脅威の巨大化チョコレート~ロシアンマグロ、暗躍す

    作者:波多野志郎

     ――冬の埠頭。その冷たい潮風が吹き抜ける倉庫街で、彼等は暗躍していた。
    「マーグッグッグッグッ! 笑いが止まらんな!」
     ……それはもう、活き活きと。
    「まさに、チョコチョコチョコ! 素晴らしい限りだ!」
    「ロシアンマグロ怪人様! 資金が底を尽きました!」
    「マーグッグッグッ! これだけあれば十分であろう!」
     コサック戦闘員の報告を得て喝采を上げたのは、ロシア帽を被ったマグロ顔の怪人――ロシアの暗黒面に堕ちた、ロシアンマグロ怪人であった。
     目の前に詰まれたダンボール箱の山を満足げに見上げたロシアンマグロ怪人は、満足げにコサック戦闘員達へと告げた。
    「では、運び出すとしよう! 全ては、ロシア村へと! ロシアンタイガー様へと捧げるのだ! さすれば、我等ご当地怪人が世界を征服する日は近い!」
    『ウラー! グローバルジャスティス様に栄光あれ!』
     ……いつものノリのご当地怪人達の姿が、そこにあった。

    「バレンタインデーのチョコを狙ったご当地怪人は無事に解決出来たっぽいんすけど」
     湾野・翠織(小学生エクスブレイン・dn0039)はしみじみと言葉を続ける。
    「先の事件では、一部のご当地怪人がチョコを食べて巨大化してるんすけどね? どうやらこの『巨大化チョコ』が連中の狙いだったっぽいんす」
     ご当地怪人達はバレンタイン当日の事件を囮にして、日本全国で多数のチョコレートを集めていたのだという。そうして集めたチョコレートを拠点へと運び込もうとしているらしい。
    「まー、馬鹿話に聞こえるっすけど、大量の巨大化チョコが連中の手に渡ったら、洒落にならないっす」
     ならば、判明した阻止できるものを阻止するべく動きべきだ。現場に、急行して欲しい。
    「みんなが担当してもらうのは、とある埠頭の倉庫街。そこの使われていない倉庫っす」
     時間は夜、向こうは倉庫街のフェンスの向こうにあるトラックに100個以上のチョコの箱を積んで運びだす手はずだ。こちらとしても、隠密行動がしやすいのは助かる限りだ。ただ、光源などの用意は必須。それで、敵にばれない工夫もいるだろう。
    「まず、コサック戦闘員がチョコレートの搬入や搬出で外に出ている隙に拠点に突入して、ご当地怪人に戦いを挑んでもらう感じっす」
     コサック戦闘員は二十名ほどいる。このコサック戦闘員達が戻る前に勝負を決められるかどうか? それが重要となる。ご当地怪人さえ倒してしまえば、残りのコサック戦闘員を倒すのは、そこまで骨ではない。
    「時点の案としては、外で運び出しているコサック戦闘員を個別に襲撃、数を減らす方向っすね」
     ただ、これの難点としては気付かれたら最後、正面対決となってしまう事だ。
    「今回の目的は巨大化チョコレートの強奪阻止っすから、戦いを避けてチョコレートだけ奪取するのも手ではあるっす。ただ、奪われたチョコレートの量が量っすからねー、全部奪えるとは限らないのも問題っす」
     チョコレートを破壊する事も可能だが、破壊する事によって巨大化する力がなくなるかも不明の状態だ。何にせよ、不測の事態は頭に入れておいた方がいい。
    「何にせよ、向こうに巨大化チョコを渡さないのが最大の目的っす。その上で、みんなで策を練ってあたって欲しいっす」
     一筋縄ではいかない状況である、それを理解する翠織の表情は厳しい。
    「自分にはお願いする事しか出来ないっすけど……よろしくお願いするっす」


