薄暗い店の中で、その女性はホクロのある右口元をあやしくつり上げながらするりと衣擦れの音を響かせ、男性客の前で薔薇の刺繍の入ったチャイナドレスを脱ぎ捨てた。スタイルの整った体があらわになる。艶めかしい素肌を覆う上下の布にも薔薇の刺繍が入っており、なめらかなシルクの下着に覆われた、柔らかくたわわに実った2つの果実をゆっくりと客に押しつける。
「存分に楽しんでいってね……ほら、ぱふぱふぱふ……♪」
しっとりとした声に重なるように、男性客のあえぐような声が漏れだす。しばらくして、仕切っていたカーテンを開け、再び服を着た女性が胸元を整えながら個室から出てきた。その背後にはソファにだらしなく腰掛け、満足げに放心している男の姿があった。
「まったく、サービスして損しちゃった……こいつは『ハズレ』、刺青じゃなくてただのアザだったわ。今日の獲物はさっきの1人だけみたいだから、明日の始発で鹿児島の連中に送りつけておいてちょうだい」
「はい、結愛様」
ウエイター姿の厳つい男性が答えながら物陰から現れ、頭を垂れて熱いおしぼりとオン・ザ・ロックのスコッチを女性に差し出す。結愛と呼ばれた女性は、くっとグラスを仰いで一気に飲み干すと、クスクスと笑い出した。
「ああ、そこの男、わたしにすっかりご執心になっちゃったみたいなの。手下にしてあげるので、それにふさわしいようにしっかり教育しておいてね」
わかりました、と答えた配下の男は空のグラスを受け取り、浮かれたように脱力している男の方へと歩いて行った。
重たそうな胸の膨らみを腕組みで支えながらそんな様子を眺めていた結愛は、楽しそうにつぶやいた。
「刺青連中もあたしも配下が増えていくってわけね……こんな関係も悪くないわ」
「えっちなのはよくないとおもうんです」
真っ赤になりながらそう切り出すと、神立・ひさめ(小学生エクスブレイン・dn0135)は事件の概要を語り出した。
福岡で暗躍しているHKT六六六の強化一般人が、大きな繁華街の中州で一般人の男性をうらぶれた風俗店に連れ込み、刺青を入れた男性を見つけるとそのまま拉致をすると言う事件が起こっているらしい。
「美人だけどえっちな感じの女の人がHカップくらいありそうな胸を使って誘惑しているんですけど、連れ込んだ人に刺青がなくてもそのまま魅了して、HKTの協力者にしたりするんです……この人達を放っておくととても危険です」
無意識に年相応の自分の胸元に手をあてていたひさめは、集まってくれた仲間達の視線を感じて慌てて手を下ろした。
「相手は結愛さんという名前のHKTの強化一般人で、配下に2人強化一般人を従えています。未来予測でお店の場所はわかっていて、そのままそこに突入して戦ってもいいんですけど、そうすると配下と戦っている間に結愛さんが逃げ出してしまうんです……もちろんそれでも結愛さん達の企みは潰す事はできるんですけど、今後の事を考えたら、できたら結愛さんまで灼滅できるならしておきたいと思うんです」
言葉を切って、少し考えてから話しだす。
「逃亡させない方法としては2つあります。4日後の午前1時頃、川沿いの屋台の並んでいるところで、天ぷら屋の屋台とイタリアンの屋台の間で待っていると配下の2人が客引きに来て、そのまま路地裏の秘密の店に連れて行かれるんですが、1つは誰かが囮としてお店の中に連れて行かれ、結愛さんに相手されている間に残った人で退路を塞ぐ形で突入する事です。お店には裏口があって危険が及ぶとそこから逃げだそうとするんですが、囮役の人が引きつけている間に入り口と裏口からタイミングを合わせて突入するか、裏口から出られないように工夫してその上で入り口から一斉に突入すれば、逃がさないですむと思います。……ただ、この方法だと囮役の人は、引きつけるために結愛さんのすごい誘惑を受けてからの突入になってしまって、皆さんが駆けつけたときには、命の危険とまでは言いませんが、気絶したようになってまともに戦う事もできなくなってしまいます」
理解して貰った事を確認して、ひさめは説明を続けた。
