脅威の巨大化チョコレート~チョコ捕る猫は爪を隠す


     その廃ビルは、噎せ返るほどのチョコの香りに満ち溢れていた。
     ビル内部では、何やら幾つもの怪しげな人影が忙しなく動き回っている。
    「みゃうみゃう! お前達、その箱は此処に置くんだみゃうっ!」
     甲高い呼び声がこだまする。部屋の奥にて手招きするのは、猫の着ぐるみ――否、猫のような姿をしたご当地怪人であった。
    「「ダー! サイベリにゃん様!」」
     ご当地怪人の声に応じたのは、まさに戦闘員と呼ぶに相応しい出で立ちをした者共だ。
     戦闘員達は軽やかなコサックステップを踏みながら、部屋の片隅で段ボール箱を積み上げている。
     その数はなんと、部屋内の壁を覆い尽くすほど。
    「みゃふふ……灼滅者もお馬鹿さんだみゃう。お陰で此方も上手くコトが運びそうだみゃう」
     段ボール箱の壁を見上げ、ご当地怪人は満足げに独り言つ。
     このチョコレートの中には、必ず『巨大化チョコ』が紛れ込んでいるはず。
     それが大量に手に入れば、この日本だけでない――いつしか世界全体を制圧できるだろう!
    「さあさ、もうじき日本(イポーニャ)ともオサラバみゃう。
     ロシアンタイガー様もお喜びになるだろうみゃう……みゃふふ、ふふふ、みゃーっふっはっはっは!」
     ふわり、ふわり。
     豊かな尻尾を揺らして、シベリア猫怪人・サイベリにゃん(冬毛)は高らかな笑い声を響かせた。

    「おっす、親愛なる学友諸君! 強奪事件の阻止、お疲れさんだな。
     バレンタインデーも終わっちまったが……チョコの残り香は、未だ掻き消えそうにないらしい」
     やれやれ、といった様子で、白椛・花深(高校生エクスブレイン・dn0173)は小さな溜め息を漏らした。
     既に報告が上がっている強奪事件の中で、一部のご当地怪人がチョコを食べて『巨大化』をしたというのだ。
     ご当地怪人達の真の目的は、この『巨大化チョコ』にあるという。
     2月14日に全国規模で起こったあの数々の事件は、目眩ましに過ぎなかったのだ。
     その間にもロシアン怪人達は着々とチョコを集めていたようで、最終的には自分達の拠点へと運び入れるのだという。
    「多くの巨大化チョコが奴等の手に渡っちまったら、大事になるのは間違いないだろうぜ。
     お前さん達にゃあ可能な限り、ロシアン怪人達を阻止して欲しい」
     もはや手遅れになってしまっている事件もあるかもしれない――しかし、最悪の事態だけは、避けておきたいのだ。
     花深は後ろへ向き直り、白いチョークを手にする。
     黒板に描いたのは、簡素な長方形。どうやら、これはロシアン怪人達の拠点を表しているようだ。
    「今はもう、誰も寄り付かない廃ビルだ。大量のチョコを保管できる低度には広々としてるぜ。
     この廃ビルにてコサック戦闘員20名を率いているのは……シベリア猫怪人・サイベリにゃん(冬毛)」

     ……(冬毛)?

