先日、鹿児島で潜入調査が行なわれた事は知ってるかな?
その調査によって、刺青を彫る事で一般人を強化一般人にするダークネスの存在が明らかになった。このままでは、何の罪もない一般人が、刺青持ちの強化一般人にされてしまう。これは放っておけない。
そこで、敵に察知されないギリギリの戦力で、一気に拠点を潰して、そのダークネスを灼滅する作戦を決行する事になった。
危険な任務になると思うけど、キミ達の力が必要なんだ。どうか、協力して欲しい。
今から、現時点で分かっている情報を伝えるから、よーく聞いてね。
敵の拠点は、鹿児島県の山中、人里離れた場所にある和風のお屋敷で、土蔵や、いくつかの建物がある。
土蔵には一般人が捕らえられている。彼らは、福岡から運ばれてきているらしい。
敵戦力は百体以上いると思う。でも、詳しい事はよく分からない。
今回の作戦は、多くのチームが協力して行なう事になる。自分達が全体の作戦の中で、どのような役割を果たすのかといった事を相談して、行動を決定して欲しい。
今回の作戦は、敵のバベルの鎖をかいくぐれる規模になってはいるけど、作戦開始後に敵が通信機とかで援軍を呼ぶ可能性は高いと思う。拠点は人里離れた場所にあるから、援軍が来るまでには時間がかかるだろうけど、無制限に時間があるわけじゃないから、作戦は出来るだけ速やかに行なった方が良い。
敵の強化一般人は刺青を施されていて、まるで昔の軍隊みたいに規律をもって作戦にあたってくる。戦力はそれほど高くないけど、統一された指揮の下で連携して攻撃してくるから、かなりの強敵になるかもしれない。
分かっている情報は、以上となる。
……うん。情報は、これしかないんだ。ほとんどブラックボックスなんだから、この作戦を成功させるは厳しいかもしれない。それでも僕は、キミ達を送り出さなきゃならない。何しろ、今が絶好の機会だからね。
規模の大きな作戦だから、仮にキミ達がベストを尽くしたとしても、抗いがたい戦況の大きな流れによって、危機的状況に陥る事もあると思う。
そんな時、キミ達の死活を分かつのは、団結力だ。
どんな時でも、仲間達と協力し合って戦う気持ちは忘れないで欲しい。
その気持ちさえあれば、きっと、良い結果になると思う。
少なくとも、僕はそう信じているよ。
それじゃ、頑張ってね!!!
参加者 | |
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ポー・アリスランド(熊色の脳細胞・d00524) |
東海・一都(芒に月・d01565) |
橘・蒼朱(アンバランス・d02079) |
逆霧・夜兎(深闇・d02876) |
空井・玉(野良猫・d03686) |
禰宜・剣(銀雷閃・d09551) |
天木・桜太郎(春よ来い・d10960) |
渋谷・チカ(ギャル・d15375) |
●突入
屋敷の駐車場前。
灼滅者達は、茂みに身を潜めて、駐車場の様子がうかがっていた。そこには、トラックやワゴン車、そしてジープなどがずらりと並んでいる。
「ようは敵の足と補給と何より増援を潰すという事だな。上等だ。すべからく殲滅してやる」
禰宜・剣(銀雷閃・d09551)が、敵の兵士に目を向けながら言った。
駐車場の入り口には、古い軍服姿の見張りが八名いた。四名二組で駐車場の門の左右に立ち、ライフル銃を肩に提げ、出入りする車のチェックなどをテキパキとこなしている。皆チンピラ風の外見で目つきは悪いが、規律正しく作業する様子は、兵隊そのものであった。
「あれが指揮官だね」
前髪を弄りながら、空井・玉(野良猫・d03686)が指さした。眼帯をした背の高い男が、部隊をくまなく見渡しながら、時折兵士達に指示を与えている。
「こういうのを日本ではカチコミ、と言うのかね、君」
ポー・アリスランド(熊色の脳細胞・d00524)が玉の脇に座って言った。突撃の合図を、静かに待っている。
