脅威の巨大化チョコレート~ポンカンですらなく~

    作者:佐和

     指導者の高齢化や入門者の激減により、誰にも使われなくなり放置された道場。
     鹿児島県某所にあるそこに、こそこそと行き来するコサック戦闘員の姿があった。
     道場の中へと向かう、その手に抱えられているのは、チョコレート。
     彼らは道場の中央にある箱へと、そのチョコを次々と入れていく。
    「ふふっ。順調に集められているようね」
     その様子を、やたら高く積み上げた座布団の上から眺めるのは、青リンゴ顔の怪人。
     だが、その青リンゴは、日本で見かけるものに比べて、明らかにいびつでごつごつしていた。
    「間抜けな灼滅者達は、間抜けなポンカンとやらにまんまと引っかかったようだし。
     間抜け同士で仲良くやってる間に、私達はロシア村へチョコを運び出させてもらうわ。
     ふふふ。これで大量の巨大化チョコを手に入れることができるわねぇ」
     ロシアリンゴのご当地怪人・アントーノフカは、山積みのチョコを眺めてほくそ笑む。
     その手には可愛くラッピングされたハート型のチョコが1つ、弄ばれていた。
    「さあ、バレンタインの売れ残りチョコを安く手に入れたら戻るわよ!
     お前達、最後まで気合いを入れて働きなさい!」
    「コサーック!」
     アントーノフカ怪人の声を受けて、コサック戦闘員20人が、がま口財布を掲げて揃って声を上げた。
     
    「……バレンタインの、チョコ強奪事件……囮、だった、みたい」
     ポンカン怪人から子供達のバレンタインチョコを守れた、その報告を受けた八鳩・秋羽(小学生エクスブレイン・dn0089)は、しゅんとした顔でそう切り出した。
     他のバレンタインチョコ強奪事件で目撃された、チョコを食べて巨大化するご当地怪人。
     その巨大化チョコこそが、ロシアン怪人達の狙いだったのだ。
     日本の怪人達が事件を起こしていたその間に、ロシアン怪人達は着々とチョコを集めていたという。
     強奪ではなく現金一括購入という辺り、騒ぎにならないようにしているのか、せせこましいのか。
     そんな収集方法はともかく、チョコは大量に集まってきていて、ロシア村に運び出されるのは時間の問題となっていて。
    「全部は、止められない……でも、まだ間に合うところ、ある……
     だから、急いで、向かってほしい」
     どこか落ち込んだ雰囲気を見せながらも、秋羽の麦チョコを食べる動作には全く淀みはなかった。
     秋羽が示した場所は、鹿児島県某所の誰も居ない道場。
     相手となるのは、アントーノフカ怪人とコサック戦闘員20人。
     だが、戦闘員の数が多く、また怪人に巨大化される恐れがあることを考えると、正面からまとめて一度に相手をするのは厳しい状況だ。だからこそ。
    「……作戦、3つ、考えてみた」
     まずは、コサック戦闘員がチョコを集めに外に出ている隙に、アントーノフカ怪人を倒す作戦。
     怪人が1人でいるところを見計らって踏み込み、先に倒してしまえば、残った戦闘員を何とかすることも可能だろう。
     しかし、怪人が巨大化チョコを持っているのを忘れてはならない。
     次に、コサック戦闘員を襲撃していく作戦。
     チョコを運ぶ戦闘員が減れば、奪われるチョコの数も減ることになる。
     戦闘員は、チョコ集めを2~3人ずつに別れて行っているらしい。
     それを個別に襲い、戦力を減らしていけば、大きな戦いにはならないだろう。
     ただ、敵に作戦が気付かれてしまえば、その時点で正面決戦となるリスクがある。
     そして、戦いを避け、怪人達の目的であるチョコだけを奪取する作戦。
     だが、道場に集められたチョコは、20人のコサック戦闘員が総出で運び出すほど大量だ。
     全てを奪取するというのは難しいが、半分くらいなら可能だろう。
     また、しっかり作戦を考えなければ、戦いを避けることはできない。
     それぞれの作戦に長短はある。
     他にも何か取れる手があるかもしれない。
    「どんな手段、でもいい。
     巨大化チョコ、いっぱい強奪、されないように、して」
     秋羽は、麦チョコをぎゅっと握り締めて、灼滅者達を見据える。
    「……でも、それよりも、ちゃんと無事に、戻ってきて、ね?」
     頷く灼滅者達に視線を下ろした秋羽の掌で、チョコがべちょりと溶けていた。


