氷室の庭

    作者:中川沙智

    ●氷雪
     雪の如き白、という表現は陳腐だろうか。
     だが兎に角毛並みは白かった。静かに、だが重く降り積もる冴えた雪の色をしていた。ただ尾の一筋だけが青。深海にも、紺碧にも思える深い青を宿した、一頭の狼のようなもの。
     スサノオであった。
     静かに雪が降りしきる庭をゆうるりと歩いていく。庭の向こうには打ち捨てられた屋敷が望める。だがそれに大した感慨も抱かず、暫し佇んだ後、スサノオは去った。
     その姿を屋敷の中から見詰める少女がいた。
     こちらも身の至る所が氷で出来ている。月明かりで照らされる御髪は銀の氷雨。軋む事無く、冴えた零下の煌き湛えそこに在る。
     古風な装いに身を包む少女はただ独り屋敷に佇む。寂しいという類の感情は存在しないようだった。だが気丈な横顔が示すのは、冷徹なまでの誇り。
     彼女の着物の帯からは、屋敷へと繋がる鎖が覗く。それは執着にも似た堅いもの。
     此の家は我が一族のもの。
     邪魔は、しないで。
     
    ●冬の氷女
    「まあ夏に出てきたら吃驚しちゃうけど……そういう問題じゃないわよね。またスサノオの足取りが掴めたわ」
     それはすなわち古の畏れが出現する場所が判明したという事。小鳥居・鞠花(高校生エクスブレイン・dn0083)は今日も冷えるわねとぼやきながら、説明を続ける。
     今年は特に雪が多い。だからだろうか――忘れられた集落の跡地、昔ながらの屋敷に住みついている氷女がいるらしい。
     雪より尚冷たく鋭利な氷を操る古の存在。それがスサノオにより古の畏れとして生み出されたのだ。
    「だだっ広い昔ながらのお屋敷でね、室内で戦っても大丈夫だと思うけど……入ろうとすると怒るのよ、そこに住まう氷女が」
     逆に言うと広い屋敷をくまなく探す必要はない。
     正門にてただ一言、『ごめんください』と大声で尋ねればいい。
     そうすれば氷女は招かれざる客を追い返そうと姿を現すだろう。
     見目だけなら灼滅者達と歳も変わらぬ少女に見える、だが氷の髪に雪白の肌、零下の吐息を持つ彼女は間違いなく人ならざるもの。
    「だから戦うとしたら門前の庭になるわ。雪で一面真っ白の庭、とはいえ足場は踏み固められているから滑って転んで大変! なんて事はないから平気よ」
     時間帯は夜になるが、月明かりと屋敷から漏れる灯火で視界に影響はないだろう。場所柄人払いも一切必要ない。
     しかし。
     鞠花はそっと声を潜める。
    「見た目が少女だからって油断は禁物。配下は連れていない分本人が強力よ。氷を使った技に秀でているのに加えて、苛烈な性格ゆえか攻撃力が半端じゃないわ」
     雪紋の振袖翻し、阻害の力強めた氷の刃で容赦なく穿つ。
     無策で対抗出来る相手ではないと、鞠花は暗に示している。
    「この事件を齎したスサノオの行方は、ブレイズゲート同様予知がしにくい状況なのよ。でも事件解決をひとつずつ重ねていけば、きっと元凶のスサノオにたどり着くわ」
     浮かぶのは笑み。
     鞠花は心からの信頼を籠め、灼滅者達を送り出す。
    「行ってらっしゃい、頼んだわよ!」


    参加者
    雲母・夢美(夢幻の錬金術師・d00062)
    奇白・烏芥(ガラクタ・d01148)
    望月・小鳥(せんこうはなび・d06205)
    香坂・天音(煉獄皇女・d07831)
    神木・璃音(アルキバ・d08970)
    六文字・カイ(死を招く六面の刃・d18504)
    蔵守・華乃(レッドアイ・d22909)
    ステラ・クラウン(星冠・d23310)

