そこは新潟南部に位置するとある倉庫街。
夜の夜陰に紛れ、倉庫から、外の駐車場へとコサック戦闘員達が次々にチョコレートの入った段ボールを積み込んでいる。
「ほほほ、灼滅者のおバカちゃん達はみごと囮に引っかかってくれたみたいね」
倉庫の中、大量のチョコの前で個人用に用意したテーブルで、豪華なステーキを食べている牛頭の怪人・ロシアンにいがたビーフ怪人がナイフとフォークを持ちながら高笑いを行う。
「さぁコサックちゃん達、それらを運び出したら大人買いしたバレンタインデーの売れ残りチョコの方も積み込んでおいて! まったく潤沢な資金さまさまよね!」
ロシアンにいがたビーフ怪人の指示のもと、コサック戦闘員がさらにチョコレートの入った段ボールを運び込む。これだけのチョコレートが集まれば、その中にどれだけ巨大化チョコが紛れているだろうか。
「ふふふ……いいわ、とてもいい! この巨大チョコの力を使い、ゆくゆくは日本、いや世界を……」
ーーガタンッ。
と、そこでコサック戦闘員の1人が足をつまづき段ボールを落とす粗相を……。
ギロリと目を見開き立ち上がる怪人。
「ちょっと! 大事なチョコなのよ! もっと慎重に扱いなさい! 去勢するわよ!」
ペコペコ謝りつつ作業に戻るコサック戦闘員。
ロシアンにいがたビーフ怪人……彼女、いや彼は、元々は新潟ブランド牛肉の怪人だった。その牛肉は……去勢された牛である事が条件(オスの場合)であるという。
「さぁ作業を続けなさい! ロシアンタイガー様がご当地幹部の頂点に立つその日まで、私達に休む暇は無いわ!」
「バレンタインデーのチョコを狙ったご当地怪人が、チョコを食べたら巨大化したって言う話を聞いてる?」
教室に集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が皆に聞く。
バレンタインデーのチョコを狙ったご当地怪人の事件は解決した。しかし、その際にチョコを食べた怪人が巨大化するという事例がいくつか報告されたのだ。
「どうやら彼らは、この『巨大化チョコ』を狙っていたみたいなの」
ご当地怪人達はバレンタイン当日の事件を囮にして、日本全国で多数のチョコレートを集めており、集め終わったチョコレートを彼らの拠点に運び込もうとしているらしい。大量の巨大化チョコを入手されれば、大きな驚異になることは間違い無い。なんとか阻止する必要がある。
「みなに向かってもらうのは新潟南部のとある町にある倉庫よ。倉庫街みたいな感じで付近に住民はいないし、時刻は夜中になるから一般人が近くにやってくる事は無いと思っていいわ」
一般人がいないとはいえ、逆に怪人達の人数はかなり多い。倉庫内で指示を出している怪人が1人に、コサック戦闘員が20人いると言う。
接触タイミングは夜中。
怪人は倉庫内にいる。チョコレートの入った段ボールが積み上がっている目の前で、机とイスを運び込んでおりそこでステーキを食べている。
コサック戦闘員はチョコレートの入ったダンボールを、倉庫内から倉庫街の駐車場に止まっているトラックへと人力で運んでいる。
運び始めてトラックに半分まで積み込んだ所から、その後残りすべてを運び終わりまでの間なら、どのタイミングで襲撃を開始しても大丈夫との事だ。
「正直、ご当地怪人だけでなくコサック戦闘員が20人もいたんじゃ、正面から全力でぶつかるのは得策とは言えないわ、何か作戦を練った方が良いかもね……」
珠希が腕を組みながらいう。
ちなみに戦闘になった場合、ご当地怪人はご当地ヒーローとクルセイドソードとガトリングガンに似たサイキックを使い、得意能力は気魂、戦い方は守り優先。
コサック戦闘員20人は誰もがバベルブレイカーに似たサイキックを使い、戦い方は攻撃一辺倒。
「それとご当地怪人は巨大化する可能性もあるわ。巨大化するとパワーアップしちゃうから、十分注意して」
作戦の例としては、コサック戦闘員が倉庫の外にいる隙に突入、ご当地怪人に戦いを挑むパターン。これはコサック戦闘員達が戻る前に勝負を決めなければ危険な事になる。逆にさっさとご当地怪人さえ倒してしまえば戦闘員の指揮をとるものがいなくなり作戦は失敗するだろう。
2つ目としては、外で働いているコサック戦闘員を個別に撃破して数を減らしていく方法もある。ただし敵に気がつかれると正面決戦になって全兵力と戦う事になり、その場合はかなりキツイ。