    参加者
    タージ・マハル(武蔵野の魔法使い・d00848)
    空等・雪花(朱色の一閃・d01624)
    野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)
    回道・暦(デイドリッパー・d08038)
    アリアーン・ジュナ(壊れ咲くは狂いたがりの紫水晶・d12111)
    星空・みくる(お掃除大好きわん子・d13728)
    御風・七海(夜啼き翡翠・d17870)
    レイッツァ・ウルヒリン(紫影の剱・d19883)

    ■リプレイ

    ●アントーノフ種のリンゴの愛称です
    「あの道場でしょうか」
     道場近くの生垣の影に身を潜めた星空・みくる(お掃除大好きわん子・d13728)は、葉と葉の間から様子を伺う。
     それなりに大きな平屋の建物は、正面になるであろう入り口も大きいが、その引き戸は小さく開いたり閉まったりを繰り返していて。
     その度にコサック戦闘員が数名ずつ、姿を見せると、こそこそと去っていく。
     隣から小さな呟きが聞こえて振り向くと、空等・雪花(朱色の一閃・d01624)が指を折っていた。
     道場を出て行ったコサック戦闘員の数を数えているらしい。
     再び道場へと視線を戻したみくるは、ふと、気になっていたそれを口にする。
    「食べると巨大化するチョコレート、ですか。
     チョコレートそのものは普通のチョコレートなのですよね?」
    「どんな味がするんだろ?」
     雪花も不思議そうに首を傾げた。
     そこに、上から降ってきたのは優しい声。
    「でも、チョコとかコーヒーとかそういうの売ってる身として、こういう事件は看過できませんね」
     小柄な2人の上から道場の様子を伺っていた回道・暦(デイドリッパー・d08038)は、見上げてきた2対の視線にふわりと微笑んで見せる。
     その笑顔に、雪花は少しはにかむように笑って、
    「怪人達の手に渡ったら大変だから、がんばらないとだね」
    「そうですね」
     みくると共に頷きあった。
     それを後ろから眺めていた御風・七海(夜啼き翡翠・d17870)も、小さな2人の様子に頷いて。
    (「チョコ、栄養価が高いことは知ってたけど、果たして巨大化出来る程なのかな……?」)
     そう思いながら、生垣の間にわずかに見える道場へと視線を流した。
     そのさらに後方では、野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)とタージ・マハル(武蔵野の魔法使い・d00848)がなにやら準備を進めている。
    「どうだ? コサック戦闘員だぜ!」
     それっぽい服に着替えて、えっへんと胸を張るアキラ。
     タージも同じ服を着て、さらに帽子を被って怪しく顔を隠す。
     コサック戦闘員に化けて怪人の気を惹き、その間に奇襲する作戦だ。
    「2人はあの正面から行くんだよね?」
     話しかけながら、アリアーン・ジュナ(壊れ咲くは狂いたがりの紫水晶・d12111)は道場の外観を観察する。
     忍び込めそうな裏口の当たりをつけていると、レイッツァ・ウルヒリン(紫影の剱・d19883)は道場の屋根近くを眺めていて。
    「うーん。格子があるから無理かぁ」
     どうやら、天井近くにある小さな窓のようなところから侵入できないかと考えていたらしい。
     そもそも人が通るように作られていないから、難しいかな、とアリアーンは諦めさせるようにレイッツァの肩を叩いた。
     その様子にタージはくすりと笑って。
    「くれぐれも見つからないように気をつけてね」
     楽しそうに言うと、レイッツァが誤魔化すように苦笑する。
    「そろそろ大丈夫そうです」
     振り返った暦の言葉に、灼滅者達は、それじゃ、と頷き合って。
     黒猫の姿となった七海に続くように、それぞれの場所へと向かっていった。

