チョコを狙うはヒヤシチュウカニマ・ヨ・ネーズ

    作者:光次朗

    ●ヒヤシチュウカニマ・ヨ・ネーズ
     2月14日。場所は名古屋のとある公園、ちょうど空が赤くなろうとする時刻。
    「す、好きです! 受け取ってください!」
     高校帰りのイケメン、浩介を待ち伏せしていた女生徒Aが、木の陰から飛び出してチョコレートを差し出した。
    「待って! 私も好きです!」
     同じく待ち伏せしていた女生徒Bが、ジャングルジムの中から飛び出してきた。
    「お待ちを! チョコならこれが!」
     同じく待ち伏せしていた女生徒Cが、滑り台から滑り降りてきた。
    「チョコならわたしだって!」
    「あたしよ!」
    「私!」
    「おれだ!」
     DEFGもいろんなところから登場した。
    「ありがとう、どれも心がこもっているね。とても嬉しいよ、残さず食べてみせるさ」
     イケメン浩介はイケメン仕草で髪をかき上げる。
     差し出された7つのチョコレートのうち、どれを最初に受け取ろうかと逡巡──する必要は、なかった。
    「愛の告白にはチョコではなく! 冷やし中華だヨネーズ!」
     とう! 腰回りに冷やし中華、頭に巨大マヨネーズをオンした怪人が、颯爽と登場する。躍るように浩介と7人の間をすり抜けると、握られていたはずのチョコレートはすべて消え失せ、代わりにできたての冷やし中華が乗っていた。マヨネーズ付き。
    「我が名はヒヤシチュウカニマ・ヨ・ネーズ! このチョコたちはいただいた! 代わりにマヨネーズ付き冷やし中華をどうぞだヨネーズ!」
      
    ●イケメンにチョコレート
    「バレンタインのチョコレートが狙われている」
     山之上・スエ子(小学生エクスブレイン・dn0091)は、教室に集まった面々にそう説明した。
    「バレンタイン当日、イケメン浩介が7人からチョコをもらう現場に、ご当地怪人が現れるんだ。名古屋のご当地怪人、ヒヤシチュウカニマ・ヨ・ネーズ。コサック戦闘員を4人連れているが、ご当地怪人自身は普通の怪人だ。この件だけでなく、全国的に類似した事件が予知されている。なぜチョコが狙われているのかはわからないが……」
     よほど、チョコが好きなのだろうか。スエ子は真剣に呻く。
    「場所は小さな公園だ。日が暮れかかることもあり、イケメン浩介ら以外に人はいない。ヒヤシチュウカニマ・ヨ・ネーズの目的はあくまでチョコ、奪われること自体は阻止できないが、浩介らに攻撃を仕掛けることはない。放っておくわけにもいかないが、公園から避難させるまではせずとも大丈夫だ」
     まあ、そのあたりは任せるが、とスエ子は続けた。
    「また、事前に浩介らを避難させてしまっては、予知が狂ってしまう可能性がある。怪人登場まで待機、現れたところを叩いてくれ」
     ヒヤシチュウカニマ・ヨ・ネーズは、マヨネーズを使った攻撃を用い、動きは鈍いが威力が大きい。逆に、コサック戦闘員は攻撃力こそ高くないものの、スピードを活かした肉弾戦を仕掛けてくる。
    「チョコを狙っているということはわかっているのだから……そこを利用してかく乱できないものかとも思うが。なぜチョコを狙っているのかわからないのだし、作戦に組み込むことは難しいだろうか。だがまあ、考えてみて損はないだろう」
     腕を組み、スエ子は真っ直ぐな瞳で灼滅者たちを見つめた。
    「私にはまだよくわからないが、バレンタインのチョコレートというものは特別なものなのだろう。どうか、彼らの思いを守って欲しい。健闘を、祈る!」


    参加者
    愛良・向日葵(元気200%・d01061)
    比良坂・八津葉(死魂の炉心・d02642)
    堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)
    結城・真宵(オノマトペット・d03578)
    松下・秀憲(午前三時・d05749)
    丹羽・愛里(幸福を祈る紫の花・d15543)
    三園・小枝子(トリカゴノユメ・d18230)
    ルエニ・コトハ(小学生魔法使い・d21182)

