足で体勢を立て直す。
    (「病院の人たちを攻撃するのは思いきりがいるけど……」)
     明が両手を掲げ、風を呼ぶ。
    「ちゃんとやんないといけないよね」
     風を纏った両手をブンと振る明。その前に、学ラン中学生が立ちはだかった。
     ズバババッ!
     学ランが斬れ、筋金の入った肉体が露わになった。
     灼滅者達は蜘蛛に集中攻撃をかけるが、蜘蛛はなかなか墜ちない。
     骸骨女子高生が回復に回ったからだ。学ラン中学生もよく庇った。
     その間、学ランは冷たい炎と強烈な斬撃を、蜘蛛は冷たい炎と毒弾を繰り返し使い、前衛陣をみるみる消耗させていった。
     ビュゥッ!
     骸骨女子高生が、久々に攻勢に回った。冷たい炎が前衛陣を飲み込む!
     ビュゥウゥゥッ!
     さらに、学ランの冷気が覆い被さる!
     ふわふわ飛んでいたシェリルが、アスファルトに落ちて砕け散った。
     ドン!
     今や三本足になった蜘蛛が、氷漬けになった鉄を踏み砕く。
     玉緒は――由良の前に立ったまま固まっていた。もう動けない。
     由良は、地を這っていた。満身創痍だ。もはや回復は意味をなさない。
     腕を伸ばし、落とした槍を握りると、仰向けに寝転んだ。
     皆が蜘蛛を攻撃している。蜘蛛の歌声が聞こえてくる。
     由良は呼吸を整えて、待った。
    「わしはここじゃ。かかってこい……!」
     蜘蛛の足が上がる。ボッと空気を裂き、その足が振り下ろされた。
     軌道は読めている。
     パキィンッ!
     槍を突き出し、顔面を踏み抜こうとした蜘蛛の足を、その切っ先で止めた。足の先から伝わる冷気は本体まで駆け上り、スペードマークを水色に変える。
    「ルン……ルン……♪」
     壁に突っ張っていた蜘蛛の足が滑り、皆の上に落下。
    「うわわわっ」
     迫り来る巨大な蜘蛛に悲鳴を上げる明。
     その頭上で、蜘蛛はふわっと霧散した。


     骸骨女子高生が、由良に突き立てた刀を引き抜いた。
     そこにトリハの縛霊手が襲いかかる!
     ガンッ!
     骸骨女子高生は腕を交差してガード! その腕に、網状の霊力がまとわりつく。
     腕を伸ばしきったトリハの腹に、学ランの右拳がドスンッ!。
     くの字に折れるトリハ。胃液が逆流する。
    「頑張れトリハ!」
    「倒れられても手間がかかりますので」
     一の防護符とヴィアの矢が、暗転しかかったトリハの意識をつなぎ止める。
    「次は骸骨!」
     アイティアが、アスファルトに突き刺していたマテリアルロッドを引き抜いた。
     学ランはトリハを地に叩きつけると、走るアイティアの前に立ちふさがった。
     学ランの上半身は、すでに裸である。血の気のない体には、無数の傷跡。左胸には、致命傷と思われる銃創――それは、この戦いでついた傷では無かった。
    「そんな体になってまで……」
     アイティアが唇をギュッと結んだ。わき上がる悲しみは、黒幕への怒りへと変わる。
    (「許せない、絶対に」)
     マテリアルロッドを地に突き立てると、その上で倒立するように高く飛び上がった。学ランを飛び越えて、空中で一回転。狙うは骸骨の頭だ。
     ガン!
     骸骨女子高生の左腕が、アイティアのマテリアルロッドを受け止めた。が、流れ込んだ魔力が腕を吹き飛ばす!
    「キシィィィ……!」
     歯の隙間から息を吐くような悲鳴を上げて、骸骨女子高生がバックステップした。左前腕は、割れた氷像のように、綺麗な断面を残して失せていた。
     ファリスが骸骨女子高生の懐に飛び込む。
    「喰らえ!」
     腰にためた両拳を、一気に解放!
     そこに学ランが割り込んだ。
     ファリスの百裂拳が、学ランを何度も打ち据える!
     その隙に、明がマテリアルロッドを低く振った。
     骸骨女子高生の膝にヒット!
     彼女は足をすくわれるように転倒!
    「シィィャァー!」
     両膝を付いたまま、天を仰ぐ骸骨女子高生。その胸から、青い炎!
