StarryHeavens~寿星と冬のダイヤモンド

    作者:志稲愛海

    「ね、今度さ。一緒に、冬の夜遊びしよーよ」
     そうへらりと言った飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)であったが。
    「……って!? なにその『何寝言言ってるんだコイツ』みたいな冷たい眼差しっ!?」
     綺月・紗矢(小学生シャドウハンター・dn0017)に、「は?」みたいな視線を無言で返されて、慌てて続ける。
    「冬は、空が澄んでてすごく星が綺麗な時期だからさ。武蔵坂からもそう遠くない、星がすごく良く見える場所があるから……星を観に行かない?」
    「星か。確かに、冬の寒さで夜空も澄んでいる気がするな」
     紗矢は遥河の言葉に、ようやくそう頷く。

    「今はさ、やっぱり冬の大三角形とか有名だけど。空には、もっと大きなダイヤモンドがあるんだよ?」
    「夜空のダイヤモンド?」
     見上げれば、まずは星座の王者オリオン座を見つけることができるだろう。そしてベテルギウス、シリウス、プロキオン、この3つの星が『冬の大三角形』であるが。
     もっと、ずっと広く空を眺めてみれば――そこには、冬空を飾る大きなダイヤモンドが。
    「プロキオン、シリウス、リゲル、そしてアルデバランに、カペラ、ポルックス……明るく煌くそんな星たちを順に繋げていったら、ダイヤモンドみたいな六角形になるんだ」
     これがいわゆる、冬の大六角形――『冬のダイヤモンド』。
     だが、冬の空に明るく輝く一等星は、これらだけではない。
     8個目の冬の一等星は……赤く輝く、縁起の良い幸運の星なのだという。
    「幸運の寿星『カノープス』を知ってる? 日本では南の地平線スレスレでしか見られないんだけどさ、今が一番見つけやすい時期なんだって。カノープスは全天でシリウスの次に明るい星でね、空の低い位置にあるから少し見つけ難い星なんだけど。だから一度見ると長生きができるともいわれてる、縁起の良い星なんだよ。今の時期は、21時頃がカノープスの南中時間みたい」
    「縁起の良い寿星か、それは見てみたいな」
    「ね、誰がカノープスを一番早く見つけるか、競争する?」
     そう悪戯っぽく笑む遥河に、こくりと紗矢は頷く。
    「そうだな。プリン10個の奢りをかけて勝負するのもいいな」
    「それ単純に紗矢っちの大好物だし!? てか10個って……」
    「少なかったか?」
     きょとんとそう言った腹ペコ幼女に驚愕しつつも。
     遥河はこう続ける。
    「冬の夜は空気が澄んでて星も綺麗だけど、寒いから防寒も忘れずにね。あったかいスープとか甘い物とか、軽食や飲み物を持ってってもいいかも」
     場所は、都会の喧騒から少し離れた小高い丘。
     やはり冬の夜は寒いので、少しでもあたたかくして臨みたい。
     大勢でわいわいカノープスを探す勝負をしてもいいし、大好きな人と煌く冬のダイヤモンドを眺めるのも良いし、一人で満天の冬星の世界に浸るも良し。場所的に、サーヴァントと一緒でも勿論OKだ。
     周囲に迷惑をかけない程度に、それぞれ、煌く冬の星座絵巻を楽しんで欲しい。
    「冬のダイヤモンド、すっごく綺麗なんだろーねー」
    「ああ。それに是非見つけたいな、カノープス」
     そう遥河と紗矢も、皆と共に微笑むのだった。

     そんな、ちょっとした冬のロマンティックな夜遊びを楽しむべく。
     貴方もお出かけませんか?