    ●青というよりは黄色いリンゴです
     コサック戦闘員の後姿を見送ったアントーノフカ怪人は、ふぅ、と息を吐いた。
     他に誰もいなくなった道場の中、怪人と引き戸との間に積み上げられたチョコの箱を見やる。
     囮作戦も功を奏し、これだけの量のチョコを手に入れられれば大成功だろう。
     積み上げてふかふかにした座布団の上で怪人は満足そうににやりと笑う。
     その時、チョコの向こうの引き戸が勢い良く開かれた。
     そこに立つのはコサック戦闘員……らしき人影2つ。
    「あら、早かったわね」
    「コサーック!」
     うち1人はずんずんと道場に入り、手に持ったチョコを、積み上げられたそれへ混ぜようとする。
    「ちょっと、収穫が少なすぎるわよ。手を抜いたんじゃないでしょうね?」
    「コサーック!」
    「それ置いたらもう1回行ってきなさい」
    「コサーック!」
    「って、そっちは何も持って来てないじゃない」
    「サンボ!」
    「……は? お前達、何か変よ?」
    「コサーック!」
     挙動のおかしい戦闘員に、さすがに怪人が疑うような視線を向ける。
     よく見れば服装も、遠目には似ている、という程度。
     細かい部分で次々と違和感が湧き上がる。
     そんな中、チョコを置いた戦闘員……アキラは、疑いとはいえ意識を引き付けられたことにこっそり笑みを浮かべた。
     もう1人の戦闘員、タージも、疑いを誤魔化しつつ、さらに注意を惹かんと話しかける。
    「いや~。やっぱり青リンゴは最高ですよね。柑橘系など、足元にも及びませんよ~」
    「何よ今更、分かりきったことを……」
     タージのおだてに、満更でもなく怪人は笑って。
     ふと、その笑みを、にやりとしたものに変えた。
    「なるほど。そういうことね!」
    「……あ」
     突然振り向いた怪人と、裏口からこっそり侵入していたレイッツァの目がばっちりと合う。
     同時に、飛来する青リンゴ。
    「バレちゃった」
    「それでも、行きます」
     驚く雪花の傍らにナノナノのノノを残し、みくるはモップを手に怪人へと駆け出した。
     アリアーンも隠れていた柱の影から姿を現し、サウンドシャッターを展開しながら、
    「チョコの為に。azurite!」
     右手の人差指と親指で挟み持ったスレイヤーカードを左胸に当て、祈るようにしながら叫ぶと、解放された槍がその手に現れる。
     よく考えてみれば、仮とはいえ拠点にしている道場のことを怪人達が知らないわけがない。
     自分達が出入りに使っている正面以外に人が出入りできる裏口がある、と分かっている状況で、変装した怪しい輩が堂々と正面から入ってくるのである。
     これが陽動だと気付くのも当然だろう。
     雪花の放った温かな光に包まれたレイッツァは、気を取り直して、縛霊手を振りかぶりつつ怪人へと向かった。
     策を見破った怪人は、意気揚々と座布団から降り立って。
     そこに黒猫が飛び掛った。
     相手は人間、と思っていた怪人は、予想より小さな動きに虚を突かれ。
     その戸惑いのうちに、七海は猫変身を解き、魔導書の禁呪を解き放つと、霊犬のカミも傍らに現れて斬撃を繰り出す。
     さらに正面側からライドキャリバーのシャリオと共に突撃した暦が、非物質化させた剣を振るった。
     予想外の攻撃に慌てる怪人へと、チャンスとばかりにタージはその死角へと走り込み、槍で鋭く足を切り裂き。
     アキラも、霊犬のツガルさんを送り出しつつ、自身も冷気のつららを生み出し、放つ。
     全員が揃い、それぞれの武器を構える灼滅者達を見回して。
    「……あくまで邪魔をする、というわけね」
     怪人は青リンゴとハート型のチョコを手に、叫んだ。
    「いいわ! この私、アントーノフカが相手をしてあげてよ!」