    参加者
    鏡・剣(喧嘩上等・d00006)
    凌神・明(英雄狩り・d00247)
    玖・空哉(強欲・d01114)
    龍宮・巫女(鬼狩の龍姫・d01423)
    金井・修李(進化した無差別改造魔・d03041)
    斎賀・真琴(海とマグロを愛するヒーロー・d10872)
    柊・司(灰青の月・d12782)
    鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)

    ■リプレイ


     さざ波が、近く聞こえる――夜、埠頭の倉庫街。金井・修李(進化した無差別改造魔・d03041)は足元だけを照らせる小さめのランタンを手に呟いた。
    「これならバレないかな?」
    「いい感じみたいだぜ」
     修李の呟きに、斎賀・真琴(海とマグロを愛するヒーロー・d10872)はうなずく。物陰からせわしく行きかう人影達を見るが、こちらに気付かれた風はない。修李もうなずき返して、その明かりを頼りに武器のメンテを着々と進めていた。
    「ん……。チョコは、好きですけど。あんなにたくさんあってもしょうがないというか」
     柊・司(灰青の月・d12782)は、コサック戦闘員達が運ぶダンボールの箱に小さくこぼす。そのダンボール一つでも、どれだけの数のチョコレートが入って居るのだろうか? 鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)も首を捻る。
    「巨大化チョコレートってなんでしょう……? そんなのが出回ってるなんて、普通の人が食べても大丈夫なんでしょうか? ポリフェノールみたいにサイキックエナジーがたくさん入ってるとか」
    「しっかしまあ、なんでチョコ食ったら巨大化すんだろ――」
     ろうな、という鏡・剣(喧嘩上等・d00006)の言葉の途中で、肩が叩かれた。玖・空哉(強欲・d01114)だ。
    (「そろそろだぜ?」)
     ESP接触テレパスだ、声を潜めていては通りにくい重要な言葉もこれで確実に伝わる。空哉の視線を受けて、凌神・明(英雄狩り・d00247)がうなずいた。
    「頼む」
    「ええ、任せて」
     そう、若干サイズの合ってない中学生男子制服を着た龍宮・巫女(鬼狩の龍姫・d01423)だ。