「一緒に戦いに行くのはこれが初めてだね。頼もしい相棒が居てくれてチカ嬉しいよ。頑張ろう」
渋谷・チカ(ギャル・d15375)が、ライドキャリバーのスミスに語りかけた。
携帯から耳を離した天木・桜太郎(春よ来い・d10960)が、皆を振り返り、ゴーサインを出した。
「行くぜ! 突撃だ!」
「行こうか、相棒」
橘・蒼朱(アンバランス・d02079)がスレイヤーカードを解放。ビハインドの『ノウン』と一緒に茂みから飛び出した。
灼滅者達は、入り口の門へ向けて、突撃した。
駐車場制圧班は二チーム。このチームは駐車場の入り口側を、もう一方のチームは、駐車場の奥に見える屋敷側を手分けして制圧する手はずになっている。
「敵襲じゃああああ!」
灼滅者達を発見した兵士達が服がライフル銃を発砲。サイキック攻撃であるその弾丸を浴びつつも、灼滅者達は駐車場入り口の門まで一気に駆け込んだ。
「オレらはオレらの仕事をしようか」
先頭を走る逆霧・夜兎(深闇・d02876)が弾を受けながらも怯まず突撃。ナノナノ『ユキ』がその傷をふわふわハートで回復する。
「行きます!」
東海・一都(芒に月・d01565)が、走りながら縛霊手を展開。除霊結界が、軍服姿の兵士――強化一般人達を痺れさせた。この間に、もう一方のチームは屋敷側へと行った。屋敷側にも一小隊が警備に当たっており、向こうでも戦闘が始まった。
「総員、気をつけ―いッ!」
指揮官が叫ぶと、除霊結界で怯んでいた兵士達が、シャキッと背を伸ばした。
「指揮官を狙う! いっちょ、派手に行こうぜ!」
桜太郎が、指揮官めがけて手の平をかざし、激しい炎の奔流を指揮官とその両脇の兵士達に向けて放った。
炎に包まれる指揮官達。
戦いの火ぶたが、今ここに、切って落とされた。
●制圧
「撃て撃てーいッ!」
門の右側にいた四名の兵士がクラッシャーとして、左側にいた四名の兵士と指揮官がジャマーとして隊列を組み、灼滅者達に発砲。蒼朱とノウンがそれをガードしながら、敵兵達の隊列をすり抜け、指揮官の懐まで一直線に飛び込んだ。
「届いた! 一気にいくよっ」
ノウンの霊撃が指揮官を袈裟斬りにする。さらに、ノウンを盾に死角から攻める蒼朱。
指揮官は、不意に飛び出した蒼朱の影業にアキレス腱を切り刻まれた。
「ぎゃあああああっ」
尻餅をついて倒れる指揮官。
「燃えろ、オラァ!」
そこに飛びかかる桜太郎。拳に溜めた炎を、指揮官めがけて振り下ろす。
指揮官は転がって回避を試みようとしたが、間に合わず。燃える拳が腹に食い込み、指揮官は燃え上がった。
(「この作戦は必ず成功させます」)
一都の右腕が異形化。火だるまになった指揮官目がけて特大のパンチを叩きつけた。
「グアアアッ」
「佐川曹長ッ!」
指揮官の名を叫びつつ、両脇の兵士達が癒やしの風を展開。指揮官の炎を吹き飛ばす。
「ったく、大人しくしてろよ」
夜兎の影が触手のように伸び、指揮官を持ち上げ、空中で縛り上げた。
玉のライドキャリバー『クオリア』が、指揮官めがけて機銃掃射。指揮官は絶叫しながらも、腰に下げた日本刀を抜刀。
「喰らいやがれえええええっ」
ブンと振って生み出した衝撃波を、玉にぶつけようとした。が、そこにクオリアが割って入る。衝撃波に切り刻まれたクオリアの陰から飛び出し、振りかぶった無敵斬艦刀を一閃。指揮官は袈裟斬りにされ、吹っ飛んだ。
「どんどんいくよー!」
チカが指揮官を指さすと、周囲の空気が一変。急速に熱が奪われ、指揮官とその両脇の兵士の肉体がみるみるうちに凍っていった。そこへ突撃する、ギャルっぽくデコレーションされたライドキャリバーのスミス。凍り付いた指揮官をはね飛ばす。
「おおおおっ!」
剣の体からどす黒い殺気が流出。指揮官と兵士達を飲み込んだ。圧倒的な殺意によって敵の自律神経を破壊し、ショック状態へと陥らせる。
「さて、トドメだよ、君!」
ポーがパイプマテリアルロッドを、悶絶する指揮官に振り下ろした。
