殺人儀式のその果てに

    作者:刀道信三


     パンッ……!
     乾いた音が夜の闇に響き、背にした木の表面が弾けた。
     焦って動いたのだろう。
     今ので相手の場所はわかったし、こう遮蔽物が多くては早々当たりはしない。
     姿勢を低くすると、木々を縫うようにして、相手の側面へと回り込む。
     相手が反応するより速く手にした鉈を一閃、肩口に叩き込んだ。
     致命傷だと思うが、念のため頭部にもう一撃する。
     鉈は頭蓋を割って刺さり、脳漿がこぼれ、相手は断末魔の声を出す暇もなく絶命した。
     引き抜いた血塗れの鉈を見ながら、もう斬殺してるのか撲殺してるのかわからないなと、的外れな思考が過ぎる。
     もう何人目……あと何人殺せばいいのだろうか?
     ちょっとコンビニにでもと夜に家を出て、気づいたら見知らぬ雑木林の中にいた。
     そこには同じような人達が十数人いて、全員が自分と同じように何故そこにいるのかわからなかった。
     最初は混乱しながらも普通にそこから出ようとしていたと思う。
     しかし『何か』に遮られるように、その雑木林から出ることはできなかった。
     そこから先は異常だったとしか言えない。
     取り乱して、初対面の相手に怒鳴り合いの口論から、火がつくように取っ組み合いの争いにすぐ発展した。
     不自然なのは雑木林の地面に大量の凶器が散乱しており、誰が最初にそれを手にしたかは忘れたが、犠牲者が出るまであっという間だった。
     その後の記憶は、また靄がかかったようにハッキリとしない。
    「…………!」
     他の人間、次の獲物の気配に呼吸を潜めた。
     足許にはゴロゴロ凶器が転がっているが、慣れない得物を拾って使うより、このまま鉈を使うと判断する。
     繰り返してきた作業を確実にこなすため思考を切り替え標的に向かって一歩踏み出した。


    「時が、来たようだな!」
     黒板の方を見ていた神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が振り返り、灼滅者達を見て口を開く。
    「武蔵坂の灼滅者を襲撃してきた六六六人衆に、新たな動きがあったようだ。お前達の活躍で、多くの六六六人衆を灼滅する事ができたが、それに危機感を覚えたのか、新たな六六六人衆を生み出す儀式を始めたらしい」
     この儀式を行っている六六六人衆は、縫村針子とカットスローターという2体の六六六人衆であるようだ。
    「儀式の内容は、閉鎖空間で殺し合いをさせられた一般人が、六六六人衆となって出てきてしまうというものだ」
     この儀式によって生み出された六六六人衆は、完全に闇堕ちしており救うことはできない。
    「出てきたばかりの六六六人衆は、ある程度のダメージを受けており、配下もいない」
     強力なダークネスであるのは間違いないが、灼滅する好機であると言えるだろう。
    「この儀式によって六六六人衆の中でも、より残虐な性質を持つようになってしまうようだ」
     ここで灼滅する事ができなければ、大きな被害を出してしまうだろう。
    「それを防ぐためにも、確実に灼滅して欲しい」
     この儀式で閉鎖空間から出てくる六六六人衆は、もともと普通の男子学生であったが、閉鎖空間での殺し合いを経て、淡々と機械のように殺人を繰り返すような六六六人衆になってしまうようだ。
    「六六六人衆は闇堕ちしたばかりだが、武器やサイキックなどは普通に使って攻撃してくるだろう」
     殺人鬼、無敵斬艦刀、影業に似たサイキックを使用してくることが、未来予測によってわかっている。
    「この雑木林で儀式が行われ、儀式が終わるまで閉鎖空間に入ることはできない」
     地図を示しながらヤマトは説明を続ける。
    「儀式が終わり、六六六人衆が住宅地側の道路に出てきたところを待ち伏せすることが可能だ」
     儀式の殺し合いによって、ある程度ダメージを受けているとはいえ、相手はダークネスなので、十分に注意して戦闘に臨むべきであろう。
    「儀式によって強制的に闇堕ちさせられたという境遇には同情の余地はあるが、完全に闇堕ちしてしまっている以上、助ける術は無い。せめて彼がこれ以上手を汚してしまう前に灼滅してやってくれ」


