●都内某所
怪しげな薬を販売していたと言う噂の薬局があった。
この薬局は数年ほど前に廃業しており、その原因となったのが噂になった薬であったらしい。
噂になっていた薬は滋養強壮効果があり、常連客が好んで飲んでいたのだが、飲みすぎると凶暴性が増してしまい、手が付けられなくなってしまうという副作用があったようである。
その事が問題になって『責任を取れ!』と迫られ、廃業に追い込まれてしまったらしいのだが、薬を欲する人間が店を訪れると、薬を売ってくれるらしいのだ。
ただし、その命のと引き換えに……。
「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……時が、来たようだな!」
無駄に恰好を付けてポーズを決め、神崎・ヤマトが微笑みかける。
何故か、誰も視線を合わそうとしないが気にしない。
……もう慣れている。
そして、今回の依頼は彼から語られる。
都市伝説が確認されたのは、廃墟と化した薬局。
この薬局は怪しげな栄養剤を売っていたんだが、それが問題になって廃業したらしい。
だが、夜な夜なコッソリと薬を売っているという都市伝説が流れ、面倒な事になっているようだ。
都市伝説は薬を欲する人間がいると出現するらしく、その命と引き換えに薬を渡している。
おそらく、お前達が薬局に行く頃には、誰かが襲われている最中だろう。
彼らは肝試し感覚でこの場所に来ている単なる一般人。
故に放っておけば、間違いなく都市伝説の餌食になる。
しかも、腰を抜かして動けなくなっている可能性が高いから、安全な場所まで避難させるだけでも一苦労だと思うが……。
ちなみに都市伝説は干からびた老人のような外見をしており、薬を飲むたび筋肉を隆起させり、お前達に襲い掛かってくる。
その上、一般人を集中して狙ってくるから要注意だ。
まあ、お前達ならなんとかなるはずさ。
それじゃ、頑張ってくれよ。
参加者 | |
---|---|
雲母・夢美(夢幻の錬金術師・d00062) |
笹前・奇々(タイムキリング・d00193) |
木戸・夕焼(フラッシュバックノスタルジー・d00230) |
銀嶺・炎斗(狂喜乱舞なお年頃・d00329) |
外法院・ウツロギ(都市伝説:シリアルキラー虚姫・d01207) |
刀崎・剏弥(古色蒼然を纏う執事見習い・d04604) |
物部・虎丸(夜行性・d05807) |
笙野・響(青闇薄刃・d05985) |
●危険なドラッグ
「……肝試しか。自ら危険に首を突っ込むとは……。若さ故と言う奴かも知れぬが、愚かなものだ。更には薬を欲する者まで居る始末、場合によっては……、腰の抜ける様な目に遭って尚。薬に未練がある様ならば、彼の不良を一人にしてお灸を据えてやる必要があるじゃろう。……そうじゃな。バベルの鎖が在る故、本来は不要なのじゃが……。じっくりと追い詰めて被捕食者としての恐怖心を煽って吸血捕食するのも一興かもしれぬ。記憶が曖昧でも恐怖を感じる程度に……」
含みのある笑みを浮かべながら、刀崎・剏弥(古色蒼然を纏う執事見習い・d04604)が都市伝説の確認された場所に向かう。
都市伝説が確認されたのは、廃墟と化した薬局。
この薬局では怪しげな栄養剤が裏で売買されており、その事が問題視されて廃業に追い込まれてしまったようである。
「まあ、肝試し気分も大概だが、命を差し出したんじゃ、授業料にしてはちっと高すぎるわな。俺達の役目は、きっちりと果たさせてもらうさ」
険しい表情を浮かべながら、物部・虎丸(夜行性・d05807)が口を開く。
被害者側にまったく非が無いとは言えないが、だからと言って放っておく訳にもいかない。
「それにしても、どんな薬だったんだろうな? その栄養剤……」
だんだん栄養剤に興味が沸いてきたため、刀崎・剏弥(古色蒼然を纏う執事見習い・d04604)が当時の新聞記事を見返した。
記事によると、その時に作られた栄養剤はすべて処分されており、一本たりとも存在しないと書かれている。
もちろん、その記事を鵜呑みにする訳にはいかないが、これだけの騒動を巻き起こしたのだから、例え何本か残っていたとしても、誰かが手に入れて飲んでしまった後だろう。
「……怪しげなドラッグか。万が一、欲しいって頼まれたら、届けるかもワカランね。もちろん、金次第だが……」