    ■リプレイ

    ●狙い澄ました襲撃
     名古屋のとある公園で、8人は待機していた。できることならばチョコを奪われるのを阻止したい──それは共通の願いだったが、ぐっと堪えてことの顛末を見守る。
     そしてついに、イケメン浩介にチョコを差し出す、7人。颯爽と登場する怪人&コサック怪人。 
    「マヨネーズ付き冷やし中華を、どうぞだヨネーズ!」
    「──そうはいかないわ」
     ヒヤシチュウカニマ・ヨ・ネーズ(長いので以下ヒヤネーズとする)が7つのチョコを冷やし中華にすり替えた、まさにその瞬間に、比良坂・八津葉(死魂の炉心・d02642)は飛び出した。
     奪われるまでは手出しができない、逆にいえば奪われた直後の不意打ちは可能だ。最高の瞬間を狙っていた八津葉の鬼神変が炸裂する。
     突然目の前に現れた巨大な腕に殴りかかられ、ヒヤネーズは吹っ飛んだ。しかし、彼らの最初の狙いはそこではない。
    「しまった!」
     7つのチョコが宙を舞う。まずはチョコを取り返すことを第一としていた八津葉は、すかさずゲット。
    「ちゃーんす♪」
     同じく、その隙を狙っていた愛良・向日葵(元気200%・d01061)がチョコめがけて飛び出した。
    「チョコレートさんが!」
     ルエニ・コトハ(小学生魔法使い・d21182)も手を伸ばす。7つのうち2つは慌てふためいたヒヤネーズの手に戻ったが、5つを取り返すことに成功した。
    「みんな、逃げて!」
     一方で、一般人の安全を確保することも重要だった。突然の事態に目を白黒させるイケメン浩介たちに、三園・小枝子(トリカゴノユメ・d18230)が割り込みヴォイスで叫ぶ。
    「公園の入り口に行ってそこを動くな。いいな」
     松下・秀憲(午前三時・d05749)は王者の風を使用し、そう命じた。イケメン浩介たちはびくりとし、それぞれ顔を見合わせると、言われたとおりに避難していく。
     どさくさの中で、八津葉とルエニは、取り返したチョコを怪人らに気づかれないように向日葵にパスしていた。事前に打ち合わせていたとおり、向日葵はチョコをこっそり保管する。
    「チョコレートは、返してもらうわよ」
     隠した上で、八津葉が用意していた偽のチョコをちらつかせた。中身は空だが、見た目にはわからない。
    「この日のチョコはすっごく大事ナンだから! 死んでも渡さない!」
     なんだかそれっぽいことを言ってみたかった堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)が、自前のチョコを掲げる。バレンタインのチョコのラッピングされた姿などどれもこれも似たり寄ったりで、ましてや消えたチョコは5つもある。ヒヤネーズの混乱は必至だった。
    「な、なにをするんだヨネーズ!」
     ヒヤネーズはわなわなと震えていた。コサック兵らも、コサックダンスしつつこちらを威嚇してくる。
     チョコを奪いに来る気満々だ。彼らにとってよほど重要なのだろう。
    「大体、チョコレートを冷やし中華にってどういうことなの」
     戦闘が始まる前にとサウンドシャッターを使用した結城・真宵(オノマトペット・d03578)は、避難した7人が置いていった冷やし中華を見る。マヨネーズで彩られた皿は、公園のベンチに無造作に置かれていた。きっちり7つ。
    「マヨネーズっていうのも、ちょっと」
     真宵には馴染みのない世界だ。逆に、学園に来るまでは冷やし中華にマヨネーズは当たり前だと思っていた丹羽・愛里(幸福を祈る紫の花・d15543)は、一瞬遠い目をした。
    「この寒い時期に冷やし中華なんて……、恋人達の仲まで冷やす気ですか? 季節を考えて下さい!」
     そう、問題はマヨネーズではなく冷やし中華。恋は大切、しかもここは愛里の地元。気合いを入れて戦闘態勢に入る。
    「お前……まさかチョコを使ってチョコマヨ冷やし中華の新商品開発をするつもりか!」
     はっ、と気づいた的に秀憲がカマをかけてみる。
    「そんなわけっ、ないヨネーズ!」
     ヒヤネーズの頭部のマヨネーズが沸騰した。
    「冷やし中華にマヨネーズこそが至高! そこにチョコをトッピングなどと! 冷やし中華をなんだと思ってるんだヨネーズ! 許さないヨネーズ! 行けっ、コサック兵!」
     煮えたぎったマヨネーズがぷしゅーっと吹き上がる。それを戦闘開始の合図とするかのように、コサック戦闘員が飛びかかってきた。

