料理合コンはホワイトデーも狂信のお味

    作者:るう

    ●料理屋前
    「バレンタインにあんな事件があったのだから、ホワイトデーにも同じような事件が起こるに違いないわ」
     果たして、ルナエル・ローズウッド(葬送の白百合・d17649)の予想は当たった。
    『アナタの想いをお鍋に篭めて!
     バレンタインに縁がなかったアナタも今月こそは! 男性5000円、女性1000円! 出会いのできる料理教室です』
     もうすぐホワイトデー。その張り紙はやっぱり、特別な手料理を作りながら男女の仲を深めようという、一種の料理合コンの案内だった。
    (「芸がないわね。別の場所で同じ手口なんて」)
     今度の先生はどんな人だろう? そんな事を思いながら、ルナエルは帰路に着く……。

    ●武蔵坂学園、教室
    「やっぱり料理にはアブない薬が使われるみたいなので、創作料理屋の店長、吉田さんの成敗をお願いねっ!」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)の説明があっさりしすぎてるので補足すると、以前、ルナエルと仲間たちが灼滅した、三宅という自称料理研究家がいた。この女性はバレンタインにかこつけて公民館の調理室で合コンを兼ねた料理教室を開き、集まった人に洗脳薬入りのチョコケーキを作らせて信者を増やそうとしていたのだが、今度は舞台が料理屋に移り、作る料理も何故か鍋になっているのだ。
    「吉田店長の説によると、鍋は皆で囲めるから料理合コンにもってこいなんだとか。だからってホワイトデーまで鍋の必要があるとは思えないけど……」
     まあ兎に角、今度の吉田も灼滅し陰謀を挫くのが、灼滅者たちに課せられた使命なのである。

    「やっぱり、『エイティーン』でなるべく大人に見せかけた方がいいのよね」
     問うルナエルに、もちろん、とカノン。今回は結婚が前提の合コンではないようだが、それでも子供が混ざって怪しまれないわけがない。大学生程度には見えるような格好をしておいた方が好ましいだろう。
    「最初は食材を洗ったり切ったり準備しながら交流する時間、その後が鍋をつつきながら交流する時間。薬は鍋の中の出汁に入ってるみたいなので、食べ始める前までに吉田店長とサクラ三人を灼滅しちゃって下さい」
     それまでの間なら戦闘に入るタイミングはいつでもいいが、灼滅者たちや、ESPなどの影響を受けた一般人が怪しい動きをすると、敵に逃げられたり人質を取られたりする恐れがある。交流時間のうちにサクラを探し出し、それとなく一般人と離すのが安全だろう。
    「ちなみにサクラは魔法使いのサイキック、店長は加えて包丁を持ってて、解体ナイフのサイキックも使ってくるよ」
     なお、三宅と吉田は手口こそ同じだが、同じソロモンの悪魔を信仰しているのかどうかはわからない、とカノン。
    「少なくとも吉田店長は、他のソロモン信者と交流してる証拠は残してないみたいだから」


    参加者
    月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980)
    鏑木・カンナ(疾駆者・d04682)
    リーグレット・ブランディーバ(紅煉の獅子・d07050)
    シャルロッテ・クラウン(残念な海賊きゃぷてんくらうん・d12345)
    ルナエル・ローズウッド(葬送の白百合・d17649)
    メリッサ・マリンスノー(ロストウィッチ・d20856)
    長谷・梨伊奈(プリンセスパセリーナ・d22229)
    空本・朔和(安全第一・d25344)

    ■リプレイ

    ●いざ、鍋合コンへ!
     大人姿になり、ウキウキと貸厨房までやってきた長谷・梨伊奈(プリンセスパセリーナ・d22229)。その足取りが、路上に出ていた立看板の前でふと止まる。
    (「男性5000円、女性1000円って、男性ぼったくられてるんじゃないの、これ……?」)
     合コンとしてはそうおかしな価格設定ではないのだが、小学生の梨伊奈は知る由もない。集まる男性たちを気にかけながら、仲間たちとの結託を疑われないよう一人で中へと入ってゆく……。