本気とも冗談とも取れる事を言いながら、木戸・夕焼(フラッシュバックノスタルジー・d00230)が都市伝説の確認された薬局に視線を送る。
運び屋としての性分的には、ドラッグと言うワードは、個人的にテンションが上がるのだが……。
そんな事を考えていると、薬局の方から『ひぃぃぃぃ!』と間の抜けた声が辺りに響き、ふたりの不良が腰を抜かして転がるようにして外に出た。
しかし、腰を抜かしているせいで、その場から這っていく事しか出来ず、筋骨隆々の老人(都市伝説)が現れ、ふたりめがけて拳を振り下ろす。
それを間一髪で逃れる事は出来たものの、恐怖でそこから動けない。
「……おじいちゃんのボディビルは見たくなかったわ」
げんなりとした表情を浮かべ、笙野・響(青闇薄刃・d05985)が頭を抱える。
この様子では、栄養ドリンクを飲んだ後と言う事になのだろう。
不良達がどんな事をしたせいでそんな事になっているのか分からなかったが、このまま助けに行かなければミンチになるのは確定のようだ。
「あ、危ない……」
再び都市伝説が拳を振り上げてきたため、笹前・奇々(タイムキリング・d00193)が舐めていた飴を噛み砕き、勢いよく不良に飛びついた。
そのおかげで何とかミンチにはされなかったが、このまま放っておく訳にも行かないのでタイミングを見計らって背負う。
「とにかく時間を稼がないと!」
不良達が避難する時間を稼ぐため、雲母・夢美(夢幻の錬金術師・d00062)が都市伝説の前に陣取った。
それに気づいた都市伝説が栄養ドリンクをグィッと飲み干し、自らの肉体をさらに強化した。
「ううう……、都市伝説だかなんだか知らないけど、全部まとめてぶっ飛ばせ!みんな!」
色々な意味で身の危険を感じ、銀嶺・炎斗(狂喜乱舞なお年頃・d00329)が仲間達にすべてを委ねる。
都市伝説は見るからに危険そうで、迂闊に近づけば瞬殺されてもおかしくない。
「さあ、いまのうちに!」
腰を抜かした不良に視線を送り、外法院・ウツロギ(都市伝説:シリアルキラー虚姫・d01207)が少しずつ間合いを取っていく。
だが、不良達は恐怖で足がすくんでしまい、まったく身動きが取れなくなっていた。
●不良達
「さあ、早く。……ん? 逃げ気は……あるよね?」
不良達がなかなか逃げようとしなかったため、奇々が心配した様子で問いかけた。
一応、不良達もこの場から逃げたいという気持ちがあるようだが、足がすくんでその場から動けないようである。
だが、不良達からすれば自分達の予想に反して化け物に追いかけられているのだから、驚いて腰を抜かしてしまっても無理はない。
「だったら、引きずってでも避難させるか」
警戒した様子で辺りを見回しながら、炎斗が半ば呆れた様子で溜息をもらす。
不良達は『だ、だ、大丈夫だ……』と口では言っているが、両足が妙なリズムを刻んでいるため、本音は言えば駄目なのだろう。
これで相手が女性であれば、お姫様抱っこのひとつでもするところだが、相手はガラの悪い不良ふたり。
妙な優しさを見せて、『ア、アニキィ!』なんて展開になれば、薔薇の庭園で愛を語り合ってもおかしくないような『アーッ!』な未来が待っている。
それだけは避けたい、というよりも、そんなフラグは根元からへし折ってやるべきだ。
そんな気持ちがあるせいか、不良達をズルズルと引きずっている。
不良達がいくら『尻が擦れて痛いっ!』と言っても、気にしない。
「なんか、こうしている間にも老人が凄い事に……」
唖然とした表情を浮かべ、ウツロギが都市伝説を眺める。
既に筋肉の塊と化しているせいで、人間ではなく別の者に見えた。
それは不良達も同じだったらしく、『た、助けて!』と叫んで別方向に逃げていく。
「し……、死にたいのか!」
予想外の行動に驚きつつ、虎丸が左側に逃げた不良を追う。
不良からすれば、早くこの場から逃げ出したいという気持ちでいっぱいだったのかも知れないが、こんな事をすれば誰がどう見ても自殺行為である。
しかし、不良達にはそれが分からなかった。
おそらく、理解するだけの冷静な判断力を失ってしまっているせいだろう。
「また面倒な事を……」
げんなりとした様子で右側に逃げた不良の行く手を阻み、奇々が頭を抱えてやれやれと首を振る。
