中洲ねこねこ飯店

    作者:本山創助

    ●お食事処(個室付き)
    「ご主人さま、おまたせしましたニャン♪」
     お盆にオムライスとケチャップを載せて、猫耳ウェイトレスがやってきた。
     もこもこブラに、ふりふりエプロン。頭と手首にはメイドっぽい飾りを付け、お尻にはふさふさな尻尾がしゅるん、と伸びている。首に付けられた黒革の首輪が、肌の白さを際立たせていた。
    「ウッキー♪ これは、おいしそうでゴザル……」
     じゅるり、とヨダレを拭うサルっぽいおじさん。その視線は、配膳のたびにムニュ、たゆん、ムニュ、ぽよよん、と動くおっぱいに注がれていた。
    「美味しくなる、おまじない、かけてあげますニャン♪」
     ケチャップを持って、ウェイトレスがウィンク☆
    「じゃあ『憂鬱な薔薇』って書くでゴザル」
    「かしこまりましたー♪ こう見えてもイーリン、漢字は得意ニャンよ♪」
     ふんふーん、と鼻歌交じりに尻尾とケチャップを振るウェイトレス。
     出来上がったのは、二つの正方形に挟まれた『な』だ!
    「ケチャップが潰れて何が何だか分からないウッキー!」
    「ご、ごめんなさいニャーッ!」
    「お仕置きでゴザルー♪」
     サルっぽいおじさんは、ウェイトレスの首輪に鎖をつけ、『おしおき部屋』と書かれた個室に引きずり込んだ!
    「この駄猫ッ! 駄猫ッ! お前なんか、こうして、こうだっ、ウキッ♪ ウキキッ♪」
    「にゃっ、にゃっ、あんっ、にゃふっ、にゃんっ♪ にゃんっ♪」
     おしおき部屋から、ぱん、ぱん、と乾いた音と、ウェイトレスの艶っぽい声が漏れ聞こえてきた。
     ――数十分後。
     ブラの位置を直しながら、ウェイトレスがおしおき部屋から出てきた。
     部屋に残されたのは、カラッカラに干からびたサルっぽいおじさん。その背中には、スーパーデフォルメされたアイアイの刺青が……!
    「イーリン様、いかがしますニャン?」
     同じような格好のウェイトレスが歩み寄る。
    「こっちのおサルさんは鹿児島行き、そっちのニャンコはウチで雇うニャ」
    「かしこまりましたー♪」
     お辞儀するウェイトレス二号。『おしおき部屋』と、隣の『ごほうび部屋』の中を確認すると、梱包材をてきぱきと運び込んだ。
    「いつも良い働きっぷりだニャン……たまには、ごほうびをあげるニャンよーっ♪」
    「あ、イーリン様、まだお仕事中……に、にゃああぁーっ♪」
     ばたんっ!
     二人は、別のごほうび部屋に消えると、飽きるまでにゃんにゃんするのであった。

    ●教室
    「ふぅ……」
     なにやら悟りを開いたような面持ちで、賢一が説明を始めた。

     中洲にある、いかがわしいメイド喫茶で、拉致事件が起きているんだ。店主のイーリンはHKT六六六人衆の強化一般人で、とても色っぽい。拉致されるのは刺青を持ったお客なんだけど、そうでない人も、イーリンの魅力にハマってHKT六六六人衆の協力者になってしまう。だから、キミ達には、この店を潰して欲しい。
     イーリン達は、邪魔者が来たらいつでも逃げられるように準備しているんだ。イーリンを逃がさずに撃破するには、ちょっと工夫が必要になる。やり方は二つあるよ。
     一つ目は囮作戦。
     囮となる人がイーリンと一緒に個室に消えた後、アレやコレやに夢中になっている頃を見計らって、退路を断った上で戦闘を開始する方法。この場合、他の手下をやっつけて個室に踏み込んだ頃には、囮はイーリンにカラッカラにされていると思う。死にはしないけど、戦闘不能にはなる。あと、色々なものを失うかもしれないね。イーリンを指名する事は出来ないから、囮は多い方が確実だと思う。囮になるには、ウェイトレスの仕事を褒めたり叱ったりしながら、ごほうび部屋かおしおき部屋に連れ込めばOK。囮役には、誰でもなれるよ。
     二つ目は籠絡作戦。
     配下の店員達は、イーリンの猫カワイイお色気にメロメロという理由で忠誠を誓っていて、イーリンを逃がすためなら何でもする状態になっている。この忠誠心を揺さぶる事ができれば、イーリンの撤退を阻止できるかもしれない。イーリン以上の魅力を演出する事ができれば、配下を虜に出来ると思う。店員は、『休憩室』って書いてある部屋に、何人かでだらーっとしてるから、押しかけて色々してあげると良いと思うよ。ひとりでも籠絡できれば、イーリンの逃走は防げる。厨房に行ってコックを籠絡するのもアリだよ。この作戦は女性が担当してね。
     店員は、ウェイトレスが五名にコックが二名。みんな強化一般人だけど、強さはキミ達の半分くらい。KOしてイーリンを灼滅すれば救出できるよ。イーリンはキミ達二人分くらいの強さだから、戦力的には、囮役を失ったとしても、こちらが上回っている。だから、キミ達が負ける事はないと思うよ。
     それと、ウェイトレスの中には男の娘が混じってるから要注意。たぶん、休憩室でダラダラしてるのは、男の娘が多いと思う。
     どちらの作戦にも参加しない人は、普通にご飯とかパフェとか食べながら、その辺にうろついている猫をもふもふして時間を潰せば良いと思うよ。この店には、猫が何匹か放し飼いになってるんだ。この依頼はお店を潰す事が目的だから、お色気作戦が難しい場合は、無理しなくていいからね。でもまあ、せっかくだから、イーリンの逃亡は防いで欲しい所なんだけど……。
     色々と難しいかもしれないけれど、博多の平和を守るためには、キミ達の活躍が必要なんだ!
     それじゃ、よろしくね♪


