2月14日に向けて、武蔵坂学園もバレンタインの準備で大忙し!
意味もなくロッカーや下駄箱を掃除し始めたり、挙動不審になり始める、野郎達。
そんなこと露知らず、家庭科室やキッチンで腕をかけてチョコを作り始める、女性達。
――そしてそして、そんな中。
「愛しい人が多く在れど、全人類が美味しい手料理を作れる訳では、ございませんッ!」
「見た目以外、壊滅的なアンタがいうと、妙に説得力あるよな……うん」
ぐっと無駄に拳を固める、里中・清政(中学生エクスブレイン・dn0122)。
その近くで面倒そうにワタル・ブレイド(小学生魔法使い・dn0008)が溜息を吐いて。
――ちょっと待て! 集まった学生達に声を掛けていたのは、どちらも野郎であーる。
なんで男が揃いも揃って。その疑問に執事エクスブレインが居住まいを正して答えた。
「確かに、バレンタインデーは、主に女性がチョコレートに全てを託し、お相手に想いを伝える、イベントでございますが……」
それはここ、武蔵坂学園もまた例外ではない。
無駄に芝居ぶった素振りの執事エクスブレインの後を、ワタルが強引に引き継いだ。
「ま、要するに、料理が苦手な女子だけじゃなくって、興味がある男子供も一緒にバレンタインを楽しもうぜ、っていう集いだな」
「まさしくその通りでございます」
遊びの舞台は、ショッピングモールの中にある、お菓子売り場。
今はイベントスペースの一角を使って、大々的にバレンタインフェアをしているとのこと。
手軽な義理チョコのほか、海外から輸入した高級チョコ、ロシアン風味まであるいう。
また、バレンタインデー前日でもあって、積極的に試食も行われているとか。
「意中の相手がいても手料理に自信がない者は、こういう所で探すのもアリだと思うぜ?」
腕をかけたプレゼントも素敵だけど、相手のことを想い、選んだ逸品もまた格別だから。
それに、貰って嬉しくない奴なんて滅多にいないぜと、ワタルは笑みを浮かべ――。
「縁の欠片も無しと早々諦めた方々も、自分で買って喰らえば良いのでございますッ!」
「オレの的確極まりねえフォローをぶち壊すんじゃねえッ!!」
余計なことを洩らした執事エクスブレインに、飛び蹴りを放つ小学生の図。
もちろん手加減しまくっているけど、執事エクスブレインは何故か清々しい。
「あ、わたくし集まった灼滅者様方を出歯亀……見守る次第ですので、お気遣いなく」
「もう勘弁してくれ」
真顔で脱線しまくる執事エクスブレインに、ワタルも肩で重い息を吐いてしまう。
けれど直ぐに気を取り直すと「年に一度のイベントだぜ?」と、不敵な笑みを浮かべた。
「オレみたいな小学生にとっても甘いモノは目がないからな、自分用のご褒美だ」
「左様でございますね。都合が合いましたら是非、ご検討お願い申し上げます」
何だかんだ言いながらも、子供らしく生き生きとしているワタル。
執事エクスブレインも柔らかな笑みを浮かべ、集まった学生達に深々と頭を下げた。
もちろん参加は自由、1人でもお気軽に。
本来は女性主体のイベントだけど、まあいいじゃないですか!
想いを込めて、もしくは日頃のご褒美に選ぶチョコレート。この機会に貴方もいかが?
「縁の欠片もなさ……ゴホン、男性方も多くいらっしゃって嬉しゅうございます」
「無駄に元気だな、アンタ」
御1人様が自分だけでなかったことに心躍――安堵したのだろう。
里中・清政(中学生エクスブレイン・dn0122)に少なくない罵声と苦笑が飛び交う中、ワタル・ブレイド(小学生魔法使い・dn0008)が溜息を吐く。
けれどそれも一瞬。ショッピングモールへ踏み込んだ一行の足取りはとても軽かった。
●ドキッ漢達のバレンタイン
「……バレンタインなめてた」
2月14日は周の誕生日。
祝いのプレゼントを周と一緒に選ぼうと、徹太も爽やかに足を運んだ瞬間、激アウェイ感な会場を前に、硬直ッ!
「おい、なんだよこの空気。これが戦場か。陣中でござるか!」
楽しく徹太と会話を弾ませていた周も、瞳を爛々と輝かせた女性達を前に、戦慄ッ!
