人は、幸せの絶頂に達すると叫びたくなるものだ。
「ゥイヤッホォォォォォオウ!!」
人目も憚らず、少年は喝采をあげていた。
何が彼をそこまで突き動かすのか。それは、今日が2月14日だからであった。
……2月14日? いや、やはり知らない日だ。
「バレンタインデーって、こんなにいい日だったんだ!!」
コイツ言いやがったよオイ。まあつまり、今日はバレンタインデーだという事だ。
だからどうという話でもないのだが。
「あの子からまさか、チョコを貰えるだなんて……! くあー!!」
怒りに身を任せてしまいたい。
そう思った事はあるだろうか。それは今であるべきだ。
「たったひとつのこのチョコ、一生冷凍保存しといた方がいいのかな。それともじっくりねっとりゆっくりと味わって食べちゃっていいのかな!?」
少年は舞い上がりすぎていた。それ故に、普段通らない人気の少ない路地へと足を踏み入れてしまったのだ。
「もう鼻歌でも歌っちゃお。ふんふふーん」
「待ちな」
「誰だうわあ餃子だー!!」
「ほう、リアクションは素早いようだな」
少年の言う通り餃子が、正確には餃子の頭をした何者かが行く手を阻むように立っていたのだ。
「ようやく見つけたぞ。さあ、それを渡しな」
餃子ヘッドに似つかわしくない渋い声で要求されるも、少年は首を傾げるばかり。
「それ? どれ?」
「それと言ったらあれだろう」
「あれ? どれ?」
「そのカバンの中に入っているチョコレートに決まってるだろうがー!」
「何ィ! チョコ強盗か!? そうはいかない俺は逃げさせてもらう!」
踵を返し、表通りへと遁走を図る少年。
しかし、あえなくどことなくロシアっぽさを感じさせるいかにもザコ戦闘員な風体の不審者に行く手を阻まれてしまった。
ザコ戦闘員はザコだが、一般市民に対してはとても脅威なのだ。
「なに、命までは取らん。チョコは取るがな」
「ああっ!」
少年から難なく鞄を奪うと、餃子頭はその中からピンク色の包装紙でラッピングされた箱を取り出した。
「クッ……ソォ……!」
「無残な姿を捨て置くのも忍びない。少年よ、代わりにこれを持て」
餃子頭は少年に、
「えっ……」
餃子を授けた。
「焼き立てだ。それを喰らい、歩き出せ。宇都宮の勝利に向かって、な……」
「知ったコトかあああああああああああああ!!」
人は、絶望の淵に立たされると叫びたくなるものだ。
「……チョコを渡す、というのはすなわち隠語なのではないでしょうか」
武蔵坂学園の最上階にある教室。
高見堂・みなぎ(中学生エクスブレイン・dn0172)はあまり変化の見られない表情でそう問うた。
「……チョコを渡すと見せかけてそっちを渡すとは……さしものわたしも予測を誤りました」
不毛な話になりそうなので、灼滅者たちはとっとと説明に入って欲しいと願った。
「……とまぁ、冗談はここまで。ここからは楽しいお仕事の話です」
北関東は栃木県、宇都宮市が事件の舞台。
ちなみに北関東とは関東北部の3つの県から成り立つが、地図を上から見て左が群馬、右が茨城、そして中央に君臨するのが栃木である。
覚えておいて損はない。むしろ覚えて然るべきである。
「……宇都宮餃子怪人がロシアンタイガー配下のコサック戦闘員を引き連れて……普通の男の子からチョコを奪おうとしているみたいですね」
バレンタインデーに女の子から貰ったチョコレートを奪い去るという妙にピンポイントなご当地怪人のようだ。
奪うだけで、一般人にそれ以上の危害を加えるつもりはない様子であるらしい。
とはいえ、全国的にこのような事件が発生しており、迷惑この上ない。
「何故チョコレートが狙われるのか……それはわかりません。乙女に秘密は付きものですが、ご当地怪人に秘密は……実にイラっときます」
チョコレートを死守しつつ、ご当地怪人――この場合は宇都宮餃子怪人を撃破して欲しいというのが今回の仕事となる。
「コサック戦闘員は3体ですが……宇都宮餃子怪人はロシアじゃない普通の餃子です」
コサック戦闘員がいるという事はロシアンタイガーが関わっていると思われるが、詳細は不明。
わからない事だらけだが、それが悪事ならば全力で阻止すればいいだけだ。
「……では詳しい内容に入りますが、地元では有名らしいアーケード商店街から少しそれた路地に有象無象が現れるようですね」