「ギャァアアアアッ!」
打撃と共に注入される魔力が指揮官の胸で爆発。
指揮官は灼滅された。
「さ、佐川曹長が!」
「ひ、引け、引けー!」
「うわあああああっ」
残された兵士達が、我先にと屋敷側へ逃げていく。
「追うか!?」
「待って! この場所の制圧が優先だよ!」
桜太郎の声に、玉が答えた。
駐車場の入り口側は、灼滅者達の電撃的な突入攻撃によって、あっという間に制圧完了した。
●援軍
無敵斬艦刀をブンブン振り回しながら、ずらりと並んだジープやトラックのタイヤを次々と破壊していく玉。他の七人も、サイキックを効率的に使い、車両のタイヤを狙って素早くパンクさせた。
「さて、屋敷側の首尾はどうだろうか、君」
「向こうも制圧完了したようだね」
ポーに玉が答えた。屋敷側をみると、車を並べてバリケードを作っているようだ。援軍が一気に屋敷になだれ込まないようここで食い止めるためには、重要な役割を果たすだろう。
「援軍だ!」
桜太郎が叫んだ。見れば、土煙を上げながら、駐車場めがけて猛スピードで突っ込んでくるワゴン車があった。
「止めるぞ!」
桜太郎がワゴン車に向かってダッシュ。運転席めがけて影業を伸ばした。
フロントガラスが割れ、運転席で兵士がもがいた。一都、蒼朱、チカの三人が展開した除霊結界を踏んだワゴン車が、タイヤをパンクさせながらスリップ。
コントロールを失ったワゴン車は、爆走しながら駐車場の門をくぐった。ワゴン車のドアが開き、中から兵士達が飛び降り、地に転がった。
ワゴン車は屋敷側のチームが設置したバリケードまで爆走。向こうの灼滅者が車両を投げ、ワゴン車と衝突させるのが見えた。車両が爆発し、大きな炎が立ち昇る。
「な、何が起こってんだよ」
「増援だよ、さっさとバリケード作りな!」
屋敷側の灼滅者たちの声が、駐車場に響いた。
夜兎は、屋敷側から増援が来るのを目にした。だが、こちらにもワゴン車から降りてきた増援が居る。夜兎は駐車場の門を振り返り、戦闘態勢を取った。
「いったたた~っ」
駐車場の門前で、お尻をすりすりと撫でながら立ち上がるのは、セクシーな改造軍服を着た、ビーグル犬耳の淫魔だ。
「少佐!」
「大丈夫ですか!」
その周りを、ヤクザ風の兵士七名が取り囲む。
「ぜんぜん大丈夫じゃないワン! さっさとコイツらを片付けて、ここの車をぜーんぶ取り戻すワンよ!」
「ハッ」
少佐と呼ばれた淫魔の号令で、兵士達が隊列を組んだ。
「あいにくだが、ここの車のタイヤは全て破壊した! 無駄足だったな!」
「な、なにおぉ~!」
剣の言葉に、顔を真っ赤にしてプルプルと震える淫魔。
「ただでは済まされないワン! 総員、突撃~っ!」
「オオオオオオッ!」
灼滅者達と増援部隊が、真っ正面からぶつかり合った。
●激突
「それそれ、そぉれ~♪」
淫魔が鮮やかなステップを踏み、前衛陣の間を踊るようにくぐり抜けた。そのたびに、前衛陣は、腹に肘鉄を食らい、ブーツのカカトでスネを蹴られ、肩の上に倒立されたかと思えば、股の間をくぐられながら背中に蹴りを入れられた。
「お見事ですね」
一都が淫魔に向かって日本刀を抜いた。
(「あの女性がここに刺青の人を送り込んでいたけど。こんなことは間違ってるから。絶対に阻止してみせましょう。それが私の愛の形。灼滅された貴方への手向け」)
中洲での出来事を思い出しつつ、一都が日本刀を振る。
「あぶねぇ、少佐!」
代わりに斬られたのは、ヤクザ風の兵士。
「少佐には、指一本触れさせねえ!」
「その心意気、いつまで続くかしら?」
剣の体からどす黒い殺気が流出。兵士達の心を貫いた。
「ヒィィィッ!」
胸を押さえて苦悶する兵士達。
「今だ! まとめて始末するぞ!」
「チカも!」
蒼朱とチカは縛霊手に内蔵した祭壇を兵士達に向けて展開。霊的因子を強制的に停止させる結界が、兵士達の動きを縛った。
「燃えろ!」