だがここまで来て、みすみす退くのは漢が廃るではないかッ!
「チョコ買ってとっとと撤退だ!」
「あっちょ置いてかないでください」
「こーゆーとこって、男だと入りにくいんだよな」
今日は【自転車同好会】の皆と来てるから怖くないッ!
けど、色とりどりのチョコは見てるだけでも楽しく、意外に慧樹は楽しそう。
「別になんて無いけど、ちょっとやっぱり恥ずかしいですよね!」
このキラキラした包み紙が、気に入っていただけなんですよー。
と言いながら柊・司も、目につく物を右から左へ片っ端から購入中の様子♪
「お、コレいいかも。何かキレイだし、自転車のホイールっぽくね?」
気恥ずかしさ半分、好奇心半分の日方も、あちこち目移りしていて。
渡す相手は今一緒に来てるクラブ仲間、自然と薄切りオレンジにチョコを掛けた逸品に目が留まった。
「……これも、自転車みたい」
普段は自転車ばかりの皆が、こんなファンシーな世界にいるなんて……。
皆の照れ姿に微笑ましさを覚えた烏芥の目が、ドーナツのチョコリングに留まる。
並ぶ姿が車輪のよう。食べたらもっと、速く走れる様になれるかも?
「せっかく来たし、部室に置いとくチョコ、買っていこうかな」
「……じゃあこの凄い本物そっくりな自転車チョコで!」
女子にとっては大切でも、男の自分にとっては形くらいしか違いが良く分からない。
けれど、たまにはリッチなチョコもいいでしょと本命を提案する慧樹に、柊・司も便乗するように高価で精巧なチョコを指差した。
「スミケイ子ちゃんの貰っても三倍返しはできねーからなっ」
揃いも揃って自転車に見立てたものばかりで。
日方は思わず笑みを洩らし、烏芥も感嘆で何度も凝視していた。
「あったあった定番のおみくじチョコ」
縁は縁でもこっちの縁!
ユニークな形のチョコに面白味を覚えていた陽哉は釘バットチョコを手に取る。
箱いっぱいの幼虫チョコに職人技を見出し、綺麗な惑星ショコラは持ち帰り用に。
「……ほほう、ノートPCチョコにチョークチョコ!」
見覚えがある形を前に、陽哉の脳裏に浮かんだのは、担任の先生。
悪戯めいた笑みを浮かべた陽哉は、クラスメイトを探しに向かうのだった。
「1個だけじゃ物足りないかな」
渡す相手もいないからと、甘い物好きな優は自分用のチョコを選んでいて。
バレンタイン特設だけあって、普段は市場に出回らない珍しいチョコも陳列されている。
何種類か複数購入していく優の横で、執事エクスブレインが静かに頷いた。
「全灼滅者様方に差し上げるには、万単位が必要でございますね」
しかし、財布の中身も主人と同じく、スッカラカンだったとか。
「男どもは自分で買ってまでチョコが欲しいんすかね?」
参加者の3分の2が男性だった、新事実ッ!
思わず陰口を吐いた絹代だけど、その目はスペイン王室御用達と銘打っていたチョコに、しっかり留まっている。
金しか取り柄のないクズ共であっても、立派な恋愛には変わりない……はず!
