夜の林の中を獣が駆ける。まるで道があるように迷う事も、速度を落とす事もなく進むと、そこには小さな地蔵菩薩があった。
立ち止まった獣を月明かりが照らす。それはまだ子供の灰色の狼。額には白い三日月のような毛が混じっていた。
「ウオオオォォォォォン!」
獣は猛々しく咆える。その声は振動を持って大気を振るわせた。
「チッ、チッ、チッ」
どこから現われたのか、夜だというのにスズメの鳴き声が林に響く。
羽ばたく音と共に地蔵の上に着地したそれは、確かにスズメのような形をしていた。
スズメはきょろきょろと周囲を見渡すと、灯りを見つけて羽ばたく。
だがその飛翔は続かない。何故なら足には鎖が繋がっていて、大地へと縫い止められていたからだ。
ジャランジャランと金属の音が響く。スズメは一度木に止まると、手の届くような低空を飛び、一路灯り目指して飛び去る。
その後には既に狼の姿は無く、ただ月明かりを受けた地蔵が変わらず佇むだけだった。
「やあ、来てくれたね」
旅行情報誌を読んでいた能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が、教室で灼滅者を出迎える。
「またスサノオが現われて古の畏れを生み出すみたいなんだよ。次の場所は愛媛県だね」
スサノオは愛媛県の町に近い山間に現われる。
「古の畏れはすぐに町に向かい、そこで人々を襲うらしいんだ。直接危害を加える訳じゃないみたいだけど、スズメに出会った人は事故を起こしてしまうみたいなんだよ」
放っておけば交通事故が多発して死者まで出てしまう。
「だから事故が起きる前にこの古の畏れを退治して欲しいんだ」
古の畏れによる最初の被害が出るのは、食事を終えて車で帰る男性客だ。場所は分かっている。そこで待ち伏せすれば遭遇出来る。
「古の畏れはスズメの姿をしているんだ。恐らくだけど、夜雀と呼ばれる妖なんだと思うよ」
普通のスズメよりも一回り大きい程度のサイズで、空を飛んで移動している。
「でも飛んでいると言っても、鎖に縛られているみたいでね。普通に手を伸ばせば届くような位置までしか上昇できないみたいなんだ」
だから近接攻撃が届かないという事は無いだろう。問題なく戦闘が出来る。
「スサノオが何故こんな行動を続けているのかは分からないけど、一つずつ片付けていくしかないからね。どうかお願いするよ」
誠一郎の言葉に灼滅者は頷く。
「そうそう、夜雀が最初に現われるのは鯛めしが美味しいと有名なお店でね。みんなの時間があれば食べてくるといいよ。僕も一度は食べに行ってみたいねぇ」
そう言いながら誠一郎が広げた本には、愛媛の鯛めしについての記事が載っていた。
参加者 | |
---|---|
水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532) |
ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640) |
神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337) |
エリアル・リッグデルム(ニル・d11655) |
永舘・紅鳥(途切れぬ黒焔・d14388) |
レイッツァ・ウルヒリン(紫影の剱・d19883) |
天月・神影(機械仕掛けの鳥籠少女・d21060) |
武藤・雪緒(道化の舞・d24557) |
●夜の町
日も落ちると吹き抜ける風が一層冷たくなってくる。暗い闇を追い払うように周囲には電灯が灯った。仕事帰りの人が一杯やっていこうと明るく賑やかな店へと集まっていく。
そんな町の一角に、工事現場のようにコーンやロープで立ち入り禁止の場所が作られていた。