    (「くいもんにくすりをまぜるってのが、きにいらねーな」)
     グラマラスな金髪美女、シャルロッテ・クラウン(残念な海賊きゃぷてんくらうん・d12345)がしかめっ面で腕を組むと、ドレスの胸元が強調された。通りすがりの男がどきりと驚き、そそくさと貸厨房へ。
     が、男を慌てさせた自分の魅力にも、シャルロッテは満足していない。
    (「ほんとーは、いつものかっこがいーんだけどなー、おちつかねーな」)

     次にこの場に現れたのは、ルナエル・ローズウッド(葬送の白百合・d17649)だ。
    (「今回も一般人とサクラの見分け方が大変そう、かしら」)
     顔にこそ出さないものの、全く同じ手口を企てるソロモンの悪魔には心底呆れ果てるばかり。……いや、本当に同じ?
    (「……ホワイトデーに鍋って物凄くミスマッチだけれど……不自然だとは思わないのかしら?」)
     同じ手口どころか、むしろ劣化してるように見えなくもない。
     その証拠に。
    「あー、テンション上がんないわー」
     格好だけは大人っぽくバッチリと決めてきた鏑木・カンナ(疾駆者・d04682)の表情が、辟易としたものになっていた。初合コンでダークネス退治……だけなら万歩譲っても、何が悲しくてホワイトデーに鍋をつつかなきゃならないのか。
     溜息と共に、合コンの意味をわかってるかどうかも定かでない小学生組を案じながらふと振り返ると、月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980)の緊張気味の顔が目に入った。
    「……合コンって初めてなんですけれど、その、こんな普通の服でもいいんですよね?」
     デートほどには張り切っていないが、普通の余所行きとしては十分な格好だろう。それを確認して、カンナは答える。
    「上等よ。あとわかってると思うけど、恋人の事は伏せといた方が無難よ」
    「あ、その方がいいんですね」
     どうにも彩歌は、こういう場には縁が薄い。親交の場を邪な目的で利用せんとする人物を発見し、その企みを絶対に阻止しましょう、と意気込む彼女も、カンナをはらはらさせ通しだった。

     合コンに縁が薄いのは、メリッサ・マリンスノー(ロストウィッチ・d20856)も同じ事。姿は大人に近付けど、ぼんやりした雰囲気は変わりない。もちろん……合コンの経験の方も見た目通り。
     ふんわりしたドレス姿は世間知らずのお嬢様に見えなくもないが、見る者が見れば、その眼光の異様な鋭さに気付いただろう。
     その視線で入口の扉を凝視した後、メリッサはふと何かに導かれるように扉へと向かう。

     そして、リーグレット・ブランディーバ(紅煉の獅子・d07050)。
    (「まさかこのリーグレットがこんな庶民の戯れに参加する事になろうとは……」)
     彼女が合コンに興味ないのは家柄の話ばかりではない。男なんぞに興味を持つ暇があれば力で敵を捻じ伏せる、そんな男勝りな性格も相まっていた。
     そんな彼女が興味を持った数少ない異性(といっても玩具としての興味だが)が、傍らの少年、空本・朔和(安全第一・d25344)だった。
    「で、『エイティーン』はいつ使うんだサクト」
     その問いに、少年は顔色を青ざめさせた。
    「あれ……ない!」
     慌てて持ち物を調べるも、何を間違ったか持ってきた殲術道具は女子スクール水着。たぶん、アホ姉のだ。
     どうしよう! 混乱する朔和の頭を、リーグレットは軽く小突いてやった。
    「とりあえず、サクトは勝手についてきた近所の悪ガキという事にでもしておけ」
     顔を真っ赤にして俯く朔和を引き連れて、リーグレットはさも当然のように堂々と貸厨房へと入って行く……。