「しみったれな女だって思われるだろうけどね」
そう苦笑した絹代はもう2つ、チョコを手に取ったのだった。
「どれにすんだ」
高価なものより、猫型とか猫パッケージのが嬉しいだろと笑う徹太。
周も有名ブランドは良く分からないからと、一緒に猫型のチョコを探そうと……。
「ってか、正直、てっくんに貰えるならなんでも嬉しいわ」
友達に誕生日祝って貰えるとか、マジ幸せ者だから。
そう真面目に告げる周に、徹太は何か良い事を言った顔してるなと苦笑する。
「せっかく来といて張り合いねーな」
3年後も祝おう。一緒に――。
●至福の一粒を探して
「さて、何を作りましょうネェ?」
友人のアリアーンと製菓用のチョコの買い出し来たラルフは、ぐるりと周囲を見回す。
作るのはチョコケーキ。その手伝いにかられたアリアーンは、ふと首を傾げた。
「……チョコケーキと言っても、色々あるけれど……何を作るんだ……?」
ラルフはスーツ、アリアーンはクラシカルなゴシックドレスを着ている。
けれど、ラルフはレシピは覚えているからと答えるだけで、聞いても教えてくれなくて。
……全く。そう溜息を付いたアリアーンの目が、ふと美味しそうな生チョコに留まった。
「……ねえ、お土産も買っていこう。あそこの生チョコ、美味しいから……」
「ふむ、お茶会でのお茶請けにしまショウか」
確か、有名なお店のチョコだったような。
アリアーンの提案にラルフも美味しそうだと応え、後で2人で分けようと瞳を細めた。
「司くんには自分で作ったのを渡したいから、今日はお手本のチョコを買いにきたの」
「……え? あ、うん」
買物に付き合って貰った椎宮・司に、不意に宣言する、麒麟。
想定外の言葉に椎宮・司は動揺しながらも、一緒にチョコを選んでいく。
「……いっぱいあるね、司くんはどれがいいと思う?」
「そうだ、ね……ちょっと甘めのがいいかな?」
麒麟の言葉に椎宮・司は返事を打ちつつ、麒麟がどんなのが好きなのか考えながら、気になったものを手に取っていて。
「きりんも甘いの好き。……これなんかおいしそうかも……あ、別にきりんが食べたいから言ってるわけじゃないよ?」
本当は食べたいって思っているのは、ヒミツ♪
そんな麒麟の内心に気付かないまま、椎宮・司はチョコに視線を留めている。
「でも本当に美味しそうだよ。買ってみる?」
「うん、じゃあこれにしてみるね」
麒麟は嬉しさを噛み締めながら、嬉々とチョコを手に取った。
「……ホント凄い熱気だな」
バレンタイン前日だけあって、女性達の意気込みは半端ではない。
優志と美夜は逸れないよう手を繋ぎ、時折足を止めては試食を楽しんでいて。
「ん……やっぱり、生チョコとかトリュフとかは、一通り周りたいよね」
「本当に口当たりの柔らかいのが好きだなぁ」
口に入れただけで蕩ける甘さに、美夜の表情が少しだけ弛む。
偏った試食に優志が笑みを洩らすと、美夜はむすっと眉を寄せた。
「……美味しいんだから、いいでしょ」
拗ねたような返事に、優志は蕩けた顔をしている美夜が可愛いと笑って返す。
そして、不意に生チョコの試食品を美夜の口元に放り込んだ。
「……って、こら、ここ人前っ!」
つい反射的にパクっと食べてしまった美夜は慌てふためいてしまう。
思わず強く訴えた美夜に、優志は微笑を返すだけで……。
このお姫様と共に過ごす時間が、何よりも一番楽しみだったから――。
「藍君、藍君、チョコが沢山、です……!」
大好きなチョコに囲まれた華凜の瞳は、自然とキラキラ瞬いていて。
華凜に手を引かれていた藍も、一緒に巡るひとときを満喫している様子。
そう思うのもきっと、瞳を輝かせた華凜と同じ時を過ごしているから。
「あ、ほら、アリスのチョコもあります、よ……!」
華凜が藍に視線を戻すと、彼の目は工具や歯車のチョコに留まっている。
視線の先に笑み一つ。眺めるそれが彼らしく、藍も華凜の声に直ぐに振り向いた。
「こんなに可愛いと、食べるのが勿体無いですね」
このアリスが華凜に似ているから、という思いは胸の内に秘めたまま。
そして、こっそり時計ウサギのチョコを買っていたことも……。
「お花のチョコも、可愛いです……!」
藍の視線が逸れた隙に、華凜はそっとアリスのチョコを籠に入れる。
共に同じ時間を過ごせることを願い、そして、今この時と瞬間を大切にするように――。
「流石にハート型ですと、貰った人が困るかもしれませんね」
白虎は妹の玄武と一緒に、クラブの仲間に渡すチョコを探していて。
面白い形のチョコか、それともロシアン式のチョコの方が受けは良さそう?
「年中飴舐めまくってるらしいから、甘いのも多分大丈夫かな?」
高校生が自分みたいな子供から貰っても、何も思わないかもしれない。
でも、誕生日の御礼に渡すくらいならと、玄武は真剣な眼差しでチョコを吟味していて。
「多分可愛らしいのがいいんじゃないかな?」
早々にクラブの分を買い終えた白虎も、割りと本気で悩んでいる妹にアドバイス。
「闇をイメージさせる黒よりも、白いチョコがいいかも」
――二度と闇に屈しないように。
色々目移りしながら、玄武の脳裏にぼんやりとイメージが浮かび上がる。
姉と一緒にホワイトチョコを探すと、余ったお小遣いで小さな駄菓子を幾つか揃えた。
――大好きな皆さんにチョコを差し上げたいッ!