    ●マヨとチョコなバトル
    「冷やし中華にマヨネーズってアンタ達、それはサラダそばって言うのよ」
     冷静にツッコミながら、八津葉がコサック戦闘員の拳をいなす。ご当地ビームを繰り出すタイミングで、狙いを合わせた秀憲が巨大化した拳を叩き付けた。
    「チョコマヨ冷やし中華が正解しても困るけど。目的は少し気になるね」
    「おっと、行かせないよ!」
     巧みなステップで突進してくるコサック戦闘員の前に躍り出て、真宵がシールドでそのまま押し返す。
    「コサック兵隊ちゃんから、いっくよー!」
     一歩引いた位置から冷静に、向日葵は各個撃破を狙った。効率を考えるなら八津葉と秀憲の援護だ。事前にヒーリングライトを自らにかけ、いざというときにも備える。
    「まずは一人ずつ、確実に!」
    「みんな、攻撃合わせて行くよっ」
     愛里と小枝子も戦況を見据え、戦闘員に攻撃を集中させた。一方でルエニは予言者の瞳を使用し、予測精度をぐんと高める。
    「チョコレートさん、きちんと取り返して、返してあげないとですね」
     バレンタインというこの日のために、懸命に頑張っている友人を知っていた。戦闘の中でチョコレートを傷つけてしまうことがないよう、彼なりの配慮を忘れない。
    「うぬぬう! チョコをっ、返すんだヨネーズ!」
    「それはこっちのセリフ! バレンタインにチョコを奪うなど言語道断僻みの極み! マヨネーズは許せても、その行いは許すまじー!」
     おとりのチョコを手に、朱那はヒヤネーズの前に躍り出る。沸騰したマヨネーズは、容赦なく朱那に襲いかかった。熱くてべとべとでダメージと同等の不快感。そしてとても香ばしい。
    「っ、食べモン粗末にすンなー!」
     ひるまず、螺穿槍でヒヤネーズを穿つ。うしろに被害がいかないよう、朱那はヒヤネーズの抑え担当だ。小枝子の霊犬リックも、最前線でヒヤネーズと対峙する。
     彼らはそれぞれ的を絞った連携で、一体ずつ確実にコサック戦闘員を減らしていった。無論ダメージを受けつつではあるが、一体撃破するごとに動きの幅がぐんと広がる。速いとはいえ、落ち着いてターゲットを絞ればひどく苦戦するほどではなかった。周囲の状況を的確に判断しつつ、順に沈めていく。
     四体目のコサック戦闘員がダンスと共に崩れ落ちたころには、公園にはマヨネーズの香りが充満していた。
    「なかなかやるヨネーズ」
     窮地と判断したのか、ヒヤネーズはそういって距離を取った。腰回りの冷やし中華をぶるんぶるんと振り回し、ゆっくり深呼吸をしてこちらを見据えてくる。
    「いまのうちにー!」
     それは灼滅者側にとっても好機だ。全体のダメージを、向日葵が清めの風で軽減する。
    「マヨはわりと好きな方だけど、まみれるのはごめんなんですけどっ」
     荒い息を吐きながら、秀憲が身体についたマヨネーズを払った。それはもうべったべただ。
    「冷やし中華でないオノレを悔やむが良いヨネーズ。キサマラが冷やし中華だったなら、マヨネーズにまみれることに至高の幸せを感じることができたのにヨネーズ」
     この状況でもいくらか不敵に唇を上げ、ヒヤネーズがいう。冷やし中華にマヨネーズへの絶対的な自信が滲み出ていた。わたしは結構好きですよと、愛里はこっそり思う。勿論、好きなのは冷やし中華にマヨネーズという組み合わせであって、迷惑行為をする怪人ではない。
    「ご当地怪人のいい所を見つけたわ。気兼ねなく全力でぶん殴っても一抹も後悔しない事よ。覚悟はいいわね?」
     ばっきばっき腕を鳴らしながら、淡々と八津葉がいう。
    「いいわけないヨネーズ! かくなる上は……!」