    参加者
    天鈴・ウルスラ(踊る朔月・d00165)
    黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)
    相良・太一(土下座王・d01936)
    ミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)
    雨霧・直人(甘く血塗れた祝福を・d11574)
    伴野・一織(鋏と茨・d16952)
    アメリー・ヴァルテール(孤独の魔眼・d22964)
    カルナヴァル・ジンガムル(俺の指揮を見ろや・d24170)

    ■リプレイ

    ●伴野・一織(鋏と茨・d16952)
    「お勧めのケーキは何かしら」
    「ねこケーキです、ご主人様……」
     黒髪ロングのウェイトレスが、小さな声で答えた。
    「猫?」
    「あの、猫は入ってません。普通のチーズケーキです……」
    「なら、それと紅茶を頂戴」
    「かしこまりました……」
     一織は去りゆくウェイトレスの後ろ姿を見た。綺麗な髪である。ちょうど良い量で、ちょうど良い柔らかさ。艶やかで、サラサラで、手を加えるのがためらわれるような、自然の美しさがそこにあった。
    「お待たせしました、ご主人様……」
     庵の前に、ウェイトレスが手際よくケーキと紅茶を並べる。ぱっちりお目々に、キラキラルージュ。前屈みになる度に、黒髪がサラサラと揺れた。
    「んー、せっかく綺麗な髪してるのに、お化粧が合ってないのよね。ちょっと、ここに座って」
     一織は隣にウェイトレスを座らせると、その顔を正面からまじまじと眺めた。
    「あなた、男の子でしょ」
    「あ、すみません……」
    「謝らないの。男であることに引け目を感じてるから、こんなにお化粧が濃くなっちゃうのよ。まあ、ありがちだけど」
    「やっぱり、濃いですか……でも、どうしたらいいのか分からなくて」
    「卑屈な心は美の天敵よ。男だって、女子よりも美しくなれるの。まずは自信を持ちなさい! って言っても、急には難しそうね」
     ウェイトレスが悲しげにうつむいた。
    「いい? 貴方の場合はね、目元と口元がケンカしちゃってるの。変えるなら、口元かしら。グロスを減らして、色をもっとヌーディーにするだけで、全然違ってくるわよ」
     親身になって美容指南する一織の言葉に、ウェイトレスも真剣な眼差しで聞き入った。
    「貴方は綺麗だわ。そこらの女子よりもずっと綺麗。だから、厚いお化粧でそれを隠そうだなんて思わないで。お化粧はほんの少し、貴方の美しさを引き立てるためにすればいいの。分かった?」
    「はい、お姉様」
     ウェイトレスが、笑顔でうなずいた。

