脂を乗せてやって来た! 寒ブリ怪人の野望!

    作者:飛翔優

    ●脂が乗ってる冬に食べるがいい!
     季節を迎え、脂の乗った寒ブリが取れるようになった石川県能登町の宇出津港。
     活気に満ち溢れるこの場所に、一人のご当地怪人が出現した!
     名を、寒ブリ怪人ブリターニャー!
     漁港の付近を歩く者に近づいては、調理した寒ブリを押し付けるのだ。
    「冬といえばやっぱ寒ブリニャー、お前も食うニャー!」
     それこそが、寒ブリを広める手段だと信じて。世界征服に繋がるのだと確信して……。

    「……変なの」
     教室でメモを眺めていたポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)は、静かに瞳を細めるとともに立ち上がる。
    「でも……知らせ、ないと……」
     エクスブレインへと伝え、解決策を導くために……。

    ●放課後の教室にて
    「それじゃ……葉月、お願い……」
    「はい、ポルターさんありがとうございました! それでは早速、説明を始めさせていただきますね」
     ポルターに頭を下げた後、倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は灼滅者たちへと向き直った。
    「活気に満ちる、石川県能登町の宇出津港に、ご当地怪人……寒ブリ怪人ブリターニャーが出現しました」
     本来、ダークネスにはバベルの鎖による予知能力があるため、接触は困難。しかし、エクスブレインの導きに従えば、その予知をかい潜り迫ることができるのだ。
    「ですが、ダークネスは強敵。ご当地怪人といえど、です。ですのでどうか油断せず、確実な行動をお願いします」
     葉月は地図を広げ、宇出津港を指し示した。
    「現場となるのはここ。この周囲を歩いていれば、ブリターニャーの方からやって来るでしょう」
     後は迎え討てば良い。
     姿はブリの頭と、左手に持つ刺し身の乗った皿と右手の箸が特徴的な人型。八人ならば倒せる程度の力量で、妨害・強化能力に秀でている。
     頭を前に押し出しての突撃は、相手の攻撃力を削いでいく。刺し身を食わせる事によって魅了してくることも。また、自ら刺し身を食すことにより攻撃力を高め、傷を癒やすこともある。
    「以上で説明を終了します」
     葉月は地図など必要な物を手渡し、締めくくりへと移行した。
    「今は寒ブリの季節、とは言え、無理やり押し付けるのはやはりいけません。嫌いになってしまっては元も子もないのですから。ですので、どうか全力での灼滅を。何よりも無事に帰ってきて下さいね? 約束ですよ?」


    参加者
    護宮・マッキ(輝速・d00180)
    高宮・琥太郎(ロジカライズ・d01463)
    氷上・蓮(白面・d03869)
    村山・一途(残酷定理・d04649)
    惟住・多季(花環クロマティック・d07127)
    牛野・たん(自由牛・d19433)
    万亀・夏緒瑠(自称ミステリアス・d20563)
    類瀬・凪流(オランジェパストラーレ・d21888)

    ■リプレイ

    ●活気あふれる漁港にて
     寒々しい風が吹き抜ける、石川県能登町宇出津港。されど港に集う人々は水揚げされた魚を軸に、熱気あふれる喧騒を響かせていた。
     少し離れた場所、寒ブリ怪人ブリターニャーが出現すると言われている地点に集う灼滅者たちは、待つさなか港の観察を行っていた。
     活気溢れる音色を聞きながら、高宮・琥太郎(ロジカライズ・d01463)が何気ない調子で口を開いていく。
    「寒ブリ美味いけどなー、強制されるとなー」
     そもそも、寒ブリ推しのクセに刺し身で食う事しか認めてないようなその格好が許せない! と拳を握り、意気込んだ。
     村山・一途(残酷定理・d04649)は静かな溜息を吐いた後、思考を巡らせながら口を開く。
    「寒ブリを確かに愛している……とは思うのですけどね。それにしても……うん、中々壮観です」
     続いて港の様子へと話題を移し、行き交う人々水揚げされていく魚たちを遠目に眺め目を細めた。
     そんな優しい時を過ごしている彼らの下に、ブリ頭に刺し身の乗った皿持つ左手、箸の左手といった影……ブリターニャーがやって来た。
    「冬といえばやっぱ寒ブリニャー、お前も食う……ニャー?」
     不穏な空気に気づいたのだろう。ブリターニャーは小首を傾げ、灼滅者たちの様子を伺っていく。
     灼滅者たちは戦う意思を示すため、一斉に武装を整えた……。