    ■リプレイ

    ●プリズムの夜
     冬空にキラキラ輝く無数の星たちを、次々と指で結んでみれば。
    「ほら、あれがおたまじゃくし座」
    「おぉ、ホントだ! 見える見える!」
     史は詳しいな~と、星の様に目を輝かせる朔之助が、ばかわいいから。
     尤もらしくついた大嘘は、史明の胸の中だけの秘密に。
     いや……そろそろ調子に乗るのをやめるべきだと、気付いてはいるのだけど。
    「まあね。もっと褒めてもいいよ」
    「も、もう褒めねぇよ!」
     これが、いつも通りの二人なのだから。
    「あったー! ほら花野花野っあれあれっあれくね?」
     一生懸命探しすぎて曇った眼鏡を拭き拭きする壬咲に。
     京介が指差すのは、見つけたカノープス。
     壬咲も温かい飲み物片手に、流れ星に願いを!
    (「次の恋は振られませんように、運命の王子様ですように!」)
     何気にお願い事、ふたつになっちゃいました。
     そしてそんな壬咲の背中に。
    (「花野楽しめてる? ならオッケっ」)
     京介は優しめに、カイロをお見舞い!
     忍の用意した甘いショコラ・ショーが、体をぽかぽか芯から温めて。
     このとの眼前に輝くのは、夜景と星々が混ざり合う宝石箱の様な景色。
     そして漸く顔を上げた忍は。
    「……あれ? もしかして、カノープス? わ、金平糖みたいでおいしそうっ!」
     あれ食べにいこうよ、このと殿っ! とはしゃいで。
     このとはそんな彼と、次は一緒にお星様を食べに行こうと、そう約束を。
     紗矢や遥河にも紅茶を振舞った後、同じブランケットにくるまる七葉に。
     どの星が好きか訊かれ、銀河が答えたのは――父に教わり、初めて見た星・シリウス。
    「あんな風に一番明るく輝くんだぞー、ってね」
     そして七葉が好きな星は、カストルとポルックス。
     双子星の様に……大切な人と一緒にいたいから。
     銀河はそんな七葉をぎゅっと抱き締め、頷く。いつも一緒、だよ、と。
    「古代に星座を見つけた人もそうだが、よく見ておるのう……」
    「その時代はきっと夜がもっと長かったから」
     芽衣は源一郎の傍で、昔の人達と同じ様に。輝くオリオンを見上げ、星を追う。
     そして源一郎が探すのは長寿の星。
    「儂らも、どちらが先に見つけるか勝負してみようか」
     勝ったら何が欲しい? と悪戯小僧っぽく笑む源一郎に。
    「もう、いただいていますから」
     芽衣はそう微笑み返す。
    「天体観測付き合ってくれてありがとう、寒い中ごめんよ」
    「美人さんに誘われて嫌な気になる奴は居ないぜ?」
     そう、千にいつも通りの軽口を返した後。
     折角だしと、カノープスを探してみる昴。
     そして――また、来ようか、と。
     不意に聞こえた言葉に、一度視線を向け、頷く。
    「そうだな。……そうするか」
     こうして誰かとのんびり星空を見上げる時間も、悪くはないから。