     コサック戦闘員が総出で持ち出しているのだろう、その倉庫の中にソレはいた。ロシア帽にロシアの軍用コート――そして、マグロの頭。そう、ロシアンマグロ怪人である。
    (「まったく……マグロに碌な縁ないのかしらねぇ私。六六六人衆の時もマグロだったし……」)
     そんな巫女の言葉が、真琴に届かなかったのはまさに不幸中の幸いである。倉庫の角、暗闇の死角で灼滅者達がアイコンタクトでタイミングを計ったその瞬間、ESPサウンドシャッターが発動した。
    「マーグッグッグッ! 順調順ちょ――」
     呵呵大笑が、途中で途切れる。真上からの奇襲、炎で拳を包んだ剣の一撃だ。
    「マグ!?」
    「ハハ!」
     不意打ちの一撃を反射でガードしたロシアンマグロに、剣は歯を剥いて笑う。マグロの目を器用に白黒させるロシアンマグロへ、ホクトシチセイを破邪の白光で輝かせた伊万里が踏み込んだ。
     ロシアンマグロはその横薙ぎの斬撃を、両腕をクロスさせてすんで受け止める。しかし、伊万里は構わず振り抜いた。
    「天網恢恢疎にして漏らさず! あなたの悪事はまるっとお見通しです!」
    「くそ、であえ! 敵襲だあああああああああああああああああ!!」
     後方へ吹き飛ばされながら、ロシアンマグロが叫ぶ。そこへ、ジェット噴射で突っ込んだ修李がバベルブレイカーを全体重を乗せて突き出した。
    「ぐ!?」
     それをロシアンマグロはマグロ型スラッシュリングを七つ、一気にぶつけて相殺を試みる。バキン! とすんだ音を立てて舞い散る光、しかし、かろうじて蹂躙のバベルインパクトを届かせた修李の動きは止まらない。
    「この弾幕の中、動ける!?」
     ガガガガガガガガガガガガガガガ! と構えたバルカンガン M2A1の連射に、ロシアンマグロは横へ駆けながら耐え抜く。そして、舌打ちと共に言い捨てた。
    「マグッチ! サウントシャッターか!」
    「おっと、行かせませんよ?」
     その目の前に立ち塞がり、司はアーネスティアを繰り出す。回転し、ヒュオ! と咽び泣くような風切り音をさせる螺穿槍に、ロシアンマグロは両腕で受け流した。
    「まだまだ――!」
     その間隙に懐へと潜り込み、空哉の雷を宿した拳がそのマグロ顔の顎へと振り上げられる。ロシアンマグロは豪快に食らってのけぞるも、ブーツの底で床をすらせながら踏ん張った。
    「舐め、るなあああああああああああああああああああ!!」
     そして、体勢を立て直す勢いを利用して、七つのマグロ型リングスラッシャーを荒れ狂わせる。まさに大海原を止まる事を知らずに泳ぎ抜くマグロの群れのように、灼滅者達を襲った。
    「こんなマグロ!」
     その中を強引に突っ切り、巫女はギュオン! と回転する杭を、右手のパイルバンカーで叩き込む! それに穿たれながらも、ロシアンマグロは後退する。
    「簡単に押し切らせてはくれなさそうだな」
     明が突き出したその右手から、シールドを広範囲に展開――ワイドガードによって仲間達を包む。そして、愛刀の模型マグロをぶんぶんと振り回して清めの風を送った。
    「マグロは地元三浦産が一番。都内にもたくさん卸してるよ――じゃなくて、あたしの大好きなマグロの形して悪い事をしようとするなんて許さないんだから! マグロ刀で成敗するぞ!」