    参加者
    秋篠・誠士郎(流青・d00236)
    久遠・翔(悲しい運命に抗う者・d00621)
    椿・諒一郎(Zion・d01382)
    朝比奈・夏蓮(アサヒニャーレ・d02410)
    風花・蓬(上天の花・d04821)
    神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017)
    霞代・弥由姫(忌下憬月・d13152)
    天城・理緒(灼界形成・d13652)

    ■リプレイ

    ●閉鎖空間前
    「六六六衆に容赦は無い。しかし――……せめて、一日前に気付けていれば」
     もし未来予測が、この地獄のような儀式を未然に防ぐことができるものであればと、椿・諒一郎(Zion・d01382)は視線に無念さを見せる。
     ダークネスの予知を潜り抜けることが出来るエクスブレインの未来予測も、ダークネスの行動を察知してこそのものである。先んじてすべての悲劇を回避できるものではない。
     そのことを理解している諒一郎は、被害者を思って翳らせた瞳の奥に、倒すことが慈悲となるなら、自分にできる全力を尽くそうと覚悟を秘めた。
    「なんで六六六人衆ってこんな酷いこと平気で出来るんだろう……出来ることなら戻してあげたいけど、せめて貴方の罪をこれ以上重ねさせないようにここで倒さなくちゃ、ね」
     縫村針子が作り出した閉鎖空間に外から入ることができない灼滅者達は、未来予測によって示された六六六人衆が雑木林から出てくる場所を見張れる曲がり角で待ち伏せをしている。
     朝比奈・夏蓮(アサヒニャーレ・d02410)は戦場となる住宅地の道路に一般人が入って来ないように、工事中の立て看板を設置しながら、今も閉鎖空間の中で行われているであろう殺し合いを思って胸がしめつけられた。
    「殺し合わせて戦力増強とか、まさに蟲毒の壺そのものじゃないですか。六六六人衆らしい発想といえばそうなんでしょうけど……」
     そうすることでより残虐な六六六人衆を生み出すことができるというだけで、このような非道を意図も容易く行う六六六人衆に天城・理緒(灼界形成・d13652)は歯噛みする。
    「新しく仲間が欲しいからって、このような儀式は……でも今は、出た芽が大きな花を咲かせる前に刈り取ってしまわないと」
     新しく生まれた六六六人衆は、殺し合いの続きをするように、この住宅街で通り魔的な殺人を始めることが想像に難くない。
     儀式に巻き込まれてしまった人々に同情しつつ、神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017)はスレイヤーカードを胸元で握りしめた。
    「殺し合いで生き残った者を取り上げる、か。彼は犠牲者だが見過ごすことは出来ない……後に加害者となるからだ」
     秋篠・誠士郎(流青・d00236)は、仲間を守るため、そして住宅街の一般人達を守るため、決然とした態度で前を見据える。
    「……これは奴らにとってはゲームなのか……はたまたそのゲームの駒作りなのか……どちらにしろされる側としてはいい迷惑だ」
     いつの間にか閉鎖空間は失われ、雑木林の奥からひとつの足音が近づいてくる。
    「恨むなら恨め、今俺達ができる救いはテメェを殺してやることだけだ」
     久遠・翔(悲しい運命に抗う者・d00621)は外した眼鏡をポケットにしまい、もう片方の手にナイフを握った。