「こっちは準備できたよ」
封鎖用にロープを張った水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)が仲間に声をかける。作業をする灼滅者達は、作業員の服を着て周囲の人の目を誤魔化していた。
「たたかったらきっとおなかがすくでしょうし、みんなでたいめしをたべてからかえりましょうよ。そのためにも、きっちりおしごと、です!」
そう言って元気良く天月・神影(機械仕掛けの鳥籠少女・d21060)は、よいしょよいしょと小さな体で荷物を運ぶ。
「ガス漏れがこの一帯で発生したので、その原因を探っています。万が一の事があるので大変申し訳ないのですが少しのあいだ避難して下さい」
作業員に扮したエリアル・リッグデルム(ニル・d11655)が、通行人に呼びかけて誘導する。
「いやー、すいませんねー。こっちもいきなりでまいってんスよー」
その隣で永舘・紅鳥(途切れぬ黒焔・d14388)も、文句を言う一般人相手にペコペコと頭を下げてやり過ごした。
「ここは危険だからどいて。邪魔だよ」
無視して通ろうとする人に対し、レイッツァ・ウルヒリン(紫影の剱・d19883)が一睨みすると、威圧され大人しく引き下がっていく。
「夜雀って初めて聞いたなあ」
舌切り雀なら知ってるけれどと、闇を纏ってその異形なる姿を隠した武藤・雪緒(道化の舞・d24557)は、設置作業を終えて今か今かと雀がやって来るのを待ち侘びる。
「厄災を与える妖怪、なんですね。……伝承に残るような存在と相対するなんて、ちょっぴり、神妙な気持ちになりますねえ」
「……見た目は、可愛らしいのに、やる事は、えげつない、ですね……」
隠れて遠くに異常が無いか目を凝らし、ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)はこれからまみえる相手の事を考える。
隣で違う方向を見張る神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)は、悪事を働く雀を思い浮かべようとするが、イメージが湧かずに小さく首を傾げた。
●夜雀
「……雀、古の畏れ、来ました……」
「報せないと!」
低空を飛ぶ影を視界に捉えた蒼が伝えると、同じ方向を確認したロロットはホイッスルを吹き鳴らす。
「チッ、チッ、チッ」
可愛らしい鳴き声と共に、通常の雀より一回り大きなものが飛来する。周囲を旋回すると駐車してある一台の車の上に止まった。
「おとをとじこめますね」
「……人払い、を」
神影が結界を張り周囲の音が外に漏れなくした。同時に蒼は殺気を放って一般人が入ってこれなくした。
「それじゃあ雀狩りを始めますかー」
闇の中からぬるりとスライムの如き雪緒が現われる。カツカツと髑髏の口から青白い炎が生み出された。炎は周囲に放射され雀を包み込み体温を奪う。それは炎は炎でも、冷気を放つ冷たい炎だった。
「チチッ」
雀は突然の攻撃に驚き、飛び立とうとする。
「イグニッション!」
戦闘服へと姿を変えた瑞樹の足元から、影が鎖の形となって伸びる。その先端の錐が、炎を纏って雀を襲い翼を抉る。火に巻かれて雀はバランスを崩して落下する。
「夜雀……見た目は可愛いのに不吉を呼ぶとはね」
エリアルの力を宿した瞳がその動きを正確に捉えていた。手にした武器の先端には棘の付いた鉄球。それをぐるりと体を回転させながら振り抜く。
「ヂッ」
その一撃は雀に直撃し、吹き飛ばされた雀は車に叩き付けられる。衝撃で車の窓が割れた。何とか落下する前に体勢を立て直して飛翔する。だがそこにどす黒い殺気が放たれ雀は飲み込まれた。
