最後の放浪

    作者:相原あきと

     新宿都庁方向のビル街は帰宅ラッシュ時間を過ぎれば歩道を通るビジネスマンの数も減る。まして深夜を回ろうという時間、ビルとビルの裏路地とも言うべき暗がりを通る人間はいない。
     そんな人気の無い路地を、5人の人影がゆっくりと移動していた。
     5人中4人はシスターのような格好をしており、5人目の1人だけが神話の悪魔のような姿をしていた。
     彼ら……元病院の灼滅者アンデッドたちは、人目を裂けるように暗がりを移動する。

    「みんな、病院の灼滅者の死体と元にしたアンデッドが現れたのは知ってる?」
     教室の集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が言う。
     このアンデッドは灼滅者のような姿で武器を操ったり、ダークネスのような形態でサイキックを使ったりして攻撃してくる特性があり、普通のアンデッドよりもかなり強力な敵となっているらしい。
    「みなに向かって貰いたいのは都庁付近のビル街にある裏路地よ、みなが到着する頃、アンデッド5人がウロウロしているの」
     
     珠希はそこまで言うと、アンデッド達の戦闘能力を説明する。
     シスターのような服装を着たアンデッド4人はエクソシストと人造灼滅者に似たサイキックを使い、攻撃も回復もバランスよくこなすらしい。神秘能力が特化しているという。
     残った1人、ソロモンの悪魔っぽいのは魔法使いと人造灼滅者、さらに日本刀と無敵斬艦刀に似たサイキックを使い、術式が得意。回復役のくせにブレイクを狙ってくるという。

    「彼らは元々チームとかで動いていたのか、アンデッドになっても同じようなルーチンで攻撃してくるの。簡単に説明すると……」

     ・シスター4人
     単遠で1人集中攻撃→味方回復→繰り返し
     集中攻撃する優先は、メディック>クラッシャー>スナイパー>ディフェンダー>ジャマー>キャスター

     ・悪魔っぽい1人
     基本的に敵のエンチャントを列でブレイク
     ただしKO間際の人がいた場合はフィニッシュで戦闘不能を狙う。

    「すでにアンデッドだし、それ以上複雑な行動は取らないけど、普通にバランス良い配分で戦えば、大変なことになると思う……なんとか、敵の行動パターンの穴を見つけれれば良いんだけど……」
     そこまで説明すると珠希は灼滅者全員を見まわし。
    「元灼滅者のアンデッド達は、新宿周辺で何かを探しているようにも見えるけど……それが何かはわかっていないわ。それについては事後に調査するとして、今はとにかく目の前のアンデッド5体を灼滅する事に集中して」
     ーーと、締めようとした珠希が「あっ」と言葉を濁して最後にこう言った。
    「もし、もしも簡単に終わっちゃったら……その路地を抜けた先にラーメンの屋台が来るみたいで、通の中じゃ有名な幻のラーメン屋台らしいから……ま、まぁ、行っても良いんじゃないの!」
     そっぽを向きつつ、ちょっとした情報を教えてくれる珠希であった。


    参加者
    リアノア・アイゼンガルド(金色の夢・d06530)
    太治・陽己(薄暮を行く・d09343)
    犬蓼・蕨(犬視狼歩の妖異幻怪・d09580)
    結城・麻琴(陽烏の娘・d13716)
    三澤・風香(森と大地を歩く娘・d18458)
    鵙井・凍氷(偽映氷翼・d23520)
    アビゲイル・ダヴェンポート(スカイクリスタルラーヴァ・d23703)
    川原・香代(放浪者・d24304)