はたまた戦いを避ける方法もある。チョコレートを大量に奪取、または破壊する方法だ。しかし破壊方法によって巨大化する力がなくなるかどうか不明であるため、博打要素もある。
そこまでいうと珠希はみなの顔を見て言う。
「バレンタインデー当日にロシアのご当地怪人は動いていなかったわ。つまり、かなり周到に計画されていた作戦なんだと思う。あ、そういえば怪人の名前を言ってなかったわ。そいつの名はロシアンにいがたビーフ怪人、巨大化した場合は相当強いから気をつけて!」
参加者 | |
---|---|
橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616) |
鹿野・小太郎(バンビーノ・d00795) |
日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441) |
月雲・悠一(紅焔・d02499) |
服部・あきゑ(雪雨に人類グシャー・d04191) |
黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566) |
天草・水面(神魔調伏・d19614) |
ヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004) |
●
足音を消し夜陰に紛れ、倉庫街を無言で走る人影たち。
やがて人影たちは足を止めると物影でそっと身を潜める。
彼らの視線の先、その倉庫からはダンボールを抱えたコサック戦闘員達が出てきては、そのまま別の場所へと運んで行く。
少し観察していると戦闘員は全員で倉庫に入ってダンボールを抱えると、そのまま列を作ってどこかへ運んで行くらしい。
身を潜めている彼ら――灼滅者達はお互い頷き合う。
踏み込むなら全員が倉庫からダンボールを運び出したタイミングだ。それなら倉庫内には……。
そしてそのタイミングがやってくる。
奇襲開始の合図を送る役である鹿野・小太郎(バンビーノ・d00795)が、ここにいない唯一のメンバーにメールを送りつつ口の中で呟く。
「オレ達にバレたのが運の尽き、ってね」
音を立てずに携帯を閉じると、黄緑の瞳で戦闘員がいなくなったのをもう一度確認。
そして、スッと立ち上がり仲間達へと合図を送ると、小太郎を先頭に灼滅者7人は一気に倉庫へと駆けだしたのだった。
「御許に仕える事を赦したまえ……」
倉庫に跳び込むなりスレイヤーカードを解放したのは橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)だ、出現した護符を左手に構える。
「な、何よあんたたち!?」
倉庫にあるダンボール十数個の前で食事をしていたロシアンにいがたビーフ怪人が驚く。
だが、それに答える間すら惜しい。
瞬兵の手から裁きの光が放たれ直撃、さらに天井の暗がりから服部・あきゑ(雪雨に人類グシャー・d04191)が一直線に落下、ビーフ怪人を斬りつける。
怪人が咄嗟に出現させたマシンガンの砲身であきゑに殴りかかるが、あきゑはそれをヒラリと避け、逆に入れ違いになるよう突っ込んでくるのは月雲・悠一(紅焔・d02499)。
「余所見が出来る程、俺達は甘くはねぇぞ!」
怪人がちらりと襲撃者達に視線を向けるが、誰も彼も事前に打ち合わせを行ったかのように意思統一された連携を撃ちこんでくる。
「小粒のくせに……めんどくさいわね!」
怪人が舌打ちするのを聞き、天草・水面(神魔調伏・d19614)はここまでの作戦は満点だろうと感じていた。
そして……。
怪人が戦闘を仕掛ける6人に気が向いている隙に、チョコレートのダンボールが置いてある場所へと向かうのは日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)だ。
チョコの入った段ボールを怪人から遠ざける手はずだったが、戦闘員が一斉に運んでいるため、最後の回収前の今は倉庫に十箱以上が残っていた。
「ん? ちょっとあんた! 何をするつもり!」
気がついてかなめに叫ぶ怪人、だが。
「……どっせいっ!」
運んでなんとかするのが無理と判断するや否や、かなめは最下段のダンボールに気合と共に掌底を叩き込む。
ドゴッ!