アーケードを外れるとそこはまるで迷路。
一方通行や入り組んだ構造、そして昼間でも感じる薄暗さからそこは宇都宮の迷宮と呼ばれているとかいないとか。
「……皆さんには詳細な地図をお渡しするので迷いはしないでしょうが……たぶん」
そういえば、とみなぎは顔を上げる。
「この事件、皆さんが先行して囮になる……といった作戦はできないようです」
今回これを実行しようとすると異変を察知されてしまったり、その他の影響や状況により予測とは異なる結果になってしまうのだ。
灼滅者は少年がチョコを奪われた所に介入する形になる。
「……敵の強さはまあまあ、といったくらいです」
灼滅者全員で協力して戦えばそう苦戦する相手ではないようだ。
「……それにしても、チョコを奪ってどうするのでしょうね」
みなぎは少し眉が寄ったかなと思うくらいの微細な変化を顔にもたらしながら呟く。
「まあ、チョコの使い道なんて2つか3つくらいなものですが……。そういえば世の中には自分のある部分の型を取ってチョコにする……という風習もあるそうですね。ああ……もちろんその部分とは、おっ」
チョコに多種多様な使用用途などあるわけもなく、ましてやそんな風習は一般的でない事を我々は知っていた。
参加者 | |
---|---|
イオノ・アナスタシア(七星皇女・d00380) |
アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684) |
紅斜子・花々々々(四番目の花子さん・d01447) |
オデット・ロレーヌ(スワンブレイク・d02232) |
淳・周(赤き暴風・d05550) |
雨海・柚月(迷走ヒーロー・d13271) |
オリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011) |
奏川・狛(狛犬楽士シサリウム・d23567) |
●餃子像は空気
宇都宮餃子怪人は少年に背を向け、コサック戦闘員を引き連れ去っていた。
「えー……宇都宮餃子様ー、日本一を奪還した宇都宮餃子様ー。素敵な餃子を求める人がお待ちですー」
そんな声が聞こえてこなければ。
「むう!?」
メガホン片手に嘯くような調子で案内申し上げたのは、路地の店先にあった看板に身を隠した淳・周(赤き暴風・d05550)。
「何者だ!」
『そこまでです餃子怪人!』
身構えた餃子怪人の前に、屋根の上から飛び降りてきた紅斜子・花々々々(四番目の花子さん・d01447)が颯爽と着地。
そしてスマートフォンを餃子怪人に突き付けた。
『――否さ日本一に返り咲いた宇津宮餃子怪人!』
感情の抑揚が掴みにくい声が端末から大音量で響く。
どうやら花々々々自身の声ではなく合成音声のようだ。
「確かに我が宇都宮は日本一を手にした。よもや貴様、他地域からの刺客か!?」
「超発想すぎるだろ!」
ついメガホンでツッコミを入れる周。
『この寒空の下で焼き立ての餃子を見せつけるなんて狼藉、断じて許せません!』
じとりとした瞳で餃子怪人を睨む花々々々は、
『四にも一人前ください!』
空いている手を真っ直ぐ伸ばした。手の平を上にして。
「狼藉ってそっちかよ!」
空気と化そうとしていたチョコを奪われた少年がツッコむ。
「これには訳があるでござる。一先ずこちらの隅まで移動するでござるよ」
雨海・柚月(迷走ヒーロー・d13271)に促され、少年後退。
「殊勝な少女もいたものだな。しかし今日は急ぎの用があるのだ」
「用というのはそのチョコなのです?」
ひょこっと顔を出したイオノ・アナスタシア(七星皇女・d00380)が、餃子怪人が手にしている箱を指差す。
「そうなるな」
実にあっさりとした肯定をしつつ立ち去ろうとする餃子怪人に対し、オデット・ロレーヌ(スワンブレイク・d02232)はやや大仰に懐からチョコを取り出した。
「よかったわ、私の大切な人に贈るチョコレートも取られたらどうしようかと思った!」
「……無益な奪取はしない主義でな」
「あら、それなら安心ね」
オデットは口ではそう言いながらも思案する。
(「チョコなら何でもいい訳ではないみたいね。ならどうして……」)
オデットの推理が脳内を駆け巡る!
