ロールビーフ怪人~チョコを強奪する簡単なお仕事~

    作者:相原あきと

     場所は大分県は豊後高田市。
     日時は2月14日、今日はリア充が溢れる日。
    「なんだいリンダ、こんなところに呼び出して?」
    「これをあげるわジョニー。もちろん私の手作りよ?」
    「OH! そういえば今日はヴァ――」

     ドゴッ!

    「――レラッ!」
     ジョニーは最後まで言葉を言いきらずに殴り飛ばされ道の端に崩れ落ちる。
    「ジョニー!?」
     慌ててリンダが近寄るがジョニーに意識は無い。
    「ひ、ひどい! どうしてこんな……こんな……あ、あ、あなた何!?」
     ジョニーを殴り飛ばした男を非難しようとしたリンダが、その男の異様な風体に目を疑う。
     その男は真っ赤なパンツとリングブーツのみを装着したプロレスラーの姿だった。
     それだけでも変なのだが、その頭部が一番問題だろう。
     なんというか……肉巻きオニギリに目と口がついている、そんな顔だった。
     肉巻きオニギリ顔のレスラーがジョニーの落したチョコを拾う。
    「それは私の手作りチョコ! か、返して!」
     リンダが取り戻そうとするが、いつの間にか現れたコサック兵達がリンダを羽交い締めにする。
    「黙れ! チョコはこのロールビーフ怪人が頂く! だが安心しろ、ただとは言わん」
     そう言うと肉巻きレスラーが気絶中のジョニーの両ポケットに強引に豊後名物の牛肉巻きおにぎりを突っ込む。
    「ああ、ジョニーのポケットが肉巻きオニギリでぐちゃぐちゃに……」
     羽交い締めにされつつ茫然と呟くリンダ。
    「追加の1つはサービスだ、感謝するんだな」
     そういって、肉巻きレスラーはチョコを強奪して去って行ったのだった。

    「2月14日が何の日か知ってる?」
     教室に集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が皆に聞く。
     もちろんその日はバレンタインデーである。基本的に誰だって知っている。
    「実はそのバレンタインデーにチョコを強奪するご当地怪人が現れるの」
     どうしてチョコレートが狙われたのかは分からないが、チョコレートが奪われるのを阻止しつつ、このご当地怪人を倒してほしい――それが今回の珠希の依頼である。
    「怪人が現れるのは大分県の豊後高田市にある人気の少ない公園よ。時刻は夕方、ちょうど1組のカップルがいるんだけど、怪人はそこに現れるみたい」
     灼滅者が介入できるタイミングは、公園のそのカップルのうち、女性が男性にチョコを渡した直後らしい。
     怪人もそのタイミングで彼氏を殴り倒そうと突っ込んでくるという。
     公園にはそのカップル1組しかおらず、付近にそれ以外の一般人はいないので多少騒いでも誰かやってくる事は無いらしい。
    「ご当地怪人は一般人を殴ってチョコを強奪しているけど、殴られた人は気絶するだけで命に別状は無いわ、一応言っておくわね」
     ご当地怪人はご当地ヒーローと妖の槍に似たサイキックを使い、得意な能力は術式、ポジションはクラッシャー。
     護衛のコサック兵たちはただの戦闘員であり、数は3体、誰もが解体ナイフに似たサイキックを使い、ポジションはディフェンダーが2体、メディックが1体とのことだ。
    「ちなみにこの怪人、恋人はいないみたいでかなり嫉妬深いみたい。自分の境遇に共感してくれる人がいた場合、その人を同志だと思うみたいなの」
     もちろん、自分の邪魔をしてくるようなら最後には攻撃してくるが、攻撃の優先順位は同志だと思った者は他に比べて低くなるらしい。つまり同志は最後まで狙わないという事か……。
    「えっと……そういえば、ご当地怪人の名前を言って無かったわね。怪人の名は『ロールビーフ怪人』、豊後の牛肉肉巻きオニギリの怪人で、肉巻きオニギリが顔になったプロレスラーのような格好をしているからきっと一目で解るわ! それじゃあ、宜しくね!」