    ●黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)
    「なるほど。ねこステーキは、シヅエさんのお口に合わないのですね」
     くれと言うからあげたのに、『シヅエ』という名札を下げた三毛猫は、匂いをかいだだけで肉から顔を背けた。代わりに、『ロッキー』という名札のアメリカンショートヘアが、それにがっついた。喉を鳴らし、目を細めながら、幸せそうに咀嚼している。伶は、その様子を、いつもの笑顔で眺めていた。
     この店では、猫用の小皿がテーブルに据え付けられていて、エサをあげたいと思ったら、自分の料理を切り分けて、皿に盛って与えることが出来る。皿には『これを食べたら死んじゃうニャ~』と題されたリストが描かれていた。どうも、ネギ類はダメらしい。
     ねこステーキは極上のサーロインステーキで、もちろん牛肉である。ナイフを入れる度に、肉汁がじゅわわっと溢れ出て、すごく美味しそうだ。
    「内装もいいですし、良いお店ですね」
     アンティーク調の店内を見渡しながら肉の旨味を堪能していると、左腕に、ぽん、と重みを感じた。見れば、シヅエさんが、ソファーに立って伶の腕に手をかけている。
    「やっぱり欲しいのですか?」
    「ゴロニャン」
     もう一度小皿に肉を切り分けて、ソファーの上に置く。
     シヅエさんは、まるで初めてその肉を見たかのような眼差しで匂いをかいだ。そして、解せぬ、とでも言いたげな顔をすると、またもやそっぽを向いてしまった。
     その肉は、やっぱりロッキーが平らげるのであった。

    ●雨霧・直人(甘く血塗れた祝福を・d11574)
    「まっすぐ下ろして……そう、そこはゆっくり」
    「えぐっ……えぐっ……」
     ウェイトレスが、オムライスに字を書きながら、涙目になっていた。その背後に立った直人が、猫耳に息がかかるように、囁いている。
    「ふふ、手が震えているぞ」
    「ひゃうぅっ」
     ウェイトレスが、猫耳を伏せてビクンと震えた。ケチャップに力が入り、オムライスに、赤い点々が飛び散る。
    「あっ……」
     瞳をウルウルさせたウェイトレスが、恐る恐る振り向く。直人の眼差しは冷たい。
    「やり直し。『絶対服従』だ」
     直人はスプーンを手に取ると、左端に書かれた『絶』の字を潰し、オムライス全体に広げた。
    「うにぁあ~~」
     膝をついて泣き崩れるウェイトレス。
     うなだれた拍子に、長い黒髪が背中から滑り落ち、蝶結びになったもこもこブラの紐が露わになった。
     テーブルの上には、積み重なったオムライスの皿。
     それら横目に、直人はもぐもぐとオムライスを食べるのであった。

    ●カルナヴァル・ジンガムル(俺の指揮を見ろや・d24170)
    「君の弱いところはどこかな~? デリケートなところまで確認しちゃうよ~?」
    「そ、それより下は、だめですにゃっ、にゃふ」
    「いいから、ほら、仕事してね」
    「……はい、ご主人様、あーん」
     カルナヴァルの膝に乗ったウェイトレスが、体をひねりながら、カルナヴァルの口元にスプーンを運ぶ。大きな胸が、カルナヴァルの胸に当たって、むにゅっと潰れた。カルナヴァルの両手は、ウェイトレスのエプロンの中を這い回っている。
     ねこチャーハンを頬張りながら、カルナヴァルは蝶結びになったブラ紐に手をかけた。
    「さて問題です。君のご主人様のマイブームは、どんな音楽だったかな? ご主人様の話をちゃんと聞いていたなら、答えられるよね~?」
    「ちゃ、ちゃんと聞いてましたニャ」
     猫耳をぺたんと伏せ、頬を赤らめながら上目遣いするウェイトレス。その瞳は、ハッキリと困惑の色を示していた。
    「えーっとぉ、け、け、け……ケル、ケル、ケル……キャトルミューティレーション?」
    「ケルト音楽だよ!」
     カルナヴィルが、ブラ紐を引っ張った。パラリとほどける蝶結び。
    「にぁああっ」
     涙目になるウェイトレス。ブラを押さえたくても、左手にチャーハン、右手にスプーンでそれは無理。紐の外れたブラが、胸の上で頼りなくぶら下がっている。
    「ほらほら、お手々がお留守だよ~」
    「……ぐすん。はい、ご主人様。あーん……にゃにゃっ」
     カルナヴァルに耳を触られて、スプーンを運ぶウェイトレスの姿勢が、ぴんと伸びた。
     その拍子に、もこもこブラが、ハラリと落ちた。

