バレンタインデー。
好きな人にチョコをプレゼントをして、告白する、例のイベントである。
女子からが定番だが、男子からプレゼントするということもあるそうだ。
とくに『手作り』というのは、重要だ。
好きな人に喜んでもらう為に、心を込めて手作りする。
さて、ここに一枚のチラシがある。
「武蔵坂学園の調理室で、手作りチョコを作ろう!」
どうやら、調理室が借りられるようだ。
チラシによると、たいていの材料は揃っているらしいが、高級食材とかは、各自、持ち寄るようにと書いてある。
ついでにいうと、多少多くつくって、つまみ食い……もとい、味見もするのも楽しいかもしれない。
おっと、料理が苦手なキミには、初心者用のレシピも用意してあるようだ。
だが、誰かに教えてもらった方が、より上手にできるかもしれない。
さて、覚悟……いや、参加を決めたのなら、さっそく調理室に行こう。
大好きな人の笑顔のために、いざ、決戦の場へ!!
●みんなと一緒に愛を込めて
甘い香りが漂う中で、丁寧に手を動かしながら、クベールチュールチョコを溶かし、生クリームを混ぜているのは森田・依子(深緋の枝折・d02777)。
「どんなのが好きかな?」
甘さもほろ苦さも、いろいろ詰まった気持ちを込めた、栗を使ったクラシックショコラ。喜ぶ顔を思い浮かべて、依子は思わず笑みを浮かべる。
「お菓子って作ったことないけど、普通の料理とそんなに変わらんでしょ」
そういって、チョコ作りに参加しているのは、伊奈波・白兎(ミスノーブレーキ・d03856)。
「……しっかし、砂糖の分量がよく解んないな……まぁあいつ甘党だし、多い方がいいよね、きっと!」
ざざーと1キロの砂糖を入れて、かき混ぜる。ついでに隠し味の蜂蜜も入れて。
「あ、あの、それはちょっと多い……」
初めてチョコを作る人達の手伝いをしていた風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897)が止めようとしたが、もう遅い。
だが、完成した白兎のチョコは、見た目だけはごく普通のハート型チョコが完成した。
「あの、レシピ通り作った方が美味しくできますよ……」
今回はあまり上手にフォローできなかったが、他のメンバーのチョコ作りに優歌が大いに貢献したのは言うまでもなく。
「ふふ、クロくんは甘い物お好きですし、喜んでいただけたら嬉しいです~。ラッピングもいいですが、この蝶々のお皿に、フルーツと生クリームを添えて。小さな宝箱みたいに飾れば…ふふ、出来上がり、です~」
素敵なラッピングをしながら、織凪・柚姫(甘やかな声色を紡ぎ微笑む織姫・d01913)は想いを込めたフォンダンショコラを完成させる。
と、誰かの視線に気づき手を止めた。
「と、とっても素敵なチョコね」
手際の良さそうな人の隣を見事ゲットした、純吉・文子(幸福書翰・d17674)だ。
そんな彼女はクローバーのチョコを作ろうとして、思わずハートの型を手にしている。おぼつかないその手つきを見て、チョコを完成させた柚姫は微笑んで。
「あの……私で良かったらお手伝いしましょうか? 大切な方に贈るチョコですものね。一緒においしいチョコを作りましょう?」
「いいの? ありがとう」
その申し出に文子はホッとした表情でお願いするのであった。
こちらは、いつも使っている調理道具などをしっかり用意し、得意なザッハトルテを作っている龍統・光明(千変万化の九頭龍刃・d07159)。
今回は少し趣向を変えてホワイトチョコで作っていた。
そして出来たザッハトルテを少し味見。
「ん、此れなら上出来かな……喜んでくれると良いんだけど」
満足できる出来に笑みを浮かべながら、光明は恋人の事を想う。
きちんとレシピ通りに軽量カップやはかりで量りながら、武藤・雪緒(中学生シャドウハンター・d24557)は、トリュフチョコレートを作っている。
「ちょっと失礼。そして、こちらが混ぜ合わせたものになります」
別のところから取り出したボウルには、きちんと材料が混ぜ合わさったものが入っている。なんだかその手際は料理番組を見ているかのようだ。生地を型に流し込み、冷蔵庫で冷やし、ココアパウダーとココナッツをまぶして。
「上手にできましたー」