「もう1つの方法は……これはもっとむずかしいんですが、結愛さんの配下の2人は……その、結愛さんのおっぱ……胸を使った技と魅力で支配されています。だから、それ以上の演技力と魅力を演出する事ができるなら、突入時に逃げようとする結愛さんの邪魔をさせて封じ込む事ができるんです……わたしではまねできないですけど」
ひさめは軽く咳払いをすると、戦闘になったときの戦い方などを説明する。
「結愛さんは抱きしめて胸で惑わすような攻撃をしてきます。他にもサイキックの籠もった投げキッスや花びらを撒いて回復したりします。配下の男達は解体ナイフを持っていて、それで攻撃してきます」
知っている事を言い終えると、ひさめは表情を引き締める。
「どちらの作戦のときでも客引きに来る配下を利用できますし、結愛さんに逃げられてもHKTの企みは阻止できるので、危険だと判断したら無理せずに普通に戦いを挑んでもいいと思います。戦いは皆さんの方がお得意ですので、判断はお任せします。どうか、よろしくお願いします」
参加者 | |
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黒曜・伶(趣味に生きる・d00367) |
ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039) |
アイレイン・リムフロー(スイートスローター・d02212) |
レイン・シタイヤマ(深紅祓いのフリードリヒ・d02763) |
シャルリーナ・エーベルヴァイン(ヴァイスブリッツェン・d02984) |
富山・良太(ほんのーじのへん・d18057) |
葦原・統弥(黒曜の刃・d21438) |
雪村・螢(雪割草の誓い・d22061) |
●
中州。福岡県で1番の繁華街と呼ばれるそこは、あちこちから酔って騒いだり笑ったりする声が漏れ響き、地元の者も観光客も多彩な屋台を楽しんでいた。
富山・良太(ほんのーじのへん・d18057)はエクスブレインの指定した場所でその時が来るのを待ち続けていた。
ESP『エイティーン』を使って本来よりも5つも年上の姿で囮役を務める良太は、さり気ない仕草で通話をつないだまま隠し持っている携帯電話に向けて状況を伝えた。
「さっきキャバクラってやつの客引きが来たけど1人だったし、強化一般人は2人で来るって話しだから違うと思って断ったよ。そろそろ時間だと思うから、このまま待機するよ」
離れた場所でばれないように様子をうかがいながら携帯電話のスピーカーに耳を寄せていた葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)は、こちらの音が漏れないように通話マイクを塞いで視線を仲間に向けた。
「まだみたいですけど、そろそろ来るだと思います……しかし、富山君が囮役を引き受けてくれて助かりました」
統弥は大切な女性の顔を思い浮かべながら苦笑いする。
「なにも胸だけが女性の魅力ではないと思いますが……」
「でも、ちょっと良太さんが羨ましいっすねぇ」
黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)は表情を曇らせながら男のふがいなさに苦言を漏らすそばで、ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)が、店で行われるという『エッチなサービス』を想像してつぶやいた。
その言葉を聞いたシャルリーナ・エーベルヴァイン(ヴァイスブリッツェン・d02984)は何かを想像したのか、急に真っ赤に頬を染めて、眼鏡の奥で目をぎゅっと閉じながら首を振った。
「えっちなのはいけないですぅ」
「そのへんは別にしても、とにかく刺青勢力とHカップ六六六を仲良くさせておけないわ」
拳をぐっと握って突き出したアイレイン・リムフロー(スイートスローター・d02212)だが、彼女が年相応の自分の胸元に一瞬視線を落としたことには誰も触れなかった。
「放置してもいい事なんてないしね。逃がさないで灼滅しないと」
雪村・螢(雪割草の誓い・d22061)エクスブレインに聞いた相手の話を思い出してうんざりと眉宇をひそめた。