    ●アメリー・ヴァルテール(孤独の魔眼・d22964)
     休憩室は和室だった。中央にこたつが据えてあり、一人のウェイトレスがこたつに足を突っ込みながら畳に寝そべっている。
     その脇に、アメリーは正座していた。
    「このお店の可愛いメイド服を、一目見て好きになってしまったんです」
    「へえ、そうなの? この店の制服、メイド服っていうよりも、裸エプロンを狙ってるようにしか見えないんだけど」
    「そ、そんなことないです。頭と手首のひらひらが、メイドっぽくて好きなんです」
    「ふうーん」
    「どうしても着てみたいのですが、家の事情でアルバイトはできず……」
     恥じらうようにうつむくアメリーに、ウェイトレスはニヤリと微笑んだ。
    「制服を着てみたいだけなの?」
    「はい」
    「分かった。じゃあ更衣室に行こっか。ボクが着せてあげるよ」
     ウェイトレスは立ち上がると、アメリーの手を引いて休憩室を出た。

    ●ミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)
    「ささ、お仕事の疲れを癒やして差し上げますわ♪」
     アメリー達と入れ替わりに、ミルフィと女コックが休憩室にやってきた。
    「ほーんと、つかれたニャー。オムライスばっかり、立て続けに注文がくるんだもん。肩が凝っちゃったニャン」
     畳に座るなり、腕を回す女コック。コック帽をかぶっている以外は、ウェイトレスと同じ格好である。ふわふわな尻尾がぺしぺしと畳を叩いた。
    「手伝ってくれてありがとうニャン♪ ミルフィのおかげで、早めに休憩入れたニャン」
    「わたくしの特性オムライスがお客様のお口に合えばよろしいのですが」
     ミルフィは露出度の高いフレンチメイド服を着て、新人を装ってキッチンに押しかけていたのだった。そこで女コックの信頼を得て休憩室に連れ込んだ、というのがこれまでの流れである。
    「さ、どうか楽になさって……」
     ミルフィは女コックをうつぶせに寝かせると、その上に跨がり、エプロンの紐をほどいた。続けてブラの紐をほどくと、露わになった背中に両手を滑らせた。
    「ふふっ……綺麗なお肌ですわ……♪」
    「きもちいいにゃー♪」
     上体を倒しながら、肩甲骨、首筋、そして耳へと指を這わせていく。
     ミルフィの豊満な胸が、女コックの背中に当たった。
    「にゃふっ……ちょっと、気持ちよすぎる、にゃん……」
    「もっと気持ちよくなっても、良いのですわよ」
     後ろ手に、女コックのお尻をなでるミルフィ。その指先が、尻尾へと伸びた。
    「そ、そこはダメにゃっ、にゃっ、やぁん♪ にゃ、にゃん……っ」
     ぴくぴくと痙攣する尻尾を、ミルフィは優しく、攻め続けるのであった。

    ●更衣室
    「この制服は一人で着るの大変なんだよねー」
    「そ、そうですね……」
     ブラの紐を背中で蝶結びにして貰いながら、アメリーは頬を染めた。肌に付けているのは、もこもこパンティーにもこもこブラのみだ。
     頭と手首に飾りを付けて、エプロンを着たら完成!
    「似合いますか、にゃん……♪」
     少し恥ずかしそうに、軽く握った両手を曲げてにゃんこのポーズをとるアメリー。
    「うんうん、似合うよー♪」
     怪しげな笑みを浮かべたウェイトレスが、両手の指をわきわきしながら近づいてきた。
    「お礼に手作りお弁当を用意してきたのですが……えっと、どうなさいました、か?」
    「お礼なんか、いらないよー。だって君は、ここでボクに襲われちゃうんだからね!」
    「だ、だめですよ、だーめ。いや、ほんとに、ちょ、きゃああーっ」
     更衣室にアメリーの叫び声が響いた。

    ●天鈴・ウルスラ(踊る朔月・d00165)
    「何事でゴザルかー!」
     更衣室をババーンと開けるウルスラ。そこで見たものは、涙目になって両手で胸を押さえるアメリーと、その背後でブラ紐を引っ張っているウェイトレスの男の娘。
    「死ねおんどりゃぁぁぁぁぁ!」
     青いマフラーをなびかせながら、ウルスラが男の娘に飛びかかった。
    「ちが、これには訳が……へぶぶぶぶぶぶっ」
     ウルスラの無数のパンチが、男の娘にクリティカルヒット!
     男の娘はびよーんと吹っ飛び、床に叩きつけられた。
    「大丈夫でゴザルか」
    「はい……なにもされませんでした」
     ホッと胸をなで下ろすウルスラ。
    「でも、籠絡は……」
    「あっ」
     男の娘は完全にノビている。一発KOだ。
    「お手当、しないと……」
    「あんな奴、死んだほうが良いでゴザルよ」
    「でも」
     その時、休憩室の方から、叫び声が聞こえた。
     全力疾走で休憩室に向かうウルスラ。
     扉をババーンと開けて見たものは、女コックとミルフィのあられもない姿。
     女コックは完全に昇天してしまっていた。
    「ちょっと、やりすぎてしまったようですわ」
     女コックに跨がったミルフィが、たはーっと笑って頬を掻いた。

