バレンタインデー2014~手作りチョコレート会

    作者:陵かなめ

    「もうすぐバレンタインだね! チョコレートの準備、進んでる?」
     製菓用のチョコレートを抱え、空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が話を切り出した。
    「あのね、私、家庭科室を借りて手作りのチョコレートに挑戦してみようと思うんだけど、一緒にどうかな?」
     家庭科室には、ある程度の料理器具が揃っている。
     そこで、放課後集まってチョコレートを作ってはどうかと言うことだ。
     どんなチョコレートにしようか、誰に渡そうか。
     腕に自身のある者も、初心者も、みんなで楽しくバレンタインに向け準備しよう!


    ■リプレイ

    ●手作りチョコレート会
     家庭科室では、順調にチョコレート作りが進んでいた。
    「まずは温めた生クリームに、チョコを溶かして……滑らかになるまで混ぜてね?」
     葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)がどうすれば良いのか口にする。
    「こんな感じ? ももは毎回こんな風に作ってるの? 凄いね」
     言われたとおりにチョコレートを溶かしながら、エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)が感心したように百花を見た。
    「毎回……特別な時だけよ」
     ほんのり頬を赤らめる百花。
     その特別は全てエアンのためだと思うと、とてもうれしく思う。
     啄身・言葉(織月・d01254)はビターなトリュフ、シェリー・ゲーンズボロ(白銀人形・d02452)はティラミスを作っていた。
    「そうだ、折角だし味見して貰えるかな?」
     シェリーがスプーンで一掬いし、言葉に差し出した。
    「わ、美味しい……彼氏さん、きっと喜んでくれるね?」
    「……有難う、彼に喜んで貰えると良いな」
     言葉も、箱に収まらなかった分をシェリーに差し出す。口の中に広がる味わいに、思わず頬が緩んだ。
    「もしかして、本命チョコかな」
    「うん、自分の気持ちに気づいたから伝えようと思うんだ……」
     言葉がはにかむ。お互い素敵なバレンタインになるようにと頷き合った。
     さて、集まった【水各務神社「琥珀館」】のメンバーは、様々なチョコ型を持ち寄った。
     お菓子作りも立派なお仕事! というわけで、自前のメイド服で挑んだ十皇・初子(黒燈・d14033)。
     湯煎用にチョコを刻んでいた初子が、ふと手を止めた。
    「……あれ? 日輪さん、カカオ99%のチョコレートを持って、どうするん、ですか?」
     言われて、湯煎係の日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)が笑顔で振り向く。
     カカオ99%のチョコレートって何なのだろうか?
    「なんだか強そうですね!」
     迷わず、個別に湯煎を開始した。
     トッピングに精を出していた海川・凛音(小さな鍵・d14050)もその様子に気がつく。
    「え、カカオ99%のチョコレートなんですか? とても苦そうな……」
     今日は長い髪を三角巾で覆ってきたのだが、三角巾の端が不安げに揺れた。
    「……あれ、なんだか苦ーい香りー? だいじょぶー?」
     桜と葉っぱのチョコレートを作っていた波織・志歩乃(箒星の魔女・d05812)も首を傾げた。
     髪をポニーテイルにして、三角巾をつけているので、一緒に髪も揺れ動く。
     ともあれ、鳥居に狐、桜、猫、星……などなど、色とりどりのチョコレートが出来上がった。