    ●生み出された六六六人衆
    「……いきます」
     六六六人衆が街灯に照らされた道路に出てきた瞬間、風花・蓬(上天の花・d04821)は彼の死角になる塀の影などの中を疾走しながら抜刀する。
    「やれやれ……林を抜け出せても、まだ殺し合いは終わってないみたいだ」
     自身の出血と返り血に塗れた六六六人衆は、手にした大振りの鉈で応戦するものの、突然の奇襲による蓬の日本刀から繰り出される連続した斬撃をすべては受け切れず、服や皮膚を浅く切り裂かれた。
    「残念ですけど、ここで通行止めですわ」
     霞代・弥由姫(忌下憬月・d13152)は蓬と六六六人衆を挟んで反対側の街路に回り込みつつ、同時に曲がり角を飛び出した夏蓮にシールドリングを放つ。
    「罪は消えないかもしれない……でも、与えられた欲望になんか負けないで!」
     夏蓮はシールドリングに守られつつ、雑木林の正面側に回り、シールドを広げることで包囲のための壁を形成した。
    「そのナリじゃあ、余分かもしれねえがな」
     最後に雑木林側で夜霧を展開し、その中に隠れながら翔は六六六人衆に向かって防犯用のカラーボールを投げる。
    「……逃げられないなら、さっきまでとやることは同じだ」
     六六六人衆は視線を巡らせ逃走は困難と即座に判断し、またカラーボールに殺傷力がないと見ると敢えて避けようとせず、蛍光塗料が衣服に付着した。
    「一人一人殺して……全員殺す」
     灼滅者達が包囲網の形成を進める中、六六六人衆は街灯に向かって駆け出し、前衛の灼滅者達が包囲網を縮めるように伸びた影の内側に入ったところで、六六六人衆の影の先端から漆黒の刃が飛び出す。
    「なつくん!?」
     体力の低い理緒の急所を狙って影の刃が伸びるが、ビハインドのなつくんが注意深く攻撃に対して反応し、理緒の代わりに影の刃を受けた。
     しかし六六六人衆の攻撃力は高く、防御を固めたなつくんの体には影の刃が深々と突き刺さり、今にも消滅してしまいそうだ。
    「ダークネスに目を付けられたのは哀れだと思うし同情もしましょう。ですが、完全に堕ちてしまった以上はもう戻れない……ここで貴方を討たせて貰う……!」
     なつくんの行動を無駄にすまいと理緒は前に出て、剣状に伸ばしたバトルオーラにレーヴァテインの炎を纏わせながら六六六人衆を斬りつける。
    「こちらも見てもらおうか」
     六六六人衆が炎に怯んでいる隙に間合いを詰めた誠士郎のシールドバッシュが六六六人衆の胴体に叩き込まれた。
    「ひと思いに眠っていただきましょうか」
     誠士郎とは反対側からタイミングを合わせて接近していた柚羽のナイフが六六六人衆の四肢を切り刻む。
    「一息に決めさせてもらう」
     仲間達の集中攻撃を受ける六六六人衆に、諒一郎は鏖殺領域の殺傷力を持った黒い殺気を浴びせかけることによって、壁際へと追い込んでいく。
    「体は問題ない……一人一人を殺すのに正面からでも1、2分あれば十分だが、これだけの人数に一斉に狙われるのは厄介だな……」
     自分を包囲する灼滅者達を意に介さないかのように、六六六人衆は灼滅者達から受けた傷が戦闘続行に問題ないか確認しながら、状況分析を口にした。

