
引き潮の時。あの絶壁のどこかに、太古の深海へ続く入り口が現れるんだって。
そんな噂を聞いた隣町の少年二人は、好奇心を連れてその場所に行ったのだが――後悔した時にはすでに遅く。今彼らは、仄暗い深海にいた。
暗黒ではない、というだけでも明らかに深海と呼ぶには語弊があるのだが。
「わ、わわっ!」
「し、死ぬ、し……!」
口から膨らむあぶく、流れるマリンスノーと舞う砂泥。視覚に惑わされ水の中だと錯覚し、息苦しさにもがき、ばたばたと手足を暴れさせて。
しかし彼らは今、ただ尻餅ついて錯乱しているにすぎない。
そもそも深海にいきなり放り込まれた人間が、水圧に負けず生存しているわけもない。
けれどパニックになっているせいで、世界の矛盾など理解できない。
そんな彼らを狙って、仄暗い海の中から迫る巨大な魚の影。
星が流れる様に闇を裂き、近づいてくるそれは。
吻より長く突き出た鋭利な歯の羅列。まるでぎざぎざの鋏の様な口をした、太古の鮫――エデスタスの亡霊。
「ちょっと深海まで行って、鮫退治してきてほしいんだよね」
そんな切り口で依頼の話を始めた仙景・沙汰(高校生エクスブレイン・dn0101)。
「ある漁村近くの崖に、洞窟があるんだけど。引き潮のときに現れるということと、昔鮫の歯を祀っていたこと。なんか色々な噂がごちゃ混ぜになって、結果、太古の深海に続く洞窟の都市伝説として形となってしまったみたいだね」
本日中に灼滅しないと、明日の午前中に二人の少年が犠牲になってしまうという。
沙汰は現地までの地図と。そして解析によって判明した、洞窟内の地図を用意し、
「この赤ペンで示したルートをたどれば、深海の入り口とやらに辿り着く」
道中暗いが、懐中電灯で十分進めるとのこと。
「このポイントに辿り着いた時点で、君達は深海の底へと沈む」
いきなり足場が崩れて、海中へと連れ込まれるのだという。
「戦う場所は、仄暗い、海の底だ」
しかし本物ではない。
都市伝説の噂により作られた、深海の様に見える世界。
動けば髪が水の中を靡き、喋れば気泡が浮かび、剣を振るえば水が揺らぐ――海の中に居るように見えるだけ。
息もできるし、声も通る。水の冷たさを感じるわけでもない、命中回避等に支障はなし。炎系サイキック等問題なく。あくまで幻影なので、普通のフィールドと同じ感覚で戦える。
「すぐに都市伝説、エデスタスがやってくる」
エデスタスは、幻の海の中を自在に泳ぎ周るものの、基本は獲物がいる海底付近を泳ぐため、近接攻撃は問題なく届く。鮫のポジションはクラッシャーだ。
永遠に泳ぎ続け、死ぬまで捕食を繰り返す獰猛な鮫。能力も高い。
「水中戦、っていうわけでもないけど。水中に居るような感覚で戦える機会も、なかなか無いだろうし――。けれど危険な相手、気をつけて行っていてね」
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 透純・瀝(エメラルドライド・d02203) |
![]() 霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621) |
![]() ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640) |
![]() 司城・銀河(タイニーミルキーウェイ・d02950) |
![]() ユークレース・シファ(ファルブロースの雫・d07164) |
![]() 神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017) |
![]() 八乙女・小袖(鈴の音・d13633) |
![]() 朝川・穂純(瑞穂詠・d17898) |