     ヒヤネーズは跳躍した。飛びかかってくるかと身構えた彼らを嘲笑うかのように、さらに後退する。
    「ヒヤシマヨさんが……!」
    「逃がさないヨ!」
     ルエニが叫び、朱那が地を蹴ろうと構える。
    「だーれが逃げるヨネーズ!」
     公園の滑り台の上に着地し、ヒヤネーズは服の下から箱を取り出した。イケメン浩介に渡されるはずだったチョコのうちの1つだ。止める間もなくあっというまに包みを開け、中からハートのチョコを取り出す。
    「まさか、食べるつもりですか!」
     愛里の予想は的中していた。ヒヤネーズは口を大きく開け、まさにかぶりつこうとする。
    「させないって! いっけぇっ!」
    「ぬわっ!」
     チョコを狙う動きがあれば即座に弾こうと狙っていた小枝子が、神薙刃を命中させる。ヒヤネーズの手からチョコが離れ、落ちたところをすかさず走り込んだリックがキャッチ。
    「このチョコ欲しければ、奪ってみろー!」
     真宵は隠し持っていたチョコをわざと見せびらかすと、声を張り上げた。
    「というわけで松下先輩! 受け取ってください!」
    「えっ! お、俺?」
     ヒヤネーズをひっかけるため、秀憲も自然な演技で困ってみせる。
     チョコの存在に一瞬気を引かれた様子のヒヤネーズだったが、真宵が秀憲に渡す様子に興味をなくしたようだった。
    「どうぞどうぞだヨネーズ」
     なにかが違うらしい。真宵、心にちょっぴりダメージ。
    「ええ! 作ってきたのに、いらないなんて失礼!」
    「チョコならなんでもいいわけじゃないのか……?」
     カウンターを狙うつもりだった秀憲も拍子抜けだ。
    「あ、あのっコレ! 受け取って欲しいなって……!」
     朱那もやってみた。あまり表情は変えないものの、実はお菓子に興味津々なルエニは、差し出されたチョコに緊張しつつ、ヒヤネーズの動向をうかがう。
    「はーいどうぞだヨネーズ」
     やはり、興味を示さない。取り返した5つのチョコを隠し持つ向日葵は、気づかれないよう平静を装いながらも、その意味を考えた。
    「ということはー……」
    「欲しいのは、イケメンの手に渡るはずだった、こっちかしら」
     つまりは、そういうことなのだろう。八津葉がダミーの箱をちらつかせると、ヒヤネーズは目の色を変えて飛びかかってきた。
    「それを! よこせヨネーズ!」
     冷やし中華にすり替えようと、両手に皿を構えて降ってくる。
    「単純ね」
    「せーの、オラァ!」
     目標がわかっているのならば、そこを狙い撃つだけだった。ひょいとダミーの箱を引っ込めた八津葉と、タイミングを見計らった秀憲が、至近距離で殴りつける。ほぼ同時にヒット、ダブルでフォースブレイク。
    「たたみかけるよっ!」
     性懲りもなく最後のチョコを開封しようとするヒヤネーズに、小枝子が紋章を刻み込み、愛里が鋼糸を繰り出す。
    「させません!」
    「ぬう……っ」
     ヒヤネーズの手から、7つめのチョコがこぼれた。
    「食べたら、ダメなのだー!」
    「ヒヤシマヨさん、一生懸命の告白さんの邪魔をするのは、良くないと思うのです!」
     向日葵が回収に走り、ルエニは巨大化したぐーで殴りつける。
    「これでチョコは全部だね! そんじゃ、心置きなく──!」
    「全力、で!」
     朱那と真宵はうなずき合うと、両方向から影を飛ばし、ヒヤネーズを縛り上げる。
    「ぎったんぎったんにしてあげるわ」
     八津葉の華麗な蹴りがヒヤネーズの頭部をえぐると、まるで血しぶきのようにマヨネーズが空へ向かって飛び散った。