    ●耐寒性が強い、ロシア伝統のリンゴです
     不恰好ながらもダークネスらしく強烈な一撃となる青リンゴを受けつつも、手数で攻める灼滅者達。
     その戦いの最中、怪人から一度距離を取ったレイッツァは、改めて道場の中のチョコを見上げた。
    「しっかし、よくもまぁこんな大量のチョコ集めたモノだよね」
    「本当に、見事な量のチョコレートですね……」
     怪人をチョコに近づけさせないようにと立ちはだかっていたみくるも、その言葉にちらりと振り返る。
    「この根性だけは素直に認めるよ……内容はともかく」
     半ば呆れながら、レイッツァはサイキックを凝縮した毒薬を打ち込むべく再び怪人へと向かう。
     アリアーンもチョコの山を一瞥して、少しだけ首を傾げた。
    「……そんなにチョコが欲しかったのか……?」
     赤いオーラの逆十字を出現させ、怪人を引き裂きながら、ふと思い出す。
    「ロシアのバレンタインデーは恋人同士で過ごすのが一般的だから、あっ……」
    「ちょっとそこ! 勝手に何を言ってるのかしら!?」
     何かを察して申し訳なさそうな表情をするアリアーンをびしっと指さして、怪人は思わず叫んでいた。
     暦と雪花も、あたふたと顔を見合わせて。
    「ええと……お仕事が恋人なんですよね?」
    「戦闘員たちといれば寂しくないよ」
    「だから勝手なことをぉ!!」
     吠える怪人に、アキラが槍を捻りつつ突き出すが、怒りながらも怪人はそれを華麗に避ける。
     そして避けた先へと、タージの魔法の矢が降り注いだ。
    「リンゴは嫌いじゃないよ、本当だよ」
     優しく囁くと、ならばと応えるように青リンゴが飛んできて。
     とっさに割り込んだツガルさんの背を見ながら、タージは少し悲しそうに続ける。
    「でも、リンゴは人にぶつけるものじゃないよ」
     そこに七海の影が木の葉となり怪人の足へと纏わりつき、動きが鈍ったところでカミの刃が閃いた。
     戦いは一進一退、拮抗して続いていく。
     ディフェンダーの怪人相手に、ディフェンダー多め、回復重視の防御的な布陣で挑んでいるのだから当然だろう。
     地味な削りあいだが、メディックの雪花とノノがいる灼滅者達と回復手段を持たない怪人。
     僅かながら怪人の方が先に苦しさを見せ、ちらりとチョコの山へと視線を走らせた。
    「このチョコレートはお渡ししません」
     その視界すらも遮るように、チョコの山を警戒するみくるが立ちはだかる。
     ならばと、手に持つハート型のチョコをちらりと見下ろせば、タージの放った冷気のつららがそれを打ち砕いて。
     縛霊手と共に体当たりする勢いで、レイッツァが突撃してきた。
     勢いに吹き飛ばされた怪人を、七海が魔導書を開いて追いかけ、撒き散らした炎がチョコを巻き込む勢いで襲い掛かる。
     無言ながら、どこか楽しげに嘲笑う七海を見て、怪人はぎりっと歯を噛んだ。
    「楽しいねえ! もっと僕と遊んでぇえ!!」
     そこに狂おしいアリアーンの笑い声が響き、その影が白薔薇を象ると怪人へと絡みつく。
     再び青リンゴを受けたツガルさんが消滅するも、暦の影が喰らいつくように怪人へと襲い掛かり、続けてシャリオが勢いよく突撃。
     みくるの魔法の矢とアキラのつららも、次々と放たれる。
     このまま灼滅できる、と誰もが確信し、尚一層の攻撃をと気を引き締めた、その時。
    「コサーック!」
     正面入り口の扉を開いて、6人のコサック戦闘員が飛び込んできた。
     サウンドシャッターのおかげで戦闘音に気付けなかった戦闘員だが、回収したチョコを持って普通に道場に帰ってきたのだ。
     外に音が聞こえなくても、道場の中の様子を目の当たりにすれば状況を理解することは容易い。
     増援に息を呑む灼滅者達へと、コサック戦闘員達は、怪人を助けるために襲い掛からんとする。
     だがしかし。
    「ここは私に任せなさい! お前達はチョコを運び出すのよ!」
     響いた指示に、戦闘員達は足を止め、チョコの山へと進路を変えて。
     そしてさらに、灼滅者達が慌てた隙に、怪人はポケットから星型のチョコを取り出し、齧り付いた。
    「しまった!」
     焦るタージの前で、チョコを食べた怪人はぐんぐんとその姿を巨大化させて。
     チョコの山から灼滅者達を追い払うように襲い掛かった。
     さすがに退くみくるだが、それを追うように、これまた巨大化した青リンゴが飛来する。
     間一髪、割り込んだ機体に青リンゴは直撃し、嫌な軋みの音と共にライドキャリバーは姿を消した。
    「シャリオ!」
     相棒の消滅に悲鳴のような声を上げながらも、暦は剣を携え怪人へと切りかかる。
     その間にも、次々と戻ってきたコサック戦闘員がチョコを担いでいく姿が見えて。
    「コサック戦闘員は後回し! 怪人を先にやっつけよう!」
     その様子を気にする仲間達へ、レイッツァは声を上げた。
     今この状況で、怪人と戦闘員、双方を相手にすることはできない。
     そして怪人は、巨大化されてもそれまでに与えたダメージは消えていない。
     だからこそ最後まで意識を合わせて向かっていこうと、気を奮い立たせる。
     雪花はそんな仲間達の背を押すように、回復の光を集めて。
     飛び上がったみくるのモップが鋭く振り抜かれ、怪人を切り裂く。
     アリアーンの逆十字が怪人を引き裂くも、巨大な青リンゴにその細身が吹き飛ばされる。
     勢いで外れたチョーカーの下から、鉤爪による大きく醜い三本のひっかき傷が見え、アリアーンはそっと手を添えそれを隠した。
    「ノノ、お願い」
     みくるの指示を受けたノノがふわふわとハートを飛ばし。
     暦は影を操り、怪人を覆い包んで動きを阻害して。
    「巨大化には合体で対抗するのがお約束だぜ!」
     そこに霊犬を伴ったアキラが飛び出した。
    「オレたちの熱いハートを見せてやる! 出でよ、桜島大根ロボ!」
    「何ですって!?」
     アキラが掲げた手の上へと視線を動かした怪人だが、そこには何も現れず。
     その間に、アキラの拳が、霊犬の刃が、怪人へと突き刺さる。
    「フェイント……ですって……!?」
    「いや、引っかかる方がどうなのかな?」
     思わずぽつりと呟くタージの横で、アキラは攻撃を終えた霊犬の頭を撫で、
    「ありがとな、カミ」
     消えた相棒の代わりを務めたカミは、どういたしまして、というようにきゅっと目をつぶってみせる。
     そしてカミの本来の主・七海は、無言のまま蜂のように鋭く宙へと飛び上がると、ドリルの如く高速回転させた杭を突き刺して。
    「ロシアンタイガー……様……」
     ねじ切られた怪人は、虚空へと手を伸ばした姿で、消えていった。