    ●相良・太一(土下座王・d01936)
    「たーいーちーくーん……」
     太一の目の前で、イーリンがケチャップで字を書いていた。イーリンはテーブルを挟んで向かい側に立っており、身を乗り出すような姿勢だった。エプロンの隙間から、もこもこブラに包まれたイーリンの胸の谷間が覗く。たわわに実ったそれは、右手のケチャップを動かす度に、たゆんたゆん、と揺れた。太一はそれを、紳士的に鑑賞するのであった。
    「らーぶっと。出来ましたニャン♪」
     オムライスには『太一くんラヴ』の文字。可愛らしい丸っこい文字で書かれており、『太』の点はハート型になっている。
    「いい字だ!」
    「ありがとうございますニャー☆」
     ウィンクするイーリン。その瞳は、太一の襟元から覗く刺青に釘付けである。
     太一の携帯がメールの着信を告げた。ウルスラからの籠絡失敗のお知らせだった。
    「よし。褒めてあげないとな!」
     太一は携帯をしまうと、テーブルの脚に引っかけられた鎖をとり、イーリンの首輪につないだ。そのままイーリンを引っ張ってごほうび部屋へIN!
     そこは、いろいろとアレな道具が壁にぶら下がっている部屋だった。脇にはベッドが置いてある。
    「ご主人様……イーリンね、ご主人様の素肌が見たいニャン……その刺青……」
     太一の襟元を見つめるイーリン。
    「タトゥー? 見たい? いっぱいあるよ!」
    「すごいニャーン♪」
    「じゃ、じゃあ一枚脱いでくれたらご褒美に、ひとつずつ見せてあげるよ! さ、ささ最初は……!」
     目をくわっと見開いてイーリンに迫る太一。
    「ええーっ。ご主人様のえっち♪」
     と言いつつ、イーリンは背中に腕を回し、もこもこブラの紐をほどいた。
    「はい、とったニャン♪」
     イーリンは、太一の頭にもこもこブラをかぶせて、アゴで結んだ。その間中、太一の目は、エプロンから覗くイーリンのおっぱいに奪われていたのであった。

    ●おしおき部屋
    「さて、そろそろ時間でしょうか」
     おしおき部屋で時計を確かめる伶。テーブルを挟んで向かいには、困り顔のウェイトレスがうつむいていた。
    「ボクのアドバイス、分かって頂けましたか?」
    「あ、あの、あんまし覚えてないニャ……ごめんなさい」
     伶は店について真面目にコンサルタントめいたアドバイスを述べていたのだが、ウェイトレスは、単にそういうプレイなのかなと思って、内容はよく聞いていなかったのである。
    「それでは、本当におしおきしなければなりませんね」
     伶はメガネを押し上げると、影業でウェイトレスを包み込んだ。

    ●殺人オムライス
     直人の影業が、ウェイトレスを縛り上げていた。
    「さっきのオムライスは、意識がトビそうなほど不味かった。あれはどういうことだ」
    「ご、ごめんなさいニャ……でも、し、しらないニャ」
     無理もない。そのオムライスはミルフィが作ったものである。彼女は優秀なメイドだが、料理は殺人的に下手なのだ。
     細く紐のように展開した影業がウェイトレスの体中を締め付け、そのボディーラインを露わにした。
     ウェイトレスは直人の許しを得られないままKOされたのであった。

    ●フィナーレ
    「カオス! ペインッ!」
     人間形態から一転、ハート頭の棒人間と化したカルナヴァルが、厨房で暴れていた。
     太一がごほうび部屋に入ってからしばらく待って、灼滅者達は戦闘を開始。相手は格下である。次々とKOしながら、太一の個室へと踏み込んだ。
    「タイチ! 大丈夫でゴザルか!」
     ババーンと扉を開けるウルスラ。そこで見たものは、素っ裸でベッドに横たわる太一と、タトゥーシールを自分の肌に付けて遊んでいるイーリン。太一はどういうわけか、カラッカラに干からびていた。
     そんな太一を絶対零度の視線で眺めつつ、ウルスラはぶわーんと鏖殺領域を展開。
    「おしおきは、もう懲り懲りニャー!」
     七人の灼滅者相手になすすべも無く、イーリンは灼滅されたのであった。
     おしまい♪

    作者:本山創助 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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