    参加者
    蒔絵・智(黒葬舞華・d00227)
    二夕月・海月(くらげ娘・d01805)
    鴨打・祝人(みんなのお兄さん・d08479)
    天槻・空斗(焔天狼君・d11814)
    猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)
    多鴨戸・千幻(超人幻想・d19776)
    シェリス・クローネ(へっぽこジーニアス・d21412)

    ■リプレイ


    「これをあげるわジョニー。もちろん私の手作りよ?」
    「OH! そういえば今日はヴァ――」

    『ギャーーッ!』

     男の悲鳴にジョニーとリンダがぎょっとする。
     見れば真っ赤なパンツとリングブーツのみを装着したプロレスラー姿の男がうずくまっている。よく見れば、そのレスラーの顔は肉巻きオニギリになっており、その顔に白い犬が食らいついていた。
    「お、おのれ!」
     すくっと立ち上がるロールビーフ怪人と、顔にぶらーんと食い下がっている白犬――犬変身中の天槻・空斗(焔天狼君・d11814)。
    「そこのアベック、そのチョコを渡して……」
     ガブガブ。
    「って、いい加減離さんか!」
     ブンと頭を振って白い犬を放れば、着地と同時に人間に戻る空斗。
     さらにその間に怪人とアベックの間に割って入るは多鴨戸・千幻(超人幻想・d19776)、足元には尻尾のあるコーギー姿の霊犬さんぽもいる。
    「え、もしかして俺達を守ってくれに?」
     怪人から守られたのかと考えるアベック達だが、そこに近づくはシェリス・クローネ(へっぽこジーニアス・d21412)。
    「独り身の者の気持ちも考えずこのような場所でチョコを渡すとはなんと破廉恥な。これは没収じゃ!」
     そしてリンダの手からチョコを没収する。
    「え、ちょっと!?」
     驚く2人。
    「よし!」
     サムズアップする怪人。さらに怪人は肉巻きオニギリを取りだすとシェリスに。
    「よくやった! それではそのチョコを渡せ、褒美にこのオニギリをくれてやろう」
    「うむ、おいしそうな牛肉巻きおにぎり……じゃが、わしはごまかされん!」
    「どういう事だ!」
    「だまれ! お主のような卑劣漢に渡すチョコなど無いのじゃ!」
     そう言うとシェリスは奪ったチョコを懐にしまい込む。
    「なん……だと……!?」
    「って、ちょっとソレは俺が貰う予定のチョコじゃねーか!」
     しまわれたチョコに、それを貰う予定だったジョニーが突っかかって来る。
     しかし、そんなジョニーの前に立ちふさがるは二夕月・海月(くらげ娘・d01805)。
    「リア充が……」
    「は?」
     女子中学生とは思えないような威圧感に、ジョニーが止まる。
    「リア充は去れ……さもないと」
     海月の影がコプンと波打ち、宙に浮かび上がるは影で出来たクラゲのクー。
     人外の技に驚くジョニー(ってか肉巻き顔の怪人レスラーの時点でどうかと思うが……)。
    「ひ、ひえええ!?」
    「ジョニー待って!」
     慌てて逃げ出すジョニーとリンダ。海月は「あんな奴らがいるから風紀が乱れるんだ」と呟くと、すぐに視線を怪人に向き直す。
    「ふむ、なかなか見どころがありそうだな」
     腕を組み満足気な怪人に、すっと手を出す海月。そして――。
    「今、私は肉巻きオニギリが欲しい」
    「そうか、あの金髪幼女(シェリス)からチョコを奪ったならくれてやる」
     怪人の物言いに、ふむと頷いた海月はごそごそとチョコを取りだし怪人へ差し出す。
    「これは同情では無い。肉巻きオニギリが食べたいという私の愛の形だ」
    「つまり、わしのファンか」
     噛み合ってない会話のままチョコを受け取ろうとし――。
    「って違う! わしが欲しいのはさっきのチョコだ! こんな普通のチョコでは無いわ!」
     宣言する怪人。そんな怪人に「つまり!」と言葉を投げるは猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)。
    「つまり! リア充のチョコが目的って事でござるな!」
    「ん」
    「まったく、バレンタインとは何でござろう! 恋人がいないからと言って何になるでござろうか!」
    「ほう」
    「拙者、らぶらぶな相手などおらぬでござる!」
    「なかなか見所があるではないか」
     ブレイブの熱弁に感心する怪人。
    「拙者だって……生まれてこのかたチョコをもらったこともないでござる!」
    「って、お前は渡す方だろう!」
     ブレイブの発言に速攻でツッコミを入れる怪人。
     猫乃目・ブレイブ、中学二年の侍『少女』である。ちなみにさっきまでの台詞は半分以上怪人に同志と思われるための演技である……。
    「っていうかさ、なんでチョコを集めているんだ?」
     素直にそう質問するは鴨打・祝人(みんなのお兄さん・d08479)。
    「ふん、貴様のようなリア充っぽい奴には死んでも教えん」
    「ははっ……じゃあ、大切なバレンタインを守るため絶対阻止だな!」
     そう言う祝人に同意するよう言葉を重ねるは蒔絵・智(黒葬舞華・d00227)。
    「そうだよね、皆が色めき立つバレンタインを台無しにするなんて許せない!」
    「ほう、貴様もバレンタインに色めき立つ輩か」
    「……いや、まぁ、私にゃあんまり関係無いけどさ……」
     そっぽを向く智。
    「そうか……同志か」
    「あ、うん……って、いやいや、それはともかくだよ!」
     慌てて否定する智。
    「まったく怪人という奴等は……」
     智を哀れな目で見ていた怪人の視線を切る様に、前に出るのはクラリス・ブランシュフォール(蒼炎騎士・d11726)。
     美形男子な風格のクラリスに、怪人が見た目だけで敵意を燃やしだす。
    「何をこんな者のために憤っているのやら。あまり見苦しい様をみせるな」
     1個、2個、3個と箱に入ったチョコを取りだすクラリス。
     プルプルと顔に怒りマークを累積する怪人に対し、クラリス(実は男装の女性だ)は、トドメの一言を発する。
    「そんなに欲しければ分けてやろうか?」
     ドーンッ!
     怪人の背後で嫉妬の火山が噴火し(イメージ)、怒りのオーラを纏った怪人はビシリとクラリスを指差す。
    「リア充は撲滅せねばならない……貴様のような輩は、断固! 断固このRollBeef怪人が爆発させてくれる!」