    ●殺人機械
    「まず一人……確実に仕留める」
     六六六人衆は諒一郎に狙いを定めると、鉈を大きく振りかぶりながら地面を蹴る。
    「させないよ! まだきっと大丈夫だから、自分が奪う側になっちゃ駄目だよ!」
     諒一郎を両断しようという勢いで繰り出された斬撃を、夏蓮がシールドを幾重にも束ねながら腕で受けた。
    「人の命を奪うなと俺に言っているのか? 器だった人間に言うならともかく、消えてなくなったものに言っても無駄なことだな」
     夏蓮の腕の骨を断とうと鉈を押し込みながら、六六六人衆は初めて灼滅者達の言葉に反応を返す。
    「その彼のためにも、貴方は早く消えなさい」
     夏蓮を救出するために突撃した誠士郎に対して、六六六人衆が反射的に鉈で迎撃しようとするが、弥由姫が射出したシールドリングがそれを阻んだ。
    「今度は動きを封じさせてもらう」
     六六六人衆の懐に踏み込んだ誠士郎の影業が素早く六六六人衆の脚に巻きついていく。
    「夏蓮さん、一度距離を取って下さい」
     腕からおびただしい血を流している夏蓮に、柚羽は癒しの矢を放ちながら指示を出した。
     大量の失血に一瞬意識が朦朧としていた夏蓮は、柚羽の声に反応するように六六六人衆の間合いから飛び退く。
    「それじゃあ、いかせてもらうぜ」
     夜霧から飛び出した翔は腕を鞭のようにしならせながら、誠士郎の影業に足を取られている六六六人衆に、ナイフで何度も斬撃を加えていく。
    「これでどうだ!」
     翔の死角からの攻撃に六六六人衆が気を取られている隙に、蓬は正面から日本刀を大上段に振りかぶり、六六六人衆を一刀両断する勢いで斬り降ろした。
    「手負いの上にこれだけ切り刻まれて、どれだけ頑丈なんだ」
     諒一郎のバベルブレイカーから高速回転する杭が射出され、六六六人衆の脇腹の肉を抉るが、六六六人衆の瞳に焦りの色は見られない。
    「たとえ貴方から人間の魂が失われていても、これ以上貴方に手を汚させたりしないよ!」
     先ほどの六六六人衆の言葉に反論するように、夏蓮は叫びながらご当地ビームを放ち、光条が闇夜を切り裂いた。
    「そこです」
     夏蓮のご当地ビームを大きく飛び退いて回避した六六六人衆の着地を狙って、理緒の契約の指輪から撃ち出された魔法弾が、六六六人衆の胸の真ん中に命中する。
    「……まず一人目だ」
     灼滅者達からの攻撃で閉鎖空間から出てきた時より自身の血に塗れた六六六人衆がそう呟くと、腹を影の槍で貫かれた理緒がグラリと大量の血を吐き出しながら地面に倒れ伏した。
     六六六人衆の着地を理緒が狙っていたのと同時に、六六六人衆も夏蓮の攻撃を回避しながら理緒を狙っていたのだ。
    「くっ、まず天城先輩から敵を遠ざけますわよ!」
     弥由姫は仲間が倒れたことによる一瞬の硬直からイチ早く立ち直り、六六六人衆が倒れた理緒から離れるように突進し、後退する六六六人衆に向けて影業を伸ばす。
    「花、天城を守ってくれ」
     主に応えるように一吠えすると、霊犬の花は理緒の方へと駆けて行き、それを見送るより早く誠士郎は仲間より前に出るために、六六六人衆に向かって真っ直ぐ駆け出した。
    「これ以上はやらせない。次こそは守る」
     そしてそれを迎え撃つように横薙ぎに払われた六六六人衆の鉈を、誠士郎は身を屈めて潜り込むとシールドを纏った拳で六六六人衆の顎を跳ね上げる。
    「お望みなら次はお前を殺してやる」
     踏ん張った足をそのまま誠士郎の懐へと踏み込むように蹴り出した六六六人衆が、誠士郎の脳天を狙って上段から重い斬撃を繰り出す。
     鉈は頭を外すが誠士郎の肩口に深々と刃を埋め、噴水のように血飛沫が上がった。
    「早く誠士郎さんから敵を!」
     理緒に続いて誠士郎も倒れかねない状況に、癒しの矢をつがえながら柚羽は焦りを隠せず仲間達に呼びかける。
    「テメェ、離れやがれ!」
     翔はレーヴァテインの炎を纏わせたナイフを六六六人衆に突き刺すと、そのまま引きずるように六六六人衆を押し込んでいく。
    「しぶとい……」
     死角に回り込みながら蓬が黒死斬を繰り出し、日本刀で六六六人衆の鉈を持っていない方の手首を切り飛ばした。
    「早く倒れろ」
     諒一郎が蓬に重ねるように妖の槍の穂先で、六六六人衆の脚を切り抉る。
    「これでどう!?」
     体勢を崩した六六六人衆に夏蓮のシールドバッシュが直撃し、六六六人衆を数メートル吹き飛ばした。
    「まだこれくらい……あの林の中に比べれば……」
     六六六人衆は鉈を地面につきながら立ち上がりつつ、手首を失った腕を自身に点いた魔力の炎に押しつけて止血する。
     その体はどう見ても満身創痍であったが、その瞳に追い詰められているという絶望感はなく、どこまでも無機質であった。