(「そんなに欲しいなら、お店でお金を払って買えばいいのに!」)
事はなかった。
「無駄話はこれまでだ。餃子は後日喰らわせて――」
「へえ、この餃子日本一なんだ。日本の名物って事だね、どんなの? 見せて見せて!」
やや強引に食らい付くオリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)。
見るからに外国の少年であるオリヴィエが興味を持つという事は、世界からの注目を集めている証左である。
とでも思考したのか、「少しだけだぞ」と餃子を取り出した。
「わたくしも日本一の餃子を是非食べて見たいグース」
奏川・狛(狛犬楽士シサリウム・d23567)も是非相伴にあずかりたいとオリヴィエの隣で待機する。
眼前の宇都宮餃子に灼滅者たちは「日本一おめでとう!」「一度で良いから食べてみたいと思っていたのでござるよ~」「きっとおいしいんでしょうね!」などなど、美辞麗句を並べていく。
これには餃子怪人も気をよくしたのか、餃子スマイルで頷いている。
今ならばと、アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)はさり気なく尋ねる。
「返り咲きも宇都宮餃子怪人様のお力があってこそっすね。ところで、チョコレートなんて奪ってなにするんすか?」
「それは」
はっとして口を押さえる餃子怪人。
「奪うなどという行為に及ばずとも、人気者である貴方ならチョコくらい沢山貰えるのでは?」
柚月も素朴な疑問に見せかけ探りを入れるが、餃子怪人は明後日の方向を向いてしまった。
「宇都宮餃子が人気であれば、それでいい」
「さすが日本一は言う事も格好いいですね」
狛の言葉に餃子怪人の口元がもごもご動くが、しかしそれだけ。
「どうしたんすか? まさか知らないなんてことはないっすよね。きっとこれは壮大な計画がなされてるんすよね」
イタズラっぽく笑いながらわんこ尻尾を揺らすアプリコーゼ。
「勿論そうだが、言えないのだ!」
「そんな言い訳しているようじゃ、浜松に抜き返されるのも時間の問題っすね」
最後が引き金になったのか、餃子怪人は顔を真っ赤にして身構えた。
「穏便に済ませたかったがやむを得ん。宇都宮餃子の力を思い知らせてやろう!」
「待つのです!」
「!?」
一気に険悪になった空気の中、イオノが片手を突き出して待ったをかけた。
そして神妙な面持ちで告げるのだった。
「実は、オレンジ道着のツンツン頭と『お前人間なの?』って疑いたくなるくらい白い肌した赤ほっぺは、お互い会話したことがないのです!」
「「「何ッ!」」」
渾身の餃子小ネタだ。
が、だからどうだと言うのだという空気が一行を包み込んだ。
●チョコレート餃子は実在する
「よくわからんが、コサック戦闘員!」
待機していた戦闘員を呼びつけ、前面に展開させる宇都宮餃子怪人。
「転身っ!」
狛は「転身」の掛け声により『狛犬楽士シサリウム』へとその姿を変貌させるのだ!
全身を石像を思わせる鈍く光る鎧に身を包んだそれは沖縄の守護神、シーサーを彷彿とさせる。
「餃子がチョコに成り代われると本気で思ってるならトンだ馬鹿グース」
狛はくつくつと笑うと、指を突き付けた。
「せめてスイーツ餃子になって出直してくるグース」
「スイーツ餃子……中に果物やクリームでも入れるのでござろうか。それはつまり」
「パイになるグース」
「餃子の名を剥奪されてしまうとは、哀れでござる」
柚月は気付いてはいけない事に気付いてしまったかのように顔を逸らす。
「勝手に剥奪するな哀れむな!」
隙を逃さず、アプリコーゼの変身バンクが挟まれる。
「さあ、いくっすよー」
魔法少女のご多分に漏れずきらびやかな空間の中、全身を虹色のシルエットで浮かび上がらせ、次々と装備品が装着されていき、そして最後に帽子をきゅっと被る。
そんなイメージでお送りしたい。
日曜朝を彷彿とさせる情景に驚く少年にオデットと周が声を掛ける。
「チョコは私たちが取り戻してあげるから、あなたは逃げて!」
「ここからはちょっと刺激が強いからな。ま、安心してどこかで待っててくれ!」
「い、いやでも!」
そこへ小走りでやって来た花々々々は少年に身を寄せ――その耳元で何かを呟いた。
「わっかりましたァ!」
『では戦闘をおっ始めましょうか』
「ラブフェロモンを使ったの?」
オデットの言葉に頷く花々々々。
末恐ろしい女児である。
「フン、いくら姿格好が変わろうとも! ゆけ、コサック戦闘員!」
「やっぱり戦闘員からけしかけるでござる……か!」