と言っても全員分作るのは大変なので、リオンはホワイトと共にチョコを探していて。
「ホワイさん大丈夫ですか? はぐれないように手繋ぎましょうか?」
リオンがそっと差し出した手を、ホワイトが静かに握り返す。
人混みではぐれる心配がなくなったホワイトは、リオンの傍から離れないように歩きながら、店内を見回した。
「……あれでもいいのかな?」
何時も世話をしてくれる人に、感謝の気持ちを伝えたい。
そう想いながらホワイトの目が留まったのは、様々な色をしたバケツに入った大量のチョコだった。
●至福の一粒は海外にも
「やっぱり複数人にアタリが来たか」
「……大丈夫です?」
運命託す一粒、もといロシアンチョコの試食に挑んだのは、4人の猛者。
日方は安堵を洩らし、辛いのが苦手な烏芥もほっとした様子……。
「まさかヤツらの差し金……」
「二つも辛いチョコが入ってるって……あ、美味しいチョコ下さい」
男の勝負に負けた慧樹は、超ウキウキな気分も吹き飛び、悶絶中。
同じく涙目の柊・司も、口直しのチョコを求める阿鼻叫喚絵図でした、合掌。
「いろんなチョコがこんなに……!」
色とりどりのチョコに【古ノルド語研究会】の透流の瞳も、キラキラと輝いていて。
「そう言えば、2月14日は煮干しの日だと先輩たちが話していたが……。流石にここでは売っていないか」
アルディマも珍しいものを探さんと、1つ1つ手に取って確かめる。
日本のバレンタインには余り馴染みが無くても甘い物は嫌いではないし、興味が惹かれるものも沢山ありそうだ。
「透流ちゃん、皆さんにどんなチョコを買っていきますか?」
「えっ……みんなのぶんも買うの?」
芽衣子の問いに、ありのままの真顔で即答する、透流。
ロシア風のチョコを手に取ったアルディマも、不意に言葉を重ねた。
「所で二人は買ったチョコレートは誰かに渡すのか?」
生まれがあちらの方なので、なんとなく食べたくなったから。
そう告げたアルティマに、透流と芽衣子は顔を見合わせて……。
「……? もちろん、自分で食べるけど」
「自分用のチョコと自分用のチョコと自分用のチョコと、クラブの皆へのチョコを買っていこうと思います」
大事な事だから3回言いました的に、のんびりと答える芽衣子。
どうやら自分に正直なのは、透流だけではなかったようです♪
「私もロシアのチョコレート、買ってみる」
ふと、思わずロシアン怪人達のことを考えてしまう、透流。
似た事を考えていたアルディマも、警戒の色を濃くして周囲を見回した。
「この時期のデパートって好きだな」
何時にも増して華やかで、賑やかで、キラキラしてて――。
「……いろんなチョコがいっぱい並んでるから」
甘党のナディアの双眸は、獲物を前にした狩人の目そのものになっていて。
そんなお目目キラキラのチョコハンターな先輩に、かごめは可愛いなあと小さく独り言。
ナディアに勧められるがまま向かったのは、外国産のチョコブースだった。
「折角だから、この時期しかお目にかかれないよーなの食べたいし……あっ、これ美味しそ。これも食べたいっ」
ナディアは相変わらず、うろうろ目移りするばかり。
その横で、かごめが山程のミルクチョコを篭にポイポイ入れていった、その時だった。
「……ほんとは、桜井さんの手作りがいーんだけどなぁ」
ナディアの呟きに、かごめは思わず微笑み、鞄の方をみやる。
当たり前みたいに差し出してくる暖かい手と甘いものがあれば、どんな時だって至福なのは、彼女だけの胸の内……♪
「これ美味しそうじゃないかー?」
後輩のシェリカと共に突撃した斬夜も、早速自分達で食べるチョコ探し。
アーモンドやイチゴを乗せたチョコを見つけると、量と値段を見ながら二つ三つ見繕って購入していく。
「ねっねっ、これとか美味しそうですよっ♪」
楽しそうにはしゃぎながら、シェリカは外国産チョコを色々物色していて。
見る機会が少ない外国産チョコは、見ているだけでも楽しくなってくる。
「手作りも良いですけど、こういうのも選択肢がいっぱいあって素敵だねー!」
