「もうすぐバレンタインだね! チョコレートの準備、進んでる?」
製菓用のチョコレートを抱え、空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が話を切り出した。
「あのね、私、家庭科室を借りて手作りのチョコレートに挑戦してみようと思うんだけど、一緒にどうかな?」
家庭科室には、ある程度の料理器具が揃っている。
そこで、放課後集まってチョコレートを作ってはどうかと言うことだ。
どんなチョコレートにしようか、誰に渡そうか。
腕に自身のある者も、初心者も、みんなで楽しくバレンタインに向け準備しよう!
●手作りチョコレート会
家庭科室では、順調にチョコレート作りが進んでいた。
「まずは温めた生クリームに、チョコを溶かして……滑らかになるまで混ぜてね?」
葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)がどうすれば良いのか口にする。
「こんな感じ? ももは毎回こんな風に作ってるの? 凄いね」
言われたとおりにチョコレートを溶かしながら、エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)が感心したように百花を見た。
「毎回……特別な時だけよ」
ほんのり頬を赤らめる百花。
その特別は全てエアンのためだと思うと、とてもうれしく思う。
啄身・言葉(織月・d01254)はビターなトリュフ、シェリー・ゲーンズボロ(白銀人形・d02452)はティラミスを作っていた。
「そうだ、折角だし味見して貰えるかな?」
シェリーがスプーンで一掬いし、言葉に差し出した。
「わ、美味しい……彼氏さん、きっと喜んでくれるね?」
「……有難う、彼に喜んで貰えると良いな」
言葉も、箱に収まらなかった分をシェリーに差し出す。口の中に広がる味わいに、思わず頬が緩んだ。
「もしかして、本命チョコかな」
「うん、自分の気持ちに気づいたから伝えようと思うんだ……」
言葉がはにかむ。お互い素敵なバレンタインになるようにと頷き合った。
さて、集まった【水各務神社「琥珀館」】のメンバーは、様々なチョコ型を持ち寄った。
お菓子作りも立派なお仕事! というわけで、自前のメイド服で挑んだ十皇・初子(黒燈・d14033)。
湯煎用にチョコを刻んでいた初子が、ふと手を止めた。
「……あれ? 日輪さん、カカオ99%のチョコレートを持って、どうするん、ですか?」
言われて、湯煎係の日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)が笑顔で振り向く。
カカオ99%のチョコレートって何なのだろうか?
「なんだか強そうですね!」
迷わず、個別に湯煎を開始した。
トッピングに精を出していた海川・凛音(小さな鍵・d14050)もその様子に気がつく。
「え、カカオ99%のチョコレートなんですか? とても苦そうな……」
今日は長い髪を三角巾で覆ってきたのだが、三角巾の端が不安げに揺れた。
「……あれ、なんだか苦ーい香りー? だいじょぶー?」
桜と葉っぱのチョコレートを作っていた波織・志歩乃(箒星の魔女・d05812)も首を傾げた。
髪をポニーテイルにして、三角巾をつけているので、一緒に髪も揺れ動く。
ともあれ、鳥居に狐、桜、猫、星……などなど、色とりどりのチョコレートが出来上がった。
●進むチョコレート作り
「ねえねえ、こんなのはどう?」
ミュリリ・ポリック(色々盛りキマイラっ娘・d23714)が空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)を手招きした。
「わぁ! 何これ、大作の予感」
油で揚げたデニッシュのボールが積み上げられている。
「色んなアイスの玉を、チョコをたっぷり練りこんだデニッシュで包んだんだよ」
それは、アイスの天ぷら風だ。
「うん! これはいけるんじゃないかな! 口の中でとろけるのが美味しいんだよねー」
目を輝かせる紺子の隣で、無表情のエル・マークスマン(阿剛さん家の戦闘用メイド・d24272)が、物凄い勢いで溶かしたチョコと生クリームをかき混ぜていた。アーモンドをチョコレートで包み、トッピングを乗せる。その作業たるや、さながら精密機械のよう。
「空色様、チョコレートの味見をお願い致します」
「はい。頂戴いたします。あー、トリュフチョコだー。美味しいよー」