何とか大事になる前に不良達を捕まえる事は出来たが、未だにソワソワしているため放っておくと何をするか分からない。
もしかすると、奇々達が勝手に負けると思い込み、逃げ事ばかり考えているのかも知れない。
「薬にうつつ抜かすぐらいなら! 女性にうつつをぬかせー!」
不良達が再び逃げださないようにするため、炎斗がコレクション(グラビアアイドル本)を差し出した。
それを受け取った不良達は何かを覚えた猿の如く、グラビアアイドル本を熟読。
完全に都市伝説の存在を忘れているようだった。
「……たく! 二度と夜の淵に近づくんじゃねえぞ」
相手にするのも馬鹿らしくなり、虎丸が不良達に背を向ける。
その途端、不良達が我に返り、『お、俺達を見捨てないでくれ』と言って、服の袖を掴み始めた。
「……困ったなぁ。でも、放っておく訳にも行かないか」
情けない顔をした不良達を見つめ、ウツロギが自分自身を納得させる。
それに、ここで放っておけば、戦闘中も『……怖い』、『助けてくれ!』と叫んで、色々な意味で支障が出そうな雰囲気が漂っていた。
●都市伝説
「それにしても、滋養強壮効果だけじゃなくて暴走効果まで……。これは興味深い薬ですね。錬金術の研究の為に、上手い事パクっておきたいのですが……」
都市伝説と対峙しながら、夢美が栄養ドリンクに視線を送る。
一見すると、よくある栄養ドリンクのようだが、ニオイが半端なくクサイ。
例えるなら、生ゴミ。夏場の炎天下で放置された生肉。
しかも、それを飲んだ都市伝説が有り得ないほどクサイ。
無意識のうちに、体が拒絶反応を起こして、後ろに下がってしまうほどの臭さ!
「まるで存在そのものを、自ら表現しているようじゃな」
皮肉混じりに呟きながら、剏弥が雲耀剣を放って、都市伝説を牽制する。
都市伝説は薬を飲むたび凶暴性が増していき、だんだん攻撃方法が単純になっていく。
だが、その影響でより弱い相手を狙うようになっているらしく、隙あらば不良達の命を奪うべく襲い掛かってきた。
「させませんよっ!」
すぐさま都市伝説の行く手を阻み、夢美がギルティクロスを仕掛ける。
その一撃を喰らっても、都市伝説は怯まなかったが、夢美を威嚇するようにして牙を剥く。
「それ以上、驚かせないでくれる? ただでさえ、あの人達は憶病だから……。ほら、逃げた」
仲間達の制止を振り切って逃げだした不良達に気づき、響きがすっかり呆れ果てた様子で頭を抱える。
『もう無理。絶対に無理。ここに居たら、死ぬ』と叫んでいるが、明らかに自分から死亡フラグを引き寄せているようにしか見えない。
「そろそろ大人しくしてもらうよ」
都市伝説の死角にまわり込み、夕焼が影縛りを発動させる。
その途端、都市伝説の動きが封じられ、隠し持っていた栄養ドリングが次々と落ちて、鼻の感覚がおかしくなるほどの臭気が辺りを支配した。
「うっ……、ここまで臭いと要りませんね。こんなものを持ち帰ったら、みんなが逃げるでしょうし……」
容易にそんな未来を想像する事が出来たため、夢美が靴に付けた駆動型ローラーでダッシュしながらガトリングを連射する。
それでも、都市伝説はまったくダメージを受けていない様子であった。
「ひょっとして、自分が死にかけている事さえ気づいていないんじゃねーか? 明らかに致死レベルだぞ、これ!」
少しずつ間合いを取りながら、夕焼が都市伝説に視線を送る。
その途端、都市伝説が捕縛状態から逃れ、唸り声をあげて襲い掛かってきた。
「そこまで死にたいのなら……、終わらせてやろう」
そのまま都市伝説を迎えうち、剏弥が紅蓮斬を叩き込む。
次の瞬間、都市伝説の体が紅蓮の炎に包まれ、あっという間に消し炭と化した。
「……終わったわね。さっきのふたりは……気絶したようだけど……」
都市伝説が消滅した事を確認し、響が不良達に視線を送る。
不良達は恐怖レベルが限界に達していたのか、泡を吐いて意識を失っていた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年9月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 14
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