    ●見かけは悪いですが香り高いリンゴです
    「……やれやれ。ご当地怪人って良く分からないね……」
     戦いが終わり、静かになった道場で、アリアーンは怪人がいた場所を見下ろしてため息をつく。
     その隣で、暦が困ったような誤魔化すような笑みを浮かべていた。
    「チョコレートが付いてしまいました……」
     一番チョコに近い場所で戦っていたみくるは、執事服についた茶色をクリーニング。
    (「巨大化怪人と戦った人は何もないって言ってたけれど……実は少し背が伸びるとか、ないのかな……?」)
     七海は、床に転がっていたチョコを1つ、手に取ってぱくり。
    (「どことは言わないけれど……大きくなってくれたりしないかな……?」)
     自身を眺める七海を見て、アキラが不思議そうに首を傾げた。
    「でも、チョコは守れなかったね」
     残ってたら貰ったのに、と冗談めかして言うレイッツァに、タージも、そうだね、と微笑んで。
     でも少し残念そうに、チョコの山があった場所を眺める。
     怪人は灼滅したものの、戦いの最中に、集められていたチョコはほぼ全てが運び出されていた。
     それでも、わずかに残っていたチョコを見つめていた雪花は、
    「チョコのこと考えていたら、チョコが食べたくなってきちゃった」
     その明るい言葉に、誰からともなく賛成の声が挙がる。
     灼滅者達は、誰もいない道場を後にした。
     

    作者:佐和 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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