    「アンタ達の思い通りにはさせらんないからね、リリース!」
     智がカードを解放し、同じく空斗も自身の焔天狼牙を呼び出す。
    「目覚めろ。疾く翔ける狼の牙よ。吼えろ、焔天狼牙」
     右手に両刃大剣を持ち、左手に黒い炎の牙狼を具現させて怪人へ突っ込む空斗。
     それを何処からか現れたコサック兵が怪人の壁になろうと行く手を阻む。
    「そこのコサック兵どもも、しっかり成敗させてもらおうよ!」
     智が炎を纏った一撃でコサック兵の1人を殴りつけ。
    「チョコあげる人もいない私の気持ちも少しは考えてみやがれってんだ!」
     吹っ飛ばしたコサック兵に言い放つ。
     もっとも、智の言葉にはコサック兵でなく。
    「やはり……同志、か」
     哀れな視線で怪人が同意していたりするのだが……。
     そんな怪人がピクリと反応、憎悪と嫉みの視線を向けるは――祝人。
    「お兄さんがチョコを持ってるのがもしかしてわかるのかな? 実は大切な人からチョコレートを貰ったんだ」
    「どうやらそこのリア充は最初に死にたいらしい」
    「死にはしないさ、だってお兄さん、この戦いが終わったら貰ったチョコを食べるんだし」
    「ほう、ならばそのチョコを見せてみろ」
     怒りとためながら言う怪人。対して祝人は自信満々に懐からチョコ(液状)の入ったタッパーを取りだす。
    『………………』
     祝人以外に一瞬沈黙が訪れる。
     怪人が。
    「その液体は……何だ?」
    「え? もちろんチョコレート『ケーキ』だよ? 味はきっと抜群さ! だって愛があればLove is O.K.! あ、大丈夫、戦いが終わったら皆にも振る舞うからな?」
     灼滅者の間に「う~ん」的な空気が流れるが、怪人は怒り心頭のようで「リア充爆発しろ!」と叫んでいた。
    「リア充爆発しろ」
     そんな怪人に唱和して繰り返すは海月だ。怪人も気を良くしたのか同じ台詞を繰り返し、海月もまた唱和する。
    「リア充爆発しろ!」
    「リア充爆発しろ!」
    「リア充爆発しろ!」
    「っと手が滑った」
     しれっとコサック兵に魔力の連打を叩き込む海月。
    「おい、何をしている!」
     もちろん怒る肉巻き怪人。
    「いえ、リア充への怒りのあまり手が震えて……滑った」
    「そうか、なら良し!」
     なんか納得する怪人、後ろで「ええ~!?」とばかりに涙を流す殴られたコサック兵。
     その後、クラリスも同じくフォースブレイクにて魔力の連打をコサック兵へあびせ、シェリスも遠慮なくオーラを纏った拳で同じコサック兵を連打する。
     正直、後ろから回復役のコサック兵が治癒してくれるとはいえ、集中砲火の1人はタコ殴り状態だ。ってかロールビーフ怪人様は何やってるの!? と非難の目で見るコサック兵、そこでは……。
    「なかなかの嫉妬パワーだ」
    「いや別に、本当は嫉妬心なんてねえし」
    「ふっ、誰もが認めたがらないものだ」
    「いや、だから彼女もチョコも別に欲しくねえし」
    「ああ、解ってるとも同志よ」
     攻撃せずに千幻の肩をバンバン叩いている怪人がいた。
     『攻撃して下さいよ!』と、コサックが声無き声で叫んだようないないような……。
     しかし不幸は重なる。
     ベチャリ。
     ブレイズの放った強烈な酸が涙目のコサック兵に直撃し、さすがの回復も間に合わずにズブズブと消滅して行ったのだった。