    ●寒ブリ怪人ブリターニャー
     言葉も交わさず始まった、寒ブリを守るための戦い。
     先陣を切り肥大化した腕で殴りかかった惟住・多季(花環クロマティック・d07127)は、お返しとばかりに差し出された刺し身を思わず食べてしまう。
    「お…美味しい…っ!このブリの刺身はまさに至高の味! ……はっ」
    「脂が乗った寒ブリ! 塩焼きでもいいし照り焼きでもまたうまい! 最近はブリラーメンなんてものもあるそうだけど……」
     奪われそうになってしまった多季の心を、護宮・マッキ(輝速・d00180)が光を放ち救い出す。
     さなかにもブリターニャー殻は視線を外さず、ただただ強い調子で言い放つ。
    「怪人はいらないな。ぶっ倒す!」
    「やってみるといいニャー!」
    「いわれなくて……」
     反論とともに盾を掲げ吶喊した万亀・夏緒瑠(自称ミステリアス・d20563)は、口を尖らせ顔をそらす。
    「うっ……魚臭っ……」
    「魚なんだから当たり前ニャー!」
     ブリを模したブリターニャー。ならば、ブリと同様の性質を持つのは必然か。
     気にせず、揺るがず後方へと回り込んだ氷上・蓮(白面・d03869)が、軽い調子で光の刃を振るっていく。
    「刺し身? 叩き?」
     足を切り裂き刺し身とするため……もとい、動きの自由を奪うため。
     ブリターニャーは揺るがない。灼滅者たちの攻撃をさばきながら、低い姿勢を取りつつ突撃した!

     握る剣を輝かせ、一途がただ真っ直ぐに切り込んだ。
    「っ!」
     ブリターニャーの頭部に阻まれて、深く斬り裂くには至らない。
    「他人に押し付け、愛を強要しても仕方ないでしょう」
     即座に弾き、静かに問う。
    「あなたが欲しいのは、そんな上辺の愛ですか?」
    「食べてもらえてばきっと分かってくれるニャー」
     咬み合わない回答に、一途はどんな思いを抱いただろう?
     確かめる余裕もないままに、類瀬・凪流(オランジェパストラーレ・d21888)がブリターニャーに注射針を突き刺した。
    「どんな調理がいいかなーやっぱりお刺身?」
    「おすすめニャけど吾輩は食べないで欲しいのニャー」
     内部へ毒を送り込むも、今はまださほど答えていない様子。
     関係ない、重ねていけば良いのだと、牛野・たん(自由牛・d19433)はナイフに炎を宿す。
    「なんか色んな手段もってるみたいですけど」
     強い敵意を持って告げながら、勢い任せに斬りかかる。
     腕を軽く切り裂いて、炎上させることに成功した。
    「お前には愛が無いのです!」
     寒ブリが美味しいことは知っている。それこそ、待つ途中度々寒ブリのポーズを決めていたくらいに。
     しかし、無理やり食わせるなど言語道断。果たして何人のご当地怪人に告げてきただろう。
     だからこそいつものごとく倒すのだと、たんは距離を取ると共に口を開く。
    「さっさと倒して、各種ぶりの料理を堪能しましょうなのです」
    「進んで食べるとは良い心がけニャー」
    「お前には言ってないのです!」
     強い調子で言い放ち、再び刃に炎を宿した。
     芳しい匂いを漂わせている焼き魚にするのだと、更なる勢いで走り出す……。