「とーりさーんこーちら、手ーのなーる方ーへー……なんつって。始めますか!」
その衝撃で高度の下がったところへ、殺気を放った紅鳥はガントレットに炎を纏わせて待ち構えていた。落ちてくる雀に拳を放つ。
「チチッチチッ」
甲高く雀が鳴く。すると突然紅鳥の目が眩み拳が空を切った。
「夜泣き雀は舌切れチュンちゅん……そんな面倒なことしないで灼滅するケドね」
準備していたレイッツァが、すぐに霊力を放って紅鳥の目を癒し、視界に光を戻す。
雀は素早く飛び回り鳴く。その声を聞くと意識が飛びそうになる。皆が警戒して武器を構えた。
「とりかごのかぎをここに」
神影の手に杖が現われる。そこに魔力を込めて雀に飛び掛かる。雀は避けようとしたが、杖はその軌道に合わせて修正され、背中を打った。
「ヂィッ」
息を絞り出すような鈍い声と共に、飛ぶ速度が落ちる。
「……奈落へ、堕ちろ……」
蒼の腕が異形化し、振り抜かれる。暴風を伴ったそれを雀は躱す。だが風圧に押されてバランスを崩し、地面に着地した。そこへ追撃しようと近づく灼滅者達。
「チーチッチッ、チーチッチッ」
雀が威嚇するように鳴くと、思わず灼滅者の足が止まった。体が痺れるような感覚に襲われる。
「スズメさんと歌比べ、ですね」
その声に対抗して、ロロットが手にしたエレキギターをかき鳴らす。そのメロディに合わせて歌が紡がれる。声は美しく響き渡り、雀の鳴き声を掻き消した。
「チチッ」
雀は羽ばたく。ジャランジャランと金属の音が響く。繋がれた鎖が邪魔をして高くは飛べない。そこに瑞樹が仕掛けた。歪に大きくなった腕で雀を叩き落す。
「夜に鳴いたらご近所迷惑だよ」
「その鎖が痛々しいよ。空を飛べたらこんな攻撃を受けなくても済んだのにさ」
地面に叩きつけられるように落下する雀に、複雑な気持ちを押し殺してエリアルが踏み込み、禍々しい鈍器のような杖に魔力を込めて振り抜く。雀はアスファルトに叩きつけられバウンドしたところを打ち抜かれ、コーンを貫いて地面を転がる。
「ヂヂィッヂィッ」
全身を汚した雀は怒ったように鳴き声を変え、一直線に飛翔する。エリアルは迎え打とうと杖を振るうが、雀は素早く旋回してエリアルの後ろを取る。
「チ……チ……」
背後からの囁くような声。エリアルは振り向き様に杖を一閃させる。それは雀を直撃した。そう思った瞬間、雀が光輪で受け止める。否、それは雀では無く人の形をしている事に気付く。攻撃を受けたのは紅鳥だった。
「イタタタ……攻撃相手を間違ってるよ! 敵は……そこだ!」
紅鳥が腕を振るう。闇を裂くように光輪が軌跡を描き、隠れるように低空を飛んでいた雀を斬り裂いた。
「幻覚を見せるなんて厄介だね」
レイッツァが癒しの風を起こし、エリアルに掛けられた幻術を解く。
「すまない、助かるよ」
エリアルの言葉に紅鳥が軽く手を振り、レイッツァも任せてとウインクした。
「チッチッ」
雀は次に紅鳥に向けて飛ぶ。だがそれを邪魔するように影が広がった。雀は避け切れずに影に飲み込まれる。
「動きの速い獲物はまずは捕まえないとねー」
それは雪緒の足元から伸びる影だった。動きが止まったところへ神影が異形化した腕を打ち込む。
「ひとにめいわくをかけるとりさんは、めっです!」
●雀の鳴き声
「ヂィッヂッ」
雀は傷ついた体で、威嚇するように鳴く。それを受けて声が止まったロロットに狙いを定め、真っ直ぐに飛翔する。
「……させません。……絡めとれ……、封じろ……」
その前に蒼が立ち塞がり、手が踊るように跳ねる。すると星の煌きのように宙に光が反射し、鋼糸が雀を拘束した。
「ヂヂッ」
「ありがとう! 行きますよ!」
ロロットはオーラを纏い、動けない雀に拳の連打を浴びせる。雀はもがいて拘束を解き、ロロットの背後に回り込もうとする。