桜太郎の両手から放たれた炎の奔流が、兵士達を包み込み、士気を打ち砕いた。
「ギャァアアアッ! アツッ! アツイイイッ」
炎の中で兵士達の陰が揺らめく。その炎の中に玉が飛び込んだ。
鉄塊めいた横に構えた無敵斬艦刀を振りかぶり、無数の斬撃で兵士達をなぎ倒していく。しかし――。
「みんな、がんばれワンワン♪ たたかえワン♪」
淫魔の声が、兵士達を活気づけ、傷を癒やした。
淫魔率いる援軍との戦いは熾烈を極めた。淫魔の戦闘力は非常に高く、配下の兵士達の統率力も取れている。淫魔の指揮の下、灼滅者達は弱っている所への集中攻撃を何度も食らい、かなりの苦戦を強いられた。
ダメージが積み重なり、回復が間に合わない。このままでは劣勢になると誰もが思った、その時。
背中から、優しい風が吹いてきた。
灼滅者達の傷を癒やし、活力を与えてくれる。
「皆様、微力ながらご助力いたします」
振り返れば、転がったバスの上から、屋敷側チームの灼滅者が清めの風を送っていた。さらに、もう一人の灼滅者が、構えた槍から射出された冷気を打ち込み、一人の兵士に氷柱を突き立てた。
「こちらにも援軍が届いたようだよ、君」
ポーがニヤリと笑った。
●勝利
屋敷側チームの援護を得て八分後。形勢は灼滅者達に傾いていた。
兵士達を次々と撃破し、残るは淫魔と兵士一人のみ。
「喰らうがいい、君」
ポーの異形化した右腕が、兵士にどでかいストレートを喰らわす。氷漬けになった兵士は、そのトドメの一撃で粉々に砕け散った。
「む~、よくも大事な子犬ちゃん達を~。喰らえっ!」
淫魔は腰に下げた日本刀を構えると、鋭い踏み込みと共に玉に襲いかかった。
そこに割って入る夜兎。
「悪いけど、行き止まりだ」
クロスした両腕で刃を受け止める。
「これで終わりだ」
両腕をバッと開き、刀をはね飛ばしながら、淫魔の懐に一歩踏み込む。
夜兎の拳が無数の残像と共に淫魔のボディーに炸裂。
「きゃんっ!」
吹っ飛んだ淫魔に、チカのリングスラッシャーが追撃。
「おっと」
身を翻してかろうじて避ける淫魔。そこに、ライドキャリバーのスミスが突撃。淫魔は体をはね飛ばされ、宙を舞った。
「喰らえ!」
蒼朱、玉、桜太郎の影業が、三方から宙に伸び、淫魔を縛り、喰らう。
「うわああああっ!」
真っ黒い影の中で、淫魔が絶叫した。
一都の右腕が異形化する。剣とポーの右腕も同様に異形化した。
「トドメです!」
三人の鬼神変が、三方から同時に淫魔を叩き潰した。
淫魔は、ぐしゃ、と音を立てると、塵となって風にかき消された。
「さて、屋敷の首尾はどうだろうか、君」
駐車場での戦闘が一段落ついて、屋敷を振り返るポー。結果はまだ分からない。
「またいつ増援が来るか分かりません。今度は二班に分かれて、警戒を続けましょう」
一都が提案する。
「チカは箒で空を飛んで、上から見張るね!」
チカが箒にまたがって空に飛んだ。
(「しかし、古い軍隊のイメージだったけど、もしかして、彫師とやらは相当昔から生きている古いダークネスなのかもしれないわ」)
剣が、戦った兵士達を振り返りながら想った。
「高級車が無くてよかったよー」
バリケードとして積み上げられた車を振り返りながら、蒼朱は呟いた。
(「今回の戦いでは、どうだったろう」)
少しでも自分の有能さを示す事ができただろうか……玉は戦いを振り返りながら、前髪を弄った。
「作戦、成功すると良いな」
夜兎が屋敷を振り返る。
「大丈夫っす! きっと成功するっす! さあ、警戒を続けましょう!」
桜太郎が、駐車場の門に駆けだした。
作者:本山創助 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年3月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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