湿った岩肌が延々と続く世界に、唐突に襲った浮遊感。
耳に届くのは、岩がばらばらと水面を打つ音。
腰にくくり付けたライトに照らされた、真っ白な水飛沫の姿を見て、ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)は、思わずスカートを押さえて。
目を瞑ったのも一瞬で、訪れるのは仄暗い深海の幻影。
現実世界より連れ込んだ気泡が、体から上へと離れてゆくけれど――わかっていれば別段慌てる事もない。
「ここが太古の夢の中……」
「わあ、すごい場所だね! 海の中ってこんな感じなんだ」
ロロットは不思議な世界観にメルヘンを感じ、朝川・穂純(瑞穂詠・d17898)は瞳に興味を際立たせて、目の前を静かに流れてゆくマリンスノーの満ちた世界を見回して。
「水中に灯る光もキラキラ綺麗……」
光をわざと動かして、二色の万華鏡の様な世界を楽しむ穂純。山育ちのため、感激しどおし。
「ああ、ホント綺麗だなー……」
水の感触はやはりないけれど。手を泳がせれば浮遊物が水流に巻く様に揺らぎ、踊る姿。透純・瀝(エメラルドライド・d02203)は少年の様に目を輝かせ、ユークレース・シファ(ファルブロースの雫・d07164)は初めて『触れる』深海というものを不思議そうに見つめて。
「ここが、お魚の住むせかい、なのですね……」
穂純よりも海に対する知識が少ないのがユークレース。ソウルボードとごく僅かな身の回りの環境が彼女の知る世界のせいか、海の中の真実などは及びもつかず。だからこそ素直な感覚で世界を見渡す。
「ユルが生まれるずっとずっと前のいのち、ふしぎで、とってもすてき……」
深海の様子と、闇に吸い込まれてゆく灯りと、命のカケラが漂う光景に、ただただ感動するばかり。
ありえない深海に同意しつつも、しかし作られた世界の理に、司城・銀河(タイニーミルキーウェイ・d02950)はちょっと好奇心を覗かせて。ふわふわと浮くマリンスノーに触れようとしたら――それは人の熱を拒む様に、ふわりと消える。
「さすがは都市伝説、常識が通用しないねえ」
「不思議なものだ。これも都市伝説のなせる技か……」
何処かの遊園地のアトラクションのようだなと、八乙女・小袖(鈴の音・d13633)は独りごち。
触れる事も叶わぬ幻の雪、光の中を舞うそれは神秘的に見えた。
「まやかしであれ、水の中に留まれるのは貴重な体験です」
藻屑と海雪の幻影を、彩でも取る様に手で弄んでいた神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017)だが、不意に顔をあげ、
「そして都市伝説であれ、太古の鮫と遭遇するのも、ね……」
彼女の眼の先には、エデスタス。古代の鮫の都市伝説。音もなく闇を裂き獲物へと迫る、類を見ない奇妙な姿。光を反射する双眼は冷血さを浮かべ、吻より突き出した歯茎に並ぶ鋭い歯、ここにあるものを全て喰らわんと。
「わぁ、来たよー」
「うおおカッコイイ! 怖え!」
あれが鮫の先祖かーと都市伝説だとわかっていても感激に思わず歓声をあげる瀝と穂純。
「これが太古のロマンとか言う奴ですかね~」
霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)は、飄々と笑顔を浮かべつつ、無造作に獲物を取り出し、くるりと弄ぶ。ここに在るもの全て喰らい尽くすつもりのエデスタスを、軽快に爆発四散デストロイし海の藻屑にする構え。
吻を大きく振り上げ、ロロットの体を捉えようとする一撃を、銀河は大胆に割り込んで。
「残念だけど、今日は簡単に捕食出来る様な相手じゃないんだ」