    ●進むチョコレート作り
    「ねえねえ、こんなのはどう?」
     ミュリリ・ポリック(色々盛りキマイラっ娘・d23714)が空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)を手招きした。
    「わぁ! 何これ、大作の予感」
     油で揚げたデニッシュのボールが積み上げられている。
    「色んなアイスの玉を、チョコをたっぷり練りこんだデニッシュで包んだんだよ」
     それは、アイスの天ぷら風だ。
    「うん! これはいけるんじゃないかな! 口の中でとろけるのが美味しいんだよねー」
     目を輝かせる紺子の隣で、無表情のエル・マークスマン(阿剛さん家の戦闘用メイド・d24272)が、物凄い勢いで溶かしたチョコと生クリームをかき混ぜていた。アーモンドをチョコレートで包み、トッピングを乗せる。その作業たるや、さながら精密機械のよう。
    「空色様、チョコレートの味見をお願い致します」
    「はい。頂戴いたします。あー、トリュフチョコだー。美味しいよー」
     丁寧に頭を下げれば、紺子も頭を下げ返した。
     差し出された三つのトリュフチョコレートは、模写したように同じ形状のものだった。
    「フッフッフ、今回ワタシが作るのはチョコレートプディングデスヨ!」
     とは言うものの、プリンのようなものではなく、どちらかと言うとケーキのようなものを目指す。
     金剛・ドロシー(手折れぬマーガレット・d20166)が気合を入れた。
    「量もたっぷり作りマスヨ! バレンタインデーにはお友達みんなに配らないといけませんカラネ!」
     フルーツソースやクリームを多めに入れて、甘めに仕上げる。
     その上に砂糖をちょっぴりまぶすと、お洒落なケーキが出来上がった。
    「今日くらいは女子力高い私たちを見せ付けちゃうよ!」
     家庭科室の真ん中で、朝比奈・夏蓮(アサヒニャーレ・d02410)が宣言した。
    「と言う訳で今日は『ものすごく凄いチョコ』をみんなで作ります!」
    「日頃お世話になっている駅番男子勢へ感謝の気持を込めて!」
     高倉・奏(弾丸ファイター・d10164)も手を上げる。
    「うん。駅番女子だって女の子。バレンタインくらいきっと「凄いチョコ」が作れるはず」
     雨積・舞依(思慕のプラトー・d06186)もいそいそと準備を始めた。
    「雨積妹はなにそれ、……豆腐?」
     椎葉・花色(夜間遊泳・d03099)が見たものは、紛れも無く豆腐だった。
    「最愛のお兄様はお豆腐が好き……。お豆腐のスイーツもあるし、絹ごし豆腐にチョコレートをこーてぃんぐすれば、美味しいんじゃないかな……」
     淡白な味の豆腐だから、多分、そう不味くは無いはず。多分。
    「へえ……」
     そう言う花色は、どろどろになるまで煮込んだカレーソースを固めて、それをチョコで包むようだ。
    「んー、どんなチョコがいいかな……?」
     すっごいチョコを作りたいと言う清浄院・謳歌(アストライア・d07892)が、きょろきょろと皆を見回した。
     皆どんなチョコを作っているのだろうか?
    「清浄院ちゃん、よければわたしのチョコ使う? カレー混ぜちゃったやつ」
     それに気づいた花色がカレー入りのチョコを差し出した。
    「ありがとう! あっ! 溶かして固めたチョコを削って、動物とか人の形にしてみたら面白いかも?」
     早速作業に取り掛かる。
    「つっても『ものすごく凄いチョコ』ってどんなんでしょうね……」
     首を傾げつつ、とりあえず作ってみる。
     湯煎したフルーツを溶かしたチョコに浸してコーティングする。
     ココアパウダーの代わりにカレー粉をふりかけ完成だ。
    「ちょっと仕上がりが地味な感じ? でも感謝の気持ちは篭ってるから大丈夫ですよね! きっと!」
    「あ、皆カレー味にしてる」
     カレーの隠し味にチョコレートを入れる事もあるし、相性はいいのかも、と舞依。
     隣では、夏蓮が本格的な仕上げに移っていた。
    「文化祭で皆で食べたピザの味が忘れられなくて……」
     言いつつ、花色のカレーペーストとチョコレートを重ねミルフィーユ状に。余っていた豆腐も使い、オーブンで焼けばデザート風ピザ(カレー風味)の完成だ。
     最後にカレー粉をかけると、見た目が鮮やかになり、食欲をそそる。
     見た目はとても美味しそうなカレーピザ。豆腐もトッピングされていて、ヘルシーさが窺える。しかし、このピザがどのような味になったのかは、食べる者しか分からない。
     ピリッとした香辛料がチョコレートの甘みを引き立てるのかも。そうでないのかも。