     盾役のコサックが耐え、治癒役のコサックが回復する粘りの戦いは続く。
     いや、もちろんロールビーフ怪人も攻撃しては来るのだが――。
    「なんであいつら恋人がいるってだけであんなに偉そうなんだろうな?」
     千幻の言葉に腕を組んだ怪人がうんうんと同意する。
    「チョコが貰えることがどれだけ偉いんだっつーんだよな? だいたい俺はさぁ! 本当はチョコとかすげえ好きなんだけどな! そんなことすら言えねえこの時期とか!」
    「わかる! わかるぞ同志よ! 好きなチョコを買っただけで、自分へのバレンタインだと蔑まれるのがこの時期なのだ!」
    「まったくだ、理不尽には慣れた俺でも耐え難い理不尽としか言い難い!」
     再び無駄話に花を咲かせて手番を無駄に終わらせている怪人。
     その隙にシェリスのフォースブレイクが必死に頑張っている盾役コサック兵にクリティカルで命中、盾役コサックはまるでニートに働けと言わんばかりの恨み視線で怪人を見つめながら消滅していく……。
     回復から攻撃に回る最後のコサック兵だが、霊犬のさんぽが浄霊眼で癒し、さらに重ねがけするようにブレイブがセイクリッドウインドで前衛の毒を回復させ、ブレイブの横で興奮気味にふわふわハートを飛ばす祝人のナノナノであるふわまる、と灼滅者側の回復層は厚い。
     そして数度の攻防の末……。
    「切り裂け、クー!」
     影クラゲの触手が鋭い刃のように変化し、最後のコサック兵を切り裂き消滅させる。
    「む、配下達が……」
     今更ながらに気が付く怪人、ちょっと調子に乗って同志達と語らい過ぎたか? だが、同志を放置するなどできるものか……いや、できない!
    「そんなだからお前たちはチョコの一つももらえんのだ」
     ズンッと心に突き刺さるクラリスの言葉。
    「な、なな、なん……だと?」
    「人を妬む前にもっと自分を磨いたらどうだ? そんな風にしていれば婦女子もよりつくまいよ。いや、すまない、生来の顔を侮辱するのはさすがによくないな」
    「恋人無し達の気持ちも解らぬリア充が!……許さん……絶対に許さんぞリア充ども!」
     オーラを纏ってクラリスへ突っ込んでくる怪人、だが、クラリスの前に影が割り込む。
     ガッ!
     怪人の拳を受け止めるは、両手で焔天狼牙を構える空斗だった。
    「すまないな」
    「お前は1人でくらい過ぎだ」
     クラリスの礼に空斗が答える。事実、怪人がクラリスを狙う確率は高く、8人の中で一番殺傷ダメージが蓄積していると言って良い。
     だが、空斗を襲う衝撃は一瞬だった。残像のように姿を残して怪人が消え、次に現れた場所は――。
    「チョコは頂く」
    「なんじゃと!?」
     シェリスの横に現れ、スッとアベックからシェリスが没収したチョコをスリ取る怪人。
    「返せ! それはわしのじゃ!」
     シェリスが手を伸ばすが、それより早くチョコを食べる怪人。
     そして事態は急変する。
    「オオオオオオオオオオオオオッ!」
     なんと、チョコを食べた怪人がみるみる巨大化していくではないか!
     纏うオーラも通常時の幾倍、明らかなパワーアップだった。
    『……さぁ、リア充撲滅と行こうか。安心しろ、同志は邪魔しない限り助けてやる』
     巨大化し、頭上から響く怪人の声。
     明らかに今までとは重圧が違う……それでも、ビシリと怪人の顔を指差し智は言う。
    「私だって羨ましいけど、それとこれとは別なんだよ! しょうがないんだよ!」
    『なに?』
    「私だって思春期の女の子だもん、恋愛の一つだってしてみたいっつの! だから……一緒にするな!」