丁寧に頭を下げれば、紺子も頭を下げ返した。
差し出された三つのトリュフチョコレートは、模写したように同じ形状のものだった。
「フッフッフ、今回ワタシが作るのはチョコレートプディングデスヨ!」
とは言うものの、プリンのようなものではなく、どちらかと言うとケーキのようなものを目指す。
金剛・ドロシー(手折れぬマーガレット・d20166)が気合を入れた。
「量もたっぷり作りマスヨ! バレンタインデーにはお友達みんなに配らないといけませんカラネ!」
フルーツソースやクリームを多めに入れて、甘めに仕上げる。
その上に砂糖をちょっぴりまぶすと、お洒落なケーキが出来上がった。
「今日くらいは女子力高い私たちを見せ付けちゃうよ!」
家庭科室の真ん中で、朝比奈・夏蓮(アサヒニャーレ・d02410)が宣言した。
「と言う訳で今日は『ものすごく凄いチョコ』をみんなで作ります!」
「日頃お世話になっている駅番男子勢へ感謝の気持を込めて!」
高倉・奏(弾丸ファイター・d10164)も手を上げる。
「うん。駅番女子だって女の子。バレンタインくらいきっと「凄いチョコ」が作れるはず」
雨積・舞依(思慕のプラトー・d06186)もいそいそと準備を始めた。
「雨積妹はなにそれ、……豆腐?」
椎葉・花色(夜間遊泳・d03099)が見たものは、紛れも無く豆腐だった。
「最愛のお兄様はお豆腐が好き……。お豆腐のスイーツもあるし、絹ごし豆腐にチョコレートをこーてぃんぐすれば、美味しいんじゃないかな……」
淡白な味の豆腐だから、多分、そう不味くは無いはず。多分。
「へえ……」
そう言う花色は、どろどろになるまで煮込んだカレーソースを固めて、それをチョコで包むようだ。
「んー、どんなチョコがいいかな……?」
すっごいチョコを作りたいと言う清浄院・謳歌(アストライア・d07892)が、きょろきょろと皆を見回した。
皆どんなチョコを作っているのだろうか?
「清浄院ちゃん、よければわたしのチョコ使う? カレー混ぜちゃったやつ」
それに気づいた花色がカレー入りのチョコを差し出した。
「ありがとう! あっ! 溶かして固めたチョコを削って、動物とか人の形にしてみたら面白いかも?」
早速作業に取り掛かる。
「つっても『ものすごく凄いチョコ』ってどんなんでしょうね……」
首を傾げつつ、とりあえず作ってみる。
湯煎したフルーツを溶かしたチョコに浸してコーティングする。
ココアパウダーの代わりにカレー粉をふりかけ完成だ。
「ちょっと仕上がりが地味な感じ? でも感謝の気持ちは篭ってるから大丈夫ですよね! きっと!」
「あ、皆カレー味にしてる」
カレーの隠し味にチョコレートを入れる事もあるし、相性はいいのかも、と舞依。
隣では、夏蓮が本格的な仕上げに移っていた。
「文化祭で皆で食べたピザの味が忘れられなくて……」
言いつつ、花色のカレーペーストとチョコレートを重ねミルフィーユ状に。余っていた豆腐も使い、オーブンで焼けばデザート風ピザ(カレー風味)の完成だ。
最後にカレー粉をかけると、見た目が鮮やかになり、食欲をそそる。
見た目はとても美味しそうなカレーピザ。豆腐もトッピングされていて、ヘルシーさが窺える。しかし、このピザがどのような味になったのかは、食べる者しか分からない。
ピリッとした香辛料がチョコレートの甘みを引き立てるのかも。そうでないのかも。
●北極大陸おぶじぇくと
【柴くんち御一行】は北極大陸おぶじぇくとを作るべく、頑張っていた。
柴・観月(サイレントノイズ・d12748)はホワイトチョコレートでベースを作り、チョコペンで顔を書く。
「えらく少女漫画ちっくな顔付きになったけど、まあ気にしない」
出来上がったのは、キラキラと輝く効果が付きそうな、かわいいシロクマだった。
隣では、鈴木・昭子(籠唄・d17176)が海から顔を出したクジラを作っている。クジラのシルエットをミルクチョコでコーティングして、目と口をちまちまと書いていくのだ。
「あ。小物、すてきです。わたしもリボンつくりましょう」
ふと、袖岡・芭子(匣・d13443)の作っているリボンに気がつく。
「クッキングペーパーの上で絞り出しで絵描いて固めると小物作りやすいよ」
芭子が答えた。
芭子は黙々とペンギンを作る。
ホワイトチョコとビターチョコで模様をつけ、型に注いで固める。
気づけば、小さなペンギンが沢山出来ていた。
「……んと……こう、ですよね……」
エイダ・ラブレス(梔子・d11931)は、手元のレシピを確認しながら真剣に作業していた。