     黒板にも書き綴られたその文字に、灼滅者達の数人が首を傾げる。
    「(冬毛)までが名前らしいぜ。ちなみに外見はまふもふ。敵でなけりゃあ、もふりたかったな……」
     極寒の地・シベリアを生きる猫は凛々しく逞しいのだという。
     猫らしい愛くるしさもあれど、油断はできない。
     なんと言っても今回は怪人が巨大化し、戦闘能力が強化される可能性もあるからだ。
    「コサック戦闘員の人数も多いからな。全員まとめて掛かって来い! ……は、ちょいと推奨できない。
     けど別の方法も幾つかあるから、お前さん達でじっくり考えて決めて欲しい。
     ――先ずは一つ、戦闘員達がチョコ収集で出払っているその隙に(冬毛)に勝負を挑む! ってのはどうだろう」
     この作戦で最も重要なのは、戦闘員達が拠点へ戻る前に決着をつけることだ。
     主導たる怪人を灼滅してしまえば、戦闘員もなんとか殲滅できるだろう。
    「そんでもう一つは、チョコを運び込む戦闘員の各個撃破。
     ただ、これにもちょいと欠点が。(冬毛)にこの作戦が気づかれちまったら、正面対決は免れない」
     確実に戦力を減らせる作戦ではあるものの、リスクもそれなりに必要なのだという。
     そして最後に、と花深は前置きして語る。
    「さっきも言ったが、お前さん達は巨大化チョコの強奪さえ喰い止めれば大丈夫だ。
     だから戦闘を避けて、チョコをふんだくる! ――って事もできるだろうぜ」
     しかし、ビル内に保管されているチョコは1箱、2箱では済まない数。
     故に、全てのチョコを奪い取ることは困難だろう。
    「極端な発想になっちまうけど、チョコをぶっ壊しちまう事もできる。
     巨大化のパワーまで打ち消せるかは分からねーし……何より、勿体無いよな」
     青春を追い求め、早16年。
     生まれてこの方、女の子から本命チョコを贈られた事のない少年は力なく笑ってみせた。
    「まっ、そんな訳で! 怪人の巨大化がお約束なら、正義は勝つってのもお約束だよな。
     ぶち壊してやろうぜ、奴等の企みを!」


    参加者
    室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)
    蓮咲・煉(錆色アプフェル・d04035)
    枝折・優夜(咎の魔猫・d04100)
    黛・藍花(藍の半身・d04699)
    雨海・柚月(迷走ヒーロー・d13271)
    天倉・瑠璃(パンツカイダーでぃけいどぅ・d18032)
    唯空・ミユ(藍玉・d18796)
    袖裂・紗津香(高校生殺人鬼・d21533)

    ■リプレイ


     灼滅者一行が現場へと集った時、既に辺りはしん、とした静けさとチョコの香りで満ちていた。
     廃ビルの奥から、『みゃあう』と暢気そうな猫の鳴き声がこだまする。
     一番乗りで拠点周辺にて待機していた枝折・優夜(咎の魔猫・d04100)が、ごろごろと喉を鳴らしたのちに猫変身を解除した。
    (「……冬毛、かぁ。もふもふ出来ないのが残念。」) 
     ぼんやりとした無表情のまま、優夜はぼそりと心中で呟いた。
     コサック戦闘員が全て出払った以上、この廃ビルの中に居るのは主導たるご当地怪人ただ一人。
     灼滅するならば――、今がその時だ。
     全員が廃ビルへと忍び込んだのち、入り口の戸を施錠する。これで万が一、配下が戻って来たとしても多少の時間は稼げるだろう。
    (「わあ……バレンタインチョコがこんなに、たくさん」)
     奥へ、奥へと進み、室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)は薄暗いビルの内部をぐるりと見渡した。壁に添って積み上げられた箱の山を目の当たりにし、アズライトの瞳が驚きの色に染まってゆく。
     同じく雨海・柚月(迷走ヒーロー・d13271)も、ビル内の経路を頭に叩き込みながら山積みの段ボール箱を見つめる。
    「怪人も律儀というか、ちゃんとお金払って買ったのでござるね。しかし、いくら安くなってるからとて……この量」
     一括購入できるほどの資金源は、いったい何処から湧いて出てきているのだろう。
     他のダークネス種族と比べても何処か憎めない奴等ではあるが、まだまだ謎は多い。柚月はううん、と首を捻った。
     程なくして、一行は最深部の部屋に辿り着いた。
     扉の隙間から漏れだすのは、『みゃふふ……』などという下卑た笑い声だ。まさに泥棒猫と呼ぶに相応しい。
     戦いに備え、黛・藍花(藍の半身・d04699)の傍らには既にビハインドが寄り添っていた。
    「……行って、あの泥棒猫に悪事の報いを与えましょう」
     まるで合わせ鏡の如く藍花とそっくりなビハインドの少女は、穏やかな微笑を向けてその言葉に応じた。
     古びた扉が、ギギ、と軋んだ音を立てて開かれる。