    ■リプレイ

    ●万年雪
     夜に落ちるのは、静寂。
     雪に落ちるのは、月影。
    「雪に月明かりとは、情緒ある光景ですわね」
     目的地となる屋敷を視界に捉え、蔵守・華乃(レッドアイ・d22909)は白い息を弾ませる。人間の気配がない青白い集落の中、その屋敷はただ一軒のみ灯りを燈している。一種独特な風情すら感じさせた。
    「こんな良い夜に、強敵と相まみえるなんて、幸運ですわ」
     胸が高鳴りますわね! と逸る鼓動をたしなめる華乃の隣、ステラ・クラウン(星冠・d23310)が青の瞳を細める。吐息を零し手を擦るも、指先はかじかむままだ。冴ゆる寒気は冷え症には堪える。
    「雪景色を見るのは好きですが……今年は本当に雪が多いですね」
    「同感です。雪を見るのは綺麗だから好きですけれど、あまり寒いのは勘弁願いたいっすね」
     神木・璃音(アルキバ・d08970)の発した言葉も雪煙となり夜空に溶ける。
     待機する灼滅者達が佇む庭も、一面が銀世界だ。季節が違えば青々とした景観が望めるであろうそこも、今や雪が折り重なるように積もっている。
    「東北出身のこのゆめみー、寒さには耐性が……ってやっぱり寒いモンは寒いですね!」
     と身を震わせる雲母・夢美(夢幻の錬金術師・d00062)だが、着ている服が前を大きく開けたYシャツなのだから寒いのも当たり前。仙台出身の女子高生だし、とは本人の弁だ。
     目指す屋敷は既にすぐそこ、正門が厳かな雰囲気を醸して彼らを待ち構えている。
     客人として最初に声掛けをする役目は望月・小鳥(せんこうはなび・d06205)が担うと決めていた。小鳥はスサノオの足跡等がないか周囲を見渡していたが、それらしき痕跡は見つけられなかった。
     スサノオが訪れた後に雪が降ったのかもしれないし、そもそも集落の入口からスサノオがやって来たとも限らない。落としそうになる視線を上げ、前へ進む。その傍らを、ピンハちゃんよろしくーと夢美に送り出されたビハインドのピンクハートもどき――という名前である――が付き従う。
     彼女達の背を見守る六文字・カイ(死を招く六面の刃・d18504)も前を見据えた。自然、思い浮かぶのはスサノオの事だ。旧き伝承を『畏れ』として顕現せしむる存在。
    「いずれも異なる貌を持つモノなれば、『奴ら』は何を狙い、何処へ向かっているのか……」
     独白が雪に染み渡る頃、小鳥は正門の前にしっかり足を踏みしめて立つ。
     小さな身体に強い意志を秘め、口を開いた。
    「ごめんください」
     静かな屋敷に、庭に、集落に通る声。
     その瞬間、張り詰めた空気が立ち込めた事に気づいた奇白・烏芥(ガラクタ・d01148)が、咄嗟に言葉を紡ぐ。
    「貴方の眠りを醒ましてしまい……申し訳ない」
     応えるかの如く。
     突風が吹く。ひらり舞う氷の一片が結晶を煌めかせた瞬間、予測で示された古の畏れが顕在する。
     氷女。その名に相応しく、氷面鏡の瞳に宿るは零下の色。
     鎖が鳴る。だがそれ以上に硬質に冷酷に、言い捨てる。
    「此の屋敷は我が一族のもの。――お引き取り願うわ」
     烏芥はかぶりを振る。その怒りを鎮め、
    「また静かに眠りに就ける様にと」
    「そうね、こうして出会うことになったのだもの。一曲くらいなら付き合ってあげるわ」
     踊りましょうと歩み出たのは香坂・天音(煉獄皇女・d07831)だ。雪上のダンスと洒落込もうか。
     相手が氷女なら、炎を得手とする天音はさしずめ焔女(ほむらめ)。
    「さあ、曲の始まりよ!」