持っていたタブレットからそれっぽいBGMを流しながら、雪緒もチョコを完成させたようだ。
「日本だと女の子がチョコレートを渡す日だけど……」
水杜・光(オーバードライブ・d02809)は、いくつものボウルを用意して、美味しいクッキーを作るため、試行錯誤していた。様々な配合をしながら、味見を繰り返している。
「せっかく渡すんだから徹底的に美味しいのを作らなくちゃ。茉莉花ちゃん喜んでくれるかな?」
思い浮かべるのは、彼女の喜ぶ姿。
さて場所は変わって、こちらはペアでチョコを作る者達が集まっている。
ミンスパイを作る東雲・羽衣(紫陽花カンツォーネ・d20543)とフォンダンショコラを作っている桜部・春姫(微睡みの桜・d22294)。
「わぁ……春姫ちゃんのチョコレートも美味しそう。どなたか意中の方がいらっしゃるの?」
「え!? あ……その、まだいないよ~。羽衣ちゃんこそ、そういう人いないの?」
逆に尋ねられて、羽衣は頬を染めて、蚊の鳴くような声で。
「気になる人は……」
その後も恋の話に花咲かせながら、チョコは完成する。羽衣のチョコには、小さな十字架をつけたラッピングを。それを見た春姫もリボンを可愛く結んで対抗していた様子。
「えへへっ、一緒につくろー♪」
「ええ、いいですよ。何を作るかは……お互い内緒で!」
睦月・歩(縫糸縛界・d22606)の提案に、如月・水花(逆神の巫女・d13340)は喜んで頷いた。二人はさっそく作業に取り掛かる。
「ふんふんふ~ん♪」
鼻歌を歌う歩に水花は思わず、彼の手元を覗き込もうとして。
「もぅ、だーめっ」
隠されてしまった。
「そういう水花お姉ちゃんは、何を作るのー?」
「まだ教えられませんよ」
結局完成するまで見ることは叶わず。
歩が作ったのは、一口大のチョコケーキ。水花が作ったのは、Happy Valentineと書かれたハート型のチョコレート。
「水花お姉ちゃん、ありがとね……あむ♪」
「歩ちゃんも、ありがとう……ぱく」
互いに感謝の気持ちを込めて。
今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)が作るのは、ブラウニーと注文されたフォンダンショコラ。普段家事手伝ったりお菓子を作っている紅葉にとって、チョコ作りはお手の物だ。器用にサクサクと作業を進めていく。
一方、彼女と一緒にチョコ作りに挑戦するのは、垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897)。こちらはというと。
「うー、包丁使うの苦手なんだよ……」
板チョコを刻むのでさえも四苦八苦。
「がぅー!? や、やっちゃったんだよ……!」
今度は火加減が分からず、生クリームを沸騰させてしまう。
「あれ? どうしたの?」
ひと段落した紅葉の手を借りて、ようやく毬衣のトリュフチョコレートも完成。
「ちょっと小さくなっちゃったけど……これなら配れそうなんだよ」
出来上がったチョコを二人で、少しだけ味見。
杜若・葛(花守・d10693)の持ってきた本を諸星・千聖(ぐりーみんぐすたー・d13659)とで見てみる。そこには生チョコのレシピが。
「生チョコを作るんですね! 先輩は誰に?」
「うまくできたら……えっと、彼女にあげたいな、とか……。ち、ちさは、誰かにあげる、のか……?」
その問いに驚きながらも千聖は。
「先輩は彼女さんに渡すのですね! わたしはクラブの皆にっ!」
そう答えながら、いつかわたしも大切な人に渡せる日が来るかなと思ってしまう。一方、葛はその千聖の言葉にホッとしていたり。
チョコを刻んで、湯煎で溶かし、生クリームと混ぜてゆく。
「ちさ、包丁気をつけろ、よ……」
「あ、はいっ! ……わわっ」
そんなシーンもありながらも、二人の生チョコは完成していく。
「……うん、上手にできた。喜んでくれるといい、な……」
「わ、おいしい!」
完成したチョコをラッピングして、千聖は、その一つを葛に渡す。
「今日もありがとうございました!」
日頃の感謝を込めたプレゼントに葛は、嬉しそうにそれを受け取ったのだった。
初めてのチョコ作りに挑戦するのは、国津・十六夜(宇都巫娘・d04390)。
「もし、分からないことがあったら、お姉さんのわたしにどんどん聞くんだよー!」