     後衛陣は、今初めて、この冷気を知った。
     トリハの縛霊手が、骸骨女子高生の頭上で十字を切った。彼女の周囲に、結界の光線が浮かび上がる。
     斬ッ!
     結界が完成した瞬間、学ランの横薙ぎがトリハの腹を斬った。
     両膝をつき、顔面からアスファルトに倒れるトリハ。
     残るは五人の後衛陣のみ。
     敵は冷気の炎と強烈な近単攻撃を繰り返しながら、効率よくダメージを稼いでくる。こちらの攻撃は、学ランが割って入るせいで、ダメージの集中が今ひとつ。
     ファリスのマテリアルロッドが、骸骨女子高生の脇腹をぶち抜く!
     砕け散った青水晶が、アスファルトにばらまかれた。
     間髪入れずに、明が長距離右ストレート! 直線的な軌道を描きながら、右腕は膨れ、伸び、肥大化して、通常のリーチでは届かない相手に襲いかかる!
     ドギャッ!
     喰らったのは学ランだ!
    「オオオオオッ!」
     学ランの気合いと共に、冷気の渦が皆を飲み込む。
     その後を追うように、癒やしの霧が路地裏に満ちた。
     ヴィアの夜霧隠れだ。
     霧に隠れた二人を見て、ヴィアは思う。
    (「君達はいつぞや病院で会いましたよね。もう会えないかと思ってましたよ……」)
     霧でアンデッドの特徴を隠してしまえば、やはり、仲間にしか思えない。あの二人が冗談を言いながら笑っていたのを、見たことがある。
     なのに、今は――。
     骸骨女子高生の日本刀が、ヒュン、と弧を描く。霧を横一文字に引き裂きながら、鋭いかまいたちが皆を切り刻んだ。
     血を吐きながら膝をつくヴィア。
    (「あなた達の無念、全て僕が背負ってあげます。僕達は壊れた人形なんかじゃない」)
     薄れ行く意識の中で、ヴィアは黒幕への復讐を誓った。
     ファリスの百裂拳は、またもや学ランに阻まれた。が、ファリスは手応えを感じていた。
    「もう一押しだ!」
    「トドメ行くよ!」
    「うん!」
     ファリスが叫び、アイティアが応え、明が即座に反応する。
     振り下ろされたマテリアルロッドが、学ランの肩にめり込む!
    「オオオッ!」
     たまらず両膝をつく学ラン。相手の攻撃を跳ね返すような気合いは、明の一撃と共に打ち砕かれていた。
     ドガッ!
     アイティアのマテリアルロッドが、学ランの腹ごとアスファルトを貫く。
     学ランは、眠るようにまぶたを閉じた。
     路地裏が、再び青く燃え上がる。
     もう何度目か分からない、骸骨女子高生が放つ、冷気の炎。
    「ひゃううぅ……」
     明が、ギザギザの歯を打ち鳴らしながら、倒れた。
     ――あ……負けた?
     クルセイドソードを構えながら、一は次の攻防をシミュレートした。回復は論外。三人とも癒やせぬ傷で満身創痍。どちらにせよ、次の一撃で三人同時に刈り取られる。とはいえ、攻撃に転じても、一ターン届かない。
     骸骨女子高生が、日本刀を構えた。
    「もう気合いで何とかするっきゃねぇぜ! 突撃ーっ!」
     己の魂が肉体を凌駕することを信じ、三人は一丸となって跳びかかった!
     二本の西洋剣で袈裟切り!
     ロッドでブン殴り!
     吹っ飛ぶ骸骨女子高生。それでもまだ、立ち上がる。
     そして、日本刀が一閃――。
     しなかった。
     骸骨女子高生は、日本刀を振りかぶったまま、硬直。
     右腕がトリハの結界に触れたのだ!
    「せめて、その檻から出してあげる」
     ファリスの百裂拳が、ついに、骸骨女子高生に届いた。
     水晶の砕け散る音が路地裏に響き――そして、静寂が訪れた。
    「はぁぁーっ」
     大きく息を吐きながら、アイティアが武器を放り投げてへたり込んだ。
     鉛のように重くなった両手を胸の前で組み、目を閉じる。
    「今度こそゆっくりと休めますように」
     心の底から、そう願う。
     この時のアイティアは、間違いなく、敬虔なシスターだった。

    作者:本山創助 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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