「スサノオは畏れを生み出して、どうしたいんだろう?」
こんな人に害を与える存在を増やされては堪らないと、瑞樹はロロットの背を守るように剣を振るい、雀を牽制して近づかせない。
「さっきはよくもやってくれたね……」
仲間を攻撃させられた怒りを押し殺し、エリアルは鉄球を振り下ろす。雀は俊敏に躱した。だがそこに待ち構えていた紅鳥がガントレットで殴りつける。すると放たれた霊糸が絡みつき雀を縛る。
「腹もへってきたしパパッと終わらせるぜ!」
そこへエリアルの鉄球が跳ね上がるように雀を襲う。
「チチッ」
雀の鳴き声がエリアルの目を眩ませる。だがそれは視界を奪う前に効果が消え去った。
「あーあ、僕もお腹すいたなぁ。早く灼滅して、愛媛名物食べて帰ろ?」
準備していたレイッツァがすぐさま霊光によって打ち消したのだ。雀が鉄球の強打を喰らって打ち上げられた。ジャランジャラン。空高くまで飛びそうな勢い、だが鎖がピンと伸びて喰い込み、体が引き千切られそうな勢いで止まる。
「くるしそうです。でもみんなをまもるためですから」
神影の剣が雀の翼を斬り裂く。中ほどまで千切れた翼は飛ぶバランスを保てずに落下する。
「まあ妖怪の類なら、退治するしかないよね?」
雀よりよっぽど人間離れした姿をした雪緒が、その体から杭を撃ち出した。拘束回転した杭は避けようとする雀を巻き込み、地面に穴を開ける。
「チ……チッ……」
雀は逆襲に飛び跳ねるように接近すると、雪緒の耳元で囁くように鳴く。雪緒は払いのけようと杭を撃ち込む。だがそこに居たのは神影だった。瑞樹が咄嗟に剣を当てて軌道を逸らす。杭は神影の後ろの車に突き刺さった。
「ほんとに厄介だね、囁くような鳴き声に気をつけて!」
レイッツァが雪緒に掛けられている幻術を解きながら、皆に向かって注意する。
それら一連の行動を見ていた雀は、まずはレイッツァを倒すべき敵として認識した。翼の傷を塞ぐと、低く飛び出して一気に襲い掛かる。レイッツァの目に向かって嘴が突き立てられようとした時、蒼の鋼糸が道を阻むように張り巡らされた。
「……阻め、捕らえろ……」
だが雀は曲芸飛行のようにその糸を掻い潜り、レイッツァの目を抉ろうとする。しかし掻い潜る僅かな時間がレイッツァに避ける間を与えた。横に踏み出すと、嘴はこめかみを掠めて、雀は通り過ぎる。
「あっははは、痛いじゃない。お返しをあげるよ!」
血がこめかみから頬を伝う。それを拭い、レイッツァは笑いながら幾重にも風の刃を放った。雀はそれを軽やかに躱す。しかし美しい歌声が聞こえ出すと雀の飛行がふらつき、風の刃がその身に当たった。
「どうですか? 私の歌もなかなかでしょう?」
ロロットはギターを弾く手を止めずに雀を見据える。
「チーチッチッチーチッチッ」
雀も負けじと鳴き声を響かせる。だがそうはさせまいと紅鳥と雪緒が左右から挟撃する。
「小さな体なのにしぶといな!」
「もう幻には引っかかりませんよー」
紅鳥は炎を帯びたガントレットで殴りつけるが、雀は紙一重で避ける。そこへ雪緒は魔弾を撃ち込む。漆黒の弾丸が体を捉えて侵食する。動きが鈍ったところへ紅鳥がもう一度拳をぶち込んだ。火が羽毛を燃やす。そこへ神影が風の刃を放った。避けようと雀は軌道を変える。だが同じように風の刃も向きを変え、雀を切り裂く。
「かぜからはにげられませんよ?」
雀は間合いを開けようと灼滅者の居ない方向へ飛ぶ。
「逃がすわけにはいかないな」
エリアルが鉄球をジェット噴射させて追いかける。地面を蹴って跳躍すると、振り下ろされる鉄球が雀を打ち落とした。他の灼滅者達も追いかけてくる。
「ヂーチッチッ、ヂーチッチッ」