    ■リプレイ


     深夜の新宿、その裏路地で灼滅者達は病院の元灼滅者アンデッド達と相対していた。
    「病院の皆さんが何を探しているのか、私には分からないことですが」
     呟きつつ小さく封印解除の言葉を続けるのは三澤・風香(森と大地を歩く娘・d18458)。
    「何にせよ私達にとって良くないものの気がします。だから、絶対に灼滅してみせます」
     決意を込めて睨めば、目の前で立ち塞がるアンデッド達が光彩の無い瞳で見つめてくる。4体はシスターの格好をしており、最奥の1体は悪魔の姿だ。
    「神など信じてはいませんけど、修道院に居候中の身としては……少し複雑な気分ですね」
     川原・香代(放浪者・d24304)が呟きつつ、霊犬のアスラと共に皆を守れるよう前へ出る。
    「誰よ、誰よだれよ! こんなことするの、誰よ」
     灼滅者側の最後列から声をあげつつジャッジメントレイで悪魔に攻撃するのはアビゲイル・ダヴェンポート(スカイクリスタルラーヴァ・d23703)だ。
    「絶対、許さない」
     それは仲間の死体を利用されたことに対するアビゲイルの怒りだ。
    「うん! 全力でやるんだよ!」
     オーラの固まりを全力で悪魔へ撃ち放ちつつ犬蓼・蕨(犬視狼歩の妖異幻怪・d09580)が叫ぶ。すでにサウンドシャッターも殺界形成も使われ一般人が来る心配は無い。もっとも蕨に言わせると。
    「ふっふっふー、オオカミの威厳で、音が漏れない!」
     とかなんとか。
     しっぽをフリながら自信満々な蕨に対し、「なら遠慮無く」と微笑むのはリアノア・アイゼンガルド(金色の夢・d06530)。
    「死者の眠りを妨げるのは命の冒涜……」
     呟きつつ手を持ち上げると、自身の影から引き上げられるように黒い球体が浮かび上がり、じょじょにその形を変えていく。
    「彼女達が何を探しているのか気になりますが、今はもう一度安らぎを与える事を先決に考えましょう」
     球体は今や鎌首をもたげた巨大な蛇へと姿を変え、死の国の使いとして悪魔へと喰らいつく。
     影の蛇が悪魔へ食らいついたその瞬間、即座に間を詰めたのは結城・麻琴(陽烏の娘・d13716)。
    「まるで心が痛まないって言ったら嘘になるけど……」
     シスターの1体が麻琴の抗雷撃をくらい吹っ飛ぶ。
    「その姿のままにするのは忍びないわ、ちゃんと終わらせて、あげる」
     グッと拳を握りこみ構える麻琴に、シスターたちが視線を向けるが――。
    「!?」
     シスター4体の動きが止まる、気がつけばその足下に魔法陣が展開、一斉にパラライズが発動する。
     麻琴は距離を取り仲間に視線だけで礼を送る。
     それに答えるのはグリフィンに似た鳥と獅子のキメラ、人造灼滅者の鵙井・凍氷(偽映氷翼・d23520)だ。
    「最期の最後まで利用する気かよ……くそ、"落とし前"はきっちり付けてやる」
     だが、敵もやられてばかりではない。悪魔が灼滅者の前衛に月のごとき衝撃が与え、同時にシスター達が4発のジャッジメントレイに似た業を発動させる。
     天から降り注ぐ4条の光、それらはすべて狙い違わず太治・陽己(薄暮を行く・d09343)を貫く。
     ドドドドッと光条が降り注ぎ、舞い上がる砂煙。
    「(灼滅者として死ぬ事が出来たとしてもダークネス化の宿業から逃れられない……か)」
     煙が去った時、そこに陽己はただただ立っていた。
     彼らにとっては灼滅する事だけが救い……それはわかっている。わかっているが……。
     ――カラン。
     陽己は鞘を投げ捨てる。
    「それじゃあ、釣り合わないだろう」