    ●空っぽの器
    「…………」
     幽鬼のような足取りで、言葉を発することもなく、六六六人衆の鉈が振るわれるが、動きに精彩を欠いてきているのか、その切先はギリギリのところで諒一郎に避けられる。
    「何……?!」
     しかし攻撃を避けたと思っていた諒一郎の脇腹に、鉈から落ちた影から伸びた刃が鋭く突き刺さっていた。
     これが万全の状態からの一撃であれば、諒一郎はこの一撃で倒されていたかもしれないが、疲弊した六六六人衆の攻撃を諒一郎は辛うじて耐え切った。
    「椿先輩!」
     すかさず弥由姫がシールドリングを飛ばし、諒一郎に刺さっていた影業を切断、霧散させる。
    「名を教えてくれ……両親が付けた名を。こんな終わりを望んではいなかった。想像もしていなかったはずだ」
     応急処置を受けたとはいえ先ほどの攻撃で大きく負傷した誠士郎の目にも、六六六人衆の体は自分以上に命の危機に迫った傷を負っているように見える。
    「そいつは閉鎖空間の中で一人また一人と殺していく内に削れて消え去った……そいつの名前は俺にとっては意味がないし、それを俺がお前に教える理由もない」
     風が吹けば倒れそうな体でも、六六六人衆の声に感情の色はなく、どこまでいっても他人事を客観的に語っているようにしか聞こえなかった。
    「……そうか」
     誠士郎はクルセイドソードを構え六六六人衆の間合いに踏み込み、六六六人衆は手にしていた鉈を跳ね上げる。誠士郎は半歩外側に踏み出すことで六六六人衆の鉈を回避し、通り過ぎ様に白光を放つ刃を一閃した。
    「あとちょっとです。イッキに畳みかけましょう」
     もう倒し切ってしまった方が仲間の被害が少ないと判断した柚羽の彗星撃ちによる矢が六六六人衆の大腿部を貫く。
    「それなら俺達はテメェにこれ以上その体を自由にさせねえだけだ」
     動きの止まった六六六人衆に、翔は足にオーラを纏わせ連続蹴りを浴びせかけた。
     蹴られた方向に関節は跳ねるように曲がり、胴を打たれる度に六六六人衆は口から血を吐く。
    「お前はもう眠れ……それが消えてしまった彼のためだ」
     刀を鞘に納めていた蓬が居合斬りで六六六人衆の腕を肩口から撥ね飛ばす。鉈を持った腕が地面に落下して大きな音を立てる頃には、蓬は六六六人衆を背にして紙で刀から血を拭って再び鞘に納めていた。
    「そうか……俺もここで終わりか……」
     そう一言呟くと、六六六人衆は糸が切れたように倒れ、血液の詰まった水袋のように破裂し、道路に大量の血を撒き散らす。
    「ごめんね……もっと早く気付いてあげられなくて……」
     戦闘が終わり緊張が解けたところで、夏蓮は六六六人衆にされてしまった少年を悼み涙を流した。
     この儀式を行った六六六人衆も、そして彼の内から現れた六六六人衆も、最後の最後まで彼のことに何の関心も抱いてはいなかったのだろう。
     人の心を持った灼滅者達にとっては、その無関心さでただ巻き込まれてしまった一般人の少年の境遇が憐れでならなかった。

    作者:刀道信三 重傷:天城・理緒(黄金補正・d13652) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月21日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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