三園・小枝子(トリカゴノユメ・d18230)も、そう言いながらも実はチョコ菓子作りの経験は殆どなかったりする。自信満々な雰囲気に騙されてはいけない。
とはいっても、いきなり聞いてはいけないだろうと十六夜も考える。だがしかし。
「この……ユセンって何だ?」
結局、小枝子を頼ることになるのは言うまでもなく。
二人ともおぼつかない手つきで、けれども何とか完成させる。
十六夜は、星や三日月の形のチョコレート。
小枝子は、少し歪なチョコとクッキー。
「今日はありがとね」
そう小枝子が出来たチョコを十六夜に渡せば。
「え、あ……ありがとう」
と少し照れていた。と、思いついたように。
「じゃ、じゃあ、これやるぜ……お、お返し!」
と十六夜も作ったチョコを渡す。
「……小枝子とチョコ作れて楽しかったぜ」
「わたしも、だよ」
そして二人は、互いに微笑み合ったのだった。
街では色々なチョコが売られているけれども、やっぱり一番大切な人には心を込めて作ってあげたい。
「と言うワケで、花夜子ちゃん先生よろしくお願いします、だよ」
そういう花守・ましろ(ましゅまろぱんだ・d01240)に、冴泉・花夜子(月華十五代目当主・d03950)は。
「こちらこそ、よろしくね」
と、にっこり微笑む。
二人はさっそく作業に取り掛かる。
「まずはチョコを湯煎するんだけど……」
「湯煎ってなぁに? お湯をかけて溶かせばいいの?」
「え? そっから? 湯煎ってお湯の熱でチョコを溶かすことね。でも、固まるのは早いから、気をつけて」
驚きながらも、丁寧に教えてゆく。そして、完成したのは、美味しそうなチョコトリュフ。さっそく、ましろは花夜子に味見してもらう。
「……うん、大丈夫。とってもオイシイ!」
その言葉にホッとしていると。
「じゃあアタシのも味見して」
「良いの? ……んむ、とってもオイシイ!」
オイシイチョコに、二人は思わず顔を綻ばせた。
さて、こちらは【夜空の友歌】のグループ。
南谷・春陽(春空・d17714)と御風・七海(夜啼き翡翠・d17870)、ナーシャ・アタシナ(泡沫の夜歌・d18837)、友繁・リア(微睡の中で友と過ごす・d17394)の4人だ。
「お湯とチョコを合わせちゃダメなのですよ! ドレッシングみたいに分離しちゃうのですよ! それから、熱しすぎてもダメなのですよ」
さっそく激を飛ばすのは、料理の得意なナーシャ。
そんな中、七海は筆談でリアに話しかける。
『リアはこういうのやったことある?』
「んー……作ったことあると思うんだけど……思い出せないのよね……」
その隣でチョコを刻むのは、春陽。
「七海ちゃんも一緒にやる? 私、ぶきっちょだから、こういうの苦手なのよね」
『そういうことなら、私、出来ると思うよ。包丁貸して?』
わいわいと話しながら、作業は湯煎に。
「……ナーシャちゃん、テンパリングって何?」
「テンパリング……? えっと……ナーシャさん、私のこの作業はテンパリング?」
春陽とリアの言葉に頷きながら、ナーシャは答える。
「テンパリングは、チョコに光沢とツヤを出すのに必要な作業なのですよ。お湯で三段階に分けて溶かしていくのですよ」
そうこうしながら、4人のチョコは完成! 春陽はチョコトリュフ。七海は乾燥イチゴをチョコで包んだもの、リアは星とハートの形のチョコ。そして、ナーシャは本命用のガトーショコラと、友チョコ兼クラスメイトと部員用のトリュフを完成させていた。
出来たチョコに4人は顔を見合わせ、微笑み合う。
きっと素敵なプレゼントになるだろう。
こうして、皆、手作りのチョコを完成させていった。
後はバレンタインデーにこれを渡すのみ。
その結果? それはまた別の話。
一つ言える事は、調理室が甘い空気に包まれたということだろう。
楽しい笑い声と共に……。
作者:相原きさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年2月13日
難度:簡単
参加:24人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 0
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