    「みゃっふふ……あとはこのチョコを運び出すだけみゃ……」
    「……随分ご機嫌だね」
     ふわり、ふわりと豊かな尻尾を揺らすご当地怪人へ、蓮咲・煉(錆色アプフェル・d04035)は茜色の鋭い眼差しを向ける。
     此度の事件に血腥さは感じない――けれど、強大な勢力の暗躍を許すわけにはいかない。
    「マタタビじゃなくチョコに酔った?」
    「みゃふん! 灼滅者、まさか此処を嗅ぎつけてくるとはみゃう……」
     煉が続けて軽く冗句を飛ばせば、怪人はさぞ不機嫌そうに尻尾を垂直に立てた。
    (「ひょっとして、冬毛でもふもふしているのも計算のうちなのでしょうか……?」)
     シベリア猫怪人、サイベリにゃん……(冬毛)。その名に相応しきご立派な毛並みを、唯空・ミユ(藍玉・d18796)はまじまじと見つめる。
     このご当地怪人、見かけによらずかなり狡猾な性質であると事前に知らされていた。何を仕出かすか分からぬ以上、油断はできない。
    (「きっついわ……精神的にキッツいわ……。猫可愛いわ……お持ち帰りしたいわ……」)
     しかしながら、イケナイ欲望が天倉・瑠璃(パンツカイダーでぃけいどぅ・d18032)の脳内でぐるぐると廻る。猫は愛されるべき存在だ。刃を向けるのは、心苦しい。
     しかし、しかしだ。奴は紛れもないダークネスなのである。ふふん、と胸を張って瑠璃はサイベリにゃんへ物申す。
    「クッ、猫の姿をするとは中々頭いいじゃないのご当地怪人……! だが私はそんなので騙され……」
     ちらりと一瞥。
    「騙され……」
     さらにちらっと。
    「騙されんぞッ!!」
     クワッと目を見開き、一喝! 瑠璃の眼力に、思わずサイベリにゃんもぶるりと震え上がった。
     一方で、袖裂・紗津香(高校生殺人鬼・d21533)の眼光は冷徹なものだった。
     キリキリ、とその細い指に得物であるピアノ線を絡める。悪どい猫には、少しばかりキツいお仕置きが必要だ。
    (「猫の姿とはいえ、ダークネスを見逃すわけにはいかない。ここで逃せば、また被害が出るでしょうから」)
     サイベリにゃんがじゅる、と妖しげに舌なめずりをした。奴の手には巨大な爪……縛霊手がぎらりと煌めいている。
     異変に気づいた灼滅者達は、一斉にサイベリにゃんを囲んだのち、攻め込もうとする。
     しかし、その狂刃は一歩早く、灼滅者達へと襲いかかってきた――! 


     その無骨な爪が紡ぎ出したのは、霊的因子を拒む結界だった。
     初撃でありながらも、前衛に属す者達はその威力に圧倒される。
     だが体勢を崩される前に、ミユは槍でその身を支えた。魅力溢れる猫のボディに、一瞬見蕩れてしまいそうになるものの。
    「かわいい、もふもふ、……でも屈しません、参ります!」
     槍を構え直して気を引き締め、いざ突撃。螺旋を描く槍の穂先は、サイベリにゃんの腹を穿った。
     その間にも優夜と霊犬のゼファーが、前衛の灼滅者達へ癒やしをもたらす。それ等を身に受け、瑠璃が古びた床を蹴って飛び出す。
     獲物を屠るが如き俊敏な動作はまるで猫――否、獣と呼ぶに値する。しかしサイベリにゃんは、鬼のそれと化した瑠璃の片腕をすんでの所で掴んで攻撃を防いだ。
    「あんたが狙うのは私達の牙か盾か――それともこっち?」
    「ふん。もう挑発には乗らないみゃうよ!」
     ビシッと指差して、煉の言葉を遮るサイベリにゃん。
     しかし、錆色の娘は鮮やかな瞳を伏せて、「そう? なら、此方から」と余裕を以って返答し、ナイフを虚空に振るった。
     濃い夜霧が猫怪人の視界を覆う。そして黒き帳を裂くようにして、一気に迫り来たのは香乃果だった。
    「みゃみゃうっ!?」
    「怪人さん、なんだか可愛いですね。近くで見るとますますそう思います」
     突然現れた香乃果に驚き、尻尾を激しく上下させるサイベリにゃん。まるで本物の猫を眺めているかのようだ。香乃果は思わずくす、と微笑みを零す。
     怪人の頭を小突いた杖先から魔の光が灯り、瞬く間に起こるのは熾烈な爆発。
     クラッシャーの恩恵でさらに強化された香乃果のフォースブレイクは、サイベリにゃんにとって手痛い傷となったに違いない。
     その後も灼滅者達は、着々とサイベリにゃんを追い込んでゆく。
     序盤から高い攻撃力の技を一気に叩き込んだ結果、想定していた以上に敵の体力は減少していったのだ。
     ――だが、その分。サイベリにゃんの『奥の手』が発動される頃合いも早まっていた。