自分用のも兼ねて可愛いラッピングや、ユニークな形のチョコを手に取ったシェリカは、さりげなく斬夜に「どっちが好きですか?」と訪ねた。
「んー。手作りは手間掛かるけど、好きに弄れるのが良いよなあ」
買うのも最近は選択肢が多いから、悪くないけれど……。
「まあ強いてどっちが好きって言うなら、手作り?」
手間の分、有り難みが増す気がするからと、斬夜は答えた。
「……しかし、見慣れない色彩ばかりだな」
展示の風景やラッピングの種類を純也は細かく手帳に書き留めていく。
自宅での菓子作りが想定以上に良い鍛錬になったものの、如何せん作り過ぎた。
早急に処分の協力を仰ぐため、より適切な形状の把握が必要だと純也は足を運んだが。
「数度見ただけでは把握出来たとは言えないか」
参考にチョコを1つ購入。
手早く飾紐を付ける店員の手元を、純也は食い入るように見つめていた。
「こっちとこっちどっちがホワイさんはどう思いますか?」
包装紙一覧を真剣に凝視し、悩むリオン。
その様子を横目に、バケツチョコをラッピングしていたホワイトが手を止めた。
「右手に持ってるチェック柄でいいと思う」
ホワイトの返事にリオンは瞳を輝かせ、嬉々とラッピングしていく。
「ワタル、チョット相談乗ってヨ!」
「おぅ、いいぜー」
色とりどりのチョコに朱那の目も輝いたり丸くなったり、忙しなく。
凝ったパッケージに創作意欲を刺激され、見てるだけで1日が楽しめてしまいそう。
「気軽に日頃の感謝を伝えれそうなのが欲しいンだよね」
ワクワクしながら目的は忘れてはならぬと、朱那はしっかり物色する。
「友達とワイワイ楽しめる……こんなのどうだ?」
ワタルが玩具が入った卵型チョコを朱那に勧めた時だった。
「ブレイドさん、少しよろしいでしょうか」
エクスブレインの方々にも、日頃の感謝をこめてチョコを送りたい。
そう告げて、清政の趣好を訪ねる【天剣絶刀】の征に、ワタルは仕事以外関わりがないからなぁと首をひねった。
「灼滅者を尊敬してるみたいだし、敢えて普通のチョコの方が喜ぶと思うぜ」
それなら、味見をした方がいいかもと征は試食へと向かう。
「何か可愛い動物のチョコないかなー?」
あっちの一口サイズのチョコは、クラブの皆と食べる用に。
そういえばルビーが動物のチョコ欲しいって言ってたっけ。あ、兄ちゃん用のはどうしようと、翔の視線も忙しなく。
「どうしよう、何にしようかな」
真っ先にプレゼント用の高級板チョコを買い揃えたリヒターが悩んでいたのは、自分用。
高級チョコもいいけど、キラキラと輝いた瞳は自然と見たことがないチョコに惹かれていて。
普通のだと面白くないというのは翔も同感なのだろう、リヒターの隣に並んだ。
楽しい時間は、あっというまに過ぎて行く。
●至高に想いを籠めて
「皆さん、いかがっすか? 気に入ったチョコは見つかりそうで?」
試食で美味しいのがあれば教えて欲しいと、ギィは仲間に声を掛けていて。
フランスでも恋人の日というけれど、日本ほどではないと珍しそうに見回すギィに、翔は仲良くしてくれる先輩達と兄に買ったと嬉しそうに微笑んだ。
「みなさんは、どんなの買ったんですか?」
ワクワクしつつ問い掛けたリヒターの手には、恐竜とキリン、ワニの形のチョコ。
食べるのが勿体無いと笑みを零すリヒターに、征は両手に抱えた紙袋を見せながら感想を聞いて回っていて。
仲間の収穫を確認しながら、ギィも自分用に買ったボルドー名物のカヌレを見せた。
「クラブ棟に帰ったら、皆でお茶しながら食べやしょう」
少年少女達は、至高の一粒に想いを託す。
祈りと願い。そして、溢れんばかりの感謝の彩りを籠めて――。
作者:御剣鋼 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年2月13日
難度:簡単
参加:34人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 2
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