    ●お鍋の準備
    「えー、男性の一名が急用で来れなくなったとかで、七対八に小さなお客さん付きですが、ホワイトデー鍋合コンを始めさせていただきます」
     吉田は挨拶と簡単な手順の説明を終えた後、すぐに奥へと引っ込んでいった。

    「リーグレットさん、何かご趣味はあるんですか?」
     問うミノルにリーグレットは、ない、とだけ答えてやった。正確には、教えてやる義理も理由もわからない。
     当然、会話が止まる。戸惑うミノルが、慌てて次の話題を搾り出す。
    「えっと……あの子のお知り合いなんですよね?」
    「ああ、サクトは私の子分のようなものだな」
     自分たち以外の唯一の女子に纏わりつく朔和の様子を、リーグレットは目を細めて観察する……。

    「ウキエお姉さんの趣味は何? オレはね、ツーリングだよ!」
     正規参加者を真似て、精一杯背伸びして振舞う朔和の肩を、ウキエは優しく抱き寄せる。
    「料理、した事ある? ないなら、一緒にお料理しよっか」
     耳元で囁かれ、顔を真っ赤にしてウキエから背ける朔和。その頭をわしゃわしゃと撫でられて、ぼーっとウキエの顔を見上げた時。ふと、朔和の背筋に冷たいものが流れた。
     少年を愛でる女の瞳は、獲物を狙う獣のように不気味に歪んでいたのだった。

     その頃、料理経験すら乏しいメリッサは、パックから出したばかりのエノキを前に固まっていた。痺れを切らし、メグルは石突に包丁を入れてゆく。
    「メリ……わたし、はこういうの初めてで……メグルさん、おりょうり、上手ですね……」
     対して、露骨に嫌悪を浮かべるメグル。彼の目に、不自然な人物を探さんとするメリッサ自身が不自然に映っていたのは、疑いようがない。
     けれどメグルの正直な態度こそが、逆に彼に他意のない事の証明になっていた。

     そんなメリッサとは対照的に、テンポよく白菜をざく切りにしてゆくのが隣の彩歌。
    「料理は人並みくらいにはできますよ」
     彩歌はそう謙遜するが、大和撫子然としたその雰囲気もあり、彼女はキョウイチを十分に魅了していた。
    「素敵だなぁ……」
     彼は、はーっと溜息をつく。彼の無防備な態度の中には、一切の打算は感じられない。
    (「どうやらサクラではなさそうな感じですね」)
     ローテーションの合図と共に、彩歌は安心して次の人との会話を始める……。

     手際の良い料理の腕を披露した灼滅者の中には、意外にもシャルロッテの姿もあった。
    「くいもんはそまつにできねーからな!」
     野菜の硬い部分を極力ギリギリで切り落とし、乱暴にザルに置く。その技量はまさに、豪快の一言!
     得意気になって、シャルロッテはダイナマイトな胸を張る。
    「あたい『ごーこん』ってのはじめてだけど、けっこーたのしーな!」
     さっきの男、ショウヘイが、再び目の遣り処に困ってそっぽを向いた。
    (「こいつ、さくらじゃねーな」)
     ……え? 何で??

     一方カンナは。
    「吉田さんのお店の方には行った事あります?」
     彼女がその話題を出した瞬間、アキノリの目は僅かに細まる。
    「ああ、常連だよ俺。予算だけ伝えると勝手に何か作って貰えるレベル。凄くね?」
     吉田の料理がいかに美味いか。そして、吉田が何故鍋料理を重視するか。
     過度の常連自慢を前に、今度はカンナの目の方が細まっていた。
    (「はいごくろーさん。おかげであんたのサクラ疑惑が勝手に深まったわー」)

    「サトシさんは、何か信念のようなものはあるの?」
    「愛……かな」
     ルナエルの問いに、格好をつけてサトシが答える。
    「まあ店長の受け売りなんだけどさ、人間の幸せって、いい人を見つけて美味い飯を食う事なんだわ。それさえあれば、どんな苦労も乗り越えられる、ってね」
     段々とオカルトじみてきた店長の思想とやらをとうとうと聞かされて、遂にルナエルは満面の笑みを浮かべ始めた。
    「ええ、おかげで貴方はとっても『幸せ』そうね」
     笑顔から放たれる皮肉の言葉は、ルナエルの機嫌が悪くなってきた事の証左だった。