    「聞こえているかわからないけど……言っておくわ。生き残った人たちは無事よ、フトコロの広い、学園に合流できたから」
     アビゲイルが無駄とわかりつつ元仲間たちに語りかける。
    「だから……」
     そして強く、強く握った拳にオーラを集め最奥の悪魔へ。
     オーラの固まりが直撃したのを確認し。
    「だから、安心していってね。あとでちゃんと手も合わせるわ。それがここのフーシューだもの」
     目の前の4人に知り合いはいなかったが、病院出身者にとっては辛い戦いだ。
     そしてそれに追い打ちをかけるように現実は灼滅者を追い立てる。
    「くっ、やっぱり連続じゃ」
     悔しげに声をあげるのは麻琴だ。
     作戦は最初に最奥にいる悪魔を撃破するというものだった。しかし麻琴は遠距離を狙えるのは導眠符のみ、仕方がないので連続で使用するも悪魔に見切られる。得意の鋼鉄拳を使いたいが敵前衛がいては近距離の技は届かない。
    「せめて」
     連続使用を止め防護符での回復を混ぜるが苦肉の策でしかない。
     結果、狙われている陽己に飛ぶ防護符。
     だが飛んできた符は2枚。
     見れば麻琴だけでなく風香も飛ばして来ていたのだ。
     仲間を庇いながらとはいえ、悪魔へ届く攻撃が影喰らいしかなかった風香も、つまりは麻琴と同じ選択をせざるをえなかったのだ。
     だが、遠距離に届くサイキックを2種類使いこなせれば良いというわけではない。
     リアノアの呼んだ巨大な影蛇が尻尾をブンと振るうと刃と化して悪魔を襲う。しかし悪魔はそれより早く詠唱を行い防護陣を展開、その攻撃を回避。
     悪魔の得意な能力は術式である。見切られぬよう影喰らいと斬影刃を交互に使うリアノアだが、その片方が相手の得意能力の技であるせいで2回に1回は思うように命中しないのだ。
    「ちっ」
     舌打ちを打つのは凍氷、悪魔を倒すために準備していたのはコールドファイアと斬影刃、悪魔の足下から影で出来た氷の茨を発現させるも悪魔に回避される。つまりリアノアと同じ結果だ。もっとも凍氷は、即座に斬影刃を諦めシスター用に用意していた除霊結界を使いだしただけましだったのだが……。
    「せっかく一緒に戦えるというのに……」
     香代はそう言い唇を噛む。遠距離サイキックは1つのみ、それも術式のマジックミサイルでは中々悪魔に命中せず。
    「アスラ、行って」
     しかし香代の判断は早かった。長期化しそうだと判断するや否や、即座にアスラへ下がるよう指示。盾役として傷を負っていたアスラに敵の攻撃が集中する。
     思ったように悪魔にダメージを与えられない灼滅者、対するシスター達はまるでルーチン行動のように攻撃した後はそろって悪魔を回復させる。やがて……。
    「……アスラ」
     相棒が香代の方を見ながら消えていく。
     霊犬を消滅させたシスターの目に感情は無い、機械仕掛けの人形のように攻撃を繰り返すのみだ。
     灼滅者のまま死ねど、この結末か……。
     続く戦いの中、陽己が仲間を回復させつつ思う。
    「陽己さん!?」
     目の前に割り込んで来た風香が陽己を庇う。
     ハッと我に返る陽己。
    「すまない……考えるべきは今ではない、な。戦いに集中する」
     そう意識を戦闘に戻す陽己だが、シスターの数は減っておらず4体目が放つ光条が陽己に直撃する。
    「(お、俺は……)」
     灼滅者の最後は2択だ、闇落ちしダークネスとして死ぬか、灼滅者のまま死ぬか。
     踏みとどまった陽己、だがその時なぜか一番遠くにいるはずの悪魔と目が合った。
     ズンッ!
     遠くで大上段から打ち下ろされる巨剣の一撃は、衝撃波を伴い陽己へ迫り……――。
     魂の力で凌駕する事すらなく、陽己が倒れ伏す。
    「おおかみは、仲間を大切にするのさ!」
     蕨が叫び、両手から放ったオーラがキヤノン砲のごとく悪魔の胴体にクリティカル。煙をあげて倒れた悪魔が灼滅される。
     1人仲間は倒されたが、残るは近接で攻撃可能のシスター4体だ。
     蕨はシスターたちに向き直ると宣言した。
    「さあ、暴れられる時間なの!」