掌底を叩き込んだ場所を起点に、ダンボール十数個が一気に倉庫の壁際まで吹っ飛んでいく。
「なっ!?」
「バレンタインの作戦でわたし達に手の内を見せたのが運の尽き! あなた達がチョコレートを摂取すると巨大化するびっくり甘党さんなのは、全部まるっとお見通しなのですよ!」
仁王立ちでビシィと怪人を指差すかなめ。
「えものはたしかにいただいたなのです!」
「吹っ飛ばしただけじゃないの!」
Ⅲ世な大泥棒っぽく言うかなめに怪人がツッコミを入れる。
「ってツッこんでる場合じゃないわ! コサック! 敵襲よ! 戻ってらっしゃい!」
大声で叫ぶ怪人。
だが、眼鏡を輝かせて黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)がフッと笑う。
「無駄よ」
その不敵な笑みに怪人が苦虫をかみつぶす。
「……そう、音を遮断したのね。ずいぶんと戦い慣れてるじゃない」
正直、サウンドシャッターが倉庫内だけに適応されるか不安ではあったが、倉庫外では未だ戦闘が行われているわけでもなく、戦場としてはここだけだと思って良い。
「ふぅ、まぁいいわ。どうせコサックたちはあのチョコをトラックに積んだら戻ってくる……それまでの間、私が可愛がってあげるわ」
牛頭のおネェ怪人が笑みを浮かべながらマシンガンを構える……戦いが始まった。
●
少しだけ時間を巻き戻そう。
「(あのこには僕が倒れた時みたいに、仲間の指示に従うよう言っておきましたが大丈夫でしょうか……)」
倉庫外にある駐車場を確認できる物影で犬変身を解き隠密状態で待機するのはヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004)だ。
ヴィンツェンツの役割はずばり陽動。
仲間達が怪人を倒すまでの間、なんとかしてコサック戦闘員20人を自分1人で足止めしなければならない。
やがて小太郎からのメールが来ると同時、ヴィンツェンツは目星を付けていたトラックに矢を放つ。
だが、その矢は残念ながらトラックを爆発させるには至らなかった。ライターで直接との考えが頭を過るが、コサック戦闘員がここにやってくるまで時間は無い。即座に矢を番え2射目を放つ。
ドッ!
その矢は狙い違わずトラックのタイヤを破裂させる。
「コサ、コサ、コサ……」
ダンボールを運んでくる戦闘員の姿が見え、ヴィンツェンツは即座に物影へと身を隠し、 先ほどのメールを文面そのまま折り返し送信する。
「任務、完了です」
●
「あーたたたた……ほぁたっ! 絶招「驟雨」なのですッ!」
腕をクロスし顔をガードする怪人に、ガード上からかなめの連打を浴びせ続ける。
「ふっ、まだまだ、ね」
かなめの連打が終わると同時、ゆっくりとガードを解く怪人。
「輝く御名の下、罪深き盗人を裁きの光にて照らし清めん……」
それは瞬兵の声。
かなめがバックステップを取ると同時、瞬兵が空に振り上げた手を勢いよく振り下ろす。
「ジャッジメントレイ!」
裁きの雷の如く光が怪人を貫く。
ブスブスと煙を上げつつ……しかし1歩、また1歩と灼滅者へと近づいて来る怪人。
「あらあら、その程度なのかしら?」
「おいおい、どうしたおネエ野郎、守ってばっかじゃねえか?」
挑発するのはあきゑだ。怪人がそちらを振り返り。
「そうよ? 悪い?」
「はっ! キン●マと一緒に肝っ玉まで抜かれちまったのか? 度胸も愛嬌もないおネエなんて、男にも女にもモテねーぜぇ」
「あらやだ、下品な子はモテ無いわよ? それに、大人の世界じゃ、耐え忍ぶ女がモテるのよ?」
「じょーだん! そいつぁ忍びの教えだろうが」
あきゑの挑発に乗りつつ、しかしダラダラと会話を続ける怪人。
なにか……違和感を……――。
その時だ、小太郎の携帯がポケットの中で震える。
「陽動成功と無事のお知らせ、来ましたよ」
小さく呟いた小太郎だったが、地獄耳なのか怪人が「どうかしたの?」と聞いて来る。
小太郎は眠たげな表情のまま淡々と怪人へと近づき。
「失恋の傷、抉ったらすまんね」
質問に答えずトラウマを思いださせる拳を叩き込む。