    (「……? 何かが、おかしいです」)
     影法師を蠢かせ、サイベリにゃんのふわふわな身体を包み込みながらも。藍花はその違和感に気付き始めていた。すぐ傍に漂うビハインドが、不思議そうに藍花を見つめている。
     何故これほどまでに集中砲火を浴びせられてもなお、サイベリにゃんはチョコの山へ手を伸ばそうとはしないのだろうか。
     ……先ずは、情報を整理しなければ。
     14日に起きたバレンタインチョコ強奪事件のその裏で、ロシアン怪人達は巨大化チョコを買い集めていた。
     前回の事件と、今回の事件。違いがあるとするならば、今回は怪人側に充分な準備期間が用意されていたということ。
     わざわざ戦闘中にチョコの山を漁って、巨大化チョコを探す必要がないとするならば――。
     同じく状況を察知した紗津香の唇が、微かに震えた。
    「まさか、怪人はもう既に……」

     巨大化チョコを、既に隠し持っているのでは。

    「……最後の、手段だみゃう……! コサック達が戻ってくるまでの時間稼ぎみゃう!」
     ブルブルと震える手で、サイベリにゃんが懐から取り出したのは可愛らしく包装された小箱だった。
     リボンを解いて蓋を開くと、中には幾つものハート型のチョコが詰め込まれている。
     灼滅者達は、絶対的な悪寒を感じた。巨大化を、阻止しなければ。
     真っ先に柚月が妨害としてサイベリにゃんの腱に斬撃を見舞うが、奴は傷つこうともチョコを手放そうとはしない。
    「ぐ、駄目でござったか……しかし!」
    「ええい、邪魔するなみゃう!」
     苛立った声で灼滅者達に怒鳴った怪人は、己の大きな口へ一気にチョコを詰め込んだ。

     身体が膨れ上がっていく怪人を仰ぎ見て、煉は想う。クライマックスに巨大化戦だなんて、あまりにベタな展開だ。
     これもまた、逃れられぬ運命なのか。
     日曜朝のように『お約束』で幕を閉じることはできるのか。それは分からないけれど。
     ナイフを握る手に、段々と覚悟が込められていく。
    「――ヒーローを、気取ってみようか」
     正義は勝つ。信じる限り、必ず。


    「チョコで巨大化だなんて、ねぇ。らしいと言えば、らしいけども」
     まさか本当に、大きくなってしまうとは。
     いつでも応戦できるよう、優夜は黒炎のオーラを揺らめかせている。
     そうこうしている間にも、サイベリにゃんの身体はどんどん膨らみ、背も伸び、天井を突き抜け……。
     激しい物音と砂埃をたてて、天井が崩れた。大小様々な破片が落下してくるが、灼滅者達は容易く回避していく。
     やがて身体の膨張も止まり、サイベリにゃんは最終的に3階建てのビルを半壊させる程に大きくなってしまった。
     さあ、戦闘再開だ! ――といったところで、奴はここで気づいた。気づいてしまった。
    『し、しまった! 周囲にチョコの箱があるから派手に動けない……このままじゃチョコがビルの下敷きになっちゃうみゃう!?』
     灼滅者達は揃って、顔を見合わせた。