     陽己に代わって治癒へ回ったのは麻琴だった。
     シスター4体が一斉に麻琴を指差す。
     同時、裁きの光が麻琴へと降り注いだ。
     1つ目。
     防具の効果も手伝いぎりぎり回避。
     2つ目。
    「麻琴さん!」
     風香が身をていして庇ってくれた。
     だが、そこまでだ。
     3つ目と4つ目の光が無情にも麻琴の体を貫く。
     消えそうになる意識を魂の力で繋ぎ止める麻琴。
    「せ、せっかくバトルが、楽しくなって来たところじゃない」
     次はシスター達が自己回復を行うはず、それなら……。
     しかし、全てが思い通りとはいかない。
    「くぅぅ!?」
     悔しいのか何か言いたいのか、唇を噛みしめながら声を出す蕨。
     得意の近接戦なのだが、見切られぬよう交互に放つサイキックのうち片方、フォースブレイクが思った以上に命中しないのだ。
     シスター達が得意なのは神秘、神秘攻撃は回避されやすい。
     灼滅者達の攻撃が続く中、一人決断する麻琴。
     手にした防護符を握り捨てると、そのまま拳にオーラを纏わせる。
    「どうするつもりですか?」
     麻琴を庇えるよう近くにいた風香が聞く。
    「守りに入るのはさ……ほら、あたしの柄じゃないのよね」
     次に来るシスター達の行動は自己回復だ。一か八か。
     シスター達の元へと一気に駆け込んでいく麻琴。
    「援護する」
     凍氷の声が聞こえると同時、シスター達の足下に魔法陣が出現、行動を阻害。
    「いいね! ありがと!」
     血を流しながらも笑顔で笑う麻琴。
     全てを込めて鋼鉄のごとき拳をシスターの胸へ。
     吹き飛び動かなくなるシスター。
     直後、残った3体が自分達の傷を癒すためにサイキックを使用。
     麻琴は自己の回復を仲間に頼りつつ拳をあげる。
    「さぁ、まだバトルは終わらないよ!」

     戦いは続く。
     自らを回復したシスター達が再び麻琴を狙う。
     だが、その視線を遮るように香代が立つ。
    「私が防ぎます。これ以上、させません」
     そう言って自らの瞳にバベルの鎖を集中させる。
    「大丈夫ですか?」
     同じく麻琴を守るため横に立った風香が香代を心配する。
    「大丈夫……誰かと共に戦うのは、久々の気がします……だから――」
    「ふふっ、そうですね」
     正直、風香も香代も序盤から庇い続けていた。長期戦になって一番苦しいのはこの2人だったろう。
     しかし、それでも2人の気持ちは未だ前だけを見つめていた。
    「あきらめないのが武蔵坂流?」
     そんな2人にアビゲイルが聞く。
     もちろんと返す言葉に頷くと、シスターの1体へジャッジメントレイを撃ち放ち。
    「あたしも諦めないわ。ごーに入ったらゴウに従えって、あら、GOだったかしら?」
     ここに来て真骨頂とばかりに縦横無尽に忙しく戦うのはリアノアだ。
     回復に攻撃にとチャンスを逃さず最適解を常に導き続ける。
     シスター達が攻撃に移ろうと再び灼滅者達へ向き直ろうとした瞬間、背後に回ったリアノアが殺人注射器を1体の首筋へと突き刺す。
    「死してなお現世に囚われたその命……もう少し、もう少しの間だけ辛抱してください」
     ズッと針を抜いて後ろへ跳躍するリアノア。
    「必ず、私達が開放します」
     そして連携とばかりに今度は白い影が飛び込む。
    「ドカンといっぱつ! お見舞いするのさ!」
     台詞と同じ効果音をあげて、蕨がシスター3体の中心にバベルブレイカーを打ち込む。同時、衝撃が波紋のように広がり3体を吹き飛ばす。
     うち1体は動かなくなるが、2体がゆっくりと身体を持ちあげ……。
    「しまっ!?」
     蕨の注意を呼び掛けるより早く、シスター2体が裁きの光を発動、その光条は狙い違わず麻琴を貫ぬき、麻琴の意識はホワイトアウトしたのだった。