     一番明るいシリウスから順に星々をなぞっていく、時継の指を追えば。
     ユウの瞳に映るのは、夜空に輝くダイヤモンド。
     そしてその煌きの下、次に、幸運と長寿の星を探して。
    「見つけた。きっとあれだよ」
     水平線の傍で瞬く幸せの光を、ユウは時継と一緒に眺める。
    「うん……これなら暖かい……ね」
     ……少し、驚いたけれど。
     不意に握られた彼の手の温もりに、頷きながら。
     紅茶やお菓子を手に。箒で飛び廻る二人に降り注ぐのは、煌く星々と柔らかな粉雪。
     そしてユエは、赤く輝く星を見つけて。
    「あれ、でしょうか……?」
     振り向いた刹那、思わず魅入ってしまう。
    「綺麗な綺麗な布良星なのです……!」
     すぐ傍で煌く、星の輝きを纏った瑠璃色の瞳に。
     そして優しい微笑みにつられつつもそっと、心の中で炉亞に感謝を。
     こうやって、自然に笑顔を引き出してくれる事に。
     桃香が夢中で話すのは、星の神話。
     愛する姫をさらうため牡牛に化けた神様は浮気性だけれど。
     遊が見惚れているのは、星よりも輝いた瞳をした「オレの彼女」――桃香だけだから。
    「それにしても、夜はまだ冷えますね……」
    「寒いのなら、桃香専用毛布をご用意致しますよ」
     へら、と笑って彼女を抱き寄せ、子供の様に楽しむ。
    「あったかい、な……」
     星降る冬の、夜遊びデートを。
     夏の海の楽しさをシーゼルが教えてくれたから。
     今度はキースが、一番好きな、美しい冬の星の海へと。
     いや、それは半分口実で……煌く星空の下、すぐ傍に在るのは。
    「……いつかこの星の海を、お前と二人で散歩してみたい」
    「そんなの……言ってくれりゃあいつだって付き合ってやんのに」
     雪の日以外はな? なんて軽く冗談めく――流星に願うまでもない、大切な一番の宝物。
     何を思っていたかは思い出せないけれど。
     幼少の頃と同じ様に寝転がれば、そこには満天の星が。
     そんな白焔から零れる記憶の瞬きと、覚えていない昔の自分を照らし合わせて。
     鞠音は、夜が流れ込み溶けゆく色をした瞳を閉じた後。
    「――悪くない眺めだと思わないか、コレ」
     降り注ぐ星空を瞳に漂わせる今に、頷く。
     何故かかけられたコートを断る気にならず、そのまま彼の隣で。
     寒そうなその首にマフラーを巻いてあげて。
    「必要な事は「黄瀬川花月」は何をしたいか、だと思うよ」
     静かな星空を眺める舜は、心の内紡ぐ花月へそう言って。
    「……『かるな』が何をしたいか、か」
     花月は一分だけ、その肩を借りて瞳を閉じる。
     そして何時までも肩を貸してくれる彼へと――ぽつり紡ぐのは、あの言の葉。
     一緒に眺める星があまりも綺麗で……嘘が言えなかったから。
     今日はいつものジャージではなく、ニットワンピにふわふわマフラーを巻いて。
     スープを差し出した菜々をふいに包んだのは、後ろから抱き締めた式のコートと体温。 
    「きれいっすね。式君と見られてうれしいっす」
     そして、そっとほっぺに触れたキスの柔らかさを感じながら。
     式は、数多の星に願う。
    「綺麗だね。 菜々よりかは、劣るけど」
     この時間が永久に続くように――と。
    「やはり、冬の空は綺麗で素敵です」
     寒いのは少し困りますけれど、と。紅茶を里月に渡しつつ、焼き菓子をゆったりといただきながら。
     氷雨がまず探すのは、カノープス。
     里月も一緒に、幸運の星を探してみるも。
    「いやぁ、大勢で星空を眺めるのも楽しいね」
     ふと周囲を眺めてみれば、そこには星を探す人達の楽しそうな姿が。
     そして寿星を見つけた後、次になぞるのは。夜空に煌く、冬のダイヤモンド。
     いつもならばクリスだけしか見ないのだけれど。
    「あれがシリウス、わかる?その下、あれがカノープスだよ」
     あの星を君と見たかったんだ、そう笑む彼と星を見る桃夜は今、すごく幸せで。
     そしてカメラをセットするクリスを激写しまくった後。
    「クリスと一緒だから寒くないよ」
     サンドイッチとココア、同じストールの中の温もりに包まれながら星空観察を。
     一緒に長生きしようね――と。
     クシェルを抱っこし、くるり星座盤を廻して。
     ふふ、綺麗だね、と。隣に寝転がって星を眺めるレーナの声に、侠助も呟く。
    「本当に、綺麗だな」
     オリオン座、シリウス、プロキオン……そんな星の輝き纏う、彼女の横顔を見ながら。
     そして一緒にお茶を飲み、抱き寄せ寄り添い暖を取りつつも。
     流れ星へ馳せる願いは、二人同じ。
     これからもずっと一緒に――幸せでいられますように。
    「うーん、カノープスってどこにあるのでしょう?」
     火野さんはわかりますか? そうセレスティに訊かれて。
    「いや………あ」
     綾人が首を振ろうとした、刹那。
     その指先が指した空の一点には、一際明るく輝く幸せの星が。
     そしてセレスティに少し笑んで、望遠鏡を貸しながら。
    「……きっと、この先も良い事があるさ」
     綾人はその金の髪をそっと撫でて。一緒に、綺麗な景色を眺める。
     じわり染みる温かさは、甘いココアと、一緒に毛布に包まる相手の体温。
     幸せの星を見つけられたら、どの位寿命が延びるのかと。空と話しながら、灯倭は続ける。
     でも限られた時間だからこそ大切で……ずっと一緒に居たい、と。
    「あ、あの光ってる星……もしかして、カノープ……」
     そして見つけた幸せの光と、優しい彼の温もりや言葉にほっとして。
     ちょっとだけ……おやすみなさい。