    「マーグッグッグッ、お前もまたマグロの魅力に憑かれた者か。しかし、マグロ性の違いによって争いが起こるなど、ご当地怪人ではよくある事!」
     笑い、ロシアンマグロ怪人はビシリとポーズを取る。軍用コートがなびくその姿はムカつくけれど、なかなか格好いい――もとい、ロシアンマグロはポーズをつけたまま、叫んだ。
    「ウラー!!」
     超低空の飛び蹴り――ロシアンマグロのご当地キックが、改めてゴングのごとく戦いの始まりを告げた。


    (「問題は、時間ですか――」)
     サウンドシャッターで、すぐにバレる事はなくなった――だからこそ、司が思うようにこれは時間との勝負だ。
     十分後か、五分後か、はたまた一分後か。コサック戦闘員達が、この倉庫に戻ってくるまでの時間にどこまでやれるのか? それが、鍵だ。
     踏み込んだ司が、横回転する。その振りかぶった右腕が異形の怪腕となりはて、ロシアンマグロを裏拳で強打した。
    「――!」
     ロシアンマグロは、それをブロックして受け止める――だが、そこへ修李がバルカンガン M2A1の銃口を向けていた。
    「そのチョコごと燃やしてあげよっか?」
    「厄介なコンビネーションだ!」
     ガガガガガガガガガガン! と爆炎の宿った銃弾の雨を受けながら、ロシアンマグロは後退する。
    「マグロの煮込み、叩き、切り落とし……お好みの方に調理してやるぜ!」
    「生もよろしく!」
     空哉の振るった右手から放たれる強酸性の液体、DESアシッドを受けながらロシアンマグロはアピールを忘れない。ジュワ! と身を煮込まれ、じゃない、溶かされながらも、ロシアンマグロは止まらない。
    「衝動に身を任せろ! 大海を泳ぐマグロのようにな!」
     ロシアンマグロのカオスペイン、その精神を暴走させるサイキックも、剣にとっては拳に力を込めさせる要素の一つに過ぎない。
    「こんがり焼かれてと、つーかなんか香ばしい匂いしてきてんだよ!!」
     その紫のオーラが、渦巻く炎のように両の拳に集中する。乱打乱打乱打、剣の閃光百裂拳を、ロシアンマグロは足を止め両の拳で真っ向から迎撃。ガガガガガガガガガガガガガッ! と、薄暗闇の倉庫に、無数の火花が咲いた。
     剣とロシアンマグロが、同時に左右へ跳ぶ。そのロシアンマグロの右腕に絡み付くものがあった――巫女の神龍道だ。
    「お願いね? 伊万里君」
    「はいっ!」
     動きが止まった一瞬、伊万里の放った神薙刃がロシアンマグロを飲み込んだ。ゴォ! と旋風は風の刃となり、ロシアンマグロを切り裂く。そこへ、明が踏み込んだ。純白に輝くクイルセイドソード、その一閃をロシアンマグロはマグロ型ビームの一閃で相殺。鈍い爆発音が、倉庫内に響き渡った。
    「く、マグロ尽くしだな!」
     ぶんぶんと模型マグロをぶん回し風を起こして、真琴は仲間達を回復させる。
    (「倒し切れるか?」)
     真琴の視線は、倉庫の出入り口に向けられていた。ロシアンマグロは、強敵だ。これにもしも、コサック戦闘員が合わされば――それは、最悪の想像だ。
     だからこそ、灼滅者達は攻め立てる。その最悪を回避するために――。