    ●北極大陸おぶじぇくと
     【柴くんち御一行】は北極大陸おぶじぇくとを作るべく、頑張っていた。
     柴・観月(サイレントノイズ・d12748)はホワイトチョコレートでベースを作り、チョコペンで顔を書く。
    「えらく少女漫画ちっくな顔付きになったけど、まあ気にしない」
     出来上がったのは、キラキラと輝く効果が付きそうな、かわいいシロクマだった。
     隣では、鈴木・昭子(籠唄・d17176)が海から顔を出したクジラを作っている。クジラのシルエットをミルクチョコでコーティングして、目と口をちまちまと書いていくのだ。
    「あ。小物、すてきです。わたしもリボンつくりましょう」
     ふと、袖岡・芭子(匣・d13443)の作っているリボンに気がつく。
    「クッキングペーパーの上で絞り出しで絵描いて固めると小物作りやすいよ」
     芭子が答えた。
     芭子は黙々とペンギンを作る。
     ホワイトチョコとビターチョコで模様をつけ、型に注いで固める。
     気づけば、小さなペンギンが沢山出来ていた。
    「……んと……こう、ですよね……」
     エイダ・ラブレス(梔子・d11931)は、手元のレシピを確認しながら真剣に作業していた。
     去年作ったトリュフチョコを作って、端っこにでも置いてもらおうと思ったのだ。
     作りながら、去年のことを思い出す。
     初めてのバレンタインで、手作りのものを作りたくて、頑張って……。
    「って、物思いに耽ってる場合じゃなかったです……恥ずかしい……」
     恥ずかしそうに、首を振った。
     ところで、柊・司(灰青の月・d12782)は手際良く作業を進めていた。
    「任せてください。芸術系は、ちょっとしたものです」
     良い笑顔で、そう言う。作るのは背景用の大陸だ。
    「基本チョコだから黒い感じになりそうですけど……」
     言いながら、地面や氷塊をどんどん製作していく。ホワイトチョコを使い、氷にヒビを入れると、それっぽいオブジェクトが出来上がっていく。
    「でも形だけでも寂しいから、何かこの氷塊に薄ぼんやりした顔でも描いておきましょう」
     しかし司は手を止めなかった。
     手際は決して悪くない。しかし、その手が描き出す顔は、なぜかとても見ていて不安になるような、怪物のような感じだ。
    「……、なんだか、柊。何ていうか、地獄絵図?」
     恐る恐る芭子が言う。
    「え、なになに? 何でしょうか」
     しかし司は、とても満足気だ。
    「……じゃなくて、前衛的だね」
     芭子はそう言うしかなかった。
     出来上がったおぶじぇくとを前に、撮影もする。
    「なんかこの大地狂気を感じる……」
     真珠がポツリと呟いた。
    「……北の大地には、いにしえの原人がねむっていますね?」
     昭子の意味深な言葉。
     とは言うものの、ある一定の箇所を除いて、とてもかわいい動物たちが集合した。
    「わぁ……かわいい……」
     エイダが声を上げる。一部心霊写真のようになっているけれど、凄い超大作だと思った。
    「うん、中々良い感じに出来た。かも」
     何故か一部心霊写真のようだけれども。観月は良い資料に出来そうだと、写真を撮り始めた。心霊写真にならないよう、細心の注意を払って、撮る。
     それは芭子も同じで、背景が入らないよう接写メインに写真を撮りまくった。

    ●皆に心をこめて
    「紺子さん、少し手伝ってもらえます?」
     アルファベットの型を並べながら椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)が紺子を誘った。
    「いいよいいよー。何すればいい?」
    「では、湯煎の番をお願いしますね」
     紺子に湯煎を任せ、紗里亜はクッキーの準備をはじめる。
    「ふぅん、クッキーの上にチョコレートを並べるのか?」
     隣で作業をしていた吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)が覗き込む。
    「はい。イニシャルカードチョコを作るんですよ。そちらは?」
    「俺はトリュフに挑戦だ。今年も手作りのチョコで、クラブの女子からの好感度アップ大作戦だぜ!」
     チョコレートと生クリームを混ぜながら、昴が答える。
    「去年も作ったの? 結果はどうだった?」
     湯煎したチョコレートを確認しながら紺子が聞くと。
    「……微妙って所だな、うん。いやまあ、反応は悪くなかったんだけどな?」
     何となく、歯切れが悪い感じだけれども。
    「準備できました? そろそろいきますよ」
     そうしているうちに、紗里亜の作業も大詰めになってきた。チョコの小鍋を片手に、素早く作業する。固まってしまうまでに、一気に流し込まなければ。
    「はっ。さながら、分身のごとく……!」
     手際のよさに。紺子がごくりとのどを鳴らす。
    「あ、空色、良かったら味見とか頼んでも良いか? やっぱ意見は聞きたいしな」
    「おっけーおっけー。あ! 何か、そんなに甘くないんだ。いい感じで口溶けるよ」
     紺子が言うと、昴が頷いた。
    「はい、こちらからもどうぞ。お疲れ様でした♪」
     紗里亜からもチョコレートが差し出される。
     余った材料で紺子の分も作ったというのだ。
    「あ、あ、ありがとうー。クッキーのさくさくも、チョコの甘みも美味しいよ」
     紺子が幸せそうにチョコレートを口に放り込んだ。
     こうして、チョコレート作りは幕を閉じた。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月13日
    難度:簡単
    参加:24人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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