    ●仕切り直して
     すっかり日は暮れてしまったが、ヒヤネーズとコサック戦闘員を倒すことに成功した。まったく無事な状態とはいえないものの、チョコをすべて取り返すことにも成功。
    「チョコ、できるだけキレイにしたいネ」
    「これ、使えるかしら」
     封の空いてしまったものは、空箱の包装紙を利用して、どうにかラッピングし直す。なくなってしまったわけではないのだ、イケメン浩介なら喜んで受け取ることだろう。心もイケメンなはず。
    「じゃ、女の子たちに返そうーっ! 取り返せて、良かった!」
     小枝子が早速行こうとするが、秀憲が呼び止める。
    「その前に、マヨまみれじゃ格好つかんよ。もうちょっと、どうにかしないとな」
    「任せてください」
     待ってましたとばかりに、愛里は仲間たちの服をぽんぽんと叩いて回った。クリーニングの効果で、身体も服もすっきり清潔に早変わり。もちろん、マヨネーズ臭もない。
    「ちょい横槍入ったケドま、仕切り直しってコトで!」
     公園前で待ち続けていた8人にもう安全だと告げ、7つのチョコを返していく。彼らのその後が気にならないでもなかったが、誰も見ていくようなことはしなかった。
    「えへへー♪ みんなにもしあわせのおすそわけー♪」
     公園を出て、最後にサプライズ。にこにこ笑って、向日葵が全員分のチョコを差し出した。
    「あたしのも、ミンナで食べよ!」
     朱那も包みを開ける。
    「あら、ありがとう」
    「やったー!」
     喜ぶ面々の中で、特にルエニの目がそっと輝いた。
    「チョコレートさん……!」
     実はお菓子に興味津々だったのだ。真宵は笑って、そんなルエニに自前のチョコを差し出す。
    「せっかくだから、これもあげる。良かったら食べてね」
    「ありがとうございます……!」
     ヒヤネーズを思いっきりぐーで殴ったのはやり過ぎたかなと、ちょっと恥ずかしくなっていたルエニだったが、それはもう終わったことだ。目の前のチョコレートに、幸せオーラが広がる。
    「あとこれ、冷やし中華は冷やし中華で、おいしく頂いとこうよ」
     ベンチに放置されていた皿を、真宵はちゃっかり持って来ていた。そのままにしておくのももったいないないと、箸を付ける。
    「……さっむい!」
     味がどうの以前に、日の暮れた寒空の下というのが間違っている。
    「確かにどの季節に食べても良いものだけど……。いやいや、やっぱり寒いって! 季節感無さすぎっ!」
     小枝子も震えている。やはり冷やし中華は夏にいただきたい。
    「じゃ、この後俺も用事があるからね」
     そんな仲間たちを尻目に、秀憲はそそくさと帰路についた。想いを伝える側にとっても、伝えられる側にとっても大切な日。それがバレンタインデー。秀憲はいわゆる彼女持ちだ。もらえるあてがあるのだろう。
    「無事に終わって良かったわ」
     かと思えば、バレンタインはどうでもいいという心情の八津葉のようなものもいる。どちらも、今日という日の真実。
    「幸せなカップルさん、できるといいな」
     まだ小学一年生のルエニは、ちらりと公園を振り返って、そう祈りを込めるのだった。
     

    作者:光次朗 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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