    ●虎落笛
     次々と殲術道具を構える灼滅者達に眉根を寄せ、氷女は宣告する。
    「退かないのなら、力づくで雪に還らせるまで!!」
     叫びに嘆きの気配すら感じられたその時、眩い氷晶が前に立つもの全てを覆い尽くす。足元から蝕むように重なる氷は切り傷を生み出すと同時、急激に体温を下げ体力を奪っていく。
    「ロビンさん!」
    「氷は蓄積が怖いですからねー、小まめに癒してあげますよー」
     己を庇い幾重もの氷を付与されたビハインドを案ずる小鳥に、夢美は手をわきわきさせて見せた。吹き抜けたのは一陣の清らかな風、春の雪解けのように傷を優しく包み込む。
     相手は妨害の術に長けているという事前情報がある、それ故に夢美の判断は正しいといえるだろう。
     安堵の息も白くたなびく。小鳥は改めて氷女に向き直った。
    「望月小鳥、推して参らせて頂きます」
    「この程度の氷で、あたしの炎は消せやしないわよッ!!」
     小鳥が聖剣を振りかざし破邪の斬撃を見舞うのに続き、氷結を払い落とす勢いで天音が跳躍する。身体から迸るのは灼熱の炎、渾身の力で叩き込めば氷女の振袖に火花が散った。
     降り積もる雪を蹴散らし華乃も駆ける。繰り出したのは全体重を込めた大上段からの一撃、紙一重で氷女が躱すも華乃の士気は下がりはしない。
    「我が名は蔵守華乃!」
     切先を突き付け名乗りを上げる。
    「汝、己が一族の名前に誇りあらば、名乗りなさい!」
     氷女の瞳が眇められる。静けさに響く、鎖の硬質な音。
    「誇りあるからこそ、望まぬ客に名乗る名などないわ。名乗らせたくば」
     氷雨の御髪翻し、氷女は縮地の如く華乃に肉薄する。
     息を継ぐ間もない。瞬く間すら、与えられぬ。
    「わたくしを地に伏してから命じて御覧なさい!」
     刹那、視界を眩い白が埋め尽くす。それは残酷なほどの氷晶の輝きによるものだ。
     誰もが直撃を免れなかったと思ったが、
    「……揺籃」
     盾となったのは烏芥のビハインドだった。大きな衝撃を受け凍りゆく揺籃に、烏芥はすかさず指先の霊力を手繰る。一気に注ぎ込むと、傷を苛む氷が音を立てて砕けた。
     それでも全てを溶かし切るまでには至らない。回復手段を多めに用意していた灼滅者達は、手分けして誰も凍えさせないよう力を尽くす。
     誰もが懸念していたように、氷女の操る零下の術は重なり長引くほど厄介なもの。備えをしていたとはいえ、油断は禁物だと濃紺の空の下で思い知る。
     雪に囲まれた集落。春は、遠い。
    「……はあ、唯でさえ寒いのに更に寒くされちゃ堪らないっすね」
     璃音が嘆息交じりで構えた刀身に映るのは、揺らめく炎。
    「あんたを溶かせば少しは暖かくなります?」
     淡々と告げるその言葉は問いですらなかった。一足飛びで斬り上げれば氷女に再び焔が踊る。天音と璃音、期せずして揃った似た名前の炎血を持つ者達。
     二者が用いた炎は篝火のように、白い静寂の世界に色と音を齎していく。
    「援護します。着実にいきましょう」
     手で髪を払えば銀世界に金糸が躍る。魔力を宿した霧を展開するのはステラだ。体力を回復させると同時に戦うための力をも付与され、カイは迷いなく刀を振るう。
    「道がないというのなら、斬り拓くまでだ!」
     踏み出せば雪片が散る。
     氷女が火に気を取られた僅かな隙をついて、カイは彼女の死角に回り込む。纏う振袖ごと、氷ごと、力づくで斬り払う。
     幾筋にも刻まれた痕は、吹雪をも思わせる。