お約束の展開に柚月は嘆息しつつも、直線的に走ってきた戦闘員を閃光百烈拳でボコボコにする。
「こら、酷いじゃないか! そのチョコレートは女の子が心をこめて作った贈り物なんだろ!」
夜霧隠れで仲間を支援しつつ怒りを露わにするオリヴィエ。
「少年には代わりに餃子を授けた」
「あのチョコレートは世界にたった1つだけなんだ! 量産の餃子とは違う!」
「心をこめて焼いたが」
「好きな子にプレゼントされたものと怪人から貰ったものとは別物だろ!」
話が平行線、もといあらぬ方向へアクロバティックに逸れていってしまう。
「ところで、あなたベルギーチョコ怪人にだまされてない? 大丈夫?」
オデットの疑問に、
「何だそれは。誰?」
「いえ、知らないのなら別にいいのよ」
「ええい、気になるではないか!」
餃子怪人は素で返してきた。
一方。
『はい、あーん』
餃子を箸で摘んだ花々々々が戦闘員に食するようにと促している。
小学生女子にあーんされるなどと、一体どれほどの徳を積めば成せるのだろう。
つい雰囲気につられて近付くが。
『おっといけない手がすべったー』
合成音声ながらもあからさまな棒読みを炸裂させつつ、花々々々は箸ごと餃子を戦闘員の顔面にねじ込んだ。
『やっぱり餃子は浜松ですね』
手を叩いて払い、蔑んだ顔で戦闘員を見下ろす。
「場所が場所ならとんでもないご褒美になるんだろうなー、アレ」
花々々々の流れるような所作に頬をかく周。
ついでに別の戦闘員をバトルオーラを横に薙ぎ、弾き飛ばしておく。
「しっかしあの餃子怪人、考えてる事がわっけ分かんねえ。アタシの妹以上にシュールかもだな」
「深く考えたら負けなのです。というわけで挨拶代わりで餞別です。存分にどうぞ!」
セイクリッドクロスで一網打尽を狙うイオノ。
「一気に3体に命中させるとは、さすがでグース」
「9体でいいのです」
イオノは謙虚なのだ。
戯れを織り交ぜながらも戦闘を続け、いつの間にやら戦闘員たちはことごとくその身を地面へと叩き込まれていた。
散り際に「ダスヴィダーニャ」や「スパコイナイノーチ」とかの発言を残し、貴重なロシア要素を回収していた。
「これで残るは田舎怪人だけになったっすね」
「宇都宮は田舎ではない! トカイナカと呼べ!」
『修正点すら小さいですね』
今後いつかは世界を支配する大国家になるのだがなと付け加える餃子怪人。
「おのれ怪人め、何を企んでいるんだ!」
オリヴィエが餃子怪人に向けて指を突き付ける。
「オリヴィエさん、いつそんな所に!?」
壁から張り出した看板の上に立ちながら。
どうやらこれが怪人相手の正しい作法だと思っているらしい。
概ね正解である。
「人の想いと言うエナジーのたっぷり詰まったそのチョコで何をしようとしている! 冥土の土産に教えてもらうぞ!」
「知らん……というかそれお前、俺に倒されるのではないか?」
「えっ?」
「えっ」
「冥土の土産うんうんは敵側が勝利を確信した時に使う言葉なんすよ」
アプリコーゼの指摘に感嘆するオリヴィエ。
そして大抵は敵の負けフラグである。
「そうでしたか! 怪人、よくも!」
「なぜそうなる!?」
「御託はこれまで、覚悟!」
オリヴィエは影を伸ばし、餃子怪人を絡めとる。
「ね、ちょっとチョコとこの餃子、一緒に食べてみてくれる?」
「は? 一体何ほんごぉ!?」
捕縛した隙を突いてオデットはチョコと餃子を強引に餃子怪人の口へと捩じ込んだ。
「ぐ、ぐぬう……!」
「餃子には餃子の、チョコにはチョコのいいところがあるのよ」
無言で咀嚼する餃子怪人は、やがて捕縛から解放されるとオデットを睨みつける。が。
「チョコの代わりなんて考えないほうがいいわ、そう思わない?」
動くより先にオデットのサイキックが再び餃子怪人の動きを封じた。
「食べ物の恨みは何とやらでござるな。みみっちい事やってると又浜松に奪われるでござるよ」
「言うな!」
今度はすぐさま自由の身となった餃子怪人と柚月が切り結ぶ。
餃子の羽のようなモノを得物にしているようだが、その硬度は実際のそれとは比較にならない。
「なかなかやるでござるが……チョコすら貰えないのでござるね。うわ、可哀想」
「言うな!!」
攻撃が連続して柚月に叩き込まれるが、返す刀で柚月もまた餃子怪人にダメージを与えていく。
「回復はおまかせなのです!」
傷を負う柚月にすかさずシールドリングで治癒と支援を行うイオノ。
「助かったでござ」
「ちなみにロシアではメディックのことをブラチラと言います! つまり今の私はスーパーブラチラタイム!」
「んな!?」
おーっとここでイオノ選手から大胆発言が飛び出したー!