    ●そして、自由時間……
    「ユウヤさん、ここのとなり、いいかな?」
     梨伊奈に黄緑の瞳に上目遣いで問われたら、いいえと答えられる男はいない。哀れな青年は押しのけられて、別の居場所を探してうろつき始めた。
     もちろん梨伊奈も、決して意地悪をしたくてユウヤを押しのけたわけではない。今、梨伊奈がいる場所は……ウキエの隣。ソロモンの狂信者から彼を遠ざけるには、これが一番手っ取り早い。

     梨伊奈が、無関係な人たちをサクラ達から遠ざけて始めて数人目。そろそろかしら、とルナエルが、声を潜めて囁いた。
    「異臭がするわね……ガス漏れかもしれないから、念のために退避した方がいいわ」
     一般参加者に避難を呼びかけると同時に、吉田を呼ぶ。吉田が、厨房の奥から出てきた時には……五人は、貸厨房から出てゆくところ。
    「え、ちょっと皆さんどこ行くんですか?」
     慌てて追おうとする吉田を遮るように、カンナが手を打ち呼びかける。
    「はいはーい、茶番はここまでよ」
     同時に轟く、威嚇的な爆音! カンナのライドキャリバー『ハヤテ』のエンジン音だ!
     驚いてハヤテを蹴り出そうとしたアキノリの心臓を、カンナの槍は正確に貫いていた。
    「お前ら、何者だ!?」
     灼滅者らに包丁を突きつける吉田の前に、一枚の布がひるがえる! 自身の体からドレスを毟り取ったシャルロッテは、既に、スク水に海賊帽、船長コートのいつもの姿!
    「やっぱこのかっこじゃねーとな! くいもんにくすりいれてそまつにするやつは……さめのえさだ!」
     鮫型の影がサトシを喰らう! が、彼と影との格闘が続く中……アキノリが最期の力を振り絞り、怪しげな言葉を口ずさむ。飛来する魔法の矢……。
     その時! 威勢の良い叫びが部屋に響く!
    「男の子はオレだけだもんね! 頑張ってみんなのこと守るよ!」
     小さな胸で矢を受け止めて、朔和は歯を食いしばる。そしてお返しの……除霊結界!
     ついにアキノリが事切れたのと同時に、吉田は怒りの声を上げた。
    「こいつ! 厨房におまるみたいなもん持ち込みやがった癖に!」
    「すわんはおまるじゃないってば!」
     泣き叫ぶ朔和を気にもせず、吉田の瘴気が辺りに広がる! だが、それを……。
    「スーパー・プリンセス・パセリーナ、パセっと参上なのよっ!」
     年齢分だけスーパーな梨伊奈、もといパセリーナのウィンクつき決めポーズと同時に、パセリの芳香が厨房に満ちた。
    「パセリン☆ビームっ!」
     緑の光が瘴気を切り裂き、その毒の一部を中和する!
     歯軋りする吉田を守るように、ウキエの冷気が空間を包む。灼滅者たちの全身に、氷が冷たい牙を立てる!
     けれど、氷が傷つけたのは灼滅者だけに留まらない。
    「どうして、呪文が私にまで……!?」
     教わった呪文を唱えるだけのウキエは気付いていなかった。メリッサが静かに、同じ呪文を重ねるように唱えていた事に。
    「眠って……」
     メリッサの鋭い眼光が、一際強くウキエを貫いた時。別方向から飛来する、氷の槍。
     リーグレットの放った氷柱は、女を覆う氷に触れた瞬間、氷同士が共鳴するかのようにその体を鋭く苛み、分厚く凍てつかせていたのだった。