    ●粗目雪
     己の炎が相手を溶かすか、それとも相手の氷が己の炎を消してしまうか。どうなるかは計り知れない。
    「ま、遠慮なくいかせてもらいますよ。じゃないと氷漬けにされそうだし」
     ヘッドホンを外しているため夜風が耳朶をくすぐる。璃音がひらり掌翳せば渡り鴉の影業が真直ぐに氷女に向かい羽ばたき、鋭く穿つ。
     敵の行動を注視していた璃音は仲間達に声をかければ、同じく広く戦局を見渡していたステラが首肯した。ステラが繰り出したのは赤き霊光の逆十字、白一色の氷女を大きく引き裂けば精神すら揺らがせた様子が見て取れた。
     徐々に、戦局は灼滅者達へと傾いてゆく。
     回復量と浄化の力を脅威とされた夢美へ氷霧が襲う。だが、寸でのところで庇ったのは、天音のライドキャリバー・ハンマークラヴィアだ。各々のサーヴァントが壁役を担ってくれた事もあり、護りは万全だ。
     どもー! と礼を告げる夢美に頷いて、天音は更に炎の奔流を加速させる。龍を模する両腕の縛霊手から吹き上がる火はあたかも龍の咆哮、燃える障壁は盾となり氷結の呪縛から仲間を守る。
    「合わせて行くですよ、ロビンさん!」
     微かな頷きだけで全てが繋がる。小鳥が刀身に乗せる破邪の白光は雪よりも白く戦場を翔けた。続いたロビンが霊力を籠め叩きつければ、氷の少女が眉根を寄せる。
     間髪入れずに夢美が影で敵を絡め取った。
    「一先ず当てに行きますよ!」
     捕縛して動きを止められれば御の字、回復行動で攻撃の手を緩めさせれれば十分だ。堅実な一手が重なり結実すると知っているから、彼女と回復を分担した烏芥は凍てる体を包めるよう優しくもあたたかい風を呼んだ。
     鳥肌が立つほど血が騒ぐ。
     攻撃手に専念する者としてという理由だけではない。厚い癒しに支えられる時に限らず、戦闘中の傷は厭わない性質だ。凛と毅然と、華乃は氷女を紅の瞳に捉える。
    「凌げるのなら凌いでみてくださいまし!」
     巨大な刃を振り抜けば疾駆する影。あたかも巨大な水牛が突進するかの如く影は氷女を呑みこんだ。たまらず呻きを漏らした敵を見過ごさず、妖刀にデモノイド寄生体を這わせたカイが馳せる。
     一閃。潮招と名を冠する蟹のようにカイの右腕は巨大な一振りの刀となる。揮った軌跡は数多の残痕を成した。
    「最近の女子学生、なめんじゃないわよ」
     雪紋の着物を抱き、それでも尚立ち続ける氷女に天音が叫ぶ。
    「あンたが古の畏れなら、あたし達は最新型の灼滅者だッ!!」
     一気に懐に入り込んだ天音の周囲で焔が咲く。身を蝕む氷など気にしない。気にならない。今思うのは、想いの限り全力で攻撃を食らわせる事だけ――!
    「!!」
     冬の夜の花火、傍から見ればそう思えたかもしれない。
     繰り出される無数の連打、霊光を何度も何度も何度も打ち付ける。顔も身体も構うものかという勢いで、只管に拳が突き出される。
     鳩尾に入れた一撃が、止めとなった。
     スローモーションのように身をしならせ、氷の少女は倒れ伏す。
    「    」
     誰かの脳裏で思考が弾ける。
     彼女は今、名乗ったのだ。
     ――聞こえたのは、傍に居た華乃だけ。
     氷女の氷雨の髪がぱきりと折れる音がする。結晶が罅割れる。雪白の肌は粉雪そのものとなり霧散する。氷は雪に還ってゆく。
     闇夜は、本来の静けさを取り戻す。