WOKシールドを展開しながら急所を反らし、喰らう一撃に腕を持っていかれないように。マリンスノーの中を勢いに押され、がじがじと蠢く牙の羅列に、血は闇に混じり水流にさらわれて。けれど、銀河は守りの要として立ち回りを意識し、とにかく全員が倒れないことを目標に。
「さ、気合入れて灼滅させてもらうよ!」
「それじゃあ、行きますよー?」
限定された明かりの中へ、銀河の足元より吹き上がる、海流を貫く影。
マリンスノーが天の星の様に漆黒に輝き、ロロットが解き放つ拳の速さに触れて、流れ散る。
穂純が手をかざせば、新緑が一気に芽吹いたかのようにシールドリングが八重に広がり、銀河の傷へと癒しを届けに飛んでゆき、霊犬・かのこが銀河が振りほどくのを手助けする様に、斬魔刀を振るって。
二人の隙間を抜け、間合いを取ろうとするエデスタス。だがそれを許さぬのは、小袖。
まるで水流を味方につけているかと錯覚する様に、エデスタスへと跳躍。踵に破邪の雷を集中させて。
回転を付けながら踵を落とした瞬間に合わせ、柚羽は矛の尖端を突きつけて。
「……冷凍鮫になりますか?」
冬雷の如く、飛散する六花と走る稲妻。流れるように、ユークレースの神霊剣が肌を裂く。
女性陣が無駄なく徹底した連携活性しているのに対し、男性陣はスナイパーポジションによる立ち位置を生かし、一撃一撃を確実に打ちこみ行動を阻害してゆく戦法らしい。
「それではでは、海に還ってもらうとしますかね~」
「大人しく喰われてなんかやんねえぜっ」
鮫は鰭と体型の調和によって、海の中での活動を優れてモノにしているという。その鰭を切り落としフカヒレにでもしてやるつもりで、刑一が放つ漆黒の一撃が筋を切る様に閃けば、瀝が霊犬・虹とその跳躍を競うように徒党組み、網を仕掛けるように影縛り。
戒めもなんのその、エデスタスは前衛陣の真っ只中へと突っ込んできて、手当たりしだいに食いついて。
「身体が大きければいいってものじゃないんだからね!」
ちょっぴりこめられた僻みと一緒に、銀河が大きく腕を振るい、怒りの矛先をこちらへ向けようとしたけれど。真横を突き抜けられ空振りに。海底に縫い付けてやる勢いで、刑一がバベルブレイカーの尖端を解き放つが、属性反応が格段に良いらしくスナイパーの精度ですらするりとかわす。
「まぁそうじゃなきゃ面白くないですけどねぇ」
予想通り術式が不得意そうですねと、刑一は不敵に笑み零しつつ、這い寄る裁きのナハツェーラーの一部を硝子の様に薄く鋭利な刃に変形させるなり、
「泳がれっぱなしも鬱陶しいので少し邪魔しますよ~」
ひとまずは足止めに重点を置いて。属性を見極め、飛んできた水圧の弾丸は揚々とかわし。
ユークレースが夢の中の力を、その小さな手に宿して。なっちんが吹きだすたくさんのしゃぼん玉と一緒に、エデスタスへと衝撃与えれば、鰓の一つから血が瞬間的に吹き上がる。
固い歯茎を閉じて、みっちりと歯の詰まった顎をぶつけてくるエデスタス。仄暗い世界から鋭い勢いで牙を唸らせる瞬間は、背筋が怖気立つほど。
「む。なっかなか、やりますね」
一瞬息がつまるほどの一撃に顔をしかめつつも、出来る限り丁寧な足さばきで攻めるロロット。
「しかし、特徴的な歯だな」
鈍器にも鋭利にも化けるあの顎。小袖は、鮫にも深海魚にも興味はないが、汎用性の高さには関心。
「こっちも負けるまで止まんねーからな!」
飛行機の様に海の中を自在に泳ぐエデスタスの勢いに、つい熱くなって、前に出過ぎそうになる瀝を、虹がその俊足で前へ回り込み、嗜めるように視線を送って連携誘って。
瀝と虹に穿たれた痛みを捕食で癒そうと、エデスタスが大口開け、鋭い角度から切り込んできた。
狂乱という名の通り、暴れる様に踊り、見えるもの感じるもの全てに喰らいつく。
「ちっ」