    「同じ鍋をつついて親睦を深める。そこに悪意を持ち込むあたり、最低の発想ですね」
     辛うじて鮫の影から脱出したサトシに止めを刺すと、彩歌は改めて吉田と向かい合った。
    「嫌だなー、『調味料』で皆を幸せにするのは料理人としての務めだよ? 君たち、そんな誤解でこんな大変な事してくれたわけ?」
     吉田の包丁が突き出される。
    「では、その『調味料』とやらの効果は? 人の正常な判断を奪うものなのでしょう?」
     彩歌は守りの構えのまま引かず、和洋の二刀で包丁を捌く!
    「酷いな! ちょっと幸せになるだけじゃないか! うちの料理をどうしても食べたくなるだけで、お客さんは幸せになってWin、うちも儲かってWin!」
     もっての外、と彩歌は呆れ果てた。この手の輩をどうにかするには……。
     突如跳び退った彩歌がいた場所を、重い魔力が薙ぎ払う。タイミングを合わせて振るわれたカンナのマテリアルロッドが、こちらも正確に心臓を狙う!
     無理矢理避けた体勢から放たれた敵の呪文をハヤテで受けて、カンナはその修復を彩歌に委ねる。さらに、入れ替わるようにメリッサ!
     言葉もなしに撒き散らされた燃える弾丸が、吉田の全身を炎に包んだ……が、その瞳は妖しく光り、その闘志がいまだ衰えていない事を示している!
     どこまで保つものか、とリーグレットは剣を抜いた。それはすなわち、これ以上は保たせぬという高潔な意志。
     そして……その言葉に違う事なく! その剣は包丁による防御を押し返し、吉田の胴を横薙ぎに斬る!
     包丁を振り上げてよたよたと近付く吉田の全身を覆う炎が、メリッサの瞳の眼光の強さと比例するかのように一段と強く輝いた。
    「企む手口が同じなら、失敗する結末も同じになるのが当然だと思うのだけれど」
     ルナエルは吉田の包丁を天井まで弾き飛ばすと、返す杖で首筋に、とどめの一撃を振り下ろしたのだった。

    ●闇を憎んで鍋を憎まず
     静寂を取り戻した厨房で、梨伊奈は悲しげな瞳で残された鍋の具材を見下ろしていた。
    「このままじゃ、折角のお鍋が誰にも食べられず仕舞いなのよ……」
     ならばもちろん、やる事は一つ!
    「今から、続きをやるのよ!」

    「みんな、お疲れ様! 怪我はない?」
     胸元の傷を誇りながら、朔和はリーグレットの傍に寄り添う。
     握るのは、彼の手からしてみれば巨大なジュースのグラス。リーグレットのグラスにかちんと自分のグラスをぶつけると、朔和は喉を鳴らしながらその中身をすっかり飲み干してしまった。
     そんな彼の髪の毛を、空いた手でぐしゃぐしゃと弄ってやるリーグレット。恥ずかしそうに身をよじる朔和の都合など、一片たりとも考慮しない。
     余計な思惑さえ入らなければ、こんなにも素晴らしいひと時なのに。彩歌は改めてそう思う。もっとも、それでもホワイトデーとはミスマッチだと、ルナエルはどうしても感じるのだけど。

    「そーいや、こないだちょこけーきくいそこねたし! こんかいは、くうぜぇ!」
     奪い取るように鍋の中身を口に放り込んだシャルロッテが……しばし固まる。
     熱い。あとしょっぱい。
    「……こんかいけーきじゃねーし……」
     床に手をつき落胆する彼女のすぐ隣。ちょこんと座っていたメリッサが、澄ました顔で具を漁って一言。
    「これ……料理した憶えない……」
     カンナも怪訝な顔で、緑の物体を摘み上げた。
    「ないわー、流石にこの鍋にパセリはないわー」
    「パセ……栄養たっぷりなのに……」
     そんな梨伊奈による漫才めいたやり取りがあったりしつつ、鍋の周囲ではささやかな幸せの時間が過ぎてゆくのだった。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年3月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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