     ブリは刺し身も良いし、にても美味しい御飯のおかず。
     知っているからこそ立ち向かうのか、多季は杖に魔力を込めた。
     ブリターニャーが突撃を終えて立ち止まったタイミングで飛び込んで、脳天めがけて振り下ろす。
     避けられるも右肩へ爆発する魔力を浴びせかけることには成功し、ブリターニャーが少しだけよろめいた。
     少し余裕も生まれた。だからだろう、多季はそういえばという調子で問いかける。
    「少し疑問なんだけど、教えてブリターニャ」
    「何だニャー」
    「どうして語尾がニャーなの?あなた寒ブリなんでしょ? 実は魚の皮を被った猫じゃないでしょうね!?」
     寒ブリ怪人の語尾がニャー。少し考えなくても不自然か。
    「語感ニャー!」
     自身も理解しているのか、されど理解した上でやっているのだとブリターニャーは胸を張る。
     更に勢いづいたのか、多季に突撃までかましてきた。
    「いやーブリの頭が刺さる!? 魚の頭って凶器なのね!?」
    「突撃魚とかいるからなぁ」
     多季と同様の疑問を抱えていたマッキが、すかさず光を放ち治療する。
     精彩さを取り戻していくさまを確認した後、戦場の観察へと移行した。
     猫の要素がまるでのないのにニャーと鳴く。それに対し、マッキはどんな思いを抱いただろう?
     さほど表情を変える様子もなく、一途が突撃を受けたと見るや光を放ち治療する。
     さなかには夏緒瑠が拳に影を宿し、腰を落として突き出した。
    「これが肉なら……ご飯五杯はいけたっ!!」
    「魚でも行けるーニャー」
     反撃とばかりに放たれた刺し身。避ける術なく食わされて……。
    「生は……生はダメェェ!!」
     錯乱した……というべきか、はたまた別の感想を投げかけるべきか。
     さておき彼女の治療を仲間に任せ、蓮は再び切り込んだ。
     左肩を切り裂いた後も退かず、表情の見えない瞳でブリターニャーを見つめていく。
    「……」
    「な、なんだニャー? もしかして食べたいのニャー?」
     うなずかない、が首を横に振りもしない。
     刺し身が突き出された折にはぱくりと食し、うんうんとうなずき始めていく。
     喜んでいる、とブリターニャーは判断したのか、空高く笑い声を響かせた。
    「ニャーニャニャニャ! こうした新たな寒ブリフリークが生まれたのニャー!」
    「脂がしつこいのもよくないけどね」
     マッキは歓喜の腰を折りながらも、さり気なくお腹を抑えていく。
    「……見てると美味しそうな攻撃だけどさ」
    「実際美味しいんだろうなぁ。ま、寒ブリの魅力は刺し身だけじゃないけど!」
     小さく頷いた琥太郎は杭打ち機を持ち上げて、高速回転させた上でブリターニャーへと突き立てる。
     箸とぶつかり合いながら、より深い場所に向かわせんと力を込めていく。
    「与えると押し付けるは違う、ってコトを分からせてやんよ!」
     好きなモノを進めたい気持ちはわかるけど……との思いが通じたか、杭は箸を突き抜けブリターニャーへとぶっ刺さる。
     されどブリターニャーはひるまない。
    「そんなこと言わずに、さあ、一口ニャー」
     刺し身を差し出され、琥太郎はものは試しと一口パクリ
     分厚い寒ブリの美味い脂を存分に堪能した上で、静かな息を吐き出し言い放つ。
    「美味い、けど違う!」
     サイドステップからの跳躍。
     素早くブリターニャーの背後へと回り込み、足を深く切り裂いた。
     いかに美味くても、押し付けてはならないことに違いはない。
     灼滅しなければならないご当地怪人であることに違いはない。
     灼滅者たちは、徐々に動きが鈍り始めていくブリターニャーを倒すため、更なる攻勢を仕掛けていく……。