     何やってんだこのロシアン怪人。

    「……というか、なんでチョコなんです? もっと別の方法で巨大化できなかったんですか?」
     ここで藍花がちょっとした疑問を投げかければ、怪人は涙目で正直に答えた。
    『ワタシだって巨大化マタタビとかのが嬉しかったみゃう!』
     ――いや、そういう問題じゃなくて。
     どちらにしろロシアン怪人の暗躍はあまりにも鬱陶しいため、藍花はサイベリにゃんに同情などできないが。
    「卑怯な手段に頼った結果、自分を追い込んでしまったみたいですね……」
     焦っていて頭が回らなかったのだろう。そうに違いない。ミユは巨大な猫足に杖を叩き込み、魔力の爆発を浴びせた。
    「え、えっととにかく、このまま一気に集中攻撃でござるよ!」
     奴が動きづらい、と狼狽えている今こそ好機である。柚月はここぞとばかりに魔の炎を帯びた弾丸を乱れ撃った。
     燃え移った炎が、怪人の美しい冬毛を容赦なく燃やしていく。熱い、熱い! と跳ねる猫足。揺れる地面。
    『おのれ灼滅者! 大事な、大事な冬毛を……! 許さないみゃう!』
     頭上から響き渡る声は、激しい怒りを湛えている。怪人が放ったビームが、通常のサイキックよりも強力であることは目に見えて明らかだった。
     そのビームの標的となってしまったのは――優夜、だ。
     だがしかし。彼は全身に走る痛みなど気にも留めず、静かな怒りを籠めて、
    「……ぶっ飛ばす」
     己に潜む『闇』と同じ姿をした猫の影が、体長が倍以上もあるシベリア猫へと襲い掛かった。
     黒き爪が、巨大な猫の足に深い深い痕を残した。
     息も絶え絶えなサイベリにゃんの身体に、またもやピアノ線が絡みつく。
    『あ、ああ……大事な、冬毛、が……!!』
     紗津香の指が素早く糸を繰れば、巨大な猫の身体は体毛ごと細切れになって引き裂かれた。
    「猫がチョコを食べるのは危ない。猫らしく冬はこたつで丸くなっていなさい。
     ……って言ったって、もう手遅れだけど」
     ふわふわとした大量の猫毛が、青天井となった廃ビルの床に降り積もる。

     突然、ガタン、と物音がした。灼滅者達が一斉に振り返ってみれば、ビルの入口にコサック戦闘員の一部が帰還してきていたのだ。
     主導たる怪人が灼滅されたのだ。思わず段ボール箱を落としてしまったのは、無理もないだろう。

     さて。此処から、ちょっとした延長戦の始まりだ。


     ビル内部に横たわるのは、20名ものコサック戦闘員達だ。
     ロシアン怪人や配下も全て撃破し、奪われたバレンタインチョコも殆どが無事だ。
    「これで、全員?」
     煉は確りと人数をかぞえなおしたのち、皆と共同でチョコの全回収に取り掛かる。
    (「巨大化チョコが混ざってるかもしれないし……食べるのも、ね」)
     押収されていたチョコ達を整理しながら、紗津香はチョコの処理に悩みかねていた。
     やはり、学園で調べるのが得策だろう、と思い至る。

     武蔵坂学園はしばらくチョコの香りに支配されてしまうであろうが、ご当地怪人に世界を奪われるよりはよっぽど良い。
     大量のダンボールを平積みにし、持ち帰ろうとしたその時。
     ふと、香乃果の脳裏に過ったのは、自分達の帰還を心待ちにしている少年のことだった。
    (「――花深さん、チョコ欲しいのですね。帰ったら、少し遅れたけど感謝チョコをお贈りしようかな」)
     例えば、純愛。例えば、親愛。例えば、友情。例えば、感謝。
     想いとは、人の数だけ在るだろう。きっとどれもが、掛け替えの無いたったひとつの形を持っている。
     故に、あるはずがないのだ。
     犠牲なるべき、人の想いなど。
     犠牲になるべき、バレンタインチョコレートなど。

    作者:貴志まほろば 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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