    「ねえ、聞いていい?」
     アビゲイルが呟く。
     灼滅者側はすでに満身創痍だ。特に狙われている蕨と必死に庇い続ける風香と香代は限界に近い。
     斬影刃でシスターを攻撃しつつ話しだすアビゲイル。
    「近くでラーメン?って言うのを食べるみたいだけど……あたし、おはしの練習中だから、ちょっと不格好でも笑わないでね?」
     ピンチだと言うのに灼滅者達は微塵も諦めていなかった。戦い、勝って、幻のラーメンを食べる!
    「誰も笑いません。ですよね?」
    「もちろん」
     香代がアビゲイルに答え、風香が同意する。
     その同意を拒否するかのようにシスター達が2条の光りを放つ。
    「わふっ!?」
     狙われる蕨。
     させないと風香と香代の2人が強引に光へと突っ込みその身を挺して蕨を庇う。
    「2人、とも……」
     茫然と呟く蕨、だが盾役の少女2人はググと足を踏ん張り持ち堪える。
     それはまさに、魂の力!
    「香代ちゃん、あと、お願いします」
     そう呟きシスター2体へ接敵し、近距離から閃光百烈拳を打ち込む風香。
    「ああ、あああああああ!」
     身体中に衝撃を受けて崩れ落ちるシスター。
     だが――。
     風香がその場で茫然と立ちつくす、指一本も動かせぬほど力を使い果たしたのだろう。
    「おい、お前もダークネスに骨の髄までしゃぶり尽くされるなんざ文字通り死んでも御免だろう」
     風香から気を逸らす為か、いつも以上に大きな声で凍氷が叫ぶ。
     シスターの目がわずかに凍氷を見つめ。
     無自覚な思いが凍氷を一歩あとずさらせる。
     シスター達の末路は自分がなったかもしれないイフの未来だ。
    「(いや、死んだ人間だ、俺には関係無い!)」
     踏みとどまると大きく息を吸い吹雪きのブレスを吹き放つ。
    「引導、渡してやる」
     氷漬けにされ固まるシスター、だが即座にバキンと氷を割って復活する。
     まだ動くのか!?
     そう思った瞬間、その首にキラリとしたものが巻き付いた。
    「眠るように、朽ちなさい」
     そう香代が告げると同時、コロリと最後のシスターの首が落ちた。
    「こんな終わりの先に行く為に、人間捨ててこっち側に来たんじゃねぇだろうに……」
     足下まで転がって来た首に向かって凍氷が呟く。
     それに答える者は……誰も、いない。


     夢を見ていた。
     自分の先を歩く誰かに手を伸ばすも、自分の手は届かない。
     自分に出来ることは何か……それを考えるも何も思いつかない。
     けれど自分は生きていて、せめて生きている事、それが……。
    「う……」
     そこで陽己は夢から醒めた。
     仲間の肩を降り状況を聞けば、自分たちは帰路の途中らしい。
     かなり戦闘に時間をかけてしまい、幻のラーメン屋は見つからなかったと聞かされた。
     どうしてここまで激しい戦いになったのか。
     相談が短かったのは原因の1つかもしれないが、それは誰もが最初から解っていた事だ。
     誰か1人が悪いわけではない、誰もが詰めが甘かった。
     ふと、出発前のエクスブレインの言葉を思い出す。
    『普通にバランス良い配分で戦えば、大変なことになると思う』
    『敵の行動パターンの穴を見つけられれば……』
     攻守にバランス良い配置は決して悪くは無い、だが万能というわけじゃない。
     自分たちのお決まりの攻撃パターンは一定の戦果をあげられるだろうが、敵の行動を考察しなければ痛いしっぺ返しを喰らう可能性だってある。
     簡単に倒せる方法もあっただろうが今その話をしても無意味だ。
     夜闇の中にそびえ立つ新宿のビル群は遙か後ろ。
     怪我した仲間を抱えて灼滅者は学園へ。
     1人、リアノアが立ち止まって振り返ると胸の前で十字を切る。
    「主よ、彼等の魂をお救いください……Amen」
     躯を利用された元仲間達の魂が、救われんことを――。

    作者:相原あきと 重傷:結城・麻琴(陽鳥の娘・d13716) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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