「ぐっ……ああ、どうして私のチョコを……」
小太郎の拳をガッチリ受け止めつつ、何かのトラウマを視る怪人。
「いやいやおかしいでしょ。アンタ、ビーフ怪人ならチョコじゃなくてビーフ渡せよ」
伸縮自在な特性のロッドを展開させつつ怪人を殴る水面。
対して怪人は僅かに身を捻り、首を傾け、水面の攻撃を肩で受け止める。
「何がおかしいのかしら?」
「新潟ロシア化はともかく、ご当地メニューへの愛まで捨てちまったら、ご当地怪人じゃねーじゃん。そんなんじゃ相手が誰だって断るって」
水面の言葉に解りやすく怒りマークを浮かべる牛頭。
「うっさいわね! バレンタインはチョコって決まってるじゃない! それが乙女心よ!」
「いや知らない……つーかアンタ、そもそもビーフ怪人じゃん」
「解らない子ね! ビーフは大切だけどチョコをあげたいのが乙女心なのよ!」
どうしても納得できない水面。
「そういえば……お肉とチョコって相性いいらしいわね。にいがたビーフとチョコか……」
ふと呟いた摩那を怪人が見つめる。
「ちょっと、その情報は確かなの!?」
なんか情報に食いついて来た怪人。
「え、ええ」
頷く摩那。
しきりにうんうん頷く怪人、「良い情報ありがとう」となんか感謝された。
「いいえ、どういたしまし……って、そうじゃなくて」
「なに?」
「あ、えっと……そう、どうしてあなた達はチョコを食べて巨大化するの? 『うまいぞー!』って感激のあまり? それともお米と麹菌ができるみたいに相性?」
意外に素直だった怪人に毒気を抜かれつつ、同じように素直に聞きたかった事を質問してしまう摩那。
「ああ、それは……」
と、言いつつ腕を組んで考えだす怪人。そして――。
「あれよ、なんだかんだよ」
「ご当地怪人って連中は……なんでこう、締まりが無いんだ」
思わずコケそうになるのを踏ん張りつつ悠一がぼやく。
そのまま短杖を構えて怪人へと殴りかかる。
「だいたい! 最終目的の『なんやかんやで世界征服』ってなんだ! ふわっとし過ぎだろ!」
悠一の短杖を腕の外側で横にいなす怪人だが、即座に悠一の周り蹴りが後頭部を狙う。
避けられないと判断するや否や、蹴りへと振り向いた怪人が悠一の足へと頭突きをかまる。
「ぐっ……呆れてばっかりもいられないか」
「私としては油断していてくれてかまわないのよ?」
「いや、油断も手抜きもしないさ。さっくり仕留めさせてもらう」
「……残念だわ」
●
一方、トラックをパンクさせたヴィンツェンツだったが、コサック戦闘員達が不思議な行動に出たため仲間のいる倉庫へ向わず再び物影に隠れていた。
コサック戦闘員達は20人でトラックを囲むと、時計回りにコサックダンスを始める(パフォーマンス)。
そして、ぐるりと一周したと思うと4人を残して16人がトラックに手をかけ。
『コッサックー!』
一斉に怪力を引き出してトラックを持ち上げたではないか。もしかして怪力無双のようなESPだろうか。
その後、16人がトラックを支え、2人がタイヤの交換に移るようだ。
そして問題が残りの2人、どうやら怪人に報告に向かうのか倉庫の方へと戻って行く。
「2体1……いや、迷ってる暇は無い、か」
●
「やっぱり、普段と違う戦い方は違和感あるなぁ。やり辛いぜ」
普段の戦鎚を使わず戦う事に愚痴を言う悠一だが、その不満をぶつけるように怪人へと魔力の連打を叩き込む。
カクっと怪人の膝がわずかに折れる、その隙に小太郎が光の剣を手に怪人へと迫る。
「とう。去勢斬り」
抑揚無く技名を呟く小太郎だが、それはもともと怪人の技である。
ガトリングの柄で光の剣を受けると。そのまま引き金を引き周囲に集まる灼滅者に嵐のように弾丸を撒き散らす。
一番傷ついている者をエスツェットが庇い、さらにサウンドシャッターを使っている摩那をかなめが庇う。
「秘技! 水簾断ち……なのです!」
そのままカウンターで蹴りを放つと同時、真空破が怪人を襲う。
顔を庇う怪人、その間隙をぬって水面が非実体化させた剣で攻撃。
防戦一方な怪人に水面が言う。
「わかるか? 今のアンタは男でもねえ女でもねえ、ましてや怪人でもねえ。ドナドナされるだけの哀れな子牛なのさ」