小袖の二の腕に、深々と刻まれた牙のあと。銀河とかのこも足を喰いつかれ、溢れた血に、足元が血色の沼に囚われているようにも見えた。
穂純は風を、ナノナノ・なっちんが慈愛のハートで手分けして。
穂純は遥か彼方にある空から呼び込む様に手を掲げ、
「いっけー」
「ナノナノ~」
幻影の中を突き抜ける、新緑の香り纏う生き生きとした風と、桜色のふわふわハート。牽制する柚羽の解き放つ毒の弾丸が、エデスタスの喉元に弾け飛ぶ。
毒々しく染まった口内を晒し、ユークレースを噛みちぎろうと迫るエデスタス。
とっさに飛びだすのはかのこ。脇腹が抉り取られるほどの一撃が。
ころころと、小さなかのこの体が、海底の中を転がって。ユークレースと穂純は思わず声をあげ。
けれど、ぎりぎり踏みとどまるかのこ。なっちんと虹が、同じサーヴァント仲間の踏ん張りを支えるように癒しを飛ばし、銀河がエデスタスの正面へと躍り出て、シールドバッシュを今度こそ叩きつける。
かのこが瀕死に近けれど、しかしこちらよりも、明らかに疲弊を色が濃いのはエデスタス。
一人一人が的確に役割を担い押し続け、いかに強力な一撃がお見舞いされようとも、相手に切り崩されるような致命的なものはない。
鰓から零れるのは毒々しい色。
明暗分かれる両者の現状。
それでも死ぬまで止まらぬ鮫の性を、柚羽はただ見つめながら、
「鮫さんを動かしているのは、生きる事の忠実な本能でしょうかね……?」
それとも、都市伝説であるが故なのか、どちらにせよ。
「どんなに弱ろうと動かなくなるまで泳ぎ、こちらに向かい続けるのでしょうね」
ひらりと、蝶の様に音もなく鮫の牙を避ける柚羽。
生きているとは言い難くも。けれど存在意義を全うするという意味では鮫そのもの。
柚羽の小さな手に天華の蕾。毬を放る様に解き放てば、氷結は闇の中弧を描き、鮫の肌の上綻んで。
「派手に爆発四散するべし!」
わざと、速度の遅くなったエデスタスの眼前に飛び込んで。不敵な表情を見せつける刑一のロッドが、したたかに鮫の頭蓋を打つ。
衝撃に血の塊を吐きだし、崩れた頭部から蒸気機関車のように赤黒い血煙が吹きあげる。
「砂泥の広がる海底に引き摺りこんで、足元をすくうのがお前のやり口なのかもしれないが」
「結束の固さでは、負けませんよー」
小袖とロロット、同時に懐へと飛び込んで。小袖が魔力の籠ったつま先で、エデスタス自慢の顎を跳ねあげてやれば。普段はおっとりほんわかなロロットだけれど、きりりと顔を引き締め、口の付け根を掴むと背負いあげ、
「――メンチコフ・ダイナミックなのです!」
エデスタスの背を海底へと思いっきり投げつけて。
自らの巨体の衝撃で、砂が吹き飛び泥はかき消え。
しかも、今の一撃に背びれがぐしゃりと拉げた。
ゆらり、海流に乗り漂う様に、時折痛みに痙攣しながらも。
泳がなければ酸欠で死んでしまう鮫は、こんな状態でも必死にズタボロの尾鰭を振って。
「……こんなとこに生まれさせちまって、ゴメンな」
海が好きだから。
瀝自身、海を身近に育ったから。
だから、エデスタスが鮫の性質をそのままに、生きるために泳ぎ続け捕食するという行為自体は自然の摂理であったとしても。
けれど悪意によって作られた命は、やはり悪意。この世にいちゃいけない鮫。
「合わせるぜ、虹」
瀝はその手にサイキックソードを呼びだして。尖端を銛の様に鋭く伸ばす。
虚無の海を暴れまわり、次々と前衛陣へと噛みついてゆくエデスタスへと、虹が牽制する様に六文銭を撒き散らす。当たらずとも――瀝の為に追い込む様に。
泡の壁を突き破って駆け、銛の様に尖らせた一撃を確実に押しこんで。
エデスタスから肉色が爛れ落ちる。
それでも、泳ぐことを止めず。失った肉を再生しようと、前衛陣へと顎を震わせ。