     イコにとって冬の空はとびきり。貴くて美しい星・シリウスが耀くから。
     ――あの場所に届きたいの。
     でも見つけたのは……暖かなトウキョウに来て初めて逢えた、赤く瞬く幸せの星。
     そのシリウスから地球までが10年。
    (「でも、カノープスの光は三百年以上かけて地球にやっと届く」)
     そんな宇宙の広大さと時間の流れを感じながら。
     優歌も皆と一緒に、寿星を探して。
     温かいお茶の後、ブランケットに寝転がって。
    「りゅうこつ座がここで……あ、あそこでしょうか?」
     星空と星座盤を照らし合わせながら、嘉月は寿星を見つけ、呟く。
     これで長生きできるでしょうか、と。
     見上げる空をよぎるのは、人工衛星? それとも、孤独な流れ星?
     アリスは故郷のものとは違う星空と、それを無防備に見上げる人達を眺めながらも思う。
     常在戦場――気は常に張っておきたいと。
    「いやはや、よく見えますよ……」
     こうやって星を見上げるのは何時振りなのでしょうかねぇ、と。
     流希は星降る夜をゆっくりと歩き回る。
     夜空の下、どんな人間関係がみえるのか……と。
     七緒と遥河も、友達同士で夜遊びを。
     七緒が探すのはナビガトリア――北極星。
    「偶には真面目な僕もいいでしょ?」
     そんな彼の決意固めを訊いた遥河も、いつも通りへらり笑んでから。
     オレも皆の道標になるからね、と。友と一緒に、どや顔を。
     百舌鳥が目指すは、アルゴ号の竜骨が沈んだ南の空の端。
     そしてある日の星空を思い出し、気付く。
     誰かと一緒に見る方がうんと空は綺麗だから。
     また会えたら、一緒に星が見たいな――と。
     大して上手ではないかもしれないけれど。
     赤い寿星へと向けた凰軌の祈りが、小さく響く歌となって。
     幸せそうな愛しい彼等の願いが届かんことを、と――この想いが誰かに届けば、幸いと。
     少しだけ感傷に浸りながら、夜空を見上げる悠花が思い出すその星空は。
     まだ、北の大地にいた頃に――姉と一緒に、見たもの。
     温かいコーヒー片手に、ぼんやり星を眺める瑠理香だが。
     空を見る彼女の瞳にも、流れ星が横切った瞬間。
    「……閃いた、帰ったら早速一振り打ってみるか」
     星の様に振ってきたのは、鍛冶の着想。
    「星座って、12星座以外にどんなものがあるんだっけ」
     全ての星座が一度に見られる事は無いのだけれど。
     とりあえず全部見てみるか、と。
     喜一はふと耳にしたカノープスという名の星も、ついでに探してみる。
     そして瑠威の瞳が捉えたその色は、まさにそのとても綺麗に輝く1等星の赤。
     そして刹那、その赤の真横に、一筋の星が流れて。
     柄にもないと思いながらも……たったひとつだけ。
     瑠威は、星に願いを告げたのだった。

    ●煌きをなぞる
     凛としたリゲルは誠士郎、わんこっぽい葵はプロキオン、カペラは勿論一織で。
     狭霧はそう【天園部】の皆と星々を、青星の様な瞳で照らし合わせて。
    「あら、カペラってお洒落な男って意味があるのね」
     嬉しい事言ってくれるじゃないと笑む一織の隣で、誠士郎もリゲルの瞳を細める。
     そしてオリオンの右肩の赤星の光に少し安堵してから。
    「カノープス誰が先に見つけるか競争しません?」
     狭霧が提案したのは、一番に見つけた人が皆に命令できる競争!?
    「え、えっと……一番、明るいの、探せば、いいの、かな……?」
     葵はそうちょっぴり慌てて。くしゅんと、ひとつくしゃみを。
     そして一織は懸命に星を探す皆を楽しそうに見つめて。
    「では、星探しの始まりだ」
     誠士郎の声と同時に、狭霧は再び冬の燦めきを見上げた。
     今日は皆も一緒だから……寂しくないから。
     篝莉は【星綴の箱庭】の皆に、あったかい甘めのミルクティーを手渡しながら。
    「プラネタリウムで見た冬のダイヤモンド、覚えてる? それがあれなの」
    「っということは、これが冬の大三角形……冬のダイヤモンドがこうなってるから、あれがふたご座!」
    「あれがオリオン座だから、リゲル……その上がアルデバランね」
     由良と羽衣も、見つけた六つの星のダイヤモンドを順に指でなぞって。
    「この星の地図を手に、夜空の散歩をもっと楽しみませんか?」
     漠然と眺めるも一興、されど星の名を知りつつも一興、と。
     大紫が笑み一つ取り出した蓄光の星図版と満天の星空を見比べて、お星様のお勉強を。
     吸い込まれそうな星空の下――星の様にきらきらと目を輝かせ、笑顔を宿しながら。
    「明るい星だと、あれが北極星ですね、あとは冬の大三角でしょうか」
    「おー、これか? 見てみー」
    「なんだか今日の星空はいつも見るそれとは全く違うみたいです」
     水華の星座盤と香代の声を頼りに、ファニーは望遠鏡を覗いて。
     自信作のホットチョコレートを【reinforce】の皆に配ったアメリーも星を眺める。
     そして最中が語る、カノープスの伝承や神話。
     その間に、話に頷きつつもファニーは星の写真を撮って。
    「昔の人も星を見て思いを馳せたでしょうね」
     香代も耳を傾けながら、サンドイッチを皆へ。
     そして水華も神話を辿る様に星を追い、寿星を探してみるも。
    「やはり星座盤で追う、というのは難しいな」
     いつの間にか星を眺める事に夢中になっていた、刹那。
    「む、流れ星が……」
     一筋の流星に、皆で願いを。
     武蔵坂学園という大きな船に乗っているように、皆一緒に戦っているから。
    (「……寿星様、どうか。海路を共にする英雄達に災いがありませんように」)
     そしてこんな時間がずっと続いて。皆とこれからも善い仲でありますように、と。