    ●冬篳篥
     雪は音を吸収するというが、苛烈な戦闘の後だからか殊更静けさが広がるよう。
     華乃の伏せた睫毛が震える。戦った相手に敬意を示し、黙祷を捧げる。
     烏芥も同様に、揺籃と共に祈る。今宵の雪は穢れなき純白、自らも雪と並ぶほどの肌の色を持つが故に、存在ごと同化してしまいそうになる。
    「……貴方の氷、キレイでした。それだけは……光栄に」
     安らかに、氷の少女へ冥福を。
     今や業は感じられぬ屋敷を見遣り、カイは氷纏う娘を思い独白する。
    「スサノオに生み出されたが故に灼滅せねばならんが……彼女からしてみれば、俺たちの方こそ不逞の輩なのだろうな」
     感傷に似た何かがカイの胸裏を軋ませる。だが横たわる沈黙は、決して重苦しいものではなかった。ひっそりと淑やかで清冽なもの。
     誰ともなしに屋敷や庭を見て回ろうと提案すると、各々が足を進め始める。スサノオに関する手がかりがあればと考えたためだ。
    「雪が解けて再び凍って。じゃりじゃりの氷が踏まれきってかつちょっと溶けた翌日、平らになって再度凍った時が本当の地獄なんですよねー……」
     若干遠い目をして夢美が呟く。東北出身者ゆえの哀愁すら感じられたが、滑り止めスパイクのついた運動靴を履いている彼女の足取りは軽い。この近隣は気温が低いためか、雪はしっとりとしながらもさらさらとした質感だ。
     踏みしめるたび、しっかりと雪が受け止めてくれる感覚がある。
     不思議と灯りが燈る屋敷の中へと、向かう。
    「氷女の鎖がどの辺りに繋がっていたのか分かれば良かったのですけれど……」
     華乃が溜息を吐くも、見当をつける事も出来なかった。痕跡も残っておらず、せめて氷女の一族について何か分からないかと目を凝らす。天音も氷女に縁がありそうなものやサイキックパワーを秘めた物品等がないか、書物や調度品、装飾品を見て回る。
    「屋内に入ろうとすると氷女さんが怒ってしまうのは……中に何か見られたくない物があるからなのかしら……?」
     ふと沸いた疑問にステラは首を傾げる。打ち捨てられた屋敷と聞いてはいたが、品のある佇まいは大事に扱われていたとすぐに想像がついた。天音が触れた姿見も書物も、綻びや罅のひとつもない。
    (「大切だったから、他人に入って欲しくなかったのかしら?」)
     真相はもはや闇の中、もとい雪の中なのかもしれない。
    「彼女の基たる伝承が、この屋敷とどう関わっているのかは解らぬが、せめて『彼女』が護ろうとしたものを、俺たちが代わって護る術を模索したいものだ」
     カイの言葉に頷いたステラが庭に視線を移すと、磨かれた縁側の向こうに広がる白い中庭。
     藍色の夜空。黒い樹の影。今も舞い落ちる雪の、白。
    「古の畏れの復活……一体何がしたいんでしょうね」
     屋敷の外回りを探索していた璃音が、予想通りの結果に零した息もまた真白。足跡が残っていたら楽だったが、生憎影も形もない。
     両手を吐息で暖め空を仰げば、ふわりと踊る綿雪。
    「……はあ、本当にさむ」
    「あの、庭のほうに来てもらえませんか?」
     小鳥の声に我に返り、璃音は仲間が集まる中庭に急いだ。
    「揺籠と探していて、見つけたんです」
     烏芥が示したのは梅の樹だ。
     ほとんどが身を固めたように枝を伸ばす中、一枝の先には僅かに色づく梅の蕾。
     雪に隠れていた春の息吹に自然と皆の表情が綻ぶ。
     閉ざされた集落と屋敷、生命の色なき雪白にも確かに彩はあるのだと思わせるようで、戦いの後でも元気を出して欲しいと願った烏芥の眦も緩む。

     冬来たりなば春遠からじ。
     春はもうすぐ、きっと。

    作者:中川沙智 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年3月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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