そういった話題にあまり興味のないレイン・シタイヤマ(深紅祓いのフリードリヒ・d02763)は、やるべき事を反芻しながら準備を進めていた。
「私の携帯の番号は登録しておいてくれ。富山が店に連れて行かれたら予定通り私とアイレインとシャルリーナの3人は裏口に回るので、突入のタイミングにならしてくれたら私達も突入する」
レインの言葉に6人が頷いた。
「おにーさんっ、お1人っちゃね? すっげーいい店があるけん、一緒ば来んね?」
「たのしかよ~よか事あるよ~もう夢心地ばい、最高っちゃん?」
良太は突然背後から博多弁で声をかけられ、2人の男に左右の肩を掴まれた。緊張を押し殺して、普段とは違う純朴そうな表情を貼り付ける。
「へぇ、そんなにいいお店ですか……都会はやっぱりすごいですね。うーん、いってみようかな」
結愛の配下として、獲物を求めて声をかけた波多野と飯田は、途目を輝かせて逃がさないようになれなれしく肩を組んで、屋台通りの明るさとは対照的に薄暗い裏道の方へと向きを変えた。
「お~、おにーさん話早かね~。ささ、はよう行かんね~絶対満足するとばい~」
「おにーさん今まで経験した事なかげな気持ちよかーお楽しみが待っとっとよ。こっちばこっち、ほらそこん道ん先たい」
2人の客引きは、無防備な獲物をつれて薄汚れた細い路地に向かって歩き出した。
●
埃と油に汚れた薄暗い裏路地を進む良太達の背後から慎重に後をつけていくと、彼らは切れそうに瞬く明かりに照らされた建物の階段を地下に降りていった。
気づかれない頃合いまで待ってから階下を覗くと、狭く急角度の階段を降りた先は行き止まりで、突き当たりに色落ちした扉がひとつだけあり、彼等がそこに入ったのは間違いないようだった。
「いってくる」
レインは仲間達に頷くとアイレインとシャルリーナに手振りで合図した。
「裏口見つかったら待機するね」
「みなさんもお気をつけてぇ」
小声でそう言うと、裏口組の3人は建物を回り込むように道をたどって姿を消した。
「中の様子はどうっすか?」
声を潜めて聞くギィに、は統弥親指でマイクを塞いだまま室内の音に耳を傾けながら答えた。
「この中なのは間違いないみたいです……あ、女性の声がします。彼女が結愛ですね」
気を張り詰めながら待つ伶の携帯電話がマナーモードで振動し出す。うつむいて短く受け答えてから切ると、伶は顔を上げた。
「レインさん達から、裏口を見つけたので見張りながら身を隠しているそうです」
螢はそばに寄り添うように浮いているビハインドの『美鈴』の頬にそっと指先で触れた。
「一緒にみんなを守ろうね、美鈴」
「えーと、なんか僕には不釣り合いなお店の気が……」
扉をくぐると、かすかにあやしげな音楽が流れる薄暗い部屋が待っていた。雑に並んだソファの先は室内の3分の1を区切るカーテンに覆われており、その中をうかがう事はできなかった。
「よかよか、気にする事なんもなかけんね」
「そうばい、おにーさんにはものすごぅきもちいいこと待っとるばい」
良太を無理矢理奥に引きずり込んだ2人は、良太の背中を強く押して、カーテンの先に押し込んだ。
「うわっとと……え?」
体勢を崩して倒れそうになった良太は、いきなり柔らかい何かに顔を包まれた事に驚いた。
「ずいぶん若い子を連れてきたのね……あなた達、あたしの目的が刺青探しだって忘れてるんじゃないでしょうね」
慌ててあとずさると、そこには艶めかしい雰囲気を纏ったチャイナドレス姿の女性が立っていた。良太はその胸元に倒れ込んで、2つの大きな膨らみの中に顔を埋めていたのだ。
薔薇の刺繍が一面に施されたチャイナドレスを纏ったその女性は美しく、丸みとくびれのバランスの取れた体は男性を引きつけるあやしい魅力に満ちている。口元のほくろが一層色気を引き立てていた。
「あのあのあのごめんなさいっ!?」
囮役のために純朴を装っていた良太は慌てふためいて見せたが、実際大人の女性の胸に触れるなんて初めての事で、その演技の何割かは事実でもあった。
「まあ刺青がなくてもあたしのしもべが増えるだけだし、ね」
そういうと、自らの背中に手を回し、音を響かせながらファスナーをゆっくりとおろしてゆく。衣擦れの音と共に服を脱ぎ捨てた結愛は、下着姿のまま良太に近づいていった。