     まるで蛍の様に瞬く星々の中で。
    「あれ、かもしれません……」
     そう自信なさげにそっと透夜の左手が指したのは――幸せの寿星。
     その星を見つけた喜びに、【Luciole】の皆で声を上げて。
     ホットチョコレートを渡しつつ、静かなチェーロへと声を掛けた煌介は。
    「いえ、少し昔を思い出していました……」
     返る言葉を聞いた後、独りだった過去を紡いで。
    「今、お店任されて、皆が居て、幸せ……だから……皆、護るから、ね」
     星空を仰ぎ、今を紡ぐ。
    「僕の方こそ……皆さんに出会えたことにありがとう、ですね」
     透夜もそう、もう一度。見つけたカノープスを見上げた。
    「あ! オリオン座発見!」
     ギルドールの紅茶とブランケットで暖を取りつつも。
     潤子はオリオンから辿って、沢山の星座を探しながら。
     カーティスと、カノープスを見つける競争を!
     そして、あれじゃないかな? と赤い星を指すも。
    「あれはベテルギウスだよ」
    「え、違うの? どこにあるんだろ」
    「カノープスって空の低い位置に出るって言ってたから……」
     そんな二人に、声を掛けるギルドール。
    「これも使ってゆっくり見よう」
     そしてカーティスと潤子は代わり番こ、彼が設置した望遠鏡を覗き込んで。
     星の話を聞きながら……いつの間にか一緒に、寿星を探す。
    「いっこ落ちて来いひんかなぁ?」
     白い息が昇っては溶けゆく星の海原を、夜光星座盤を手に、一浄は見上げて。
    「ほら。あれは飛んでいるソラ、あっちとこっちで楽しそうなつん様!」
    「えっ、つん様どこ?」
     アストルと蓮二と、もうひとつ、当たり前の様に空いたその場所へ。
    「なぁイッチー、あれとあれがあーなってさ……」
    「ふふ、そっくりさんが一杯やね。……ほんまに」
     広げたコートで二つの背中を包んで、染みる温もりに身を預け合えば。
    「えへへ、暖かい。……カノープスみつかった?」
     アストルに二人は頷く。
     自分のすぐ傍にある幸せの星達を、その瞳に映しながら。

    「おお……! 凄いですね! お星様一杯です!」
     オリオン座ならわかりますよ、と。【傷鳴りの十字塔】の皆と空を眺める縁樹。
     冬の夜はやはり寒いけれど。
    「寒い人はセガールにくっついてると暖かいぜ」
     鷲介は星を探しつつ、セガールやプロキオンとじゃれ合って。
    「星の名持つ君なら知ってる?」
     星の様に煌く毛並を梳きながら、シンがひそりプロキオンに訊ねれば。
    「知っとぉぞー」
     代弁した緒璃子と目が合って、二人照れ笑い。
     そして探すは――幸福の星・カノープス。
     そこで赤音が取り出したのは、星座盤と懐中電灯!
    「姫切。もしかして、実は結構楽しみだったと?」
    「なんて出来た、よ……部長なのっ」
    「……そこ、何言いかけたンですか」
     何事も準備ですよ、と呟く赤音を見て、緒璃子は明に、昔からツンデレなん? と訊ねれば。
    「昔の姫くんはもっと素直でした。ですが面倒見の良さはかわりませんね」
     いつかの様に、その頭に手を伸ばす明。
     赤音は咄嗟にそれを払うも、ふと記憶に浸って。
    「ってアレかな……カズヤあそこだぜ、あれじゃねえかな」
    「あ、しゅーすけせんぱい、どこどこ?」
    「ふっふっふ、幸運一番乗りだぜ」
     霊犬達を縁樹と一緒にもふもふしつつ、よーく拝んでおくようにと言う鷲介の指先を追ったカズヤは、思わずぴょんぴょん。
     そして星探しの楽しさに瞳を細め、オリオンへと想いを馳せ手を掲げた明の隣で。
     緒璃子は改めて思う――あぁ、やっぱり、皆で来てよかった、と。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年3月3日
    難度:簡単
    参加:79人
    結果:成功!
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