     巨大化してからの戦いはまさに死闘だった。強化巨大化怪人相手になんとか戦い続けられたのは、コサック兵の殲滅とその際の怪人の誘導が上手く行き、力を温存する事が出来たからだ。
     飛ぶように巨大怪人の頭上へ跳び、そのまま頭の肉をプロレスのマスク剥がしの如く大剣で斬り剥がすのは空斗だ。
     さすがに顔はキツイのか空斗を片手で叩き落す怪人。
     だが、その様子を見ていた海月の目が光る。
    「前から肉巻きおにぎりが好きだったんだ。お肉のジューシーさ、手掴みで食べれる手軽さも素敵だ、そしてその肉汁が染み込んだご飯の美味しさといったら――」
    『貴様……』
     そこまで言って海月はクーと共に一気に怪人の眼前まで跳び上がり。
    「だから、肉巻きおにぎりを私にください!」
     ズバンッ!
     海月のティアーズリッパーが怪人の顔の3分の1を斬り分ける。
    『おおおおおおおお!?』
     叫びつつ怪人の手が海月を掴もうと伸ばされる、その瞬間。
     太い光線がその手を撃ち抜き、怪人が手を引っ込める。
    「拙者も、怪人殿が好きでござるよ……!」
     それはブレイズのDCPキャノンだった。
    「特にその美味しそうな顔が!」
     片膝をつく巨大怪人、そんな怪人の前へゆっくり歩いて行く男が1人。
    「同志じゃ……無かったのかよ」
     男の側には1匹の霊犬。
    『ち、違う、今の告白は……』
     慌てる怪人に、男と霊犬――千幻とさんぽは容赦無く拳を振り上げ……トドメを刺す。
     生まれてこのかた恋人とかそういうもんに一切縁がなかったのは、今日この時、この怪人を倒す作戦のためだったんだ……そう思いつつ目頭が熱くなる千幻。
     さんぽが足元で心配そうに鳴き声をあげる。
    「別に、泣いてねえよ」

    「ふぅ……なれない事をさせられたせいで余計に疲れたぞ」
     全てが終わり息を吐くクラリス。
    「そうだ、終わったし皆でチョコ食べよう!」
     祝人が言うが、皆の頭を横切るタッパー。
     だが祝人が出したのは高級感があるチョコ(ちなみに家の使用人作)、普通に美味しかったです。
     もっとも、祝人のチョコより肉巻きが食べたかった者もおり。
    「わしは牛肉巻きオニギリが食べてみたかったのじゃ……」
     とシェリスはちょっと残念だと思うのだった。
     そんな中、あごに人差し指を当てて智が言う。
    「それにしても、怪人たちの狙いはなんだったんだろうねえ……?」
     もしかしてあの巨大化チョコ?

     ……とりあえず今は、無事バレンタインを迎えれそうな事を喜ぼうじゃないか。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 8/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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