「さあ坊や、あなたが知らない事をいっぱい教えてあげましょうね」
顔を赤らめて後ずさる良太に容赦なく近づく結愛は、大きな膨らみを押さえつけていた下着のホックを外し、良太の目の前で真っ白な肌をあらわにした。
「うわぁっ!?」
普段は少し感情が希薄な良太だが、自分の顔がはじめて経験する柔らかい膨らみに挟まれると動揺して声を上げた。暖かく吸い付くような結愛の柔肌が両頬を包み込み、そのまま体ごとの見込まれてしまうような錯覚に陥った。
結愛は指を鳴らして配下達に合図をする。
「かしこまりました、結愛様」
波多野と飯田の2人はさっきまでの訛りを感じさせない無機質な声と言葉遣いでそう答えると、乾いた音を響かせてカーテンを閉じ、結愛と良太を二人きりにした。
「いくわよ……ほら……」
(ぱふぱふぱふ)
「むぐっ……これは……っ」
「うふふ……気に入ってくれたみたいね。じゃあこういうのは?」
(ぱふぱふぱふ)
「今度はたてに揺れて……うおぅ……」
「可愛いわね、坊や。サービスしてあげようかしら……特別よ?」
(ぱふぱふぱふぱふぱふぱふ)
「な……ななめっ!? こんな……うあぁぁぁっ!?」
良太は激しい脱力感に襲われ、カーテンを巻き込み、破りながら仰向けに倒れてゆく。
「うふふ……やっぱり刺激が強すぎたかしら。……まあいいわ、さあ服を脱がして入れ墨を彫っているか確認しなさい」
脱ぎ捨てていた下着とドレスを素早く身に纏った結愛がそう命令したその時、正面の扉が破れそうなほど勢いよく押し開けられた。
●
「ちっ!?」
結愛は突然侵入してきた相手を一瞥すると素早く裏口側に身を寄せた。何者かはわからないが、手下が相手をしている間に逃げ出すつもりだった。
その時、偽装して一目ではわからないようにしてある裏口の扉が開けられてそこからも侵入者がなだれ込んでくる。
逃げられなくなったと把握した結愛と配下の2人は、部屋の中央に布陣して身構える。
「その闇を、祓ってやろう」
レインが解除コードを口にすると、彼女から伸びる影がサイキックを帯でざわめき出す。
「ふん……あなた達、灼滅者とかいうやつね。ひょっとしてあなた達もぱふぱふされに来たのかしら?」
踊るように間合いを詰めた結愛が螢に向けて大きな胸を突き出す。柔らかい膨らみで顔を包もうとしたその時、『美鈴』が間に割って入って身替わりとなった。
「胸だけで男性が落ちると思ったら大間違いですね」
胸をぷるんと揺らしてみせる結愛に、伶は諭すように言葉を放ちながら攻撃をしかける。主を守ろうと立つ飯田に対して触手のように伸ばした影で絡め取り、ぎりぎりと締めつけた。
「なによぱふぱふって……お姉さんずるいわ!」
アイレインは眉宇を怒らせながら指さす。自分にできない特技を持つ結愛に怒りをぶつけていると、シャルリーナが動いた。
「守りを固めて……攻めていきます!」
身に纏った青白いオーラを稲妻のように迸らせながら前に出たシャルリーナは、集約したオーラを雷に変換し、閃くような一撃で飯田の腹に蹴りをめり込ませた。
ギィは床に倒れたまま、まともに立つ事もできない良太を引きずる様にして安全な場所に移動させた。
「こんなになるなんて、どんな事されたんすかね。こっちは色気も何もない灼滅のお勤め、……しょうがない、適材適所っす」
そうつぶやくとすぐに戦いに備えて身構えた。
「貴方の悪行もこれまでです!」
『フレイムクラウン』と名をもつ無敵斬艦刀を結愛に向けると、計画通り飯田に攻撃を集中してフェイントで拳を打ちつけた。
波多野がナイフを取り出すと、前に突き出して蓄積した闇を一気に放出する。毒を帯びた呪いの風が前に立つ4人とサーヴァント達に襲いかかる。
すぐさまアイレインがバイオレンスギターを身構え、癒しの旋律を爪弾きだした。彼女らしい軽快な音が仲間達を包み込み、傷を癒し、蝕む毒を滋養化してゆく。
飯田は傷ついた体を引きずりながらシャルリーナにナイフを踊らせた。醜い形に歪ませたナイフが振り下ろされた瞬間、螢がシャルリーナを押しのけてその身で刃を受け止めた。
痛みを噛み殺しながら、螢は後ろであやしく微笑んでいるを見据えた。