だが、顔を庇う怪人の瞳が、その腕の隙間からギロリと光る。
即座に察したのは瞬兵だ。
巨大な鬼の腕へと走り込みながら変異させ、怪人が懐からナニカを出すのを阻止しようと突き出す。
しかし、ガトリングではなく虎の子のクルセイドソードで瞬兵の腕を受け止め、空いている手でそのナニカ――チョコをぱくりと食べる。
「あっ」
そこになって全員が気が付く。
「ふっ……ダンボールを投げて安心していたの? 切り札っていうのはね、いざという時にすぐに切れるから切り札なのよ」
そして巨大化する怪人、倉庫の天井スレスレだ。
「これは、気を抜けないね……」
「ええ、気合入れていきましょう」
見上げながら呟く瞬兵に摩那が同意する。
「来いよ! ロシアンにいがたおネエ怪人!」
啖呵を切る淡紅を上から睨んでくる怪人。
「キンタ……ゴホン、防御なんて捨てて掛かって来い!」
●
「ああ? こっから先は行かせねーって言ってんだろうが」
報告に戻ろうとしたコサック戦闘員2人の前に先回りしたヴィンツェンツが、コサック達に剣を突き付ける。
たぶん、この選択が現状できる一番の選択肢だろう。
コサック戦闘員が顔を見合わせた後、たった1人のヴィンツェンツを見て……にやりと笑った。
●
「頑張らないと……」
さっきまでとは段違いな威力の攻撃をくらい、なんとか立ち上がるのは瞬兵だ。
「ホント何でもアリだなご当地怪人って奴らは」
悠一が頭上から振り下ろされてくる怪人の剣を力任せに短杖で受け止め。
「ま、わざわざ的がでっかくなってくれたんだ。それに……コイツを仕留めれば全てが丸く収まる!」
「その通りなのです」
瞬兵と同じく魂の力だけで戦い続けていたかなめが同意する。今回の灼滅者達は回復より攻撃を重視しており、その分被ダメージの蓄積が早かったのだ。
ここまできたら取れる道は一つ。
「必殺!」
かなめが巨大な怪人の足元に手を添え。
「徹甲爆砕拳ッ!……なのですッ!」
一瞬で鬼の力を得た掌底が巨大怪人の足を吹き飛ばし。
『ま、まさか……』
野太い声が上から聞こえ、そのまま怪人がバランスを崩して仰向けに倒れた。
「終わりだね」
視界に移るは赤毛の女。
ズンッ!
怪人の心臓の位置へご当地キックを叩き込むあきゑ。
「――― 千枚通し」
ドクンッ、怪人の心臓が大きく跳ね……だんだんと小さくなっていく。
『どうして……コサック達が来るまで耐えれば……私の勝ち、だったのに……』
倒れた怪人の顔の側へやってくるのは摩那。そして――。
「覚悟の差……かな」
そう、少しでも長期戦となる戦い方をしていれば、倒れていたのは灼滅者だっただろう。
だが、勝ったのは灼滅者達だ。
攻撃に特化する……その覚悟の差は、怪人が思っていたより大きかったのだ。
「ヴィンツェンツさん、大丈夫ッスか?」
怪人が爆発した後、外へ出ると倉庫の壁に寄りかかるようにぐったりと地面に座るヴィンツェンツがいた。
「ええ、まあ」
攻撃に特化した覚悟もそうだが、たった1人で陽動と足止めを賄ったヴィンツェンツの功績も大きい、水面は肩を貸すと最後を見届ける為に駐車場へと仲間と向かう。
果たしてそこには……。
トラックが未だチョコを積載した状態で止まっていた。
さすがに2分で倒す事は出来なかったが、予想しうる最速タイムにて怪人を灼滅した事は大きい。なんせ、巨大化した時点でほとんど怪人の体力も残っていなかったのだから……。
トラックにはほぼ全てのチョコがダンボールに入って残っていた。
ふと、これだけあるなら……と小太郎が仲間を見回す。
「一個ぐらいなら、駄目かな?」
さすがにそれは……疲れ果てた灼滅者達の顔に苦笑いが浮かぶのだった。
作者:相原あきと |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年2月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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