迫る灼滅者に雀の鳴き声が響く。意思とは関係なく足を止めるてしまう仲間の中、瑞樹は耐えて前に進む。間合いに入ると低く剣を薙いだ。だが雀は飛んで躱す。しかしそれを予期していたように影の錐が雀を貫いた。
「動きが速いのは分かってたからね」
瑞樹は返す刃で雀を狙う。雀は力を振り絞って羽ばたきそれも躱した。留まる事無く雀は必死に空を飛んで逃げる。
「回復はまかせてっ、もうその囀りは聞き飽きたよ」
レイッツァが髪を靡かせ手を伸ばす。すると仲間の間に一陣の風が吹き抜け、仲間を縛る呪縛が解けた。
「速くても数撃てば当たりますよね」
ロロットはガトリングガンの銃口を向けて、引き金を引く。無数の銃弾を潜るように雀は避ける。だがそこに別方向からの銃撃が加わる。
「今なら銃弾増量中ですよー」
体から銃口を突き出した雪緒が十字砲火を浴びせる。激しい弾幕を避け切れずに雀は被弾し、きりもみしながら落ちた。
「……跡形もなく、切り裂け」
蒼の影が舞い散る花吹雪のように襲い掛かり、雀の体を切り刻んでいく。雀はよろよろと翼を広げて飛び立とうとする。
「とりさんはかごのなかでねむってたほうがしあわせだったのかな?」
神影が魔力を込めた杖を振り抜く。その一撃は雀の骨を砕き壁に叩き付けた。
「さあ、スサノオの忘れ物を片付けてしまおうぜ」
最後の力で空へ帰ろうとする雀に、紅鳥が手にした光輪を振るう。それは翼を斬り飛ばし、飛ぶ力を失った雀は真っ逆様に落下する。
「ヂッチチッチチッ」
「……その魂だけでも空に帰るといい」
苦しそうに鳴く雀を、悲しそうな目で見つめ、エリアルの腕が一閃する。雀の体は鉄球に打ち抜かれて空へ吹き飛び消し飛ぶ。ジャランと鎖だけが地面に落ちて消え去った。
●愛媛の美味しいもの
鳴き声は消え去り、全員で立ち入り禁止にしていた場所も元に戻すと、人々の賑わいの音が戻る。
「終わったー!! 腹へったし早く行こーぜー! たっいっめし! たっいっめし!!」
「天月もおなかがすきました。みんなでたいめしたべましょう!」
もう我慢の限界と、紅鳥がお腹を押さえて叫ぶと、神影も笑いながら真似するようにしてお腹を押さえた。
「そうだね、誠一郎さんが言ってたし、みんなでご飯食べてこ?」
「いいですね! 鯛めし、楽しんで帰りたいです!
瑞樹がそんな二人の様子を可笑しそうに見ながら賛同すると、、ロロットも素早く手を挙げ、他の皆も賛成と頷いた。
「こんな遠い所、依頼でしか来れないしね」
「……鯛めし、食べるの、初めて、なのです……」
愛媛県まで来た道程を思い出し、エリアルは食べて帰らなくては勿体無いと店に向かう。
隣で蒼も鯛めしの味を想像して、内心ワクワクしながら歩く。その足取りは軽く今にも走り出しそうだった。
「俺も鯛めしって食べた事ないから楽しみだな」
体をぶるるんと振るわせた雪緒は、闇に隠れて仲間に続く。
「ところで『チュンチュン焼き』っていう雀料理が日本にはあるって聞いたけど、実際どうなの?」
ゲテモノも大丈夫なレイッツァの疑問の声に、誰も答えられない。食べた事どころか存在すら知らない人もいる。雀料理は今は珍しいもので、若い人で食べた事のある人はあまり居ないのだと、説明しながら賑やかに店に入っていくのだった。
夜の町に聞こえるのは人々の賑わう音と、車の無機質な音だけ。
もうどこにも雀の鳴き声は聞こえなかった。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年3月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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