     倉庫内に、剣戟が折り重なるように鳴り響く。灼滅者達が責め、ロシアンマグロが耐える――その構図は、唐突に終わりを告げた。
    「な!? ロシアンマグロ様!?」
    「みんな、来たぜ!」
     真琴の声に、伊万里は唇を噛んでガトリングガンの銃口を向けた――ダンボールの山へ、だ。
    「カカオ農家の皆さん、ごめんなさいっ!!」
     ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ! とブレイジングバーストの銃弾がダンボールを撃ち抜き、燃やしていく。それを見たロシアンマグロは舌打ち、しかし、冷静だった。
    「マグッチ! お前達は、無事なダンボールを運び出せ! こうなれば、私が時間を稼ぐ!」
    『ハッ!』
     ロシアンマグロが懐からチョコを取り出したのを見て、空哉がすました顔で言ってのける。
    「巨大化作戦な、あれやめといたほうがいいぜ」
    「ああ?」
    「だってさ。追い詰められて巨大化した怪人がどうなるかってのは、日曜朝のテレビを見りゃ一目瞭然だろ?」
    「ねぇ、本当に先に食べて巨大化しちゃうの??最初に巨大化したら悪者決定じゃない? 正義なら後から巨大化して戦うでしょ? つまりね、ボク達が先に食べて巨大化してあげるから、そのチョコちょうーだい!」
     修李がそうまくし立てるのに、しかし、ロシアンマグロは躊躇わなかった。バクン、とチョコレートを噛み砕き、雄雄しく吼える。
    「敗北は、我が敗北にあらず! ロシアンタイガー様ある限り、我等に敗北はない!」
     ズズズズズ! と、目の前でロシアンマグロが巨大化していく。我が身を盾にするロシアンマグロに、巫女が蛇咬斬を使い足止めに成功したのは一人がやっとだった。
    「こうなったら、確実にこれを倒さないとね」
    『やれるものならあああああああああああああ、やってみろおおおおおおおおおお!!』
     ズン! と床を踏みしめ、ロシアンマグロが灼滅者達へと襲い掛かる。今度は、攻守が入れ替わった形だ。
    (「大きい、というのはそれだけで脅威だな」)
     明は、そう冷静に判断を下す。倉庫の大きさが絶妙だ、その見上げるばかりの巨体でも思う存分に暴れられる広さ。だというのに、ロシアンマグロの動きでかなりの制限を食らうのだ。
    『お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
     ロシアンマグロの巨体が、駆ける。その巨大な足の裏が、豪快に剣を捉えた。踏ん張る余地など、どこにも残されていない。一気に薙ぎ払われ、壁と足の裏で挟まれた。轟音と共に、倉庫の壁に亀裂が入る――最悪の結果さえ想像させる、凄まじいロシアンマグロキックの直撃だった。
    『――お?』
     不意に、蹴りの体勢のままロシアンマグロの表情が変わる。ミシリ……、と軋み音が響いた瞬間、その呵呵大笑が鳴り響いた。
    「ハーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
     凌駕し、剣が渾身の拳をロシアンマグロの足の裏へと放ったのだ。その鋼鉄拳の一撃に、ロシアンマグロの体勢が大きく崩れる。
    「チョコレートお買い上げしてくれたのはいいんですけど、でも巨大化されては困ります!」
     伊万里の非実体化したホクトシチセイが、ロシアンマグロの軸足、その踵を切り裂く。そして、巫女の渾身の尖烈のドグマスパイクが、軸足の踝へと突き刺さった。
    「倒れるわよー」
     そんな巫女の言葉の通り、ロシアンマグロの巨体が床へと転がった。ズ、ン……! と地響きを立てて倒れたロシアンマグロへ、空哉が長棍を振り下ろした。
    「もういっちょ!」
     ドン! と倉庫内に巻き起こった竜巻が、ロシアンマグロを飲み込んでいく。だが、ロシアンマグロは屈さない。グ! と全身に力を込めて立ち上がった。
    『マグロはああああああああ、止まったらああああああああ、死ぬんだよおおおおおおおおお!!』
    「同感だぜ!!」
     そこへ、真琴と修李が突っ込む。跳躍した真琴の鋭い蹴りが、修李のジャット噴射で加速したバベルブレイカーが、同時にロシアンマグロを捉えた。
    「この工場から……ぶっ飛べぇぇぇ!」
    『なに、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
     ドガン! と盛大な爆発音のような音と共に、ロシアンマグロの巨体がわずかに浮いた。そこへ、司が雲雀の夢を振りかぶって跳躍する。
    「チョコレートは、数ありゃ良いってもんじゃないんですよ。そこに愛と物語があって初めて、物語が始まるんですから」
     夕暮れ色の杖による殴打、そして巻き起こる衝撃に、ロシアンマグロは壁に叩き付けられる。剣を蹴り付けたのは、反対側の壁だ。ロシアンマグロは、かろうじて踏みとどまった。
    『ま、だだあああああああああああああああああ!!』
     前に踏み出そうとする、その直後。その胸元に、跳躍した明の姿があった。
    「模倣舞姫・強撃!!」
     ロシアンフックの軌道で放たれる渾身の一撃、それがロシアンマグロを捉える。ズルリ、とついにロシアンマグロの巨体が崩れ落ちた。
    『およ、ぎ、切れた……か?』
     マグロとは、泳ぐ事を忘れた時に死ぬ魚である。ロシアンマグロは、やり遂げたマグロの顔で、消滅した……。


    「……こんなもんか」
     最後の足止めのコサック戦闘員を殴り倒して、剣が吐き捨てた。それに、司もうなずく。
    「ええ、半分は守れた……でしょうか?」
     トラックは逃がしてしまったが、半分程度のチョコは死守できた。ロシアンマグロ怪人を倒せた事を考えれば、上々の成果と言えるだろう。
    「……わざわざ、買ってくれたものに、悪い気も少ししますね」
     伊万里は、力のない苦笑と共にこぼした。何となく憎めないから困る、そんな表情だ。悪も時々、地域経済に貢献する――そう思っておく事にしよう。
     夜が、明けていく。ここに一つ、悪計は費えた。しかし、これが終わりではないのだ。灼滅者達は、しらみ始めた東の空を見上げ、そう気を引き締めた……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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