去年作ったトリュフチョコを作って、端っこにでも置いてもらおうと思ったのだ。
作りながら、去年のことを思い出す。
初めてのバレンタインで、手作りのものを作りたくて、頑張って……。
「って、物思いに耽ってる場合じゃなかったです……恥ずかしい……」
恥ずかしそうに、首を振った。
ところで、柊・司(灰青の月・d12782)は手際良く作業を進めていた。
「任せてください。芸術系は、ちょっとしたものです」
良い笑顔で、そう言う。作るのは背景用の大陸だ。
「基本チョコだから黒い感じになりそうですけど……」
言いながら、地面や氷塊をどんどん製作していく。ホワイトチョコを使い、氷にヒビを入れると、それっぽいオブジェクトが出来上がっていく。
「でも形だけでも寂しいから、何かこの氷塊に薄ぼんやりした顔でも描いておきましょう」
しかし司は手を止めなかった。
手際は決して悪くない。しかし、その手が描き出す顔は、なぜかとても見ていて不安になるような、怪物のような感じだ。
「……、なんだか、柊。何ていうか、地獄絵図?」
恐る恐る芭子が言う。
「え、なになに? 何でしょうか」
しかし司は、とても満足気だ。
「……じゃなくて、前衛的だね」
芭子はそう言うしかなかった。
出来上がったおぶじぇくとを前に、撮影もする。
「なんかこの大地狂気を感じる……」
真珠がポツリと呟いた。
「……北の大地には、いにしえの原人がねむっていますね?」
昭子の意味深な言葉。
とは言うものの、ある一定の箇所を除いて、とてもかわいい動物たちが集合した。
「わぁ……かわいい……」
エイダが声を上げる。一部心霊写真のようになっているけれど、凄い超大作だと思った。
「うん、中々良い感じに出来た。かも」
何故か一部心霊写真のようだけれども。観月は良い資料に出来そうだと、写真を撮り始めた。心霊写真にならないよう、細心の注意を払って、撮る。
それは芭子も同じで、背景が入らないよう接写メインに写真を撮りまくった。
●皆に心をこめて
「紺子さん、少し手伝ってもらえます?」
アルファベットの型を並べながら椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)が紺子を誘った。
「いいよいいよー。何すればいい?」
「では、湯煎の番をお願いしますね」
紺子に湯煎を任せ、紗里亜はクッキーの準備をはじめる。
「ふぅん、クッキーの上にチョコレートを並べるのか?」
隣で作業をしていた吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)が覗き込む。
「はい。イニシャルカードチョコを作るんですよ。そちらは?」
「俺はトリュフに挑戦だ。今年も手作りのチョコで、クラブの女子からの好感度アップ大作戦だぜ!」
チョコレートと生クリームを混ぜながら、昴が答える。
「去年も作ったの? 結果はどうだった?」
湯煎したチョコレートを確認しながら紺子が聞くと。
「……微妙って所だな、うん。いやまあ、反応は悪くなかったんだけどな?」
何となく、歯切れが悪い感じだけれども。
「準備できました? そろそろいきますよ」
そうしているうちに、紗里亜の作業も大詰めになってきた。チョコの小鍋を片手に、素早く作業する。固まってしまうまでに、一気に流し込まなければ。
「はっ。さながら、分身のごとく……!」
手際のよさに。紺子がごくりとのどを鳴らす。
「あ、空色、良かったら味見とか頼んでも良いか? やっぱ意見は聞きたいしな」
「おっけーおっけー。あ! 何か、そんなに甘くないんだ。いい感じで口溶けるよ」
紺子が言うと、昴が頷いた。
「はい、こちらからもどうぞ。お疲れ様でした♪」
紗里亜からもチョコレートが差し出される。
余った材料で紺子の分も作ったというのだ。
「あ、あ、ありがとうー。クッキーのさくさくも、チョコの甘みも美味しいよ」
紺子が幸せそうにチョコレートを口に放り込んだ。
こうして、チョコレート作りは幕を閉じた。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年2月13日
難度:簡単
参加:24人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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