「欲望むき出しな人の顔ってどんなに整ってても醜悪なんだよね。負けないし、引かないよ……貴方は、此処で倒す!」
「あらあら、嫌われたものねぇ」
余裕を漂わせながらそうつぶやく結愛。その時、ギィの『剥守割砕』が轟音と共に振り下ろされた。狭い室内で巧みに震う無敵斬艦刀が飯田を肩口から大きく斬り裂くと、強化一般人となった男はそのまま倒れ込んで動かなくなった。
再びナイフを振りかざして襲いかかろうとする波多野にレインの影が素早く伸びる。
「リヒャルト」
つぶやくように口にしたレインの影が、波多野を幾重にも縛り付けて絡み取った。絡みつく影の影響を受けて攻撃を外した波多野は、次は自分がターゲットになっている事に気がついて、背後の主の存在を感じながらも後ずさりしていた。
●
結愛は薔薇の花びらをまき散らして配下の男を癒し、投げキスで攻撃しながら機会をうかがっていた。
攻撃に晒されて傷だらけの波多野がナイフを振りかざして注目されたその時、結愛は裏口に向けて走り出した。
敵の間を擦り抜けて扉にたどり着いたと思った結愛の目の前に、レインが行く手を塞ぐ形で立ちはだかった。
「ここは通行止めだ」
まっすぐに見つめて言い放つレインに、結愛は歯ぎしりした。
「小娘の癖にっ!」
結愛が邪魔者に飛びかかろうとしたの背中に激痛が走った。
「いたっ!?」
咄嗟に振り返ると、シャルリーナが背後に詰めよって、懐から取り出した殺人注射器を突き刺していたのだ。
「いかせないですよぉ」
体からチカラが吸い取られる感触に脱力している結愛の足下に、波多野の体が転がってきた。
「こっちは終わりっす。観念して灼滅されるんすね」
巨大な刀を突きつけながら、ギィが言い放った。その横では腕を組み、厳しい眼差しで見つめるアイレインとそのビハインドの『ハール』が少女を守るように立ちはだかっている。
それでも諦めない結愛は口元に指を当てて、投げキッスを飛ばしてきたが、螢が身を挺して受け止め、遮った。
「逃がしはしません、ここで倒します!」
統弥はそう言って巨大な刀身に自らの体重を乗せ、袈裟斬りに振り下ろした。
「あああぁっっ!?」
最後まで艶を帯びた声で悲鳴を上げながら、結愛は仰向けに崩れ落ちた。
肩から腹部にかけて大きく切り裂かれた服の隙間から見える白い肌は、血に染まりながらもまだ色気を感じさせていた。
伶は哀れむような眼差しで上着を脱ぐと、素肌があらわになった結愛をそっと覆う。
「女性なんですから、少しは恥じらいを持つべきだと思うんですよね」
思ってもみない言葉に、結愛は小さく笑みを漏らした。
「……あいにく、そんなものはとっくの昔になくしちゃったのよ……」
そう言うと、結愛の体が闇色に染まり、崩れて塵となって霧散していった。
「お疲れさまー、良太君は大丈夫かな?」
「もう動けるようになったみたいですぅ」
回復の助けをしているシャルリーナは、螢の問いかけにそう答えた。
ギィが良太の元にしゃがみ込んで、小さな声で話しかけた。
「結愛のサービスってどんな感じだったっすか?」
「……すごかった」
思わずつぶやいたり良太は、急に自分が恥ずかしくなってがっくりと肩を落とす。
「そんなに気持ちいいものでしょうか……」
思わず考え込んで独語した統弥は、はっとして頭に浮かんだ妄想を振り払った。
薄暗い店内をいろいろと探っていたアイレインは、溜息を漏らした。
「HKTの手がかりでもないかと思ったけど、なんにもないわね」
「残念ですが、しかたないですね」
同じように手がかりを探っていた伶のほうにも収穫はなかった。
レインは制服についた埃をはたいて落とすと、仲間達に向き直った。
「HKTとはいずれ決着をつけるときが来るだろう。さあ、皆帰ろうか」
その言葉に頷いた仲間達は腰を上げ、階段を抜けて未だ賑わう繁華街へと歩いて行った。
作者:ヤナガマコト |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年2月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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