「可愛い顔して侮れないっすね」
『まさかあの齢でもう? 侮れませんね』
「何だかアタシの妹を見ている気分だな。侮れねえ」
「流れに乗って侮れないグース」
「その前に言うべき事がある気がするのは気のせいかしら……」
大胆さに感銘を受けつつも、とりあえず敵を倒さねば。
『というわけで、具を飛び散らせてくれましょうか』
立体的に動き、空間を掌握せんとティアーズリッパーを放つ花々々々。
「餃子は浜松か八幡が一番グース。シーザービーム」
花々々々への反撃を逸らすために、あんまりな一言と共に照射される狛のご当地ビーム。
シーサーの突進と化すそのビームは強烈な威圧感と共に餃子の顔面へとヒット。
「そんなチョコじゃ欧州のご当地幹部には満足いかねえんじゃないの? 欧州サイズででかいのじゃないと……な!」
シーサーの影に隠れるようにしながら接敵した周。バトルオーラを纏った拳に炎を集中させたレーヴァテイン。
そして思い切り引いた拳で顔面を貫く!
「ぐ、が……。さっきから何だと言うのだ! そんな幹部なぞ知らん!」
「じゃあアレか? ロシアンタイガーに頭上がんねえの?」
「言わせておけば! かくなる上は……!」
すっかり顔面がいい感じに焼き餃子になっている餃子怪人は、何を思ったのか少年から奪ったチョコを掲げているではないか。
そのリボンを解き、中身を取り出そうとしている。
「まさか、人のチョコを食べるというの!?」
「惨めすぎでござるな……」
灼滅者たちは少年にチョコを返すと約束した。ならばそれを成し遂げるのが武蔵坂学園の灼滅者というもの。
「そうはいかないっすよ。これでもくらえっすー」
アプリコーゼは杖の先から最大出力でマジックミサイルを放った。
「な……ぐうっ、宇都宮餃子に永遠の栄光を!!」
それが最期の言葉となり、餃子怪人は光の中で爆散した。
●よく日本一奪還をご存知でしたね
「チョコのリボンは付け直したっすよー」
「汚れも殆どないし、中もきっと大丈夫よ」
アプリコーゼとオデットがチョコの回収と補修を済ませた所に、丁度柚月が少年を連れて帰ってきた。
「こっちでござるよ」
「約束通り、取り戻しました」
狛たちからチョコを受け取ると、少年は感極まったのか涙を零した。
「ウオォォォ! ありがとざーす!!」
「今度は誰にも取られないようにしろよ」
周の言葉に大きく頷く少年。
「彼女さんから貰った大切なチョコですもんね」
「いやいや彼女だなんて。未来の、ですがね!」
歓喜する少年に顔を綻ばせる狛。
それなら、とオリヴィエが前に出る。
「そのチョコ、ちゃんと食べた方がいいと思いますよ。作った人は。せっかく心をこめて美味しく作ったんだから、きっと全部味わってもらいたいと思うんです」
心得たと頭を下げた少年に花々々々が何かを差し出す。
『さっき言った「従ってくれたら後で御褒美あげる」の御褒美です』
それは彼女が祖父母に送った、その余りのチョコレートケーキだった。
「義理として受け取っておくね!」
『当然です』
「いやぁ、万事解決って感じなのです」
しかしイオノには最後に一仕事残っていた。
右手に餃子、左手のチョコ。
「おいしいもの×おいしいもの=もっとおいしいもの……この公式が正しいと、私は証明するのです!」
――その日、イオノは天を仰ぎ涙する。
作者:黒柴好人 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年2月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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