     刺し身はいらぬと、たんは口を閉ざし顔を逸らした。
    「……いらないニャー?」
    「愛のない名物など、興味が無いのです」
    「!?」
     よほどショックだったのか、ブリターニャーはたんの紡ぐ炎の斬撃を避ける事もなく受け入れた。
     さらなる火力に包まれ香ばしい匂いを漂わせていくブリターニャーに、琥太郎は高速回転する杭を突き立てる。
    「今がチャンス。この調子で……」
    「さ、させないニャー!」
     痛みで割れを取り戻したか、ブリターニャーは灼滅者たちから距離を取った。
     自ら刺し身を食べ始め、刻まれていた傷を癒していく。
     問題ない、と一途が真っ先に飛び込んだ。
    「……大丈夫、あなたがいなくたって寒ブリは滅びませんよ」
    「ニャっ!?」
     当たり前といえば当たり前、されどご当地怪人にとっては盲点となる真実を突きつけて、背中を向けた振り向きざまに横一閃。
     のけぞり、よろめき、傷ついたブリターニャーの背後には、糸を伸ばしていた凪流が。
    「君のやり方だと、寒ブリ嫌いを増やしてしまうよ! 寒ブリの魅力なら私たちが十二分に伝えておくから、君はゆっくり休みなさいっ!」
     間髪入れずに切り裂いて、皿を箸を叩き切る。
     ブリターニャーの後頭部をぶった切る!
    「ニャ……」
     ブリターニャーは足元をよろめかせ、空を仰ぎながら倒れ始めた。
    「か……寒ブリは美味しい、魚の王様ニャー……!」
     地面へ激突すると共に爆散し、かぐわしい匂いだけを残して消え去った。
     このカマ……とブリターにゃーの頭を眺めていた凪流は、小さな溜息を吐いた後に振り返る。
     これからの楽しい時間を過ごすためにも、まずは仲間の治療を行おう。

    ●寒ブリ尽くしの定食を
     ――まともにブリ食べたいな。
     元の予定に、マッキのそんな呟きが重なったからか、後処理を終えた灼滅者たちは一路飲食店が並ぶ場所へとやって来た。
     表情険しくともワクワク気分で寒ブリの美味しい店を調べてきたというたんに付き従い、定食屋へとやって来た。
     運ばれてきた寒ブリ定食……煮物や刺し身、照り焼きなど、寒ブリを存分に使った品物の数々を前にして、蓮は喉を鳴らしていく。
    「……もう食べて、いい?」
     阻むものは誰も居ない。
     蓮は小さく頷き返した後、手を合わせて頂きます。
     合わせいただきますと紡いだ一途は、ひとまず刺し身へと手を伸ばした。
    「……あ、おいし」
     ちゃんと分かるわけではないけれど、寒ブリが美味しいことは教えてくれる。
     濃厚な旨味を感じながら、多季が小さく舌鼓。
    「こういう時こそがっつり頂いて行きたいですよねー」
     寒ブリはちょっと高くて頻繁には食べられない、贅沢品。
     だからこそ、港という最高の場所でお腹いっぱい食べられる機会は逃さない。
     思いはほぼ同じか、夏緒瑠はご飯片手に照り焼きを口へ運んでいく。
    「んーおいしいねぇ」
     生はダメだけど、火が通っていれば問題ない。寒ブリを料理する用意もあったという夏緒瑠は綺麗に身をほぐして箸で掴み、綺麗に食を進めていく。
     時折、おまけのお肉にも手を伸ばしながら。
     能登牛を食べさせてくれる怪人が出てくれれば……などとぼんやりと思考を巡らせながら……。
    「……」
     程なくして、全員が定食を食べ終わった。
     満足気な雰囲気が漂う中、凪流が音頭を取って手を合わせる。
    「ブリターニャー……寒ブリ、ごちそうさまでした!」
     作ってくれた職人に、命をくれた寒ブリたちに感謝を込めて。
     礼儀正しく全てを終えた後ならば……おいしい記憶も、永久なるものとして残るだろう。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年1月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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