生き残るために捕食しようと顎を突き出し食いかかるけれど。
散々打ちこまれた戒めが、鮫の優秀すぎる索餌機能をも、沈黙という言葉に語弊が無いほどまで低下させていて。
その顎が虚しく空を噛む様を、穂純は居た堪れない顔で見つめ。今まで人類がダークネスに対抗しうる手段がないまま蹂躙されていた様と重ねれば、それはそれで憐憫をもたずにはいられなくて。
「いまを生きることをみとめてあげられなくて、ごめんなさい、です」
外来生物が、固有種を喰い殺し絶滅させてしまうのと同じ。
今の時代に生きてはいけない命に、ユークレースは切なさ覚え。
「きっと私達も同じだよ。これからもずっと戦い続けるって――そう思うの」
けれど、進化と適応の過程で、やはり淘汰されてゆく生命の欠片。自分たちの戦いにも通じる何かを穂純は感じ、いつかこんな戦いに解決の道が開かれるなら――せめて今は、せめて生命らしい戦いの果ての終焉を。
「おやすみなさい」
穂純とユークレースの唇が同じ言葉を紡ぎ、そして同時に放たれる餞。
懺悔のような想いが籠った神霊剣が一閃を刻めば、散々打ちこまれた魔氷が、祝詞に触れ連鎖した様に、鮫の肌を割りながら走りだす。
穂純が冥福を祈るように撃ちだす制約の弾丸。
痛みに狂乱するエデスタス。しかし致命的な一撃が、身に降りかかった事実は覆らない。
痙攣しかできない体はいずれ止まるが定め。尾鰭から順に崩れ、時間の中へ飲まれてゆく。
エデスタスをエデスタスと位置付ける、顎の化石だけが幻想の海に残る。
微かな浮力だけで海に留まっていたそれも、次第に海底へと落ちて。
ごとり。
まるで岩にでもぶつかった様な音が響くと、世界から海も歯も消え、現実だけが残った。
湿った岩肌と、磯の香り。人口の光がゆらゆらと世界を照らす。
「おつかれさま。よくがんばったね」
穂純はかのこを抱き寄せて、その頑張りをすぐに褒めて。
「すっかり元に戻った世界だけど……ここも海の底だった時代があったんだよな」
洞窟内に満ち潮を告げる水の気配。瀝は、何億という時間を掛けて作られた今を、満ち引きに感じて独りごち。
「さすがに冷たい水は勘弁だ」
寒さが苦手な小袖は、ぶるりと身を震わせ。暖かい飲み物求め、早く脱出しようと皆をせかす。
「実際、満ち潮で、閉じ込められてもシャレになりませんからねぇ」
脱出に賛成ですと、刑一はすぐに帰路を確かめ。
(「鮫の歯を祀っていた……という事は、歯以外の見つかっていない部分が何処かに眠っていたり……?」)
柚羽はふと思ったけれど、それを行動に移すことはない。
鮫の歯は、天狗の爪として珍重されていたという。そんな経緯を考えれば、何処かに何かが残っていても不思議ではないけれど。
すでにこの世ならぬ者として蘇った、太古の魂の欠片。
軟骨魚類と呼ばれる鮫にとって、生きた証が唯一化石として残る可能性が高い歯だけであるのなら、宿るものは誇りそのもの。
ユークレースは、時の悪戯、神の悪戯に、生命の神秘を感じながら。
「都市伝説じゃない、ほんとうのあのお魚さんに……ちょっと、会ってみたかった、ですね」
ゆめの中なら会えるでしょうか。ユークレースはそんな楽しみを抱けば、柚羽も小さく頷いて。
「鮫さん、夢の中で悠々と泳いでくださいね」
ふわり。二人は遅れまいと身を翻し。
弔いの言葉、一つ残して。
| 作者:那珂川未来 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2014年2月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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